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焚書

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第五章

 彼は朝新聞を読んでだ、目を怒らせた。それはどうしてかというと。
「馬鹿共が」
「どうしたんだよ、急に」
「何かあったの?」
 大学生になった智和と就職している聡美がそれぞれ父に言ってきた。二人共家の近くの大学と会社に通っているので実家暮らしだ。台所では麻美がまだ料理を作っている。
「新聞読んで怒り出したが」
「会社の不祥事でもあったの?」
「違う、岡山でな」
 そこでというのだ。
「馬鹿が出た」
「またヒロポン中毒の人が事件起こしたとか」
 智和は朝飯のメザシを食いつつ父に問うた、近頃どんどん父に似てきている。
「そういう話かな」
「交通事故とか」
 聡美はこちらではと言った、こちらも最近麻美に似てきている。高校を出てから特に。この頃にはまだ少ない女子高生だった。
「そういうのかしら」
「違う、しかし嫌な話だ」
 明らかに怒ってだ、織部は言った。
「本当にな」
「言いたくもない位に」
「そこまでなの」
「そうだ、馬鹿がいるものだ」
 不愉快そのものの顔での言葉だった、そして。
 会社に出勤したがだ、ここでも不機嫌なままだった。
 暫くしてだ、妻の麻美が帰宅した彼に問うた。酒を出したうえで。
「最近機嫌が悪いけれどどうしたの?」
「ああ、岡山でな」
「そこで何かあったのよね」
 夫の杯に酒を入れつつ問うた。
「そうよね」
「そうだ、馬鹿共がな」
「馬鹿共?」
「岡山の方のPTAか何か知らないが」
「学校に通う子供の親御さん達の集まりね」
「子供の害になるかと言ってだ」
 そうしてとだ、織部は持っている杯に酒を受けつつ応えた。
「本、漫画も含めてな」
「読むなと言ったの?」
「それどころかな」
 さらにというのだ。 
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