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ドリトル先生と悩める画家

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第十一幕その十

「先生も出店を楽しんでますか」
「うん、この通りね」
 今は甘酒を飲みつつです、先生は応えました。
「そうさせてもらっているよ」
「そうみたいですね」
「いや、美味しいし雰囲気もね」
 お祭りのそれもというのです。
「いいね」
「そうですね、僕もここに来てです」
「楽しんでいるんだね」
「スランプから脱出する為にも」
 まさにというのです。
「そうしています、そして」
「そして?」
「遂にです」
 とても朗らかなお顔で言うのでした。
「何かを感じました」
「じゃあ」
「はい、この前の雪と今のお祭りで」
 この二つによってというのです。
「感じました」
「そうなったんだね」
「そしてお祭りから帰ったらすぐに」
「描くんだね」
「大学に戻って描きます」
 まさにそうするというのです。
「やってきます」
「遂にスランプ脱出の機会が来たんだね」
「雪とお祭りがそうさせてくれました」
 太田さんは明るいお顔のまま言うのでした。
「だからこそ描きます」
「それじゃあね」
「はい、今から行ってきます」
 こう言ってでした、太田さんは実際にまるで風の様に出店が左右に並ぶ神社の道のところを去っていきました。そうしてです。
 残された皆はその太田さんを見送ってです、口々に言うのでした。
「さあ、いよいよかな」
「太田さんのスランプ脱出かしら」
「その時が来た?」
「遂に」
「そうかも知れないね、とにかくね」
 笑顔でお話する先生でした。
「彼がそのきっかけを掴んだことは間違いないね」
「この暗いお天気が終わるまでと思ってたけれど」
「今もお天気自体は悪いしね」
「お空暗いよ」
「雪が降りはしないだろうけれど」
「それでもね」
「暗いよ」
 見ればお空は曇りで、です。雲は非常に暗いです。動物の皆は太田さんが苦手らしいそのお天気を見て言うのでした。
「これじゃあね」
「太田さんだとね」
「スランプ脱出はまだだって思ってたけれど」
「お天気が晴れるまで」
「そう思っていたけれど」
「うん、それがね」
 先生はここでまた言いました。
「違ったみたいだね」
「曇り以上によかった?」
「雪とお祭りが」
「そうだったのかしら」
「そうみたいだね、まあお天気もね」
 先生もお空を見上げて言いました。 
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