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提督はBarにいる。

作者:ごません
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アイオワ、着任

 
前書き
今回はアイオワのお話です。『』の中身は英語だと思ってください。作者の英語力だと英文なんて書けないんです。堪忍してつかぁさい……orz 

 
 兼ねてからの懸案事項だったクルツからの預かり物……いや、預かり者が漸く届いた。それも朝早く、クルツ本人を伴って。

「ったく、時間を考えろ……時間を。お前さんだってウチの営業時間くらい知ってるだろうに」

 そう、今から俺は寝る所だったのに、それを到着したとの一報に邪魔された格好だ。

「ハハハ、そこは申し訳ないと思ってるヨ。けどさ、他の娘達をあまり刺激はしたくないだろ?」

 あぁ、そういう事か。時代が違うとはいえ元は敵国の船だ、良い感情を持ち合わせている奴はほぼいないに等しい。クルツの奴もその辺を考慮したのだろう。

「で……そちらさんが?」

「yes!ワタシがBB61アイオワよ。よろしくね、My Admiral!」

 そう言って新顔の戦艦・アイオワは海軍式の敬礼をして見せる。随分と元気の良さそうなタイプだな。物静かな扶桑や日向辺りとはウマが合いそうにない。寧ろビス子や金剛と近しいタイプだろうか?

「ま、ちゃんとした挨拶は後々な。今日は一先ずウチの筆頭秘書艦に案内を任せてあるから、詳しくはそっちに聞いてくれ」

 さてと、俺は……寝る。流石に睡魔が限界だ。





 自室に戻っていく提督を見送りながら、隣に控えていた金剛がアイオワの方に向き直る。

「さてと、ワタシがここのトップの金剛デス。今日は一日貴女を案内シマース!」

「貴女がここのトップ?ふぅ~ん……てっきりヤマトやムサシがここのトップなのかと思っていたわ」

 いきなりズケズケと意見を述べる娘だな、と金剛は思う。しかしこういう直線的なタイプが嫌いな訳ではない。寧ろ忌憚なく意見が言える人間は貴重だ。

「まぁ、単純なスペックでは艦娘の強さは測れないという事だネ。ではMrs.金剛、後は宜しく」

 クルツはそう言うと、護衛の艦娘達と共に、輸送艦で港を離れていった。

『ところで貴女、英語は出来るのかしら?』

 突然流暢な英語に切り替えてきたアイオワ。日本の鎮守府に着任だと聞かされて気を遣っていたのだろう。

『えぇまぁ。私も元はイギリスのヴィッカース生まれですから』

 最近は英語で喋る機会など殆ど無かったから、咄嗟に出てくるか不安だったが自然に出てきて少し安堵する。

『なら、出来たら英語で案内して貰えないかしら?私も練習はしているけれど、まだ少し日本語が不安なの』

 それは何となく解る気がする、と思う金剛。イタリア組やドイツ組、ロシアに行っていたヴェールヌイ等は、練習はしているけれど咄嗟の時には母国語が出てくる。日本語に限らず他国の言葉というのは慣れるまで時間がかかるものだ。かくいう自分も未だに片言の似非外国人のようになってしまっている。……まぁ、自分の場合はそれが自分の「キャラ」になっているので今更治そうとも思っていないが。

『えぇ、別に構いませんよ。さぁ、此方です』

 金剛が歩き出すと、その横に並ぶようにアイオワも一足跳びに追い付いてきた。

『それにしても、さっきのがこの鎮守府の提督なの?何だか冴えない人ね』

 自分の最愛の夫を貶されて、胸の奥の方にチクリと痛みが走る。確かに第一印象はあまり良いとは言えない人だ。新任の駆逐艦等は着任の挨拶で一目見た時に、あまりの迫力に泣き崩れてしまった娘もいる位だ。その辺の事は追い追い解消していけばいい。

『見た目はどうあれ、優秀な人ですよ。海運の要衝を一任されている人ですから』

『ふぅん、まぁいいわ。それよりもここは静かなのね』

 それも当然、時刻はまだ6時前。総員起こしまでは寝ているか、自主的に起きてトレーニングをしているかのどちらかだ。

『まだ起床時間では無いですからね。ですがそろそろーー…』

 と話をしていると、鎮守府内にけたたましくラッパの音が響き渡る。総員起こしの号令だ。数の多いこの鎮守府では、外から聞いているとまるで地鳴りのように足音が聴こえてくる。

『す、すごい音ね……』

 初めて聴いたアイオワも度肝を抜かれているようだ。

『基本的には鎮守府の中で生活している艦娘全員が、この時間に起床です。そして朝食、各自の装備点検を行って、一日の業務開始です』

 総員起こしの例外は、夜間当直任務に就いていた者と非番の者、それに長距離遠征から帰還したばかりの者だけだ。起床のチェックに間に合わないと、指導員からの罰が待っている。余りに酷いと提督からのお説教(本気モード)が待っているので、寝坊する者はかなり減った。

『さて、私達も朝食にしましょうか?』

 金剛が尋ねると、アイオワのお腹がグウゥ…と口の代わりに返答を寄越した。真っ赤になってアワアワしているアイオワを眺めながら、笑いを堪えて食堂へと再び歩み出した。




『さぁ、ここが食堂です。基本的には食事はここで行います』

『うわぁ……、広いわね!』

 他の鎮守府の艦娘に聞いても、この規模の食堂は珍しいらしい。提督曰く「食事は効率的な兵士の運用の基本だからな。この位は普通だ」と語っていたが、単に食に拘りの強い提督の趣味だろうな、とは思っていた。

『さぁ、こっちですよ』

 子供のように目を輝かせていたアイオワを引っ張って、注文カウンターに向かう。

「グッモーニン間宮、今日も大繁盛デスね~?」

「あらおはようございます金剛さん♪……あら、お隣の方は初めて見る顔ですね?」

「あぁ、ついさっき着任したアメリカの艦娘のアイオワですよ。……アイオワ、こちらが間宮さんデス。皆の栄養管理をやってる凄い人デス!」

「Nice to meet you!ワタシもこれからお世話になるから、よろしくネ?」

「アメリカからの艦娘さんは初めてですね!宜しくお願いします♪」

 アイオワと間宮はガッチリと握手を交わしている。流石は間宮さん、というべきか。社交性が高い。しかしその後ろに隠れている伊良湖の眼には、恐怖の色が映っている。流石にすぐには馴れないか……背後から伝わる気配も様々だ。恐怖、不安、猜疑心や好奇心、明らかな敵意も感じる。今すぐに馴れろ、と言うのは無茶な話だろうがこればかりは馴れてもらう他ない。これからは共に闘う《仲間》なのだから。

『さて、メニューはどうします?和食も洋食も揃ってますよ?』

 これも提督なりの拘りだった。朝に限った事ではないが、食堂のメニューはかなり豊富だ。朝も和定食に洋食セット(共に日替り)、カレーやラーメン、牛丼なんてのもある。中には朝から定食とラーメンを食べる、なんて剛の者もいるが。

『うーん……金剛は何にするの?』

『私ですか?私は普段から和定食ですけど……』

『じゃあ私も!悪いけど頼んでもらえるかしら?』

「じゃあ間宮さん、和定食を2つお願いしマース!」

「はい、和定食2つですね。ご飯とお味噌汁はセルフサービスですので、あちらでどうぞ」

 間宮に示された方に向かうと、巨大な炊飯器と寸胴鍋が待ち構えていた。傍らにはご飯の茶碗と味噌汁の茶碗がそれぞれ山積みだ。

『ここでご飯と味噌汁を自分が食べる分だけ盛って、おかずを受け取ったら席に着いて食べるの』

『なるほど、ライスとミソスープは日本人の心だものね。お代わりも自由なの?』

『えぇ、でも食べ過ぎると仕事の時に動けなくなるので程々にね?』

 そんな会話をしながらご飯と味噌汁をよそっていく。事前に聞いていた通り、大和型並の燃費らしい。金剛の1.5倍はご飯が茶碗に盛られている。

「はいお待ちどうさま~。溢さないように気を付けてね?」

 間宮がおかずを2人分持ってきた。今日のおかずはだし巻きに昆布の煮物、納豆、茄子の芥子漬けとシンプルな感じだ。

『さぁ、座って食べましょう?』

 金剛は空いている席にアイオワを促した。 
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