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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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番外編ExtraEditionパート3

ライリュウside

2025年7月25日 ALO内 シルフ領南海上 トゥーレ島

現実(リアル)でのスグの水泳練習を終え、現在オレ達はALOのシルフ領の南の海に浮かぶ島、トゥーレ島のビーチでくつろいでいる。オレやキリト、ライトにミストとクラインはビーチにパラソルを張って日光浴をしているーーーいや日傘さしてんのに日光浴ってなんだ。

「オメェらよぉ、オレは今日ほどALOの時間が現実と同機してなくて良かったと思った日はねぇぜ」

現実(リアル)はもう夜だからな」

「それは良いんだけど、昼夜逆転しそうで大変なんだよな〜」

「オレら学生は夏休みなんだからそこまで問題ねぇだろ」

「そうだな。終了日一週間前から直していけばいい」

そう。ALOの時間は現実世界とほぼ真逆に設定されていて、夕方からログインしてもコッチでは真っ昼間って事がザラにある。バーチャルMMOってのは割と時間の感覚が狂ってしまう事もあるから、オレも気を付けないとな。それにしてもーーー

「やっぱ海はこうじゃなきゃな!!」

「青い空」

「白い砂浜」

「寄せて返す波」

「眩しい太陽」

『そして・・・』

海の水をかけ合い遊んでいる、華やかな水着の美女妖sーーー

「よう!お待たせ」

『ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!目が!!目がァァァ!!メガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!』

「リアクションがオーバーすぎんだろ・・・」

なんつータイミングで空から颯爽と登場してくれてんだエギル!!オレ達が見たかったのは水着の美女妖精であって、海パン履いた厳ついおっさん妖精じゃねぇんだよ!!!ヤバイ!!ブーメランパンツからモッコリしてたモンが目に焼きついちまった!!!今晩は絶対に悪い夢見る!!!覚えてろよエギルの野郎ォーーー

「おいキリト!マジなんだろうな!?このクエストにクジラが出て来るって話!ユイちゃんすげぇ楽しみにしてたぞ!!」

「そうだぞ!?これでクジラじゃなくてクラゲだったりクリオネだったりしたらシャレになんねぇぞ!!最悪の場合ユイちゃん泣くぞ!!」

「巨大クリオネならちょっと見てみたいけどな・・・」

「クリオネは南海には出現しないぞ?クリオネは冬の北海道のオホーツク海に浮かぶ流氷の周辺稀に現れる微生物であって、こんな暑い夏の海に活動する生物じゃなくてだな・・・」

「くそどうでもいいわ弾」

大事なのはクリオネの生態じゃなくて、これから受注するクエストにクジラが出るかどうかだろうが。実を言うとオレも数人の情報屋からこれから受けるクエストの情報を集めようとしたけど、全くと言っていいほど収穫がなかった。その中にはALOをプレイしていたオレ達と同じSAO生還者(サバイバー)のアルゴもいたけど、あいつからも情報を得られなかった。まあ場所が場所だし、ビックリするほど収穫がないのも無理ないかな。

「みんな、何か情報あったか?」

『収穫ゼロ』

「何もなさすぎてむしろ清々しいな。エギルは?」

「それがな、なんせこんなワールドマップの端っこにあるクエストだから、知ってる奴自体少なくてな。ただ、クエストの最後にどえらいサイズの水生型モンスターが出て来るって話はマジらしい」

それは結構期待できる情報だなーーー希望が見えてきた。

「みなさーん!!そろそろ出発の時間ですよー!!」

「はーい!今行きまーす!!」

クラインの招集の声にアスナさんが大きな声で返事をする。それと同時にオレ達もエギルのせいで見れなかった水着の美女妖精達の方向に目を向ける。オレとて水着の美女に興味がない訳じゃない。これは決してオレがスケベな訳じゃない。言ってしまえばこれは男の(サガ)、絶対に避ける事の出来ない運命なんだ。
オレはこの華やかに煌めく光景を忘れないと思う。
白い布地に緑の肩紐、そして腰が紐になってるビキニを着た金髪ポニーテールのシルフの少女ーーーリーファ。
白いフリルがたくさんあしらわれている胸の露出を少なくしたスカートタイプのビキニを着たツインテールのケットシーの少女ーーーシリカ。
白い布地にグレーの横縞模様が入っている、下がショートパンツのような水着を着たピンク髪のレプラコーンの姐御的存在ーーーリズベット。
白い布地に赤いラインという《血盟騎士団》時代の制服を思い出させる、腰にパレオを巻いたビキニを着た水色ロングヘアーの女性ーーーアスナ。
縦に長い黒い布地にピンク色の横縞模様が入っている胸の谷間を全て露出しているビキニを着た銀髪ツインテールのプーカの妹ーーーミラ。
そして紫系統の色のフリルが数枚あしらってある腹部から下が大きく露出してあるビキニを着た赤髪のサラマンダーの少女ーーーキャンディ。
青い海を背景(バック)にオレ達の下へと歩み寄り、左手の指でシステムウィンドウを操作してーーー

「戦闘準備完了や!!」

男達の短くて儚い夢の世界は早々に崩壊してしまった。

「あ、あの、みなさん?クエスト中はずっとその大装備で?」

「あたりまえでしょ、戦闘するんだから」

「クラインのおっちゃんも早く着替えとけやー」

こうなる事は謂わば必然的だっただろう。これから海中ダンジョンで戦闘になるんだから、着替えるのは分かってただろうに。オレ達はまるで絶望のドン底に叩き落されたようにorz状態になったクラインを見て、自然とこう思っていたーーーこうなる事を覚悟しといて良かった。

「えー、僭越ながら、今日は俺とライリュウがそれぞれパーティリーダーを務めさせて頂きます。俺のパーティメンバーはアスナ、シリカ、リズ、クライン、エギルの6人」

「オレのパーティメンバーはライト、ミスト、キャンディ、ミラの《リトルギガント(仮)》のメンバーとリーファの6人だ。クエストの途中で目的の大クジラが出た場合はオレ達の指示に従ってくれ」

『はーい!』

「このお礼はいつか、精神的に。それじゃみんな、頑張ろう!」

『おー!』

みんなの気合い十分な叫びを聞いて、オレ達はこの妖精の世界でのみ背中に携える事が出来る翅を現し、目的地の近辺の海域荷を目指して飛び上がったーーー未だに辛い現実を受け止める事が出来ないクラインを残して。




******




空を飛んで早くも10分。さっきまでいたビーチがほとんど見えなくなったような海域の上空にみんなで静止し、オレとキリトがシステムウィンドウのマップ表示でダンジョンの位置を確認するがーーーマップと比較してみてそれらしき所が見当たらないな。

「キリト、ここら辺だよな?」

「ああ、座標はこの辺りのはずだけどな・・・」

「おっ、あそこじゃねぇか?」

復活したクラインの声を聞いて、指をさす方向を見下ろしたらーーー確かにそこにあった。広い海域の一角に白い光を発しているポイントがあった。間違いない、あそこだ。

「ミラ、アスナさん」

「うん」

「それじゃあウォーターブレッシングの魔法をかけるね」

オレ達の中で一番魔法が得意なアスナさんと、プーカ特有の音楽魔法を使えるミラがオレ達にウォーターブレッシングの魔法をかけてくれた。この魔法は水中戦闘が得意なウンディーネ以外の種族が水中でも活動可能になる魔法だ。聞いた話だと亜利沙ーーーアリーも使えるらしい。
二人の呪文の詠唱が終わり、自分のHPバーの横に魚の絵が描いてあるステータス付与のアイコンを確認して、全員揃って海に飛び込む。屋内ダンジョンに入る時みたいに日の光が当たらなくなったため、自然と背中から妖精の翅が消える。一応魔法の効果で水中でも呼吸が出来るようになったけど、それと泳げるかは話が別だ。

「掴まれリーファ」

昼間の特訓で初めと比べてかなり泳げるようになったとはいえ、ここまで深いとパニックを起こしてしまう。オレはリーファに手を伸ばし、しっかりと手を掴んだのを確認してリーファを引っ張りながら泳ぐーーー

「ライリュウ!オレも!助けてくれ!オレもカナヅチなの忘れてた!!」

「何やってんだお前(ライト)!!」

カナヅチのクセに何で海に飛び込んだ!!カナヅチのクセに何で特訓に来なかった!!お前何しに来たの!?溺れに来たの!?そういえば翼って中学時代は『悪魔の実の能力者』って言われたレベルのカナヅチだったっけ。今日はオレらのパーティはオレとライトが前衛でガンガン攻めて、ミストとキャンディが中衛で槍やチャクラムで間合いを取りながら攻撃して、ミラとリーファに後衛でサポートしてもらう。そんな作戦を練ってたのにコレか。何で能力者が水中について来たんだろうーーーお前ゴムゴムか?メラメラか?ヒトヒトか?あ、ヒトヒトは意味ねぇわ。

「おーいイチャイチャしてる二人・・・と出来損ないの超サ○ヤ人の能力者。着いたで」

『イチャイチャなんてしてねぇよ(ないよ)!!』

「誰が出来損ないの超サ○ヤ人だ!!!お前ら《リトルギガント》のリーダーであるオレに対してぞんざい過ぎじゃないか!?」

「あれ?リーダーってライトだったっけ?」

『どうだっけ?』

「リーダーとすら思われてなかった!!!」

まあそんなこんながありまして、改めてキャンディが指をさした所を見てみるとーーーそこはまさに海底神殿だった。まるで大昔に嵐や超災害によって国が海底に沈み、そして文明が滅んだような雰囲気を醸し出していた。

「すごい・・・」

「あっ!あそこに誰かいるわよ!!」

シリカとリズさんの声を聞いて、その場所を見るとーーー確かに人がいるな。

「クエストNPCみたいだな」

「海底人、ってところか?」

「何言ってやがるミス公!!海の中で困ってる人とくりゃ、人魚と相場が決まってるぜ!!!マーメイドのお嬢さん!!今助けに行きますよーーー!!!」

「ミス公ってなんだオイ」

クラインのミストに対する呼び方はどうでもいいとして、海底人って線も十分あるぞ。人魚っていっても、男の人魚もいるんじゃねぇか?確か伝説の海の神ポセイドンとその息子のトリトンは上半身が人間で、下半身が魚っていう人魚の姿をしているって神話だったよな。北欧神話かどうかは分かんないけどーーーあっ、人魚じゃなくて魚人って線もあるな。
まあそんなことはクエストNPCの姿を見れば分かる事だし、さっさとクラインを追いますかーーー

「何かお困りですか?お嬢さ・・・ん!?」

クラインが膝を着き、手を伸ばした相手は人魚でも魚人でもなくて、更にはお嬢さんでもなかった。全身を神族のローブのような衣装で身を包み、長くて白い髪の毛や髭を生やしたーーー

「お嬢さんじゃなくて、お爺さんでしたね」

「ユイちゃん、クラインを笑わないでやってな?このオジサンは人魚に会うのが夢で、海底神殿に人がいたから勘違いしちゃったんだよ」

「じゃあオレが笑うよ。ブハハハハハハハ!!!人魚のお嬢さんwwwwww」

「ライトてめぇ!!!」

海底人のお爺さんを人魚のお嬢さんと見間違えるなんてーーー可哀想なクライン。同情するよ(超棒読み)。

「どうしました?ご老人」

「オレ達に出来る事なら、何でも言ってください」

オレとキリトがこのクエストNPCのお爺さんに声をかけた事で、クエスト《深海の略奪者》を開始するウィンドウが表示された。オレ達は二つのパーティでレイドを組んでいる事にしてるから問題なくクエストを受けられるため、キリトがクエストの受注を認証する。

「おお、地上の妖精達よ。この老いぼれを助けてくれるのかい?実は古い友人への土産物をこの神殿を根城にしている盗賊どもに奪われてしまっての。ワシの代わりに取り返してくれんかのう?」

「任せてください」

聞いた限りだと戦闘ありのお使い系クエストみたいだな。そして盗賊に奪われた土産物はサッカーボールくらいの大きさの真珠らしい。

「デカッ・・・!!」

「ネコババして売り飛ばしたりしちゃダメですよ?」

「し、しないわよ今回は・・・」

目を見て言えよ金の亡者。SAOで散々オレのスイーツタイムを盗撮しやがって。もしまた同じ事したらその利益の7割はギャラとして貰うからな。

「よろしく頼むぞ、妖精達よ。見事真珠を取り戻してくれれば、たっぷりと礼をするでのう」

そう言ってクエストNPCのお爺さんーーー【Nerakk】との会話は終わり、クエストがスタートされた。 
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