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機動戦士ガンダム0091宇宙の念

作者:むらたく
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宇宙編
月決戦編
  第43話 真実2

 
前書き
今回久しぶりに書いた上に、かなりストーリー上突拍子もなく展開が早すぎるかもしれません。
未熟な文、構成ですが暖かい目でお願いします。 

 
「譲渡された…?」
「あぁ、グラフィーは取引の後連邦からジオン残党に引き渡されたのだよ」
「そんな馬鹿な‼︎なんのためにそんな…っ‼︎」
「わかっているだろう?これは連邦軍が正式に決めたことだ。まぁもっとも、多くの将兵はその事実を知らんがね」
淡々と話すディエゴを、スピカは恐ろしく思っていた。
この男は、人命をなんだと思っているのか。
「この戦いで、一体どれだけの将兵が犠牲になったと思うのですか⁉︎」
声を荒げるスピカをみても、ディエゴは冷静なままだった。
「レーモ7に駐留していたのは殆どが戦後隔離され厳しい管理を受けていた元ティターンズ兵だ。下手に奴らにペズンの時のように反乱など起こされても厄介だ。スペースノイドを嫌う奴らなら、ジオンと結託することもないだろうし、いい捌け口になったというわけさ」
彼の口から発せられる一言一言がスピカは恐ろしかった。
「月では、現在も兵士が戦っているんですよ‼︎」
うんざりとした顔でディエゴはスピカに下敷き状の端末を見せた。
「これは…?」
「月の映像だ。あそこの戦闘も直ぐに終わる」
よく見ると、艦隊の周りが煌めいて見える。
「まさか…」
無数のミラーがひしめき合い、光を反射していることにスピカは気づいた。
「ソーラーシステム…⁉︎」
「ジオンとは、連邦にとって都合のいい脅威で充分さ。今の地球圏を存続させるためにも、必要な勢力だ。しかし、連邦の権威というものもわからせてやらんといかんのでな」
「このバランスを保つためにも、今回の一件は必要だった。軍にいる以上、少なからずこの恩恵は君にもあるはずだが?」
「…これは参謀本部も知ってのことなのですか?」
「当たり前だろう…?君も、連邦という組織の歯車だ。全体の体制を変えることはできんよ」
スピカは憤りのあまり震えていた。
自分の無力さと、人命を軽視する上官への怒りによって。
「…私にそんな話をなさってよろしかったのですか…?」
「聞いてきたのは君だろう?それにいずれ君の耳にも届いていただろうさ。それに君がこの情報をどう使おうが私が困ることはない」
「何故です?」
「この一件が公に晒され、連邦の信用が落ちるとなれば参謀本部もいい思いはしない。なにより自分の部下に命を狙われかねない。君のことを信用しているからこそ話したのだよ」
最後に微笑したディエゴの顔に虫唾が走る。
「私は自分の正義に従います。これからの地球圏を、私のやり方で存続させてみせます…」
そう言い残し、スピカは会議室を後にした。
「若いな…准将の地位を手に入れて思い上がるのもわかるが、たった一人の力で何が変わるというのか…」
ディエゴは一人虚ろな目で、コンペイトウから星の海を見渡していた…

大破し、デブリとなったサラミス級戦艦。
そしてその側には、無人のMSが二機。
「フーバー、今から俺が話すことをよく聞いておけ」
ノーマルスーツを着たグレイブスを見るのは久し振りだった。
「ガデットは、連邦と繋がっている。奴は、この戦いが終われば安全な生活が待っているんだ」
「な、何を言っているんですか?彼はグラフィー軍の総大将ですよ?」
「お前は逃げろ。グワンバンは俺が沈める。お前は座標の通り俺の母艦に戻って…」
「ふざけるな‼︎グワンバンを沈める?そんなことさせるか‼︎」
肩に乗せられていた手を押しのけ、フーバーはグレイブスを睨みつけた。
「俺を信じろ‼︎お前が以前ブラウビッシュというコロニーに行ったのを覚えているだろう‼︎」
不意にその言葉をかけられ、フーバーは一瞬冷静になった。
ブラウビッシュ…俺とアイラと、グラン大尉でネオ・ジオンの使者に資料を届けた…
「あの使者というのは、連邦の士官だ‼︎作戦配置図が敵の手にあるということは、直にここの宙域は殲滅されるんだよ‼︎」
ばかな…
「そんな…なぜそんなことが…」
「ガデットは前から怪しいと思っていた。なぜこのタイミングで決起を起こしたのか、なぜああも簡単にグラフィーを落とせたのか…」
「そして、情報を掴んだ。ガデットは連邦と繋がっていることがわかったんだ。本来はもっと早くこうするべきだったが…あの艦にはお前らがいた」
「…っ!」
「もう時間がないんだ…お前だけでもフィンドラに行け。ジゼルならことをわかってくれるはずだ」
「あなたは…?」
「ガデットを生かしてはおけない…」
「待って下さい、グワンバンには俺の部下もいます!」
「これは戦いを終わらせるためだ。お前は逃げろ」
「…俺は…部下を裏切れません…それに、アイラや大尉の帰る艦はグワンバンだけです」
静かにそう告げると、グレイブスは黙った。
少しの間を置き、振り返ったグレイブス。
「…恐らくブリッジにいる佐官共も知っているはずだな」
「え?」
「行くぞ、俺はグワンバンの〝ブリッジだけ〟を狙う。お前はその部下とやらを連れて逃げろ」
「そんなことが…」
「生き延びたいなら従え‼︎もう人が死ぬのは散々だ‼︎俺が止める、奴の死で終わりにする…!」
そのままドーベン・ウルフのコックピットに飛んだグレイブス。モノアイをこちらに向けた後、機体はグワンバンの方へと加速していった。
「…今、助ける…!」
続いてリゲルグに飛びついたフーバーに、迷いの意思は消えていた。
今この状況で最も信頼できる人物はグレイブスだった。
あの教官が、自分達を裏切ったという事実を、フーバーは認めたくなかった。
それ故に、彼からの事実の宣告はより一層現実味を増した。
「俺は…やはり隊長には向いてない」
藍色の機体を駆り、フーバーは闇の中でそう呟いた。 
 

 
後書き
次回に続きます! 
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