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星河の覇皇

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第六十二部第三章 投票直前その二十二

「思惑というものがね」
「思惑、ですね」
「利害関係とも言うわ」
 くすりと笑ってだ、こうも言ったカバリエだった。
「それはね」
「その表現は生臭いですね」
「生臭くともね」
 それが、というのだ。
「それも人間だからね」
「だからですか」
「そう、当然と思ってね」
 そうしてというのだ。
「考えていくべきよ」
「そうなりますか」
「生臭いことは決して悪いことではないわ」
 それは何故かもだ、カバリエは話した。
「それもまた人間であり決して悪いことになるとは限らないからね」
「人の内面が出ても」
「生臭いといっても様々よ」
「醜いものもあれば」
「ただ人間の内面が出ているだけの場合もあるわ」
 そこは様々だというのだ、人間の内面がむき出しになってもそれが醜いとは決して限らないというのである。
「内面は善も悪もあるから」
「外相はその辺りいつも達観しておられますね」
「そうかしら」
「はい、人間の表も裏も」
「人間は悪とも思っていないわ」
「そして善でもですね」
「ええ、ないわ」
 そのどちらでもないというのだ。
「そうしたものよ」
「では中立ですね」
「そうよ」
「人は中立ですか」
「もっと言えば善でも悪でもあるわ」
「どちらにもなりますね」
「時と場合にも応じてね」
 つまり普遍ではなく常に変わる存在でもあるというのだ、人間は。
「だからこそね」
「その生臭さもですね」
「私は嫌いではないわ」
 カバリエは微笑みを浮かべてスタッフに話した。
「そうしたところもね、人間の」
「左様ですか」
「ただね」
「ただ?」
「確かに人は善でもあり悪でもありね」
 ここでまたこのことを言うカバリエだった。
「時と場合によっても変わるものだけれど」
「それでもだというのですね」
「吐き気を催す様などうしようもないね」
「そうした悪人はいるというのですね」
「吐き気を催す邪悪と言うべきかしら」
 そうした悪人は、というのだ。
「己の為に他人を平気で利用し騙し殺しても平気な人間がね」
「吐き気を催す邪悪ですか」
「そう、己の為だけに手段を選ばない様な輩がね」
 まさにというのだ。
「邪悪よ」
「しかも吐き気を催す」
「ごく稀にいるわね。世間に」
「確かに。良心の欠片もない輩が」
「平気で何度も嘘を言えるね」
 人は普通は嘘を言うとどうしても後ろめたさを感じてしまう、しかし息をする様に嘘を吐ける人間もいるのである。
 そしてだ、そうした輩がというのだ。
「邪悪と言うべき存在がね」
「いますか」
「吐き気を催す位の輩がね」
「つまり誰もが嫌う悪人ですね」
「そうした輩はいるわ」
 世の中には、というのだ。 
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