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星河の覇皇

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第六十二部第五章 当選その三

「エウロパの千年来の宿敵ですが」
「この国が主ですか」
「そうだ、まずは連合だ」
 そして、というのだ。
「こちらに相当な隙がない限りはな」
「サハラに相当な力は向けない」
「特にですね」
「そうだ、そうは向けない」
 そうだというのだ。
「だから我々は備えていればだ」
「エウロパは攻めては来ない」
「そうなのですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「備えてさえいればな」
「エウロパは来ない」
「連合には」
「かといって連合ともだ」
 ギルフォードがエウロパ最大の敵と認識しているこの国もというのだ。言うまでもなく両国は宿敵同士である。
「武力衝突は仕掛けない」
「自分達からはですか」
「それはありませんか」
「国力差を考えるとな」
「どうしても、ですね」
「それは無理ですね」
「あの侯爵殿は賢明だ」
 シャイターンはギルフォードを決して愚かとは見ていない、それどころかその逆の者だと考えている。そしてそれは事実である。
「連合に仕掛けることが出来ないとわかっている」
「それで、ですね」
「連合には仕掛けない」
「敵対はしていてもですか」
「武力では仕掛けない」
「それが出来る相手ではないからだ」
 だからだというのだ。
「それはない」
「左様ですか」
「それではエウロパは軍は復興させてもですか」
「その軍を外に動かすことはない」
「戦争は起こさないのですね」
「軍隊があっても動かないとならないということはない」
 そうした決まりはないというのだ。
「動かさずともよいな」
「はい、必要に応じて使えばです」
「それで構わないものです」
「強力な軍があればそれで、です」
「充分である場合も多いです」
 弟達も長兄にこうそれぞれ返した。
「サハラでは軍が整えばすぐに戦争となってきましたが」
「それが常でしたが」
「別に戦争をせずとも」
「構わないです」
「むしろみだりにしないものだ」
 戦争、それはというのだ。
「みだりにすれば国力を消耗する」
「そして衰え、ですね」
「滅亡しますね」
 フラームとアブーも兄に続いた。
「これまで多くの国がそうなりましたが」
「そうした国々の様に」
 戦乱に覆われてきたサハラでは実際に戦争を頻繁に行うことでかえって衰えた国も多い、そしてそこから滅亡してきた。
 だからだ、フラームとアブーも今ここでこう言うのである。
「それはまさに亡国ですね」
「軍隊はみだりに使うものではない」
「あくまで必要に応じて使うもの」
「そうしたものですね」
「私も同じ考えだ」 
 シャイターンは自分から言った。
「涜武はしない」
「武を貶める様なことは」
「そのことはですね」
「それが亡国につながるからだ」
 そうしたことがわかっているからだというのだ。
「決してな」
「それはせずにですか」
「あくまで、ですか」
「軍は必要な時に使う」
「戦争を行われるのですね」
「ビスマルクはまず戦争をした」
 プロイセン、ドイツ帝国の宰相である。鉄血宰相と言われた人物であり学生時代には二十数回もの決闘に勝っている。 
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