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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第十章 仮想世界
  第8-3話 上条と八舞姉妹

~上条×八舞姉妹~

ある日の休日。

上条は一人自宅でテレビを見ていた。いや、見ていたというよりは眺めていたに近いだろう。今はバラエティの再放送をやっているが上条はテレビをあまり見ない方なので好きな芸能人がいることもなければ好きな番組があるわけでもない。だから特に熱心にみていたわけではないのだ。

なら今上条は何をしているのか。

……しいて言うなら何もしていない。

要は暇なのだ。

士道、佐天、一方通行は朝から出かけているし、琴里もフラクシナスの方で仕事をしていて今はいない。

隣の精霊マンションに住んでいる精霊達は何をしているかは分からないが、士道のいないこの家に来ることはまずないだろう。なぜならここに来る精霊達の目的の殆どは士道に会うためだからだ。

だからといって上条自身が精霊マンションの方に行っても特に用事はないし、精霊達も出かけているのかもしれないので無駄足になるかもしれない。

普段なら『石』の中にいる凜祢と楽しく会話したりするのだが、ここは仮想世界。凜祢は今いないので本当に一人だ。いつも凜祢が側にいたので少し新鮮な感覚になる。

久しぶりにのんびり家で過ごすのも悪くないか、と思ったところでリビングに続くドアが勢いよく開かれた。

耶倶矢「くくく……随分と黄昏れているようだな我が愚兄よ……。秋風が蒼く輝く大空を包みこむこの時、何故避けようとする?」

夕弦「要約。どこか外に遊びに行きませんか?」

そこに現れたのは茶髪の姉妹だった。

一人は純粋無垢な少年のような顔をしながら手を顔にあててかっこよく決めポーズをしている八舞耶倶矢。

もう一人は半目ながらもこちらを見ながら微笑んでいる八舞夕弦。

二人はよく似ているようでよく見ると少し違う。口調とか、顔立ちとか、身体のある一部分とか。

そんな二人は修学旅行の時に士道と一緒に助けたこともあって士道だけでなく上条にもよく懐いているのだ。

そのためか、ちょくちょく絡んでくるのだが……

上条「……いや、そう言われても」

耶倶矢「でも暇でしょ?」

上条「そんな平日の昼間にゴロゴロしながら昼ドラみている主婦のような言い方はやめてください!上条さん傷ついちゃいます!」

夕弦「……否定。そこまで言ってません」

いやまあそうなんだけどね……。

耶倶矢「私たちも暇なのよ」

夕弦「提案。是非遊びに行きましょう」

と耶倶矢が決めポーズを解いて本題に入り、夕弦が前屈みになって笑顔で話しかけてきた。

いや、その体勢は……む、胸が……

上条「ち、ちなみにどこに行く予定なんだ?まさかノープランじゃないよな?」

と、その動揺を表わさないように上条は二人に聞いた。

耶倶矢「案ずるな我が愚兄よ……すでに手は打っておる」

夕弦「譲渡。これです」

と言われて上条は夕弦からチケットらしきものを受け取った。そこに書かれていたのは……

上条「水族館の割引券?」

耶倶矢「言うとおりよ愚兄……我の右手に宿る竜の化身により召喚された――」

夕弦「要約。デパートのくじ引きで当たりました」

耶倶矢「ちょっ!勝手に言うなし!」

上条「そ、そうか……」

正直な感想を述べると、上条は水族館があまり好きではない。

理由は持ち前の不幸さにある。

厚いガラス越しにこちらを見てくる魚たちは絶対目を合わせてくれないし、ガラスの方に近づけばそれに応じて魚たちは散っていく。イルカやアシカのショーに行けば必ずどこかで失敗するし、イルカがジャンプした時の水しぶきは必ず自分のところにかかる。

子供の頃に一度だけ両親と行ったことがあるのだが、そんな散々なことがあって以来一回も行ってない。

なので人生で二度目の水族館になるのだが……

上条「…………水族館かぁ」

どうも乗り気になれない。

二人は上条の表情を見て少し複雑な気持ちになっていた。詳しくは聞いてないから事情は分からないが、恐らく上条の不幸が関係して昔何かあったのだろう。

でも。

耶倶矢「……昔に何があったのかは知らないけどさ、昔は昔、今は今じゃん」

夕弦「首肯。耶倶矢の言うとおりです。それとも私たちと水族館に行くのは嫌ですか?」

上条「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

上条は少し迷ったが、せっかく誘ってくれた二人を用事もないのに断るのは少し罪悪感が生まれそうだったので、しぶしぶ了承した。




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三人はあまり乗る機会がない電車に乗って隣町の水族館に来ていた。

高さはビル四階分くらいあり、広さは東京ドーム三個分もあるらしい。

外壁にはイルカやクジラなどの有名な動物はもちろん、深海魚や見たことない魚までありとあらゆる魚がアニメ風に描かれている。

外の店にはお土産屋や飲食店もあり、なかなか充実している。

そして今日は土曜日。親子連れや友達通し、学生や年寄りなど老若男女問わずいろんな人が歩いている。

上条「すげぇ……」

思わずそんな言葉をもらしていた。

建物の大きさもそうだが、人の多さには本当に驚かされた。ここにいる人だけで天宮市の人口を超えるんじゃないかと思ってしまうほどに。

耶倶矢「くくく……我らの遊戯にふさわしい観客よ……」

夕弦「驚愕。壁の魚はどうやって描いたのでしょうか?」

耶倶矢はいつも通りとして、夕弦もこの大きな建物に驚きを隠せないようだ。

とりあえずここで立ち往生をしていても意味がないので三人は入場ゲートへと向かった。

受付のお姉さんに割引券を見せてそれぞれ料金を払う。

チケットを受け取って入場ゲートを通った。

そこから道なりに歩いていくと大きなガラス越しに色とりどりの魚が優雅に泳いでいたり、一際存在感を放つクジラがいた。隣の小さなガラスの向こうにはカニや深海魚、貝類など様々いた。

耶倶矢「天界より与えられし力が我らを引き寄せる……」

夕弦「要約。とても大きいです」

耶倶矢と夕弦は深海魚たちよりもやっぱり大きなクジラが気になっていたようだ。ガラスに手のひらを押しつけて一番近いところでその姿を眺めている。

その頃上条はというと……

上条「……うーん」

小さなガラスの向こうにいるキングクラブを眺めているのだが……どう見ても敵意丸出しだ。上条の何が気に入らないのだろうか……



ちなみにどうして耶倶矢と夕弦と離れて見ているのには二つ理由がある。

一つは魚達が逃げないため。

もう一つは……

「ねぇ、あの二人可愛くない?」

「本当!まるでお人形さんみたい。姉妹でかわいいなんて羨ましいなぁ……」




「……やばい、俺のタイプだ」

「お、俺右の子狙おうかな……」




「……あんた何あの姉妹に色目使ってんの?」

「ご、ごめん!…………やっぱ可愛いな」

男子はもちろん、女子にまで人気の二人だ。ましてや彼女持ちの男でさえその美貌にみとれてしまうほど。

そんな二人と仲良く話す男がいたら一体どうなるか……

上条「(絶対に殺されるッ!!)」

主に非リア充に。

だが今なら間に合う。

ここで人混みに紛れてはぐれたフリをして先に外に出よう。その上で二人にメールして人が少ない場所を待ち合わせにして帰る!後で服でも買ってあげれば機嫌を損ねることもないだろう。

上条「(完璧だ……)」

その作戦をきっちり頭にいれて行動に移そうとした、



その時。



耶倶矢「ふむ。我が愚兄は力強い蟹が好きなのか」

夕弦「驚嘆。かっこいいです」

上条「……」

……さて。

どうしたものか……。



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あの後上条は(見た目だけなら)絶世の美女を両脇に抱えながら水族館をまわったので主に男子の嫉妬の目線を前後左右から受け続けることになった。辛い以外何物でもなかった。

耶倶矢「あー楽しかった!」

夕弦「感激。イルカショーは最高でした」

……ま、二人が楽しかったならいっか。

沈みかけの夕日をバックに無邪気にはしゃぐ二人を見てそう思った。

上条「さ、帰ろうぜ」

もう時間は遅い。上条は二人を連れて帰ろうとした。

と。

耶倶矢「あ、ちょっと待って」

夕弦「首肯。渡したいものがあります」

二人はそう言ってかばんの中からあるものを取り出した。

上条「キーホルダー?」

それは三センチくらいの可愛いイルカの小さなキーホルダーだった。

上条「えっと……急にどうしたんだ?」

耶倶矢「まぁ、今日つきあってくれたお礼もあるんだけど……」

夕弦「感謝。私たちを救ってくれたお礼も兼ねてです」

上条「救ってくれたお礼?」

耶倶矢「ほら、修学旅行の時の……」

言われて、上条は二人が何が言いたいのか理解した。確かにあの時は士道と一緒に色々苦労した。二人は喧嘩するわ、DEM社が乱入してくるわ、空中でもなんか戦っていたわ……。

だが、本当の意味で彼女達を救ったのは……

上条「それをしたのは士道だろ?」

耶倶矢「最終的にはそうだけど、でも当麻の協力があったから私たちは救われたと思ってる」

夕弦「同意。もしお二人がいなかったら今頃私たちは……」

どっちかがいなくなっていた。

それは、言葉にしなくても伝わった。

もし、上条が少しでも二人を救えたなら、心の支えになっているというのなら。

上条「……ありがとう。大切にするよ」

上条は、その好意を素直に受け取ることにした。












上条「なくしそうだなぁ……」

耶倶矢「なくしたら、わかってるよね……?」

夕弦「首肯。首飾りと同じくらい大切にてください」

上条「さっそく上条さんの命がヤバいッ!!」



 
 

 
後書き
耶倶矢の口調がいつもより普通でした。 
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