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ハイスクールD×D~黒衣の神皇帝~ 再編集版

作者:黒鐡
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陽だまりのダークナイト
  カーミラ側×暇人なアザゼル

濃霧に包まれた町。俺と蒼太は吸血鬼カーミラ派のテリトリー内に身を置くが、流石はブラック・シャークと言えると思ったのは城下町に治安維持部隊が居たからだ。

普通ならカーミラ派の吸血鬼達ばかりだが、所々に治安維持部隊の詰所があるから治安は良い方へ向かってた。吸血鬼は中世ヨーロッパの趣を残す建造物に好んで住むらしいけど、治安維持部隊が居る所だけ都会を感じさせる建物があった事か。

「一見吸血鬼達ばかりかと思っていたが、流石はブラック・シャーク。停戦となった今、建物は現代的なのが多いな」

「これについては我々の力だけでなく、織斑総司令官のお力が無ければここまで進む事はありませんでした」

「一ちゃんによって変わったとも言えるのか。これから会うカーミラ派の女王とはどんな人物なのやら」

「織斑様によると名はモニカ・カーミラ様らしいですし、我らが待機してる場所は真祖たるカーミラの城内。ここを円上に囲んでいますし、現代的なのも時代によるものかと」

現在俺達はカーミラの城内に居るが、住宅街の民家も今風の代物ばかり。上役たる純血種の者達は、古めかしいデカい屋敷に住んでいるようだ。勿論弱点である日光を嫌うのか、どの建物にも窓が限りなく少ないし戸が閉められてる状態。この濃霧だからか、日光が昼間でも町に届かないし真昼間でも夜の住人たる吸血鬼達はお休み中だ。俺らはカーミラ派の女王に謁見する為なので、蒼太と暇してる。

「現在昼間でも動いてる者は、肌を露出しないよう厚い服装で防備してるとか」

「霧が立ち込めて陽光が怖いらしくて、車で移動してる者すら居るよな。町の設備や住民の持ち物は、ほとんど人間界と変わらない気がしてならねえ」

「住民の大半が元人間ばっからしいのか、冥界で言う転生悪魔に近く見えますよ。問題の霧についてですが、吸血鬼の能力であろうとも我らが持つ通信機は正常です」

「それについては非常に有り難い、ヴァンパイアは霧を操る事も出来るようだが予知して渡したのだろう。CB側に居るゲオルグが持つ絶霧みたいな感じだ」

格上の者なら町一つ覆う程の霧を発生させて、霧=結界だと思えても蒼太達のように索敵は簡単に出来るそうだ。霧使いのゲオルグ程の特異点無いが、町丸ごと霧で覆う吸血鬼は実力者として居るのだろ。

天候を操る事が出来るジョーカーが持つ神滅具もあるが、それを全て操る事が出来るのは創造神黒鐵である一ちゃんぐらいか。リアスと別れた後、二人で入国して人里離れた山間部に広範囲型結界を張って人間界と隔絶場所とされてる。

「蒼い翼本社代表の蒼太様、堕天使総督アザゼル様、お待たせ致しました。女王陛下が謁見の間へお待ちとなっております」

「分かりました。と言う訳で行きますよ、アザゼルさん」

「おうよ」

謁見の間でお待ちらしいので、俺らは移動をしてがツェペシュ派の大元たる領域はここから離れてない。が、互いの境界線が張られてると言う国境線らしいな。人間界の地図で見るとルーマニアで、日本と同じ季節巡ってる国だから吐く息も白い。

日本も冬到来だからこちらも既に冬、だが日本より寒い国で外気温が場所によって低い。雪が降る場所もあり、謁見の間へ到着すると目の前に女王が座っていて周りに幹部らしき者もいる。

「ようこそお出で頂きました。改めまして自己紹介を、私の名はモニカ・カーミラと言います。気軽にモニカと呼んで頂いても構いません」

「謁見頂きありがとうございます。私の名は蒼太、蒼い翼本社から来ましたがこちらは堕天使総督アザゼル様でございます。よろしくお願いします、モニカ様」

「よろしくお願いします。蒼太さんにアザゼル様。話は一真様から聞いておりますが、早速ではありますけど私ら吸血鬼は三大勢力に和平と停戦についてを」

「それについて感謝する。俺ら三大勢力に和平と停戦へのテーブルに付いてくれた事に。あと俺からの土産を持ってきた。神器についてもだが、あちら側についても現時点で分かってる情報をくれると助かる」

「分かりました。ではまず現在起きてる情報から、城下町周辺に居る治安維持部隊も織斑様からの命による事ですから」

それについては城下町を見てきた俺らも知ってたが、復習として聞いていて先日の会談について失礼した事に謝辞をもらった。これに関しては本人に言ってくれと告げたが、蒼太曰く蒼い翼本社代表で来てるからか素直に受け取っていた蒼太。

ツェペシュ側で何が起きてるかについて詳細な事は、直接治安維持部隊に聞いた方がいいと教えてくれたよ。やはり情報量はカーミラ派の者らより蒼い翼やCBの方が多いらしいな。

「謁見が終わった事ですし、外に出ますか?」

「まあな。話も終わった事だし、この先で何が起こっても驚かないようにしとくわ」

「では城内だとVIP待遇らしいので、この城内と城下町に監視役も居ないぐらい信用されてますから」

「そうするか。俺らを見てもだし、町にて悠長に風景を眺める程長く留まるかもな」

と言ってて既に茶を飲む程ヒマとなっている状態だ。あちら側で何かあったらしく、モニカによると会議が長引いているんで城内か城下町にて暇潰しと言われた。蒼太も一緒に居るんで監視も居ないから楽だし、悠長に風景を眺める場所があると言う訳で昼営業してるカフェの二階席で茶を飲む俺と蒼太。

お茶と言っても血液ではなく、吸血鬼でも嗜む程の味が濃い紅茶を飲んでた。吸血鬼は血が濃い程人間と味覚が異なるし、純血種は血以外だと受け入れられないそうだ。紅茶を嗜めるのは人間から転生者達だろうよ。

「一ちゃん情報はホントに役に立つ。今だと織斑一真の方を呼んでるらしいな」

「まあアザゼルさんが一真様を呼ぶ時は変わらないものですよね。一誠様と一真様、一が入ってますから楽ではありますね」

「本名と偽名が一繋がりってのは、偶然なのか?まあいいとして俺らの盟友によって話が進んだのは確かだ」

「別勢力ソレスタルビーイング略してCB側と呼ぶ前は黒神眷属『王』兵藤一誠様、神滅具『赤龍帝の籠手』を持つ見た目人間で中身神様ですから」

一ちゃんについて話題に上がるが、黒鐵改を召喚すると見た目魔神と誤解を生んでしまう。異空間に四つの惑星を創ったが、何時創造神と呼ばれているのは分からん。軍属だと国連軍日本支部第00独立特殊機動部隊ブラック・シャークの長、大佐から少将へ昇格したそうだな。

ま、そう言う事で暇人となっても定時通信が届くんらしいんでね。あちら側に出向として送ったジョーカーと刃狗の二人が、ヴァーリと曹操に瞬殺ショーを受けたと聞いた時はマジ?疑ってしまう程だ。

「ヴァーリは覇龍使う程だったらしいが、今だと禁手化だけでも力が違うらしいな」

「黒神入り前だとそうですが、ヴァーリも曹操も一真様らの扱きを受けた結果ですからね。それとモニカ様から会議内容を聞いた所、ツェペシュ側に動きがあったそうですよ。今の内に対抗策を練っているとか」

「そのお陰で監視者も居ない生活が続いてるけどよ、何時まで俺達を放置プレイと言うのは何となく納得も出来る。まだ停戦やら和平と言うのは、女王と側近しか知らねえからな」

監視役が居ない状況の中で、自由に動き回れるのも一ちゃんを信じてるからかもしれん。会談に関してカード通りに進んだ事や創造神黒鐵が実在した事もな。吸血鬼の高潔と思われるが、一ちゃんのお陰で今に至る訳。

と二人で話しこんでると外から軍人が来たので、アレはこの町に展開している治安維持部隊で国連軍の制服着てるな。人間でなさそうに見えたが、蒼太にとって同期らしいんで敬礼してた。

「お疲れ様です蒼太。そちらが堕天使総督アザゼル様ですよね」

「まあな。アザゼルさんも知ってますが、私は表だと蒼い翼本社代表としてですが裏ではCB側の諜報員でもありますから」

「そこは何となく知ってたが事実とは思わなかったよ。そっちは俺達と同じオーラを感じるが」

「アザゼル総督の言う通り、私達は人間ではなく各勢力のハーフであります。初めまして、織斑少将からの命によりカーミラ側の治安維持部隊を展開させています。私は堕天使と人間のハーフで名はニールと言います。こっちは弟のライル」

「初めまして、それにしても蒼太と出会うとは思わなかった。邪龍と戦ったが、アレはヤバかったぞ」

俺とは敬語混じりで会話するが、蒼太とはタメ口で喋っている。治安維持部隊がこの霧の中を何事もなく動けるのも、神の加護を受けてるからかもしれん。

ニールらが出会った邪龍は、一ちゃんらが出会ったのと同じらしく例え銃火器や撃ち続けても血反吐になっても笑いながら来るらしいな。ドン引き状態でも魔法使い達の方がマシと言ってたのは、俺も思うしニールらが居る者は天使と堕天使のハーフばかりらしい。

「ところでニールらが居るって事は巡回終わり?」

「まあね。エリアによって人数違うけど、ここも巡回エリアとしては変わらんさ。何かあれば戦うし、モニカ様から許可が下りたの最近だからな」

「と言う事はこの町で何かあれば動くと言うのは、まるで軍事警察みたいだな。こちらも定期通信してるが、あちら側は元気にしてるのか」

「はい。お元気ですよ。アザゼル様は知っての通り、邪龍と戦って勝ちそうだったのにこちらに来ましたからね。サマエルの力によってダメージ受けてましたが、身体を新調する事でノーダメージの状態でしたし」

どうやらこちら側に来てドンパチやったのはホントらしく、身体を新調したグレンデルらと戦った治安維持部隊。やはり一番面倒な邪龍はアジ・ダハーカ、千の魔法を操ると言われてる邪龍で一ちゃん達が居なければ全滅してたらしい。

プルートよりも面倒だと聞いてたが、やはり苦戦まではしなかった様子で。異例の力を持つ一ちゃん達側であるし、グレモリーとシトリーだけでは邪龍とまともに戦うのは手厳しい。

「邪龍はホントにヤバかったですが、我らの武装に対邪龍戦用のを支給されただけでもマシです」

「銃火器では敵わないが、対ドラゴン戦による武器を創造してもらったのか。何を支給されたんだ?」

「本来ですと守秘義務が発生しますが、織斑少将より許可もらいましたので喋りますがMSとISに龍殺し属性を持った剣です」

「なるほどな。今までだとビームサーベルとかだが龍殺し属性を持つ実体剣なら効果アリって訳ね」

だからここに居る治安維持部隊にも倒せるような武器を持たせた訳だし、ここに居る者達も強者揃いと聞いている。何せ世界中に活動されていると思われる『禍の団』構成員を捕縛してるようで何かを探っているんだと。コイツらも一ちゃんに言われて来たらしく、曰く俺らが暇してたら話相手をと。

「それよりアザゼル総督に聞きたい事が。邪龍の復活に関してですが、やはり聖杯が原因ですかな?アレは生命を弄る代物、死んだ者の蘇生も可能でしょうか?織斑少将が使う死者蘇生に関して知ってます」

「やっぱそう聞いて来ると思ったが・・・・魂の在り処、魂の行き着く先は各宗教ごとに定義も扱い方も様々ある訳だが、綺麗さっぱり元通りに復活は一ちゃんの死者蘇生の力以外は通常あり得ん現象だな」

「俺も思ってましたし、実際戦ってるニール達の疑問にもなるよな。聖杯が絡んでるのは間違いないし、神滅具の聖杯に関して使用者によって命の(ことわり)を狂わせる。モニカ様が騒いでるのも恐らくそっちだろうよ」

「神殺しの毒を受けた一ちゃんは体が滅んでも神殿のお陰で新調したしな。その前にエリクサーや回復薬を持ってるCB側だ、普通なら魂は一度逝っちまうと簡単に現世へ帰って来れない」

一ちゃんに関する事を話すと蒼太達もあの時は危なかったと呟いてたが、役目と運命を逐げて肉体から魂が離れるってのはそれだけ尊い事。魂をどうにか出来る程の術とキャパシティ、存在感があるのなら話は別だが。悪魔、天使の転生システムとかで復活もあり得る事だ。どっちも死にたてホヤホヤじゃないと出来ない事だが、一ちゃんは瀕死状態でもドリンク一つで治っちまうことだしな。

「邪龍は別、ですか」

「例えばヴリトラだな。あれは肉体と魂を切り刻まれたのが神器を寄せ集めただけで復活を遂げた。そこから推測して『聖書の神シャルロット』が残した盛大なバグとも言われる神滅具があれば・・・・まあ実際シャルロットは生きてるが。それと神器で亜種の禁手化もあるのなら次元も変わるらしい」

「そうなりますと、聖杯を持つ吸血鬼の一派は『禍の団』と繋がってるという事ですかね?」

「だろうな。モニカ側がツェペシュ側の事情知っていても可笑しくないだろうが、恐らく一ちゃん側も知ってるな。だからニール達を派遣したらしいし、小型偵察機を飛ばしてるらしいと言ってたな」

小型偵察機や情報収集が得意な者が居るし、聖杯を持つヴァレリー・ツェペシュを止めるのに交流のあったギャスパーが最適なのだろう。ギャスパーなら隙を見せるかもしれんが、逆に言うとヴァレリーの方が厄介な存在だろうよ。

交流断絶してた俺達も交渉開始となり、吸血鬼だけではヴァレリーと繋がる『禍の団』に対応不可。予定外だと一ちゃんの存在であり、居なければ交渉は休戦のまま。

「いくら誇り故の上から目線しようが、一ちゃんの存在はそれよりも上だから今回の会談はスムーズに進んだ訳だ」

「それはそうでしょ。いくら吸血鬼の純血であろうと全てを創造されたと言われた創造神黒鐵様が居るだけで話は進みます」

「リアス達が心配になるが、やはり一ちゃん達の力が必要だよな」

「そうですね。それよりお前らの仕事は終わったのか?」

蒼太がニール達に問うと既に終わらせたし、このエリアでの巡回ついでに何かあれば対応予定とされてるそうだ。一応今持ってる武装は銃火器と短刀だが、よく見るとタダの短刀ではなさそうだな。

「それは聖剣のようだが、タダの聖剣では無さそうだな」

「はい。我らブラック・シャークの者だけに支給された代物で、余り大きい声では言えませんが聖剣エクスカリバーに擬態化してます」

「やはりか。本来なら黒神眷属しか持ってないようだが、ブラック・シャークもCB側らしいからか。量産型なのか威力は一ちゃんより落ちるが、総司令官の元で働いてるなら持っていても可笑しくなさそうだな」

「そのお陰で世界各国で動いてる『禍の団』構成員を倒すのは、我々以外の部隊は待機らしいですよ。あちらは普通の銃火器では効果ありませんから」

一ちゃんの部隊は知らない者が居ない程に有名で、人間界と冥界にも名が知れてるらしい。するとニールとライルの二人は荷物から取り出したが、それはカップ麺でポットを用意しながら蒼太と俺にも告げる。

「丁度我らは食事なのですが、アザゼル総督は何にしますか?赤いコレか緑のコレ、あとラーメンや焼きそばもありますが」

「随分とカップ麺を取り揃えてるが、もしかして今女性隊員は居ないのか?しかも全部日本製なのは流石と言いたい」

「俺は緑で頼むよ。蒼太の言う通りだが、あちらこちらで動いてるブラック・シャークなのに食事がカップ麺とは」

「蒼太の言う通りでさ。今女性隊員達は出払ってるんだ、モニカ様の傍に居て女子会のように話し込んでるらしいぞ」

小腹が空いてきたので俺と蒼太も頼むが、俺を呼び捨てしないのは怒られるからだそうで。そういや蒼太も呼び捨てじゃなくラフな方で呼んでるし。誰か料理作らないのか?と思ったけど、現在女性隊員達は出払ってる様子だな。

元々日本に居てインスタント生活が長かったのか、料理好きな者は男性より女性が多いんだと。IS部隊を率いてる女性隊員が持つ兵器は、通常兵器より強いし神器とISがぶつかればどちらが勝つのか気になる。

「それにしても今回の赤と白は面白い。恐らく今回で宿命とやらは終わりだろう」

「アザゼルさんもそう思いますよね。赤龍帝は織斑様であり創造神黒鐵様でもあるけど、次元パトロール隊のリーダーでもあります。我らもリンクしてますし外史と外史を行き来します。だから本来起こる事だと総督を辞めてますから」

「軽く聞いただけでも興味を持つが、もうそろそろ俺でも行ける駒が完成しそうだと定期通信で聞いている。仮に行けたとして俺らは戦力になるのかね?」

「次元の駒と書いてディメンション・ピース。別外史へ行ける権利を持つ駒であり、体内へ入れると月中基地本部に登録されるらしいです」

コイツらもそうだがCB側の人間は、別外史に意識共有をしているから例え別外史へ行っても記憶共有者と言うらしい。外史に行っても記憶共有されていて、あらゆる並行世界・あらゆる時間に存在する『織斑一真に関係する人物』と感覚と思考の一部を共有する『意識共有』による。存在範囲は全ての時間と外史での出来事を知る事が出来るらしい。

「それに我々の記憶も他の世界でもリンクしているので、もし他の世界に行ったら名前は違くても記憶は共有されてますから」

「だからなのですよ。織斑総司令官が別外史へ行ってもすぐに国連軍少将になっているのです」

「まあ最初聞いた時は驚き半分だったが、どうやら本当のようだな」

ヴァーリも戦闘狂だったが、一ちゃんの眷属入りになってから少々丸くなったと思いたい。強者はCB側に居るし龍神二匹と前四大魔王と元神がいるが、今では鍛錬相手から監視側をしてるらしく主にグレモリーとシトリーらしい。

たまになる赤白龍神皇帝となればあのアグニでさえ瞬殺ショーへとなってしまうとか。今度ウチの研究所にて戦闘力を測りたいがきっと拒否するだろ。

「そう言えば以前一ちゃん達にカウンセラー関連の話は聞いたか?」

「いえ聞いてませんね。出来ればで良いので話してもいいですよ」

と言う事で話すが、初代孫悟空に紹介として二天龍のカウンセラーを選んだ。そん時に居たフェンリル達も楽しそうだったらしいが、そこからは俺視点からフェンリル視点だな。

私は神をも喰らう狼で名はフェンリルだが、スコルとハティも一緒となって旅をするのは実に久しぶりな事だ。今現在私達は少々厄介事な状況になろうとも我らの主は、襲来してきた敵に仲間二人が封じられてしまう所であった。

「カカカ!情けない孫悟空かと思えば、まさか忍術を使うとは面白いな、兄弟?」

「シシシ!そうだなそうだな!ソイツが居なければ釣れたはずだが、この戦は楽しめそうだな」

古代中国の武将が身に着けてる甲冑を着た二体のヒト型妖怪、不愉快な笑いを上げてたがコイツらの襲撃を受けて猫又姉妹と猿が捕えそうになりかけた。それを代わり身の術を使って助け出す我が主。

「全く隙があるから捕まる所だったんだよ、黒歌に美猴」

「ごめんにゃ一誠」

「悪い悪い。ちょっと調子に乗り過ぎた」

何故このようになったのには理由があり、バアル&グレモリーとの対戦後に我らは人里遠く離れた中国の山中に足を踏み入れていた。霧が掛かる石柱ばかりの渓谷の風景には、仙人が住んでても可笑しくない独特な雰囲気を醸し出している。絶景もこの国ならではのだろうが、景色よりも今回我らが望む代物としか聞いていない。

「うーん。どうやら迷ってしまったな、俺が力出せれば良いのだが」

「山ばかりで霧も濃いですが、黒歌姉様との遠出は実に久しぶりだと思います」

「やっぱ連れてきて正解だったにゃ。それよりゲートや転移魔法陣で飛ぶ方が楽なのでは?」

「そうはいかないよ黒歌。俺の力を封印処置したからには、現地に着くまで徒歩だと言ったのはヴァーリだ。俺に気を遣わせて悪いと思ってるがな」

猫又姉妹の黒歌と白音、黒い髪に黒い着物と白い髪に白い服装をした出で立ち。魔力・仙術・妖術などの術に関して元々秀でていたが、我が主の駒によりステータスの底上げによりキャパシティに限度を感じない程に。

本来の私なら猫又の評価は微妙であり、段階的組織構造(ヒエラルキー)は私の強い本能により決められている。が、我が主によって仲間となった事により段階的組織構造(ヒエラルキー)を無視する感じ。

「まあそうよね。この霧は仙人が張っている代物だし、余計な術をするとソッコーでどこかの仙人が来そうだにゃ」

「全部言われたが今は一誠の言う通りにしとけって。護衛としてフェンリル親子連れて来たのだからな」

「俺としては今回極秘で来たようなもんだし、一々仙人に知られたくない事情だ。美猴もだがフェンリル達には同意する」

古代中国の鎧を見に着けた孫悟空の血を受け継ぐ妖怪、一見人間にしか見えないが俗世の文化に感化されている美猴。猫又と同様に下の下となるが、主同様に仲間意識が高くなってるから何も問題なく生活している。触れられても嫌悪を抱く事もないし、スコルとハティも主の周辺にいるからか何時もよりテンション高い。

「この風景を見ながらの散歩もいいのではないですかね」

「そうだな。だが山奥にスーツ姿のお前を見ると場違いにも程があるぞ」

「ですが我が主もとてもラフな格好をしてますよね」

「中国の山奥と聞いたが、まさかこんなに濃霧と山中だとは思わなかっただけだ」

紳士的な格好をしているのはアーサー・ペンドラゴン。英雄アーサー王の子孫であり、聖王剣コールブランドの持ち主だが今では量産型聖剣エクスカリバーも持つ二刀流使いとされてる。隙も一切感じないが、この男が興味を抱く事は我が主と仲間になってから色々と興味を持ち始めたと聞いた。冷静に対処する主と同じタイプだが、残念な事に我が主もちょっとした戦闘狂になってしまった。

「流石の濃霧だと電波は圏外ですね」

「余り端末を使わないで己の勘を使って進むのも悪くない。が、迷って遭難とかしたらシャレにならんな」

「一応衛星からの情報を辿っていたのですが、流石に遭難はしないかと思います」

そして主と次に私達と護衛する事が多いルフェイ、主に魔術を使う所謂魔法使いと分類される。とんがり帽子にマントと言う格好のはずが、主同様ラフな格好で端末を見ていた。アーサーの妹であり、どちらも面影あるがやはり兄妹だからだろう。神に仕える魔法使いなのか、私も神に仕える番犬と二つ名が付いた事も。ルフェイ同様に料理好きなので、私達用の料理をしてくれる有難い存在。

『母様、何か考え事ですか?』

『何、久々に我が主達を考えていた。段階的組織構造(ヒエラルキー)を本能に持つはずが、我らは黒神眷属全員を盟友と位置付けしている』

『確かにそうだね。僕も思うし主やルフェイの守護を命じられてるけど、猿と猫も本来だと下の下だもん』

『だがこの渓谷の空気は不穏であり、我らもそうだが主達も感覚を鈍らせている』

我らフェンリル親子と称されてるので、フェンリル同士の会話も主には聞こえているようだ。この空気に関する事もだが、不安にならないよう頭を撫でてくれたりするし生温い感触が付き纏っているのは周辺一帯が何者かの縄張りなのだろう。

匂いは感じ取れないが視線と言う訳ではない、何者かに索敵されてる感じだが気配察知を鈍化させられてる。主達全員が認識しての集団行動は、実に良いチームプレイとも思う。

「何時もなら何者かに捕捉されても気付くはずだが、力の封印によって隠す術を持ち合わせてない俺にあるな」

「しょうがないさ。一誠は今まで人間界で暮らしていた人間だし、俺らのような隠す術を持ち合わせて渓谷に入るよりマシだよ」

「俺っちらも一緒だし、何かあればヴァーリチームに任せればいいって事よ。渓谷の肌触り、ヴァーリと一誠にとって襲来されても可笑しくない状況でも冷静だからな」

「霧に独特の湿り気があると言う事は、既に誰かのテリトリーに入った事ぐらいか。山と霧の雰囲気だけで静かに楽しませるのはここら一帯である国の秘境も捨てがたい」

そして我が主と同じ二天龍の片割れを持つヴァーリ・ルシファー。前魔王ルシファーの子孫であり、白龍皇の力を有するこのチームでのリーダー的な存在。戦いを追い求めてたが、主と共に生活する内に興味が戦い以外を持つ事が出来たそうだ。元父と呼ばれた北欧の悪神ロキ、ミドガルズオルムと情報提供ではバカと駄犬だそうで。我ら達の意識を解き放ったのはボール内へ捕獲時に解放。

『俺らはバカの牙であり爪であって、神に深手を与える禁断の術とされていた』

『私達はバカと称された従順な僕と化して、ただバカの命令を聞いて相手を切り裂き噛み砕く。それが存在理由だと信じていなかったが』

『ま、過去は過去だよ母様。今の僕達は魔の鎖グレイプニルでも支配の聖剣でも覇龍でもない。塗り替えたと言うより真の主に出会ったのが正解かもよ』

『確かにそうだな。我が主が私達に求めたのは、共に行動と言うより一緒にいるだけで有難いと我が主は言ってた気がする』

我が主は創造神黒鐵であり、敵が例え神仏だとしても鉄槌を下す事になる。私達は自由があるから黒神眷属に居るだけではなく、我が主達と一緒に暮らして楽しいと思ったのは恐らく初だろう。

主のプランによれば大きな体にもなれるし、力も以前とは比べ物にならないぐらいとなった。私達親子の頭を撫でてくれる主とルフェイ嬢、それとゴグマゴクと言う古代兵器。巨大なゴーレムであり、同じく我が主によって回収と改造をしたとか。

「濃霧だと流石にゴッ君は呼べねえか」

「そうですね。以前だと巨体故に出現場所は限られましたが、今だと小型から大型へと変化可能になりました。イアンさんによるとバージョンアップしたそうです」

「しかしこんなとこに居るのか?今回の相手は」

「何言ってるんだか。美猴の故国であり、アザゼル経由で知った人物は渓谷に身を置いてるんだからな」

「だが美猴でさえ会った事ないのだろ?初代に話を聞いたぐらいだと言ってたし、実際会った事も見た事もない人物だからな」

主やヴァーリの言う通り、私達は対バアル&グレモリー戦のゲーム前に端末へ送られた情報を元に初代孫悟空と連絡を取った。問答をし合って今回紹介を受けたが、今回創造神黒鐵が付近に居ると悟られたくないので力を封印した我が主。一々平伏されては面倒らしいが、ゲーム前にゼウスとポセイドンと会った時には神格剥奪されそうな勢いだったらしい。

「もうすぐ着くが気分はどうだ?ドライグにアルビオン」

『この霧から感じ取れる気の流れが不快だが、気分的には問題無いぜ相棒』

『私もだが無意識に出ている心労を今回取るのが目的だと聞いたが』

「例え一誠がカウンセラーの資格を持ってたとしても、それは人間限定とされてしまうから来てるんだ。ドラゴン専門とは言わんが、それに近いカウンセラーから学ぶのが今回の任務さ」

声の主は一誠とヴァーリに宿る天龍、赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンで独り言のように話してる事が多い。たまに私達にも聞こえるようにしてるが、ここで我が主が見えぬ濃霧の先に視線を送る。

カウンセラーとして様々な事をしてきたが、一度ドライグとアルビオンのカウンセリングを受けた方が良いとの考えだ。二天龍が現役だった頃、この世界に存在する天界と冥界に多大な恨みを買った。

大暴れを許されたのは唯一ドラゴンの中でも屈指の実力を持ち、他の超常なる存在を寄せ付けなかった。

「そういや三大勢力戦争前に一度会ってたのにゃ?」

「まあな。確かコイツらが現役で三大勢力に滅ぼされて神器に魂を封印前に」

「伝説として語られてるのが二天龍の恥、内容に関しては知ってるが俺っちらが知った時は爆笑したよな」

「まさかアレが原因で自然と心労が出てるのは気付かなかった。ま、アザゼル経由で初代から紹介を受けたカウンセラーはこの霧の先に居る事は確かだ」

本来だと現所有者である赤龍帝が原因でドラゴンの失語症となり、天龍の心は均衡を失ってたと聞かされたが我が主とヴァーリにはそんな事はない。美猴の仙術や黒歌による道標を濃霧に放っても照らせない事に変わりない。現にドライグとアルビオンの症状は、無意識に出てる心労を取り除く事。早く診てもらった方が良いと思ったら、前方から何者かの気配を感じ取れた。

「ヴァーリチーム、感じたか?」

「感じた。何者かの気配を・・・・仙人か」

「・・・・視線を一点に集中させると分かります」

「白音の言う通りにゃ。濃霧を払いながらこっちに来る者を」

猫又姉妹の言う通り、徐々に人影が現れて姿を見せたのは道士服に身を包んだ初老の男性。柔和な表情で私達に問い掛けてきた。

「貴方達ですね?お話は闘戦勝仏・・・・孫悟空から聞いております」

「お、やっと会えて光栄だ。案内を頼む」

「力を感じないと思えば納得しましたが、詳細は後程聞きますのでこちらへ」

我が主に対して驚きもしたが、今はこの男性に付いて行くしかない。案内で辿り着いたのは、石造りの質素な小屋であり、通された室内も簡素な物で必要最低限の生活用具しか置いてない。その生活用具も我が主達のような代物ではなく、どれも見た事がない古い代物で中には木や竹で編まれた物ばかり。鉄製品はハサミや茶釜ぐらい。

「どうぞこちらへ、一緒に来た方はそちらの椅子に座って下さい」

「これはこれで学び甲斐がある。やはり来た意味はあった」

「ドライグらを呼んだ方がいいですよ。一誠先輩」

「忘れてたぜ。ヴァーリ」

我が主とヴァーリの掛け声で呼んだ小型ドラゴンと化したドライグとアルビオン。私達親子はルフェイ嬢付近に居るが、初老の男性はドライグとアルビオンが現世に召喚されても驚く様子はなかった。恐らく事前に知らされてたのだろうが、物静かで立ち振る舞いも落ち着いている。

「お話通りで現世に召喚した方が早かったですが、改めて初めまして。創造神黒鐵様」

「今は兵藤一誠としてだからな。そっちも旃檀功徳仏(せんだんくどくぶつ)殿と呼ばれたくないだろ?」

「これは失礼しました、確かに私は旃檀功徳仏ですが玄奘三蔵で過ごしてます。お互い改まった名で呼ぶ事はないですね、私は一誠さんと呼ばせてもらいます」

「俺も三蔵と呼ばせてもらうよ。話はアイツから聞いてるだろうが、今回はコイツらのカウンセリングと今後の知識に必要なのでな」

我が主と話してる相手は『西遊記』に記された高名な法師で、経典を求めて初代孫悟空と玉龍と弟子達率いて天竺に至った高僧。経典を持ち帰り様々な功績を成して仏となった伝説の存在なのだが、このような異様な濃霧が漂う山奥の秘境で一人ひっそりと住んでるらしい。この仏が二天龍のカウンセラーとして初代孫悟空に紹介された。話だけは通してもらい、こちらは途中まで空間切断で来たから徒歩だ。

「それではいくつかお話をしましょうか、ドライグ殿にアルビオン殿」

「よろしく頼む、それと俺らを呼び捨てにして構わん。相棒らも同じ事を言うはずだ」

「ではそうさせてもらいますが、宿主である一誠さんとヴァーリさんにも二天龍の様子を伺います」

「頼む。コイツらの心労については俺も頭を抱えてたからな」

と言う感じで玄奘三蔵法師と二天龍と言う妙な組み合わせのカウンセリングが始まる。まず二天龍側からで最近どうして調子が悪いのかだったが、これについての原因は我が主から淡々と語る。

現所有者になってから色々試した事も加えて、誇り高き二天龍がアレに触れると心の不調を他者に説明している。力とプライドの塊と称される地上最強のドラゴンが、ゲーム前に不調となった事に関する話を聞いて頷く。

「なるほど。では心労の原因は分かりましたが、わざわざここを訊ねてくる程ではないように見えますが」

「俺がカウンセラーの資格を持ってたとしてもそれは人間限定とされてきた。色々と試したが、一番の効果は現世に出て鍛錬する事なのだと思っていたが」

「精神疲労は人間と同じではないと感じた一誠さんと言う事ですか。大体の事情は分かりましたが、いくつかの対処法をすれば精神疲労は無くなると思いますよ」

「永久と言われる時間の中で、話し掛けたのは俺と一誠のみ。歴代所有者はアルビオンらの声を無視していたが、やはりここに来てよかった」

玄奘三蔵との会話は私達でも癒しと感じるような効果だが、ドラゴンの精神構造はこんなにも繊細なのだと気付いた。我が兄弟と言えるミドガルズオルムも深海の中で眠り続けてるが、一度終末を待たないで起こされたと主から聞いた事がある。まだ仲間になる前だが、そもそも我ら達の情報を聞く為に起こしたのだと。

「三蔵よ。ついでに聞いておくが、神器の深奥に存在する歴代残留思念達。その一部らがいつまで経っても奥から出てこないのだが、これに関して俺らはどうすれば良いのか」

「いくら創造神様であっても人間社会に住み続けた貴方でもお悩みがあるのですね」

「そりゃ一誠にしか分からん事だな。俺っちらには」

「そうね。いくら仲間でも神器の奥に居る者までは私達じゃ解決しないにゃ」

黒歌と美猴の言う通り、何千何億生きてきたと言われてる創造神黒鐵である我が主にも悩みは存在する。それを解決するのは何も部下からではなく、我らが近くに居れば自然と解決へと進む。悩みを聞いてカウンセリングは二時間程続くが、相談も終わり棚から薬品の入った瓶や干された薬草などを取り出して薬を調合する気のようだ。

「それではお薬を調合しますが、一誠さんはこちらで見学していて下さい。私から教わる知識も必要だと仰ってましたし」

「ああ。俺らは端末でメモを取るよ、ルフェイも端末を起動させて動画として記録を頼む」

「分かりました」

「やっぱここに来て正解だったわね」

話術も見事であり、ドラゴンの性質を考慮して朗らかに相談を熟していた。ドライグとアルビオンも会話を途切れさせる事もなく、カウンセラーとして玄奘三蔵に悩みを打ち明けたのか。我が主とヴァーリも安心して見守ってたが、いくつかの質問に関して答えていた。薬を調合し始めて三十分程で完成し、薬の入った品物を主とヴァーリに渡す。

「茶色の粉末は水に溶かしてから神器の発生部位、つまり手甲と背中に塗って下さい。一誠さんは直接神器に流し込むタイプとヴァーリさんには塗るタイプと分けときました。今後ここに来ても構いませんが、一誠さんが改良したと言う薬品を使っても構いません」

「液体タイプと塗り薬タイプに分けたのも良い知識だが、焦げ茶色の葉は煎じて飲めばいいのか?」

「はい。それで心労や精神疲労を回復する効果を持ちます。煎じて飲むタイプは、一誠さんとヴァーリさんが直接飲む事ですが現世に召喚された天龍が飲む事も同じ効果が出ますよ」

「今回はとても有意義な時間だったが、今度また来る時に毎度この濃霧では決まった時間に来られるか分からんぞ」

「ここは通常空間と妖怪仙人が住む隠れ里の狭間なので、ここら一帯に漂う霧は未成熟で邪な心を持つ妖怪仙人が人間世界に悪さをしに行かないように特殊な術法で発生させてます。力の弱い者らが霧に触れるだけで心身に影響を与えますが、一誠さん達が濃霧の中で活動出来たと言う事は相当な実力者と言う証拠になります。あとで他の仙人に感知されない道を教えます」

玄奘三蔵から言われた通り、ここは力の弱い妖怪や術者が霧に触れればどうなるか分かっていた事。ここへ一瞬にて来れるように、座標固定させる機器を使って今後は行きやすくした我が主。

力も上手く働かないのも納得したが、濃霧の向こうに妖怪仙人の世界があるとは・・・・山奥にそのような世界があると聞かされてたが事実とは。良い情報を聞いた事によって、今後ここに来るには力を封印して来る手筈も必要なさそうだ。

「美猴、ここは故国なのだから訳有情報を知っとく義務があるのではないのか?」

「妖怪仙人の隠れ家ってのは、この国にはいくつもあると聞いているしー。それに俺っちらの故郷はこんなに霧など無い、ウチの里にいる奴ら全員平和ボケしてる程だ。目立つ奴は俺っちしか居なかった訳だから、この辺りに居る妖怪仙人は凶暴なのだろうよ」

「貴方は初代にそっくりですね。先程からずっとそう思ってましたが、特に笑った時の顔がそっくりですよ」

「マジか法師様!でもま、そっくりと言われる程だが、強さ的には今の俺っちらの方が強いに決まっている」

誉れだと思う話に素直になってたが、強さだと初代と美猴を比べてもどうなのだろう。有難く感動してたが、猫又姉妹の耳が鋭く立つ。私達も視線を入り口方向へ向けた事により、我が主達も気配を感じた事で徐々に近付いて来る。何者かは分からんが怪しい気配二つ、コンディションイエローとなり警戒態勢を敷いた。扉前に立つ二つの気配は大声で静寂を打ち破る。

「「たのもーっ!」」

「気配的に二人だが、道場破りにでも来たのか?」

「さて。それはどうでしょうか・・・・とりあえず外に出てみましょう」

男の声が二名同時に聞こえた事により、小屋の主を呼び出したが玄奘三蔵は声と気配だけで覚えがあるように思えた。苦笑いしてたが、扉を開けて外に出る法師を追うように我らも小屋を出た。小屋外で待っていたのは、古代中国武将のような甲冑を着た二体のヒト型妖怪。

どちらも同じ顔と姿だが、我が主には波導を感じて二人それぞれを識別してる。片方の鎧に金と言う文字が彫り込まれ、もう片方に銀と言う文字が彫り込まれていた。

「我こそは金角大王!」

「我こそは銀角大王!」

二体はポーズを取りながら我らに叫び決まった、と二体は勝ち誇った表情をしていた。ソイツらを確認後、我が主達は笑みを浮かべながら驚いてたのは美猴のみ。

「・・・・マジか。こんなとこで会う何て思わなかった。金角銀角じゃねえか」

「美猴よ。コイツらは『西遊記』に出てくる兄妹妖怪、金角大王と銀角大王だよな?偽物じゃなく本物」

「ああモノホンよ。それに証拠として身に纏ってる妖気は強いが、あのような格好していて隙を見つけてるんだろ?一誠」

主は余裕振りを見せてたし、玄奘三蔵が微笑みながら悪戯小僧の訪問に対応するかの如く。様子から見て二体の訪問は初ではなさそうだから苦笑してたのだろう。

「おやおや、金角大王と銀角大王ではありませんか。今日も暇潰しに?」

「カカカ、そのような物言いをするのも今日までだ、玄奘!」

「シシシ、そのような余裕も今日で終わりだ、玄奘!」

「と言うか俺達を無視するとはな、しばらく静観するつもりだったが」

玄奘三蔵と戦う態勢をしていたが、我が主が玄奘三蔵の前に立ち代わりに対峙する。主は武器を持たずにいるが他の者は戦闘態勢に入るし、私達もルフェイ嬢を守護する為に威嚇する。金角銀角は美猴が居た事により、何とも微妙な表情をしていた。

「貴様、斉天大聖の間者か?」

「否、兄弟。この者、斉天大聖と同じ気を発しておる!」

「別に隠す気はなかったが、一応俺っちは孫悟空の子孫だぜ」

「俺を無視するとは良い度胸だな、コイツらは。力の封印処置さえしなければコイツらなど平伏させる気満々だったが」

我が主は今人間として居るだけの存在なのか、二体の妖怪は主を無視し美猴の正体をバラした。ヴァーリは無視された主を下がらせて、黒歌と白音に慰めておくよう指示を飛ばす。

「全く一誠を無視するとは度胸がある、だが丁度良いので貴様らに聞きたい事がある」

「むっ、兄弟。この龍、ただならぬ気を持っているぞ!」

「うむ、兄弟。この龍、尋常ならざる気を発している!」

白龍皇の気を探ったらしいが、後ろに居る我が主にも赤龍帝が宿ってる為か。あちら側は警戒しながら厳しい顔付きをする金角と銀角。主とヴァーリの力を戦わずにある程度認知したように見える。流石は伝説に記されただけの妖怪である。

「哪吒太子の現れると言う山を探してるが、知ってるのなら教えてもらいたい」

「本当に居るか分からない奴だが、一度は会ってみたいもんだ」

哪吒太子、黒神眷属で本当に居る存在なのか調査する為に派遣されたのがヴァーリチーム。強者の一角とされていて、中国の四大怪奇小説である『西遊記』と『封神演義』に記された神仏。神の武具を多く身に着けて、あらゆる闘争を制していく戦闘の雄。単純な戦闘力では初代孫悟空と同格、それ以上と称される猛者だが今居る国の何処かの山奥に須弥山から降りて来てると。

「カカカ」

「シシシ」

「不気味な笑いであるが、その様子だと知ってる口のようだ。コイツらと一戦しても良いか?三蔵」

「ええ構いませんよ。孫悟空の力を久し振りに見学できるのなら、まあ出来たらの話ですが」

二体の妖怪は顔を見合わせて不敵に笑うだけで、知ってる口だと理解した我が主。そして一応確認を取ると許可が出たので、手始めに美猴と黒歌が前に出るようだ。確か初代孫悟空が悪さする度に頭を緊箍児(きんこじ)で締め上げていた高僧と思えない程に見えた。仏となった事で僧侶時代よりも柔軟な性質になったのか?

「美猴に黒歌、三蔵もこう言ってるし力を見せつける時かもな」

「だがこの霧の中じゃ、仙術や妖術に技も練れないはず」

「こう言う時の為を思って肉弾戦を主に鍛錬メニューに加えたから大丈夫にゃ。猫パンチしちゃうから」

「黒歌姉様、ご武運を」

と妹の方は心配してないで、この戦いがどうなるか見ていた。四大怪奇小説にも記された妖怪相手としても美猴と黒歌は戦闘を楽しみにしてる様子であり、金角銀角を見るが嫌らしい笑みを浮かべている。二体の妖怪が美猴と黒歌に指を差す。すると名を確認するかのようにし、無警戒となってしまい銀角が腰に携えていた瓢箪(ひょうたん)を取り出した。

「あ、こりゃマズイ事となった!」

「うにゃーん!もしかして噂の瓢箪!?」

瓢箪の飲み口から異様な渦が巻き起こり、二人を勢いよく吸い込みだす。隙を見せていたのか、為す術もなく瓢箪の中に吸い込まれていくと思ったら一瞬にして我が主に助けられた二人。金角大王銀角大王は伝記通りならば、太上老君より五つの宝具を持ち出して扱う妖怪。

琥珀浄瓶(こはくじょうびょう)七星剣(しちせいけん)芭蕉扇(ばしょうせん)幌金縄(こうきんじょう)と呼びかけた相手が返事すると中に吸い込んで溶かしてしまう瓢箪の紅葫蘆(べにひさご)だったか。

「アレが有名な瓢箪の紅葫蘆(べにひさご)か。やはり持っていたようだが、二人共隙有り過ぎ。瓢箪に吸い込まれたのは代わり身の術によってダミーを吸い込まれた」

「ごめんにゃ一誠」

「悪い悪い。ちょっと調子に乗り過ぎた」

「だがこれでハッキリとした。アイツらの力が本物だが、俺とヴァーリで倒すとしようか」

そして物語の冒頭へ戻り、二人を救助後に軽く説教をした我が主。アーサーはエクスカリバーを抜くが、主によって待機任務となるしルフェイ嬢も同じ事。この濃霧でも使える聖剣だが、アーサーの興味はアイツらが持つ物にな。

「俺としては奴らが持つ宝具が気になる。七星剣もな」

「だろうな。瓢箪もだがアイツらが持つより俺達が持った方が利用価値はありそうだな」

我が主の視線には金角が腰に携えし一本の宝剣、破邪の力と妖怪の力を従わせる力の両方を持つと聞く。我が主は軽く魔力を使い、最強の座へ座る我が主が撃つ攻撃に対して力の無い者が受ければ呆気なく消滅してしまう。金角は背中より葉の形をした大きい扇を取り出して一気に扇ぐ。

芭蕉扇(ばしょうせん)!」

「ほう、あの大きな扇はここら一帯を霧散させる程の強風を生み出して俺が放つ一撃を吹き飛ばすとは」

「何者をも吹き飛ばすと言う魔性の扇だが、やはり加減調整をしている一誠の攻撃をも吹き飛ばす。流石は伝記に記されし妖怪、あの初代孫悟空とやり合っただけはある」

「うむ、この龍達は先程の猫と孫悟空の縁者よりも我らを分かっているようだぞ、兄弟」

「うむ、この龍達は先程の猫と孫悟空の縁者よりも出来るようだな、兄弟。だがしかし!」

「「我ら兄弟大王にしてみれば貴様達など物の数では無いわっ!」」

二体は再びポーズを取るが、何とも気持ちがいいぐらいに言い放つけど喧嘩相手を勘違いのまま終わらせるようだ。相手がタダのドラゴンではなく、二天龍の片割れとも言うが片方は神で片方は半神半魔だ。にしても微笑ましく見守って見てる玄奘三蔵は、どう言う気持ちで見ているのやら。

「さて、どうしますか?彼らの弱点を教えましょうか?」

「いやいい。ここまでナメられた相手をするのならば、俺達流に戦わせてもらうよ」

「そうだな。戦う相手を間違えたままではと言いたいが、喧嘩するなら敗北後に伝えるとしよう。貴方には迷惑しないよう戦うと」

「と言う訳で俺とヴァーリだけでやらせてくれ。フェンリル親子もだが、お前達はもしアイツらが逃げようとするなら追い掛けて追撃準備でもしとけよ」

畏まりました我が主、禁手化をして追撃するならと何時でも飛び出せるよう準備だけはしておいた。まあ勝つのは決まってるが、前方に飛び出して金角大王と銀角大王を相手に戦い始めた。アーサーとルフェイも見守りつつ、美猴と黒歌には反省文を書かせていた。白音は主達の戦いを見守るが、戦闘後の回復をする為でもある。

「で?太子はどこの山に降りるんだ?」

「先に言っとくが一誠は全てを創ったとされる創造神黒鐵だ。嘘偽りなく答えるんだな」

少し経過して金角大王と銀角大王を倒した主とヴァーリは禁手化を解いて、再度先程の質問を兄弟妖怪にしてるが明らかにちょっと脅迫が混じってる。何せ我が主の眼だけが創造神オーラとして出している。

兄弟妖怪は我が主が草タイプ技を放った事により、二人が持つ強固な縄よりも強固となって全身縛られてる状態。我が主が別格オーラを出した事で、宝具の縄で捕えようとしても無効化により一時的にただの縄となった。そして回収した我が主。

「・・・・太子ならば、三つ先の渓谷にある蓮の群生地にいるぞ」

「・・・・うむ、太子と言えば蓮だ」

「本当か?もしも事実でないのなら」

「須弥山にいらっしゃる四天王からの情報だと当たりだそうですよ、一誠さん」

金角と銀角がそう答えるが、本当なのか再三確認を取っている間にルフェイ嬢は須弥山に居る四天王へ確認を取ってた。兄弟妖怪の表情は不満であるが、戦闘結果に呆気なくやられた事もな。

「もしや、お前達も太子と同じように牛魔王の復活を信じているのか?」

「もしや、お前達も太子と同じように復活した牛魔王を退治するつもりなのか?」

牛魔王と言うのは、かつて三蔵法師一行と死闘を演じたとされる中国妖怪の王。私達の知識だと既に滅んだとされているが、我が主達は新たな情報を聞いた事により調査対象を増やした。

「ほう。太子探索もそうだが、そっちも調査してみるか。クロウ・クルワッハの捜索は無駄に終わったが、本当に居るのなら鍛錬相手として滅ぼすか」

「本当に居るか分からんがそっちも面白そうだが、そろそろ英雄チームと合流しなければ。あちらもあちらで何か掴んでるかもしれない」

英雄チームと別行動を取っていたが、そろそろ合流時間が近付いてたのか。強者情報を得た事で他にも知ってる情報あるか脅迫紛いにするが、これ以上やっても無さそうなのでそろそろここを離れようとしてた。

「と言う事で三蔵よ。今回は世話になったし、今後また何かあればここに来させてもらおう」

「また来てくれると幸いです。今日はなかなか面白い物を見られましたし、創造神の力を見せてくれただけでも充分ですよ。この二人に関しては私に一任させて下さい。金角に銀角、今日は夕餉の準備でも手伝ってもらいましょうか?」

玄奘三蔵は微笑んで頷く。そして我ら達が離れようとする時、二体の妖怪は口を尖らせて面白くなさそうな感じ。コイツらが持っていた宝具を持って創造の力により本物と同じくらいな代物。特に赤い瓢箪は反省房として機能しそうなのか、今後使うかもしれないと空間へ入れた我が主。父ロキの元へ居た頃よりも面白いと思うし、これからも創造神の番犬として居る事になる。

「ある意味でよかったかもしれん。琥珀浄瓶(こはくじょうびょう)七星剣(しちせいけん)芭蕉扇(ばしょうせん)幌金縄(こうきんじょう)・瓢箪の紅葫蘆(べにひさご)をゲット出来たのは」

「本物は兄弟妖怪の元にあるが、こちらにあるのは創造神の力により創られたアイテムだ。使うか分からんが持ってたら使う場面が来るかもな」

「英雄チームの土産になりそうだし、あちら側も何らかの土産話があるかもな。そろそろ行くぞ」

そう言って空間切断により合流したが、あちらもかなり面白そうな土産話があったそう。常々俺ことアザゼルは思うのだが、今代の二天龍で宿命対決は終了となってからどうなるかまでは知らん。

「前代までは覇龍使っていたが、今代はお互いの力を使っている。もう勝敗を決する事はないだろう」

「ええ。ドライグもアルビオンもあちら側での生活に楽しんでますし、頂上決戦しなくとも『黒衣の神皇帝』にて共闘してますからな」

邪龍相手でも楽しみながら戦うコイツらもバトルマニアなのでは?と思ってしまう程。邪龍筆頭格であるクロウ・クルワッハを捜索中に中国の山奥でも一悶着あったし、証拠として宝具をいくつか持ってた気がする。するとニール達の表情が渋ってた気がした。

「そういえば我々もですが、三日月の暗黒龍クロウ・クルワッハ以外の邪龍は見ました。そいつだけ見てませんね」

「もしかしたら何れ会えるかもしれませんし、以前邪龍と対峙時、黒幕についてユーグリット・ルキフグスから直接伝えられましたね」

「・・・・ッ!?」

俺はその告白に驚いた。・・・・もしかしたら邪龍と戦えるからなのか教えられたのか?それとも一ちゃん関連だからなのか。

「今回の首謀者は既に織斑少将には伝わっていますが、どうやら奴だそうですよ。ヴァーリに教えたらきっと憎悪の炎となり嫌悪に満ちた声を出すでしょう」

あのヴァーリが珍しく瞳に憎悪の炎を滾らせる事ならば、一人しかいないし事実ならば今頃あちら側にも伝わっているのか。被害は俺達だけでは済まないと思うが、今頃になって表舞台に立とうと思った?

そう考えるのが妥当かもしれんが、俺達の戦いでもあり一ちゃん達の戦いでもある。俺の友よ。一ちゃんは今頃何をしているのかな? 
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