星河の覇皇
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第六十二部第三章 投票直前その二十八
「それだけの資質の持ち主だと」
「あるかも知れないわね」
「ヒトラーに匹敵する資質が」
「若しくはそれ以上かも知れないわ」
ヒトラー以上の、というのだ。
「彼にあるものはね」
「あのヒトラー以上ですか」
「ヒトラーは確かに恐るべき人物だったわ」
その演説の才能とそこから来るカリスマ性だけではない、最後の最後までドイツを完璧にまとめていた統率力に崩壊していたドイツを立て直した政治力、どの様な本も読破し複数の言語を操り一度聞いたことを忘れなかった知力。その複数の秀でたものがあった。ヒトラーは確かに恐ろしい資質を持っていた男だった。
だが、だ。その彼以上のものがだ。ギルフォードはあるというのだ。
「けれどね」
「あの侯爵殿はそれ以上ですか」
「そう思えるわ、だからね」
「我々が発展してもですね」
「侮ってはならないわ」
それは決して、というのだ。
「敵を侮ることは愚の骨頂であるし」
「ましてや強敵を見誤ることは」
「連合とエウロパの国力差を考えれば滅びることはしないけれど」
「それでもですね」
「敵に塩を送ることになるわ」
即ち敵を利してしまうというのだ。
「それは何にもならないわね」
「はい、何があろうとも」
「だからね」
それで、というのだ。
「彼を侮ってはならないわ」
「決してですね」
「ええ、もっと言えばね」
「もっと、とは」
「エウロパ人もね」
彼等もというのだ、そのギルフォードを選ぶ彼等もだ。
「侮ってはならないわ」
「確か外相もエウロパはお嫌いですね」
「ええ、嫌いよ」
このことはカバリエも隠さなかった、その通りだというのだ。
「私も連合の人間だから」
「そうですね」
「けれどね」
「それでもですか」
「例え嫌いな相手でもね」
例えだ、そうでもというのだ。
「侮るとね」
「それが失敗の基ですか」
「嫌いだからといって相手を否定するだけでは何も生まれないわ」
「正確に見極めなければ」
「こちらがしくじるわ」
そうなるからこそ、というのだ。
「相手を侮ることはね」
「してはならないですか」
「絶対にね」
こう言うのである、スタッフに。
「破滅や失敗の基だから」
「そうなりますね」
「これは他の國にも言えるわ」
「ではサハラについても」
「二人の英傑達が来ているわね」
アッディーンとシャイターンのことに他ならない。
「丁渡」
「はい」
「彼等もね」
「英傑だからですね」
「侮らないことよ」
決して、というのだ。
「今後対立してもね」
「サハラの国力もですね」
「勿論よ。過小評価すればね」
それで、というのだ。
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