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『現実世界』

作者:零那
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『蝶』



感情なんて面倒なものは総て剥ぎ取ってしまおう。
感情なんかに従ってると苦しくて仕方がない。

被害者ぶったり犠牲者ぶったり、そんなふざけた演技で何がしたいんだろう。
君は簡単に泣けるし俳優業が向いてると言ってあげた。
君は真っ赤な顔で怒ってたね。

演技で泣けるなんて立派だと褒めたつもりだったんだ。
僕はもう泣けないから。
どんなに苦しくても、どんなにイタくても、どんなに悲しくても...。

心を動かさないようにしたんだ。
だからもう涙も出ないし笑うことも無いんだ。
泣いたり笑ったり、ころころ変わる表情の君を純粋に羨ましいと思うよ。

黒き蝶が横切る。
昔の事を思い出す。
大事な思い出。
蓋をして大事にしまっていた筈の父との思い出。

心を閉じた時、堅く蓋をした。
感じてしまわないよう、またそっとしまい込む。
黒き蝶は羽をはためかせ、ひらりと自由に舞う。


 
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