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メン・タンク・マッチ:MTM

作者:鷲金
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初動編
  MTM:初動編 第5話「我団(チーム)」Bパート

 
前書き
メン・タンク・マッチ:初動編の第5話Bパートを掲載開始しました。
初動編は、主人公達がメン・タンク・マッチに参加するまでの話です。

*メン・タンク・マッチ:MTMはまだ未完成の作品のため、全てを一度に掲載することは出来ません。また、各話の修正などで更新が遅れる上、更新期間がランダムで投稿することになります。一応、最終話まで投稿する予定です。
MTMは20話以上の物語を予定しています。  

 
5月14日の夜9時
喫茶店[可華蜜]では賑やかな声が響いていた。
この店の閉店時間である8時を過ぎても、電気がついた1階には大勢の人がいた。
店内にいる大勢の中の一人が
「せーの」
と言い出して
「「「矢元、誕生日おめでとーーー」」」
パァンパァンパァン
と全員が同じ言葉を合わせて大声で言い、その内3人がクラッカーを鳴らした。
「皆、ありがとな!」
矢元は、彼らに対して礼を言った。
今日、5月14日は矢元の誕生日なのだ。今日で18歳になる矢元の誕生日を祝うために、天桐と加埜
が以前から計画して可華蜜の営業時間終了の店を貸し切ってパーティーをやったのだ。
「じゃあ、ケーキ切るぞ。皿並べてくれ」
と加埜が言うと、何人かが皿を並べるのを手伝った。
今、パーティーに来ているのは本日の主役である矢元をはじめ天桐、城ノ崎、加埜の他に学校の友達数人や矢元のバイト仲間や知人が数人など、20人程が来ている。
「他の料理も冷めちまうから早く食べてくれよ。親父が張り切って作り過ぎちまったからな」
と行って皆に食べるように言う。
矢元が回りを見てから加埜に
「そういえば親父とお袋さんは?」
「あぁ、二人共。気を利かせたのか、近所の知人達と飯に行っちまった」
と加埜がいくつかの料理を紙皿に取りながら答えた。
一方、天桐は
「おい、早間。どうしたんだ元気低いな」
部屋の隅に低く座った早間に聞いた。ジュースの入ったコップを両手に大人しくいたのだ。
「あの、自分もよかったんですか?」
「何が?」
「いや、呼んで貰ったのは凄く嬉しいですが、自分は矢元さんとは何の接点もないんで、誕生日パーティーに出席する資格はないのではと思って」
「あぁ、別にいいじゃね。俺が招待したんだし」
「はぁ」
と話していると矢元の方で
「おい矢元、プレゼント開けてくれよ」
と矢元の回りを数人が囲んでいた。
「おう、さて何かなこれは」
と皆から貰ったプレゼントの1つを手に取り、開け始めた。
「お、これ俺が欲しかった最新の音楽プレイヤーじゃん。高かったろー」
とプレゼントが欲しかったものだと分かり喜ぶ矢元。
「いや、俺とまっさん、幹夫(みきお)の3人で合わせて買ったんだ。大事にしろよ」
と矢元のバイト仲間がそう言った。
「楽しそうですね」
「お前は楽しくないか?やっぱ他人の誕生日会は」
「いえ、そうじゃないです。ただ」
「ただ?」
「・・・いえ、やっぱ何でもないです。そうだ何か食べ物持ってきますよ。待ってて下さい」
「お、おう」
と早間は話を中断させ、料理を取りに行った。
それから2時間続いたパーティーが終わり、皆で後片付けを手分けしてやった。
「よし、終わったな。じゃあ、皆解散だ」
と加埜が言って、パーティーはお開きとなった。
「じゃあ、矢元。明日な」
「おう」
と矢元のバイト仲間や友人達が帰って行った。
「それじゃあ先輩。自分はこれで」
「あぁ、明日な」
と早間は天桐に挨拶をして帰って行った。
そして、
「じゃあ、帰るわ」
「先輩、また今度」
「今日は、ありがとな。加埜さん」
最後に天桐も城ノ崎、矢元は一緒になって帰ることになった。
「あぁ、きーつけて帰れよ」


帰り道
「いや、ほんと楽しかったわ。やっぱいいな誕生日って。1年に1度しか無いのが残念だわ」
「だって、1度しかないのが誕生日なんだから仕方ないよ」
「そうだな」
と矢元と城ノ崎は会話する横で天桐は何か難しい顔をしていた。
「どうした士良?」
そのことに気付いた矢元は天桐に聞いた。
「え?いや、何でもないよ。それより楽しめたか」
と天桐は話を変えた。
「当たり前さ。お前と加埜さんがやってくれて、ちょー嬉しかったわ。プレゼントもいろいろ貰えたし。ただで上手い飯も食えたし」
「そうか。なら、良かった」
と天桐は少し笑った。
「そういえば、お前さ。最近なんかこう妙に考え込んでないか?」
「え?」
「そうそう。僕も思ったんだよ。何か悩んでいるなぁーて」
城ノ崎もその事に話をしてきた。
「別に、そんなことねーよ」
だが、天桐は違うと否定した。が、
「おいおい、俺たち何年の付き合いになると思ってんだよ」
「2年ちょいだけど」
「くー、寂しいこと言うね。確かにそうだけどさぁ」
「けど、士良さぁ。ほんと、僕らは心配してるんだよ。何か悩んでるならちゃんと言ってくれないと」
「あぁ。そのだな」
「うん」
「・・・進路が決まらないから先生に色々言われててさ。どうしちゃおうかなって」
と天桐がそう笑いながら言うと矢元と城ノ崎は
「なんだ。そのことかよ。心配して損したわ」
「ほんと。そのことか。ちょっと安心したな」
と二人も笑いながら言った。
「なんだよ。これだって立派な悩みなんだぞ。てか人の進路をそんな簡単なものみたいに言うなよ。自分らは進路決めるからってさぁ」
と天桐は軽く文句を言った。
「自分が悪いんだろ、それは。先生や親に、あんまり心配させるなよ」
「ウッ、分かってるよ」
と矢元の言葉に天桐が不貞腐れると
「けど、今これだって言ったけど。他にあるの」
城ノ崎が天桐の言葉に気付いたらしい。
「え?いや、・・・ただの言い間違いだ。ねーよ別に」
「本当に?」
と城ノ崎が覗き込むかのように天桐の顔を見ていると
「本当だって。大丈夫だから。な」
と天桐はそう言い切った。
二人は、それ以上聞き出さなかった。


5月18日
あと4日となった今日。
学校の放課後、天桐は教室に居た。
自分の机にうつ伏せになっていた。
(どうしようもう4日もねーぞ。まじでヤバイ)
と悩んでいた。
昨日は、不安のせいか少し寝不足になってしまって、今日の授業も何度か居眠りをしてしまった。お陰で4限目に藤吉先生の目覚ましチョップを食らって目が冷めてしまった。
そして、放課後。矢元はバイトで城ノ崎は塾のため、先に二人は行っしまった。
一人になった天桐は、少し軽くうたた寝をしてしまったのだ。
「天桐君」
突然、女子が話しかけてきた。
「ん?」
急いで顔を上げると横にクラスメートの女子の一人、橋出(はじだ)が立っていた。
「橋出」
「どうしたの?凄い辛そうな顔をして」
「いや、なんでもない」
と言って椅子に座ったまま背伸びをした。
「それよりどうした?もう皆帰ったのに」
と天桐は橋出に聞くと
「いや、だって私、今日日直だから戸締まりしないと」
と答えた。天桐は、正面にある黒板の右端に目をやると白いチョークで日直名に角山(かくやま)、橋出と書かれているに気付いた。
「あー、わりーすぐ帰るわ。すまんな」
「いいよ、別に」
慌てて鞄に教科書を詰めて、立ち上がった天桐は帰る準備をする。
すると橋出が、
「そういえば、天桐君」
「うん?なんだ?」
「最近噂で聞いたんだけど、何か色んな男子に声かけてまくってるて聞いたけど本当?」
「え?」
「何かに誘っているとか女子の間で噂になってるから」
そう言われた天桐は、ここ数日に友人から学校の男子で知っている奴に戦車に興味ないかと話をかけてメン・タンク・マッチのメンバーに勧誘していたのを思い至る。
「いや、そのなんだ。ちょっと男だけでな。ハハハ」
と軽く笑い話を流そうとした。
「ふーん。まぁ別にいいけどね。一部の女子では変な噂に変えられたりしてるし」
と橋出は、それ以上聞いてくることはなかった。
「そうか」
(ふー、あぶね。てか、何だよ一部の女子って。絶対、ろくな噂になってねーだろそれ。勘弁しろよ)
と少し安心した心と少し不安になった心で滅茶苦茶になった天桐だが、
「じゃあ、俺帰るから」
と言い荷物を詰めた鞄を背負って
「それじゃ」
「うん、さようなら」
と言って急いで天桐は教室を出て行った。


その頃、可華蜜では既に早間が店の2階に来ていて加埜一緒にいた。
「おせーな」
加埜が時計を見ながら言った。
「そうですね。先輩どうしたんでしょうね」
それに合わせて早間も揃えて言った。
二人は、天桐が来るのを待っていた。
「なんか飲むか?」
と加埜が早間に聞いてきた。
「え?いえ、お構いなく」
「遠慮すんな」
と言って加埜は小型の冷蔵庫からペットボトルを2本出した。
「ほい、コーラだけどいいだろ」
「は、はい。ありがとうございます」
と言って、受け取ってから栓を開けた。開けた瞬間、炭酸の気が抜けてプシューと音がなった。
ゴクゴクゴク
「はぁー」
「あぁぁ、やっぱうめーなコーラは」
「はい」
と答えるが、その後の二人の空気は静かな状況が続くだけだった。唯一音がするのは、外の車や人の声か一階にいるお客さんの声と加埜の両親が接客や厨房で作業をしている音ぐらいだった。
この二人は、まだ出会ってそう日が経っていないのもあり、何を話せばいいかお互いよく分からないのだ。これは天桐も例外ではないが、加埜と早間は互いをほとんど知らない上に年が2つも離れているのもあって少し気まずいのである。
「全くおせーな、あいつ」
と携帯をいじりだした加埜に早間は
「あのー」
「なんだ?」
と聞いてきたので加埜が携帯をいじりながら答える
「一つ聞いてもいいですか?天桐先輩のことで」
「あぁ、俺に答えられることならな」
「はい。その天桐先輩の友人である矢元さんと城ノ崎さんのことなとなんですが」
「おう、あの二人がどうした?」
「あの二人は、天桐先輩の友人なのは分かったんですが、それ以上に何か別の特別な関係性がある気がして」
「特別な関係性?」
「はい」
と言ってまたコーラを口につけた。
「言っとくがあいつら三人ともノーマルだから。俺もだけど」
と突然、加埜がそのようなことを言ったせいで
「プーーー。ゲホゲホゲホ」
と早間がコーラをひっかけてしまった。
「おいおい、何やってんだよ。汚ねーな」
と加埜が慌てて、テーブルの上に撒かれたコーラを布巾で拭き取っていった。
「ゲホゲホ、か、加埜さんのせいでしょ」
「え?」
「僕は、そんな意味で言ったんじゃありません」
「あー分かってるって。冗談だ冗談」
と笑っていう加埜だが、早間は少し怒って
「こっちは真剣に聞いてるのに、巫山戯ないで下さいよ」
「悪かった悪かったって」
と謝ってコーラを拭き取った布巾を側の洗面に投げた。
そして、席に座ってから
「確かに、あいつらはただの友人ではないさ」
話を続けた。
「あの二人が士良と出会って仲良くなったのは、あいつが高校に入ってから、ちょうど俺と出会った後のことだ」
「加埜さんも高校になってから天桐先輩と出会ったんですか」
「あぁ、あいつは元々県外の出身だからな。高校になってからこの町に来たんだ」
「そうだったんですか。自分は天桐先輩のことどころか皆さんのこともよく知らないもので」
「まぁ、それは仕方ねーよ。出会って1ヶ月にもならねーし」
「はい、そうですね」
と早間は少し元気をなくしたかのようになった。それを見た加埜は、
「士良はなぁ。矢元と城ノ崎にとって、ある意味恩人なんだよ」
と語り始めた。
「お、恩人?」
「あぁ、二人が出会った時、天桐は二人のピンチを救ったことがあってだな。それ以来、3人でつるむようになったのさ」
「はぁ、それは加埜も同じなんですか?」
「え?いやいや、俺の場合はちげー。寧ろ、出会い方が最悪だったさ」
「さ、最悪?どんな風に」
と早間は聞くと加埜が
「あいつの顔面と腹に4,5発ぶち込んでやった代わりに、顔面に飛び膝蹴りをくらわされた」
そう平然と答えた。
「う、うわぁーーー」
と早間は痛そうな顔をした。
「まぁ、とにかくだ」
加埜は残りの自分のコーラを飲み干したペットボトルを片手で投げ、ゴミ箱へと見事にシュートした。
「ナイシュー」
と言って再び話し始めた。
「あの二人は、天桐のことを本当の友人だと思ってるのさ。まぁ、あんな事がありゃ、そうなるか」
「そのあんな事とは一体どんな出来事だったんですか?」
と早間はどうしても気になり聞いてみたが
「悪いが、その事は俺の口からより本人から聞いてくれ。俺から言うよりもっとよく分かるからな」
「は、はぁ」
だが加埜は、話てはくれなかった。
「だからこそ、あいつらがいいだがな。信頼出来る仲間、あの二人以外にいねーよ」
と最後に言った。
「そうですか。・・・話してくれてありがとうございます」
と礼を言うと
「どういたしまして」
と答えると、突然誰かが階段を上がってくるのが分かった。
そして、その人物は
「悪い待たせた」
と少し汗をかいて慌てて来た。
「おせーぞ士良」
「わりーまじで」
と言って席に座った。
「何かくれ、冷たいの」
と加埜に冷たいドリンクを要求した。
「はいはい」
と加埜が冷蔵庫からコーラを出した。それを見た天桐は
「あ、俺炭酸苦手だから他のにして」
と文句を言ったら加埜は
「人の家でご馳走になだから文句言ってんじゃねーよ」
と言いながらも別のジュースのペットボトルに変えて渡した。
と受け取ったペットボトルを開けてゴクゴク飲む。
「プハー、生き返った」
天桐の様子を横から見ている早間に天桐は顔を見て
「どうした?」
と聞いた。
「いえ、何にでもありません」
と早間はそう答えた。
そして、三人が揃ったことで話し合いを始めた。
だが、早間だけは何か考え事をしていた。


5月21日
夕方の学校
「さてと、誰もいねーな。よし、戸締まりOKと」
天桐は教室で誰も居ないのを確認してから窓の鍵を確認し、教室の鍵を締めた。
今日は天桐が日直になった為、最後まで残って教室の戸締まりを行うことになった。
(さて、あとは教室に鍵を)
ヴヴヴヴ
と突然、ポケットから振動と音がし始めた。
携帯のマナーモードがついたのだ。
「ん?なんだ電話か」
天桐がポケットから取り出して電話の画面を見た。
「あれ、早間だ。どうしたんだあいつ」
電話の相手が早間だと分かると
ピッ
すぐに出てみた。
「俺だ。どうした?」
「天桐先輩。突然の電話申し訳ありません」
「いや、別にいいよ。で、要件はなんだ?」
「実は、来て欲しい所があるんです」
「来て欲しいとこ?」
突然、お願いにいろいろと疑問に思う所もあるが、取り敢えず聞くことにしてみた天桐。
「どこだ?」
「中央公園の東口です」
「あぁ、別にいいが。なぜだ?」
「すいません。取り敢えず来て下さい。お願いします」
早間は理由は言わずにそのまま来て欲しいとお願いするため、天桐は渋々
「わかった。すぐ行く」
ピッ
と切って早め向かうおうと急いで職員室に行って鍵を返しに行った。
(早間のやつ、どうしたんだいきなり。)


そのまま学校から徒歩10分程の距離にある中央公園に早歩きで来た。
この公園は広い敷地にいくつ物の遊具があり、近所の子供どころかこの町の子供の多くがよく遊びに来る。天桐も高校に来てからはよく皆と来たりしていた。
中央公園の東口に着くと、夕方5時頃でもあるため、何十人かの子供やその保護者、お年寄りが公園内に居たのが見えた。
それと一緒に東口の側で、バイクに寄りかかって立っている男が居た。
「加埜」
天桐は加埜に近づいて行った。
「よう、お前も呼ばれたのか早間に」
加埜も天桐の存在に気付いて手を振った。
「お前もかって、お前も早間に?」
「あぁ」
天桐はバイクの隣に立った。
「そうか。理由は分かるか?」
「さぁあね。聞いても教えてくれなかった」
そう答えると、天桐は回りを見渡し
「アイツはまだ来てないのか」
早間が見当たらないことを確認する。
「俺は来て5分になるがまだだな」
そう言って加埜は自分の携帯を取り出し、画面を見た。画面には今日の日付で5月21日と表示されている。それを見た加埜
「ついに明日か」
と天桐に口に出す。
「あぁ、明日だ」
天桐もそう言う。
「どうする?このまま揃わなかったら」
加埜は、もしもの場合の考えを聞いた。
「その時は、アルベルトに謝って・・・今のメンツだけで頑張って行くさ」
天桐はそう答えた。
「そうか。それしかないか」
加埜は、その回答に納得するしかなかった。
「それにしても呼びつけといて遅いな早間のやつ。電話してみるか」
と天桐は携帯を取り出しコールしようとした時だ。
「士良」
と聞き覚えのある声で天桐を呼んだ。
「!」
天桐はその声の方を見て驚いた。
「・・・竜二、賢太」
そこに居たのは、もうバイトと塾に行ったはず矢元と城ノ崎の二人だった。
驚いた天桐は、
「どうしたんだよ?なぜ、ここに。てかもう5時半過ぎだぞ。バイトは、塾はどうしたんだよ?」
と聞いた。すると、
「あぁ、今日は休んじまった」「僕はサボって来た」
と二人は笑顔で答えた
「は?休んだ?サボった?・・・ば、馬鹿野郎。何言ってんだ。竜二、今日は、金曜日は忙しいはずだろ。大丈夫なのかよ」
「大丈夫、大丈夫。いつもバイトしてたからさぁ、店長にたまに休めって言われてたからさ」
「な、・・・賢太、お前は塾はどうした。来週テストがあるんじゃなかったのか?」
「あるよ。けど大丈夫だよ。テスト範囲の内容は大体頭に入ってるから。それにたまには息抜きも必要でしょ」
と二人は天桐に答える。その答えを聞いて天桐は、
「な、何がどうなってんだよ。・・・とにかく、理由はなんとなく分かった。けど1つ分からないことがある」
と疑問に思うことを伝える
「うん?何かな」
城ノ崎が言う。
「どうしてここに来たんだ。お前らの家もバイトや塾がある方角とここは逆のはずなのに、どうしてここに?ただ二人で遊びに来たのか?」
と天桐は二人に問うと
「いや、ただ俺らはお前に会いに来たんだよ」
と今度は矢元が答えた。
「俺に?って、じゃあどうやって、俺がどうしてここに居るのが分かったんだ。俺は誰にも伝えていないぞ。ここに来ることなんか。もしかして、・・・矢元か」
「いや、俺じゃねー。てか落ち着けよ士良」
となんとなく焦っている天桐は加埜に聞いた。
「あぁ、そうだな」
と天桐は一旦落ち着こうとしたが、
「ところで士良は、加埜先輩と何してるのここで?」
城ノ崎が突然、質問をしてきた。
「え?いやその」
(やべーぞ、もしバレたら不味い)
と不安に思いながら適当に作り話を考えた。
「あぁ、実は加埜と久しぶりに公園で遊ぼうと思ったんだよ。あと、この前紹介した早間という奴と3人でさぁ、なぁ。」
と加埜に目で合わせろと言って
「あ、あぁそうなんだ」
と加埜も話を合わせた。
「そうか」
と城ノ崎が納得したと思いきや
「ねぇ、士良」
「うん?」
「いい加減、秘密にしておくのは辞めにしない?」
と突然、怖い声で言ってきた。
「!?」
それに一瞬、驚いた天桐に矢元も
「そうだぞ士良。もういい加減にしとけ」
と同じく言ってきた。
「な、何をだよ。一体何ことを」
と天桐は白を切ろうとしたら
「もう知ってるんだぞ。お前が戦車の試合に出ることとか」
「メン・タンク・マッチだっけ?面白そうじゃん」
と二人が、なぜか秘密にしていたはずの内容を、その中のことを喋った。
天桐は、そのことに驚いて
「なぜ、それを・・・ハッ」
側にいる加埜の方を振り向く。
だが、加埜は顔を横に振って否定した。加埜の顔を見るに嘘ではないのは分かった。
(じゃあ、どうやって)
天桐がそう考えていると
「自分です」
と誰かが答えた。振り返ってその人物を見た天桐は
「・・・早間、お前」
と後ろに居た早間にそう言った。
「自分がお二人に言いました。全部」
と早間はそう言った。その顔は真剣で嘘でも冗談でもないのが分かった。
そのことを知った天桐は段々、怒りの顔へと変え
「な、なんで話したんだ!」
と早間を怒鳴った。
「言ったろ。二人には話すなって」
と天桐は早間に近寄って行った。
「はい、聞きましたし覚えています」
と早間は答えた。それに余計怒りが増した天桐は
「お、お前、何考えてんだ!?」
と右手で胸倉を掴んだ。
「うっ」
「お、おい士良」
と矢元が慌てたが城ノ崎が止めた。それに加埜も動かない。
「なんで勝手に喋ったんだ。理由を言え!」
と言って手を話した。早間は苦しかったのもあり、地面に膝を付いた。
「勝手に話したことは謝ります。ですが、自分はやりたくて先輩の為だと思ってやったんです」
そう言って立ち上げリ天桐の顔を見て
「後悔ありません」
と言った。
「な、何が俺の為だ。」
と天桐はそう言うが早間はそのまま続けて
「先輩は、本当はあの二人と一緒に出たかったんでしょ」
「!?」
「先輩はあの二人とは心から信頼出来る、大事な親友なんでしょ」
「ン・・・」
「けど、二人のことが大事だから先輩は話したくても話せなかったんでしょ」
「・・・」
「だから、自分があの二人と話せる機会を作ろうと思ったんです」
と本心を話した。
「っ、勝手に・・・するんじゃねーよ。そういうことは」
と天桐は早間から目を離して言った。
そのまま、矢元と城ノ崎に顔を向けて
「二人共、黙っていたことは悪かった。けど、決して二人を仲間外れにしたくてしたんじゃないんだ」
それを二人は黙って聞いている。
「二人とも大事な用事があったし、これから忙しくもなるだろう?だから、敢えて教えなかったんだ」
と天桐が答え、
「けどバレちまったっしな。・・・なぁ、二人は自分たちのことに専念してくれ。俺のことは大丈夫だからさぁ。もう、このことは忘れ」
と言った時だ。
「それは、僕らを巻き添えにしたくないから?」
と城ノ崎は問いた。
「そうなの?」
と再び聞いた城ノ崎に
「・・・あぁ、そうだ」
と正直に答えるしかなかった。
「誰がそんなこと頼んだの?」
「え?」
「誰が頼んだの?」
「そ、それは、別に頼んだとか頼んでいないとか。そういうことじゃなくて」
と天桐が説明しようとすると、城ノ崎が
「ねぇ、士良。僕と出会った時の事、覚えてる?」
と昔のことを聞いてきた。
「あぁ、覚えてるよ。忘れるかよ」
それに天桐は素直に答えた。
「あの時、士良が居なかったら僕も居なかった」
城ノ崎は懐かしい思い出を語るような顔をして話していく。
「だから、今度は僕が助けたいと、ずっとそれを考えてた。どうしても恩返しがしたかった」
と城ノ崎はいつもと違うどこか寂しい顔をしてそう話す。
「・・・あれは別に恩とか、そんなじゃねーから気にするなって何度も言ってるだろ」
天桐が苦い顔をしてそう言うと
「なぁ、士朗。俺との出会いも覚えているか?」
今度は矢元が聞いてきた。
「俺とお前が1年だった5月の時のことを」
「あぁ、・・・覚えてるさ。それも5月じゃねーよ。あの日は、まだ4月だった」
「そうか、ちゃんと覚えていてくれたか」
と少し嬉しくなった矢元は、
「あの時の俺は、士良のことなんかどうでもいいと思って裏切ったのにさぁ。士良。お前は、俺を助けてくれたよな」
「・・・あぁ」
「あの時、俺は後悔したんだ。自分自身が人として男として恥ずかしかった」
「・・・」
「お前に助けて貰った後、お前に謝って礼を言うべきだったのに恥ずかしさの余りに学校にも顔を出せなかった」
「・・・」
「すると、お前から俺の所に来たよな。休んでいた時の溜まった書類や宿題をまとめてもって来てくれて。隣のクラスで関係もねーのによぉ。・・・そして、俺はあの時のことを言ったら、お前は言ったよな。俺はお前を恨んでねーと。ただ、助けたかったらから助けたって」
「あぁ、そうだったな」
と天桐は懐かしく思ったのか少し涙腺が緩んできた。
そして、矢元と城ノ崎の二人は揃って
「だからさぁ、頼むよ」「今度は僕達に士朗を」
天桐の目を見て
「「助けさせてくれよ」」
と言った。
すると天桐は突然、後ろを振り返った。
いきなりだったので皆は疑問に思ったがすぐになぜか分かった。
後ろから肩が小刻みに揺れているからだ。それに僅かに見える頬に水滴が垂れていた。
そして、
「なぁ?」
天桐が話しかけた。
「何?」
城ノ崎が答えた。
「なぁ、ほんとうにいいのか?・・・二人共」
天桐は少し鼻声で話している。
「これから、もっともーと忙しくもなる。だから、バイトも勉強も出来る時間が無くなっちまうぞ」
と言ったが、その言葉を聞いた二人は
「それがどうした」「全然、大丈夫だよ」
素直に答えた。
「くっ」
天桐は鼻に詰まった鼻詰まりをすって。
「本当にいいんだな?」
と再度もう一度聞いた。
そして、二人は、
「あぁ」「勿論だ」
と二人はそう答えた。
天桐は涙を流しながら
「そうか」
と右袖で涙を拭き取ると
「あ、・・・ありがとな」
そう言った。
だが、そんな天桐の言葉に、
「礼なんて言うなよ」「僕たちは」
天桐に向かい
「「仲間だろ」」
と2人は言った。


それから5人は公園から離れて行った。
先頭に加埜が次に矢元と城ノ崎が並んでいる。
最後に居た天桐は、目の前の早間に近づいて
「あ、そのだな。さっきは・・・悪かった。俺の為にやってくれたのに」
と頭をかきながらそう言った。
「いいえ。大丈夫です」
「いや、けど」
「僕は仲間として信頼も低し何にも役に立ちそうには無かったんです。だから、せめて。せめて、これ位のことはしたいと思ったんです」
と早間は寂しい顔をして答える。それを見た天桐は
「痛」
いきなり早間の頭を軽く叩いた。そして、
「何言ったんだ。お前は、頼もしい信頼出来る仲間だろ。それに」
「?」
「俺が出来なかったことを、やってくれたじゃないか。ありがとな早間」
と天桐は照れくさく言った。
それに対して早間は、
「は、はい」
と嬉しそうに少し泣いた。
それから天桐は、凄くスッキリした顔をしていた。
すると加埜が、
「じゃあ、メンバーが揃ったことだしな」
と言ったのに対して、
「あぁ、明日行くぞ。皆で」
天桐はそう言った。


そして、約束の5月22日。
天桐、加埜、矢元、城ノ崎、早間の5人、メンバー全員でアルベルトの所に行くことになった。
いつものバイクでは、二人でしか行けないのもあって、町から出る電車で一番近い駅まで行くことにした。そこからはアルベルトの所までは歩いて1時間以上はかかる距離なのは分かっていたのでから前もって加埜が電話して柴田さんの部下である牧山(まきやま)さんにワンボックスカーで迎えに来て貰った。そこから40分程で目的地に到着するとアルベルトの家の裏側へと牧山さんに案内された。
(そういえば家の裏は見たことねーな)
と天桐が思うと大きなガレージが見えてきた。
「でけーな」
2階だて位ありそうなガレージの中は両開きの鉄の扉が少し空いていて、その隙間から、中の機械音や光がチカチカと出ていた。おそらく、この中で天桐達の戦車を作っているのだろう。
それをじっと見ていると、扉から誰かが顔を出しこっちを見た。
「よう、お前ら。待ってたぜ」
アルベルトがそう言って、ガレージの中から出てきた。
アルベルトは少し黒く汚れた白衣に妙なゴーグルを付けていた。
そして、5人の所に来ると両手を腰にやって顔を突き出して、5人の顔を左右往復して見た。
「よし、ちゃんと揃えてきたか乗員だけは」
「あぁ、なんとかな」
天桐はそう答えた。
「これで必要な戦車乗員メンバーは揃った。まぁ、他に必要な人員は後でなんとかするか」
と言い、アルベルトは少しだけ屈伸をした。
「さぁて。じゃあ、次のステップだ」
「次のステップ?」
その言葉に天桐が疑問に思い
「なんだ、次のステップって」
と天桐が聞くとアルベルトが
「決まってるだろ。練習だよ。れーんーしゅーう」
少し呆れた様な顔をして言う。
「戦車に乗ったことない奴らが、いきなり本番で戦えるかよ」
アルベルトの言うことは一理あるが、実際問題は
「けど、練習なんて」
「戦車が、まだねーし」
「教えてくれる人は誰が?」
「俺は、よくわかんねーや」
「どこでも出来るものじゃないですし」
と皆が無理だろうといろいろ言うと
「安心しろ」
アルベルトはそう言い、ポケットから折り曲がって汚くなった紙切れを1枚取り出し天桐渡した。
「実は、既に俺が用意して頼んである」
渡された紙を見るとそこに戦車道教室という文字が書かれていた。
(戦車道教室?)
天桐はその単語を見て少しだけ疑問に思ったが、
「だからお前ら。そこで戦車のイロハを勉強して来い。明日からな」
アルベルトの言葉でやっと理解した。
 
 

 
後書き
予告:

約束の日までに仲間達のお陰で乗員メンバーを揃った天桐達。
そんな彼らは、突然アルベルトに戦車道教室に行くように言われた。
果たして、彼らは戦車道教室でどうなってしまうのか。


次回、男ばかりだったこの作品にやっと華が・・・。 
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