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10部分:第九話


第九話

                  第九話   くじ引き
 くじ引きに向かった赤音。それを他の五人が後ろから見守っている。
「大丈夫かな、赤音ちゃん」
 その中には当然華奈子もいる。上手くいくかどうか不安なのだ。
「運良くいったらいいけれど」
「大丈夫じゃない?」
 心配そうな華奈子に対して美奈子は実に楽天的であった。
「運がよかったら」
「本当に運任せなのね」
「だってそれがくじ引きじゃない」
「確かにそうだけど」
 そう言われると身も蓋もない。
「だからここは運を天に任せるのよ」
「赤音ちゃんの運に?」
「そういうこと。だからどっしりとね」
「まああれこれ心配しても仕方のないことだけれど」
 それだけは言えた。
「じゃあ仕方ないか」
「待ってみましょう」
 あれこれ考えても仕方ないので待つことにした。
「ここでね」
「そうね。それじゃあ」
「じっくりと」
 喫茶店に入りお茶を飲みながら待つ。暫くそこで何をするわけでなくお茶を飲み続けていると赤音が戻って来た。
「お帰り」
「うん」
 にこやかに挨拶を返す。
「どうだった?」
「私の顔からわからない?」
 五人を見て言う。
「当たったのね」
「ええ。見事ね」
「うわ、本当に当たっちゃったよ」
 それを聞いた華奈子が驚きの顔になる。
「嘘みたい」
「けれど本当よ」
 そんな華奈子に美奈子が言う。
「これでコンサート出られるわよ」
「赤音ちゃんの運のおかげで」
「あら、何か不満そうね」
「そういうわけじゃないけど」
 だが何か引っ掛かるものがあるのも事実だった。華奈子は少し難しい顔をしていた。
「ちょっと、ね」
「こう言うでしょ」
 そんな華奈子ににこりと笑う。
「運も実力のうち、天佑って」
「そんなもの?」
「そうよ」
 笑みはにこりとしたままだった。
「何か私が言う台詞じゃないけれどね」
「あたしが言いそうな台詞だけれどね」
 姉妹は笑みを浮かべて言い合う。とにかく運は華奈子達に味方したのであった。コンサートに出られることになったのは事実なのだから。

第九話   完


                  2006・9・6

 
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