| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

東方叶夢録

作者:くしゅん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

幻想郷

 
前書き
前回書き忘れたのですが不定期更新になります。できるだけ頻度は高めにしますが。また前回を読み返してると2連続でそしてを使ったり地の文に俺があったり色々アレですが初心者の稚拙な文故に見逃して下さい(懇願) 

 
「幻想、郷?」
冬宮叶夢は混乱していた。目を開けたら全然違う場所にいたのだから。
「そう、幻想郷。貴方が言う現実から逃げた先がここよ」
ここで叶夢は思い出した。自分が現実から逃げたいと言ったことに。
「……夢?」
「夢じゃないわ、現実よ。と言っても貴方が知る現実ではないのだけれど」
「えーと…」
脳の処理が追いつかず思考が鈍くなっている。うんうんと唸っていると
「わかりやすく言うと異世界ね。貴方が知る世界より少し文明は遅れているけれど」
「それなんてファンタジーですか…」
異世界。それは小説や漫画、アニメなどで主人公が冒険するようなものだ。それらはフィクションであり現実には存在しないはずだ。
「決めつけはよくありませんわ。これは紛れもない現実。貴方が願った先の世界。信じられなくても現実は変わらないのよ?」
そういう八雲紫は微笑をたたえている。その顔を見て叶夢は悟る。
(ああ、気づいてたじゃないですか。この人は何処か得体が知れないと。この人なら何をやってもおかしくないと)
「……わかりました。一先ず受け入れます」
「そう、それでいいの。じゃあこれから」
「帰してください」
「一緒に…って、え?」
八雲紫は驚いたと言うように目をぱちくりさせる。当然だろう、人が急に異世界に連れてこられたら帰すよう要求するのが普通だ。
八雲紫は一瞬驚いた顔をしていたがそれもすぐに笑い言った。
「それはできないわ。だって貴方が望んだんですもの」
「今は帰りたいと望んでいます」
「1度契約したものは変えられませんわ」
「そんな…」
完全に詐欺の手口だと思った。
「諦めなさいな。さっき一先ず受け入れたって言ったでしょう?なら次は適応なさい」
「……」
どうやら本当に帰す気はないらしい。
「ふふ、そんな怖い目で見ないで。お姉さん悲しくなっちゃうわ。それじゃあ行きましょうか」
「行くって、どちらへ?」
「着いてくればわかるわ」
そう言って歩き出す八雲紫。この世界について何もわからない叶夢はついていくしかなかった。

「……ん?」
隣の茂みが揺れた気がした。何かと思って近づいてみると茂みから巨大な口が出てきた。
「アアアア!!」
「え」
食われる、そう思った瞬間その口は跡形もなく消し飛んだ。
「え?」
「全く、何してるの?叶夢」
いつの間にか叶夢の目の前にいた八雲紫。
「えっと、今大きな口がですね…」
「大丈夫よ、もう殺したもの」
あっさりそう言った。殺した。彼女が?どうやって?というかさっきのは何だ?様々な疑問が頭を巡る。
「そうそう、言ってなかったけど夜の幻想郷は危険な妖怪が出るわ。今後過ごす上で殺されないよう気をつけてね」
妖怪。現代の日本では時計やらなんやらで可愛いのが話題だがそれとは全くの別物だった。
「妖怪……さっきのは妖怪なんですか」
「そうよ。知能を持たない低級妖怪の1人。運が悪かったわね、美味しそうな人間を見つけたと思ったら近くにこの私がいたんですもの」
「美味しそうって……食べるんですか、人間を」
確かに口だったが。さっき食われて死んでいたかと思うと途端に寒気が走った。
「ええ、そうよ。妖怪と人間が共存する世界。それが幻想郷よ」
「俺の知ってる共存は食う食われるの関係じゃないんですけど」
それは共存ではなく一方的な、動物と餌のような関係ではなかろうか。
「そこはそれ、この世界のルールによって共存という関係が保たれているのよ。それより少し急がないと、終わってしまいますわ」
「何が終わるんです?」
「宴会よ」
「宴会ですか」
叶夢には縁のない言葉だった。打ち上げに参加した事はあるが宴会程金がかかるものではない。というかその宴会には妖怪も参加してたりするんだろうか。
「って、宴会会場に向かってるんですか?」
「そうよ、貴方を紹介しないとね」
そう言ってまた歩き出した。
が、叶夢は先程の事を忘れられず少しびくつきながら歩いていた。すると先を歩いていた八雲紫が近づいてきた。
「もう、そんなに怯えなくても大丈夫よ」
「あ…」
そう言って頭を撫でてきた。
「私がそばにいる限り貴方は死にませんわ。だって死なれては困りますもの」
「困る…?」
「ええ、とても困るの」
何が困るのだろうか。今の叶夢には到底わからなかった。

「もうすぐよ」
そう言われて少しすると何だか騒がしい音が聞こえてきた。どうやら宴会会場が近いらしい。
「神社…?」
見えたのは鳥居だった。この先から音や声が聞こえてくるので宴会は神社で行われているようだ。
「さ、これを登ったらすぐよ」
階段を登るにつれ徐々に音が大きくなってゆく。いったいどんな人物が宴会をしているのだろうか。期待と恐怖を混ぜこぜにしたような感情が叶夢を支配していた。
「あの」
「何かしら?」
「その宴会にはどんな人が参加してるんですか?」
「そうねぇ、巫女とか魔法使いとか、妖怪に神、鬼、蓬莱人その他色々ね」
「……」
何を言ってるのかわからなかった。巫女はわかるがその先からは明らかにフィクションのものだ。
「……やっぱり夢じゃないですかね」
「逃避はそこまでよ。着いたわ」

「あ、紫。やっと戻ってきたのね」
階段を登りきったところで話しかけてきたのは白髪の女性。また独特な服装をしている。
「おっそい。もう解散しようとしてた所よ」
そう言ったのは巫女服を着た女の子。
「えー、私はまだまだいけるぞー」
その後ろから声を上げたのは角が生えた女の子。
「ん?お前、誰だ?」
ここで初めて叶夢に興味を示したのが白黒の女の子。
「はいはい皆ちゅうもーく。ここで新入りの紹介をするわよー」
ざわざわと徐々に叶夢に注目が集まる。
「彼はさっき幻想入りした冬宮叶夢よ。はい叶夢、自己紹介」
急にこちらに視線が集まる。別段あがり症でも無いのだがこの時はやけに緊張していた。恐らく当てられる気配の強さが人のそれとは比較にならないからだろう。それに加え面子の異様さ加減が叶夢のキャパを遥かにオーバーしていたのもあるかもしれない。
「冬宮叶夢、です。八雲さんに拉致されて来ました」
静寂。自己紹介をしたものの観察するような目は収まらぶとても居心地が悪かった。
「ちょっと叶夢、その言い方は酷くないかしら?同意の上じゃない」
その空気を破ってくれたのが八雲紫。叶夢は内心感謝しつつ対応する。
「確かに同意はしましたがあれは詐欺です」
「まだ言うのかしら。私は貴方の願いを叶えてあげただけよ」
「ちょっと」
八雲紫と叶夢の口論に口を挟んできたのは巫女。何やら怪訝そうな目でこちらを見ている。
「さっきのは本当なの?」
「ほんとですよ。拉致されたんです」
「そこじゃないわ、ああいやそこなんだけど。紫に連れてこられたのね?」
「同意の上よ」
「…ふーん。まあいいわ、あんたも参加するわけ?」
「はぁ、まあ。そうらしいです」
紹介するとは言われたが参加するかどうかは聞いてなかったので曖昧な回答になってしまった。
「あの!」
「わっ」
突然大きな声で詰め寄ってきたのは黒髪に赤い帽子を乗せた女の子。
「私、清く正しい射命丸と申します!冬宮叶夢さんでしたね、少しインタビューに付き合って下さい!」
「構いませんけど…」
「ぃよしっ!紫さん、借りてきますねー!」
「うわ、ちょっ」
強引に引っ張られる叶夢。女の子とは思えない力強さだった。

叶夢が射命丸に拉致られた後。
「さてさて、遅れちゃったけど少しの間飲ませてもらうわよ」
「待ちなさい、理由を聞かさない」
「そうよ紫。貴女が自分から出向いて幻想入りさせるなんてどういうこと?」
そう言ったのは巫女と月の薬師。
「宴会が終わったら話すわ。ら〜ん〜、私の分もおねが〜い」
しかし八雲紫は自らの従者の元にふらふらと逃げてしまった。

「……今すぐ終わりにしちゃダメかしら?」
「まあ、後で話すって言ってたし少しくらい飲ませてあげましょ」 
 

 
後書き
今回は誤字脱字もないと思います。多分、きっと(弱気) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧