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Good and evil ー悪で覆った正義ー

作者:鬼心
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三話 怒り狂った戦士

帝に距離を取られたが、正直そんな事は問題ではない。
零司の異常な速さならば、距離を取られただけなら積めれば良いのだが、帝にそんな単純な技が効く筈は無い。
前回も言った通り、この二人は戦闘経験に置いては右に出る者は数少ない、自分の能力を理解し、地形や場所、近くにあるもの、何でも使って自分の有利な状況を作り出す。

「回りに地雷を撒いたな?」

帝は、零司の能力では超接近戦しか出来ない事を利用して、距離を取って自分の能力で今現在有利な状況を作り出したのだ。

「一回の跳躍でこの大量の地雷を避けれるかな?いくら貴様が速かろうと、空中に居るときは加速出来まい····」

帝は少し笑みを溢すが、勝利を確信したためではない。
零司の動きに僅かだが制限を掛ける事が出来た為である。
これにより、零司への次の対策を練る余裕が生まれた。

「見たところによると、地雷の種類は対人地雷、踏んだ瞬間にぶっ飛ぶ信管を使ってやがるな···めんどくせぇ」

零司はそう言って悪態をつきながら、先程の爆風で破れた制服を脱ぎ捨て、シャツの中に着ていたタンクトップ姿になった。
廊下には先の凄まじい戦闘音を聞き付けた生徒や教師達が集まって来ている。

「帝···お前の正義は間違ってるぞ」

零司はそう呟いた。

「世の中の悪を取り除いてる事が正義では無いと言うのか?」

帝は自分の信念を否定され、怒りの表情を見せた。
額から血管が浮き出ているのが目に見えて分かるほどだった。

「世の中が悪とする者を倒すこと"だけ"が正義なのか?それにお前のやっていることはもはや悪を取り除くでは無い」

零司が喋る度に、帝の怒りは増していく。

「よもや、貴様のような人間に正義を語られるとはな···」

「考えを改めろ、今なら許してやる」

その言葉を聞いた瞬間、帝の怒りは頂点に達した。

「考えを改めろだと!?ふざけるな!貴様のような奴に何が分かる!」

帝は血色を変えて零司を怒鳴った。

「何も分からないさ、だがお前はいつもやり過ぎなんだ。行き過ぎた行動はいつかは自分の身を滅ぼすぞ?」

零司は自分のズバ抜けたパワーを自覚している。
無論、本気を出せば拳で人体なんて簡単に貫くことも出来る。
そう、人なんて簡単に殺せるのだ。だが、零司はそれをしないのだ。
帝には改心して欲しいと思っているのだ。

「おい!零司!ここに居たのか!」

そう言って野次馬の生徒を掻き分けて怜央が話し掛ける。
その瞬間、怜央の足元に手榴弾が転がってきた。

「何!?」

怜央はいきなりの事に対応出来ず、硬直していた。
だが、零司が咄嗟に手榴弾を拾い、外の方に投げた事によって最悪の事態は免れた。
僅かな時間だが、帝から目を離した為に帝からの攻撃に気付けなかった。
2つの鈍い音が廊下中に響く。
それと同時に零司の左肩及び左腿の肉を弾丸が抉った。

「くっ···!」

零司は苦悶の表情を浮かべ、膝を付いた。

「貴様は甘いんだよ、そうやって戦いの途中に友人などに構ってるからこうなるのだ」

帝からは先程のような怒りの表情は消え、冷徹な表情に戻っていた。
反対に零司は溢れんばかりの怒りの感情で帝を睨み付けていた。

「その怪我ではもう勝ち目は無いだろう、諦めろ」

「今のも正義の為の行動か?もし爆発したらなんの罪も無い人たちすら巻き込んでたんだぞ?」

零司はそう呟いた。

「今のはレプリカだ、安心しろ俺は悪人だろうと殺しはしない罪と同等の罰を受けさせるだけだ。無論、貴様の友人もその内の一人だ」

零司はその一言に驚愕した。

「何だと!?」

「この戦いが終わったら貴様の友人を"尋問"するつもりだ」

そう言って帝は不適な笑みを浮かべた。

「そんな事させるかよ···!」

だが、零司は体に力が入らなかった。
その時、零司の頭に何者かが語りかけて来た。

『俺に身を委ねろ、そうすりゃあいつに勝たせてやるよ···!』

零司の体はどんどん何者かに蝕まれ、どんどん体の自由を奪われていく。
零司は必死に抗うも、侵食は進んでいく。

「全員、離れろ···帝、お前もだ···!!」

「これは何事ですか!?」

この騒動にまた一人野次馬を掻き分けて来た女子生徒が現れた。
腰まで伸びた黒髪の凛々しい顔立ちをしたその女子生徒はこの状況に怯えていた野次馬達と違い、彼らに近寄って行った。
そして、零司を見た途端に驚愕の表情を見せ、大声で指示を出した。

「全校生徒は直ちに校外へ避難しなさい!今すぐに!!」

それを聞いた生徒達は一斉に逃げ出した。

「···なんの真似だ··?生徒会長」

「あなたも早く避難しなさい、死ぬことになるわ」

そうしている間にも零司の体は侵食され、皮膚は禍々しい黒い色の皮膚へと変貌していき、どんどん髪が伸びていった。

「この状態の零司は力をコントロール出来ないの!誰にも止めることは出来ない早く逃げるのよ!」

ーTo be continuedー





 
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