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狸囃子

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第三章

「流石に実際に赤ちゃん産むのよりは苦しくないと思うけれど」
「それでもなの」
「そう、子供を作ることと同じだから」
 作詞、作曲をして曲を一つ作ること、それはというのだ。
「苦しくて当然なの」
「そうなのね」
「けれど楽しいでしょ」
「うん」
「それはお母さんも同じだったわ、奈々ちゃんを産む時はね」
「苦しかったけれど」
「凄く楽しくて今もよ」
 奈々を見て微笑んでだ、彼女自身に言った。
「だから奈々ちゃんもよ」
「苦しんで楽しんで」
「作っていってね、とにかく色々な曲を聴いて」
 そしてというのだ。
「いい曲を作っていってね」
「わかったわ」
 奈々は母の言葉に頷いた、そしてだった。 
 彼女は学業の傍ら趣味として作詞作曲をしていった。確かに苦しいが楽しいことも確かだった。だが中々だった。
 真似から抜け出せない、ニコニコでの書き込みは歌うのはいいが作詞と作曲は真似との指摘が多くてだ。
「この娘影響受け過ぎ?」
「他の曲に近いのばかりだよな」
「作詞しても作曲しても」
「結局近いよな」
「AKBなりアニソンにな」
「いつも近いんだよな」
「まあ子供みたいだしな」
 十代とは書いていた、ただ小学生とは書いていんあい。
「それだと仕方ないか」
「子供だとな」
「まだまだこれからか」
「歌だけ聴くか」
「そうするか」
 こう言うのだった、奈々は何時しか歌のレッスンも受ける様になっていてそちらの才能は開花させていた。だが。
 作詞と作曲はどうしても真似から脱却出来ずだ、自分でも言うのだった。
「結局小学生だから?」
「どうしてもっていうのね」
「真似から脱却出来ないのかしら」
「まあ作詞作曲は難しいわ」
 どうしてもとだ、香枝も言う。
「実際にね」
「そうよね」
「けれどね」
「ここで諦めたら」
「諦めたらそれで終わりっていうわね」
「うん」
 漫画にある言葉だ、香枝も大好きな漫画だ。奈々はこの漫画は知らないがそれでもこの場は言葉自体に頷いた。
「お母さんよく言うわね」
「だからね」
「諦めるよりは」
「何とかあがいて」
 そしてというのだ。
「答えを出すものよ」
「そうするものなの」
「そう、だからね」 
 それでというのだ。
「ここは出来るだけね」
「あがいて」
「色々な曲も聴いてよ」
「作詞も作曲もなのね」
「していくといいわ」
「じゃあね、まさかこんなに考えるなんて」 
 それこそとだ、奈々は母に考える顔で言った。
「思わなかったわ」
「そうよね、けれど作詞と作曲はやっていて悪いことじゃないから」
「それでなのね」
「やっていくといいわ」
「うん、じゃあ」
 奈々は曲をさらに聴いていくことにした、そしてだった。
 とにかく色々な曲を聴いていったがヒントは出ない。奈々はここでひょっとして何年もかかるのかとも思った。 
 そう思いつつだ、香枝に連れられて歌のレッスン、作詞と作曲のそれにも出て一緒に家に帰る時にだ。ふと家の近くの公園の木々からだ。何かが聞こえてきた。 
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