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東方叶夢録

作者:くしゅん
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博麗神社にて

 
前書き
前回を読み返したところ2つ程誤字がありましたねぇ。弱気だったので許して下さい(白目) 

 
「何故俺は片付けの手伝いをさせられているんでしょうか…」
叶夢と八雲紫が宴会に参加してからおよそ1時間後。叶夢は宴会の片付けの手伝いをさせられていた。
「さっきまで飲み散らかしてた人達はさっさと帰っちゃいましたし…」
先程まで叶夢は3人の人物と飲んでいた。
1人目は巫女の次にコンタクトを取ってきた烏天狗の射命丸文。彼女は幻想郷で新聞記者をやっているらしくネタになりそうという理由で叶夢にインタビューをしてきたのだった。酔わせて聞き出すという理由で後述の伊吹萃香に次いで酒を勧めてくる人で今までそんなに酒を飲んだことがなかった叶夢は気を失ってしまった。が、目が覚めるまで彼女の膝枕というサービスを受ける事になっていた。曰く「インタビューを受けてくれたお礼と飲ませ過ぎたお詫び」だそうだ。母親以外で初めての膝枕だったので相当慌てたのは言うまでもない。
2人目は鬼の伊吹萃香。八雲紫がわざわざ外の世界から引き込んだのは初めての出来事だったので興味が湧いたらしくフレンドリーに話しかけてきた。鬼というのは比喩表現ではなく本当に鬼で頭から立派な角が二本生えており見た目は小学生程度なのだが無限に酒が出てくるという瓢箪を常に持ち歩いている事から相当な酒飲みであることがわかった。叶夢は未成年故に酒は断ったのだが彼女曰く「幻想郷にゃちょっとしたルールはあるが堅苦しい法律何てものはない。だから飲め」とのことで鬼の酒を飲まされた。気を失ったのは主にこれが原因である。
3人目は覚妖怪の古明地こいし。本人曰く「無意識で一緒にいた」とのこと。覚妖怪というのは第三の目(サードアイ)を持ちその目で見ることで他人の心が読めるそうだ。しかし彼女は目を閉ざしたので読めないらしい。閉ざしたと言うよりは強引に瞼を縫い付けてあったようにも見えたのだが。心を読む能力を失った代わりに人と自分の無意識を操る事が出来ると言っていたが無意識を操るというニュアンスが叶夢にはよく分からなかった。
ちなみに3人に1度年齢について聞いてみたのだが女性に歳を尋ねるなんて失礼だと言われはぐらかされた。射命丸文はともかく他2人は完全に小学生の容姿なので女性とはなかなか違和感がある。

「はいそこ、手を休めない」
叶夢が回想に浸っているとそれを現実に引き戻す声。この神社の持ち主、博麗霊夢だ。
「全く…」
少しばかり不機嫌だがそれは八雲紫から納得のいく説明を得られなかったからだ。
月の薬師とともに問い詰めたものののらりくらりとかわされ結局聞き出せた情報は2つだけだった。
1つは冬宮叶夢を自ら引き入れたのはそれ相応の事情があること。彼女の気まぐれではなく何かはわからないが事情があるということだ。
もう1つはその事情について叶夢は知らされていないことである。要するに叶夢から聞き出す事は出来ないのである。これではその事情とやらを知るのは不可能だろう。
「まあまあ、そんなにピリピリしないの霊夢〜」
悩みの種の本人こと八雲紫は何故か従者を先に帰らせて片付けの様子を眺めていた。
「残ってるならあんたも手伝いなさいよ」
「はいはい」
「博麗さーん、これはどちらへー?」
「それはこっち持ってきて」
テキパキと片付けを進めあと少しで終わりと言うところで八雲紫が口を開いた。
「ねぇ霊夢、お願いがあるの」
「何よ」
「叶夢をしばらく預かってくれないかしら?」
「は?」
「え?」
博麗霊夢と叶夢から間抜けな声が漏れる。
「だーかーらー、叶夢を預かってって言ってるの」
「嫌よ、めんどくさい」
バッサリだった。少し叶夢はへこんだ。
「そう言うと思ったわ……霊夢、ちょっとこっちに来なさい」
「だから何よ……」
そして叶夢から背を向け何かを話し始める2人。
「ゴニョゴニョ」
「えっ……そんなに……」
「ゴニョゴニョ」
「嘘、ちょ、詐欺?」
「ゴニョゴニョ」
「ここで渡すって!?ちょっと待ちなさい!金庫取ってくるから!というかあんたが来なさい!」
そんな事を言いながら2人は神社の中へ消えていった。数分後戻ってくると博麗霊夢は先程までのしかめっ面はどこへやら。とてもいい笑顔だった。
「叶夢、歓迎するわ。好きなだけ居なさい」
「凄い変わり身を見ました」
「うふふ、わかってくれて嬉しいわ」
先程の会話から察するに金で取引したようだが一体どれ程の額だったのか。博麗霊夢の笑顔からすると相当な額のようだが。
「ああ、これは普段の私の行いが良いからようやく神が微笑んだのね……」
もはや恍惚としていた。トリップしていた。
「それじゃ、私は帰るわ。またね叶夢、霊夢と仲良くね」
「はい、さよなら八雲さん」
「そうそう、着替えとか神社の中に入れといたからそれを使って」
「おお、ありがとうございます」
アフターケアという奴だろうか。何にしても着替えがあるのは助かった。
「霊夢、叶夢を宜しくね」
「ええ任せなさい。金づ…お客さんを大切にするのは普通だものね」
つっこんでもスルーされるのが分かっていたので叶夢はつっこむのをやめた。
ひらひらと手を振りながら八雲紫はスキマへと消えた。
「え、何ですかあれ」
「スキマよ。知らなかったの?」
「初めて見ました…」

神社の中に案内される叶夢。木や畳の匂いが田舎を彷彿とさせた。
「客用の部屋があるからそこがあんたの部屋ね」
「わかりました」
「私はもう寝るけど何か説明は必要かしら?」
「トイレの位置だけお願いします」
朝起きたら必ずトイレに行く身としては聞いておかなければならなかった。
「ん、ここよ」
「ありがとうございます」
しっかりと位置を把握する。これで安心して熟睡できるというものだ。
「あー……悪いんだけどその部屋から布団持ってってちょうだい」
「はーい、それじゃあおやすみなさい、博麗さん」
「おやすみ、それと霊夢でいいわ。苗字で呼ばれるの慣れてないし」
「了解です、霊夢さん」
そう言って布団を持って別れる。別れ際に「ふふふ…新品…」とか言っていたが何の事だったのか。

「よし、寝巻きも用意してくれるとはなかなかサービスが宜しいですな」
用意されていた寝巻きに着替える。着替えとは全て叶夢のものだったが一体いつ持ってきたのか。深く考えてもわからないので叶夢は考えるのをやめた。
「ん…?」
布団に入って気づいた。この布団から霊夢の匂いがすることに。意図して嗅いだ訳では無いが先程まで一緒にいた為何となくわかった。
(つまりこれは…普段霊夢さんが…)
そこまで考えた時点で思考を強制遮断した。そして代わりに生まれたのは疑問。何故霊夢は自分の布団を叶夢に貸したのか。そこで先程霊夢が呟いていたことを思い出す。
(ああ、そうか…さっきの新品ってそういう…)
疑問の回答はすぐに出た。恐らく叶夢用に八雲紫が新しい布団を用意したのだろうがそれを霊夢が使っているのだろう。
(現金な人ですね…………zzz)
ここら辺で叶夢の意識は途切れた。

「凄い…!なんてふかふか…!」
霊夢は感動していた。八雲紫に叶夢用として渡された布団だったがそれを叶夢に告げず自分のものにしたのだ。現代の羽毛布団は今まで霊夢が使っていたものとは明らかに別物だった。
「これは…すぐに寝れる…」
暖かく柔らかい布団が眠気を誘う。今日知り合った男が自分の布団を使う事に少し懸念を抱いていたが既に吹っ飛んでいた。布団だけに。
「ふへへ…しあわせー…」
ご満悦だった。

「んー…今何時…」
朝。幻想郷にて初めての朝だった。
「トイレ…」
昨日教えて貰った位置にちゃんと辿り着き用を足す。その後縁側に出た。
「夢じゃないんですねー…」
昨日で受け入れたはずだったがほんの少しだけ夢オチを期待していたのだ。そんな叶夢の淡い希望もあっさり打ち砕かれこれからどうなるんだろうなぁとか考えていると後ろに気配を感じた。
「おはよ」
「おはようございます、霊夢さん」
気配の正体はもちろん家主の霊夢さん。寝巻きではなく既に巫女服であった。
「ご飯作るからあんたも手伝いなさい」
「すいません、俺料理できないでs……あふ」
「…先に顔を洗ってきなさい。そこを曲がって最初の部屋が洗面所だから」
「ふぁい…」
言われたとおり顔を洗う。すっきりしたところで戻ると既に霊夢は料理の準備を始めていた。
「料理できないならお皿出してちょうだい。そこの棚にあるから」
「はーい」
棚から適当に食器を取り出していく。
「霊夢さんのコップとか箸ってどれですか?」
「あー、後で自分で出すから覚えてね」
どうやら積極的に叶夢を使っていくつもりのようだ。まあ何もしないよりはマシなのだが。
「はいかんせー。運ぶわよ」
「いぇっさー」
完成したようだ。言われたものを茶の間に運んでいく。
「いただきまーす」
お互い会話もなくもくもくと食べる2人。その静寂を破ったのは霊夢だった。
「ねぇ」
「はい?」
「紫に何か聞いてない?」
「何かって…何も」
実際何も聞かされてないのは少し問題な気もするが八雲紫がどこにいるかもわからないので聞きようがなかった。
「そ……じゃあ何か気になることを言ってなかった?」
「気になること……あ」
ふと昨日の夜を思い出した。神社に行くまでの道のりで言っていた事だ。
「何か言ってたの?」
「俺が死んだら困るって言ってました」
「そりゃ困るでしょうね。あいつにも何か事情があるみたいだし。他は?」
「んー…特に何も」
他に特に気になることも無かったのでそう答えるしかない。
「んー」
何かを考える素振りを見せる霊夢。
「ダメね。情報が足りないわ」
やがて諦めたように食事を再開した。つられて叶夢も再び食べ始める。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「お粗末さま。それは何より」

食器を片して部屋に戻った。寝巻きから着替え神社を探索する事にした。
「結構広いんですねー」
うろうろと探索する。外に出て周りも探索する。
「え……温泉?」
少し奥の方に温泉らしき湯が湧いていた。どうやらお風呂は豪華なようだ。
「おーい、叶夢ー」
そこで霊夢のお呼びがかかった。声のする方に行くと霊夢が風呂敷を持って立っていた。
「出掛けるわよ。準備を……ってすることも無いか」
「どこに行くんです?」
聞くと霊夢は叶夢に風呂敷を投げ渡しこう言った。

「人里に買い物よ」 
 

 
後書き
地の文の人名についてですが半ば叶夢君とリンクしてるので叶夢君が名前呼びをする人は名前のみで行きます。決してめんどくさいとかじゃないです。ホントですよ? 
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