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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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45.式典とは重要なもの。望む望まぬに関わらず。

<グランバニア城>

俺は今、オジロンの隣で謁見に立ち合っている。
王になる為の一環として、ほぼ毎日オジロンと行動を共にしている。
もう飽きた。
王様なんてどうでもいい。
ビアンカとイチャつきたい。

そのビアンカも、お腹がかなり大きくなり毎日辛そうだ。
日々生活するだけで体力を奪われるらしく、夜は早く寝てしまう。
しょうがないからピエールの所へ行って『欲求不満です』って言ったら、沢山のイオラをプレゼントされた。
言っただけじゃん!


戴冠式も間近に迫り、皆慌ただしい。
俺は『ひっそりと戴冠式は済ませましょ』って言ったのに、国務大臣が『そんな訳にはいきません!大々的に、式後の祝賀会も盛大に執り行います』って、率先して取り仕切っている。
俺は言ったんだ『いやいや、そんなに目立つ必要は無いでしょう。気付いたら王様が変わっていたってぐらいでいいんじゃない?』ってね!
そしたら『いい訳ねぇーだろ!!』ってみんなに怒られちゃった。

今日も戴冠式と祝賀会の打ち合わせで、国務大臣と話し合っている。
「……と言う様に、新国王陛下の挨拶の後、盛大に祝賀会を開催するつもりです。如何ですかなリュカ殿?」
「うん。盛大にする必要無いよね。ひっそりと身内だけで乾杯しよ。あと、新国王の挨拶もいらないよ、顔見せだけでいいよ」
「何を言われます!このグランバニアの新たなる国王陛下のお声を、国民全員に聞かせるありがたい瞬間ですぞ!また国民全員が心待ちにした、新たなる国王陛下のご即位ですぞ!皆で祝わずどうするのですか!」
何かコイツ、俺の嫌がる事ばかりする。
試練押しつけたり、スピーチ押しつけたり…
ハッキリ言ってこれは打ち合わせじゃない。
俺に、こんな嫌がらせするよって報告しているだけ。
断っても強行される。


今日のお勤めから解放され、ビアンカとまったりタイムを過ごす為中庭を横切ると、後ろから呼び止められた。
「リュカ陛下!」
振り向くと、そこにはパピン兵士長と、いつぞやの剣術少年が寄り添って立っている。

「パピンさん…『陛下』はまだ早いって!」
出来ればそんな呼ばれ方する日は、一生来ないでもらいたい。
「ははは、申し訳ありません。しかし、時間の問題ですから」
「そちらの剣術少年は?」
またドリスのパンチラを拝みに来たのかな?
「はい。私の息子のピピンです。以前リュカ殿に魔法を御指南頂いたそうで…直接お礼を言いたいと申しまして、ご迷惑かと思いましたが連れてきてしまいました」
「指南なんて事は…ただ、ドリスのパンツを見ただけですから。ねぇ」
ピピンは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「それにお礼だったら言葉じゃなく、立派な兵士になるという態度でお願いしたいな」
「ピピン、これは高く付いたな。生半可な気持ちでは、お礼しきれないぞ」
「はい!父さん。僕、リュカ様のご期待に添える様頑張ります!」
俺も父さんの背中を見て、こんな気持ちでいた時代もあったなぁ…

「それとリュカ殿。もう一つお願いがあります」
「お金なら持ってないよ。全部ビアンカが握っているから」
何故か俺に金を渡すと、碌な使い方をしないと思われている………まぁ、否定はしないけどね。
「い、いえ!違います。リュカ殿の腕前を聞き及びまして、私と手合わせをお願いしたいのです」
「痛い!痛い痛い痛い!頭痛でお腹が痛い!だから無理!」
俺、病人だから!
ムリだから!
イヤだから!!

「そんな意地の悪い事を言わず、どうかお願いします」
「何でそんなに戦いたいの?ピエールだったら相手してくれるよ。ピエール凄く強いよ」
しかも可愛いときたもんだ…絶対、俺の相手をするより楽しいよ!
「ピエール殿とは幾度か手合わせをして頂きました。その際、リュカ殿の強さには遠く及ばないと聞きまして…どれほどのものなのかを経験したく、お願いしております」
ピエールのヤツ、ここにきて嫌がらせをしてきやがった。
ふられた腹いせか?

だいたい勝てる訳ねぇーじゃん!
グランバニア随一の戦士だよ!
これアレか?
最近息子が自分より俺に敬意を持ってしまったから、ここで父さんの方が強いんだよ的なアピール?
いや分かるよ…分かるけどさぁ…

あ~…きっとOKするまで諦めないんだろうなぁ~…
めっちゃ瞳を輝かせてるじゃん…
サッサと負けて優越感に浸らしてやるか。
「じゃぁ…ここでいい?」
「是非もない」

パピンは嬉しそうに剣を抜き、俺に向かって構えをとる。
俺は剣を正面に構えパピンの動きを待つ。
パピンは鋭く踏み込むと、右へ左へ絶え間ない連撃を繰り出す。
とは言え、思っていた程本気では無い様だ。
どうやらアレだ!
接待ゴルフならぬ接待手合わせだ。
俺に花を持たせ媚びを売る。
う~ん…出世する男は違うね!
勘違いしてたよ俺…
俺、褒められるの好きだから、受け取っちゃうよ。そう言うヨイショは。


<グランバニア城>
ピピンSIDE

すごい!
素人の僕から見ても、父さんの連撃は重く早く全てが本気だ。
王様に対して手加減していない。
いや…こちらから申し込んだのだから、手加減などしたら失礼なのだ!

でも、掠りもしない…リュカ様は涼しい顔で去なしている。
父さんは顔から汗を流し肩で息をしているのに、リュカ様はいつもの優しい笑顔で汗一つかいていない。
リュカ様は、あの大盗賊カンダタ一味を一人でやっつけてしまったのだ。
父さんも部隊を率いて何度も討伐に行ったのに、逃げられてしまった。
その時に大勢の部下を失い、父さんも大怪我をした事が何度もある。

気が付くと中庭の周囲に大勢のギャラリーが集まっていた。
ドリス様やサンチョ様。手の空いている兵士達。
4階にある王家の寝所のテラスからは、とても美しい女性が3階の中庭を眺めている。
あの方がビアンカ様だろうか…リュカ様の奥様なだけあって凄い美人だ。
ビアンカ様の隣にはピエールさんも一緒にいる。
ピエールさんには何度か指南を受けている。
その時聞いたのだが、『リュカは、馬鹿でスケベでお調子者だが、それに目を奪われてはいけない。真に強い男だ』と。
そんなリュカ様に仕える兵士に早くなりたい。

「ま、参りました」
別の事を考えていたせいで肝心な場面を見逃してしまった様だ。
父さんの首元にリュカ様の剣が添えられている。
「悪いね、パピンさん。息子さんの前で…」
「いえ…己が不甲斐なさのせいです…」
リュカ様格好いいです。
負けちゃったけど父さんも格好いいです。
早く二人に追いつける様に頑張らないと。

ピピンSIDE END



 
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