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適える初恋

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第四章

「高校を卒業したらね」
「その先生と結婚するのか」
「就職して」
「そうしてか」
「そうだよ、先生も待っていてくれるから」
 相手もというのだ。
「だからね」
「幾ら相手の先生が独身でもな」
「それはないだろ」
「二十歳も年上の人と」
「しかも本気だからな」
「そう、僕は本気だよ」
 やはりこう言うのだった。
「七歳の時にはじめて先生と会ってからね」
「だから止めろ」
「非常識にも程があるぞ」
 友人達も言う、だがだった。
 フェリペは彼等が言っても聞かず中学や高校の先生に言われてもこう言うばかりだった。
「僕達の間に不純なものはありません」
「清らかか」
「はい」
 はっきりと答えた。
「連絡は取り合っていてデートもしていますが」
「神に誓ってか」
「キスもしていません」
 実際にそうしているのだ、二人でそうしようと約束したうえで。
「全く」
「そうなのか」
「そしてです」
「高校を卒業したらか」
「就職してです」
 そのうえでというのだ。
「結婚します」
「君は本気なのだな」
「そうです」
 一茶淀みのない返事だった。
「決めています」
「七歳の時からかい?」
「そうです、ずっと好きで」
「今もかい」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「絶対にニキータさんと結ばれて」
「生涯をか」
「共に過ごします」
「そこまで決めているのか、ならだ」
 ある教師は彼の覚悟を聞いて唸って言った。
「幸せになるんだ」
「そうなります、絶対に」
 彼の決意はどうしても変わらなかった、そして遂にだった。 
 フェリペは高校を卒業して就職した、その時に結婚指輪を持ってニキータにそれを渡して言った。
「僕と結婚して下さい」
「はい」
 ニキータは彼の言葉に笑顔で応えた、そのうえで二人で教会でささやかな式を挙げることになったが。
 確かに整った顔立ちだが歳相応の顔立ちの花嫁を見てだ、フェリペの両親であるロベルトとオパンは難しい顔で話した。
「まさかな」
「本当に結婚するなんてね」
「何度も言ったが」
「遂によね」
「そうだな、しかしな」
 ここでだ、二人は。
 新郎新婦の顔を見た、その顔は心から幸せそうだった。その幸せな顔を見て思い言うのだった。
「二人共な」
「まるで天国にいる様ね」
「全くだ、本当に幸せそうだな」
「誰よりもね」
「ならいいか」
 ロベルトは二人の顔を見て言った。 
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