星河の覇皇

「私が責任を取る」
「党の代表をですか」
「辞任されますか」
「そうする」
　こう言うのだった。
「そして後はだ」
「他の方々が、ですか」
「党の復興に務められますか」
「そうなる、私は辞任してだ」
　そして、というのだ。
「暫くは隠棲となる」
「政治の世界からですか」
「身を引かれますか」
「そのつもりだ」
「左様ですか」
「そうされるのですか」
「そうだ、そうして責任を取るからだ」
　だからだというのだ。
「卿等は思う存分働いてくれ」
「最後の最後まで」
「敗北になろうとも」
「そういうことだ、しかしだ」
　ここで話を変えたカミュだった、その話はというと。
「思ったよりもな、ギルフォード侯爵はな」
「あの方がですか」
「出来るな」
　彼の資質、それを見ての言葉だった。
「彼は」
「確かに、あの方は」
「ただカリスマがあるだけではありません」
「人を惹き付けるだけでなく」
「それ以上のものがあります」
「そうだな、やはりな」
　彼はというのだ。
「彼が総統になってもだ」
「そうなってもですね」
「エウロパはですね」
「復興して、ですか」
「さらに」
「そうだ、発展する」
　そうなるというのだ。
「あの侯爵殿の手でな」
「復興からですか」
「発展しますか」
「あの侯爵殿の力により」
「エウロパは」
「それだけの資質があるからな」
　ギルフォードのそうしたものをだ、カミュはもう見抜いていた。つまりその統率力や政治力といったものをだ。
　それでだ、彼はさらに言うのだった。
「必ずな」
「エウロパは復興しますか」
「今の窮地を脱することが出来ますか」
「間違いなくな、そして驚いたことはだ」
「はい、それは」
「何でしょうか」
「あの新大航海時代政策だ」
　それにだ、最も驚いたというのだ。
「あの政策、暗黒宙域を越えて新天地を手に入れる政策はだ」
「かなりの冒険ですね」
「まさにかつての大航海時代の様な」
「冒険です」
「確かに冒険だ」
　リスクのあるそれだということは否定出来ない、カミュもこうは言う。
「しかし中継地点を置いていって進めばだ」
「その冒険もですね」
「それ程苦労はしない」
「犠牲は払わずに済む」
「そうなるのですね」
「大航海時代は何もわかっていない場所に漕ぎ出した」
　まさに冒険だったのだ、あの時代の航海は。