| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歌集「春雪花」

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

354




 これ見よか

  風に揺らるる

   若すすき

 人も知らじな

    文も絶へなむ



 この風景…彼もこんな風景を見ているだろうか…?

 咽せるような夏の風に靡く、未だ若い芒の葉…。
 真夏のどこにでもある風景…。

 いや…こんな田舎の風景を、彼は気にも止めていないだろう…。

 そんなことさえ、今の私にはもう分かりようもないのだが…。


 便りさえ…もう絶えて久しい私には…。



 青き田の

  光揺らぎて

    水面にそ

 帰らぬ里に

    君ぞ想いし



 真夏の強い陽射しに映える稲の葉…眺めれば、田の水面に陽射しが乱反射している…。

 私の田舎でも毎年見ていた…いや、見馴れ過ぎて当たり前だった光景…。

 もう帰ることのない田舎の風景が眼前の光景と重なり…無性に寂しくなってくる…。

 そんな田舎の風景…彼といた時間が頭を過り、深く溜め息をつく…。

 彼に私は価値がない…ただ、それだけのことなのだ…。


 それだけが、今の私そのものの意味なのだ…。


 ただただ…日々が辛い…。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧