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ハイスクールD×D ~赤と紅と緋~

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第1章
旧校舎のディアボロス
  第5話 やってきました、オカルト研究部!

 明日夏から俺が悪魔になったことなどを説明され、明日夏たちの秘密を打ち明けてもらい、一晩たった朝、俺と明日夏と千秋は久しぶりに三人で登校していた。
 だが──。

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 登校を始めてから、俺たちの間にいっさいの会話がなかった。
 あ、カン違いしないでくれよ。別に俺が悪魔になったことや、明日夏たちの秘密を知ったことでお互いに気まずくなったわけじゃねぇよ。
 そのことに関しては特にお互い気にしてない。
 最初は気まずい雰囲気になったが、それも別に、お互いに『自分のことを相手が避け始めてしまったかも?』なんて悩んでただけで、すぐにそんなことないってわかったら、三人で思わず笑ってしまった。
 そんな感じで、俺が悪魔になり、明日夏たちの秘密を知っても、俺たちの関係は昔のままの仲のいい幼馴染みのままである。
 じゃあ、なんで会話がないのかというと──。

「・・・・・・・・・・・・うぅぅ・・・・・・」
「大丈夫、イッセー兄?」

 うなだれながら呻く俺を千秋が心配そうに覗き込んでくる。
 実は、朝から妙に体がダルく、日差しがキツいのだ。そのせいで、あまり会話する気になれない。
 これは昨日からそうで、このせいで朝に起きられず、千秋が起こしに来てくれなかったら、危うく遅刻するところだった。
 どうにも明日夏が言うには、悪魔は闇に生きる種族で、光が苦手みたいだ。
 いまの体調も、悪魔の体質によるもので、朝日にやられてしまっているようだ。逆に夜になれば活発になり、昨日のように身体能力が上がるようだ。

「・・・・・・まるで吸血鬼だな・・・・・・」
「だったら、灰になってるぞ」
「あっ、そっか。ていうか、吸血鬼も実在するのか?」
「ああ、いるぞ」
「妖怪とか、魔法使いもいるよ」

 もう、なんでも実在しているな。
 そんな感じで、ダルい体を引きずって、俺は二人と学校に向かうのだった。


―○●○―


 授業が終え、放課後になると、俺と明日夏はリアス先輩の使いを待っていた。

「たしか、放課後に来るんだよな?」
「ああ」

 昨日、リアス先輩が今日の放課後に使いを出すと言っていたから、そろそろ来る頃だろう。

「なあ、明日夏」
「なんだ?」
「使いってのは、やっぱり──」
「ああ。おまえと同じ眷属悪魔なのは間違いないだろう」

 俺以外の眷属悪魔かぁ。どんな奴なんだろう?
 かわいい美少女とかだったらいいなぁ!

「「「「「キャーッ!」」」」」

 突然、教室内に女子たちの黄色い歓声が沸き起こる。
 歓声の発生源にはクラスの女子たちが群がっており、その中心に金髪で爽やかな笑顔を浮かべている男子生徒がいた。
 木場祐斗──俺と明日夏とは同学年で・・・・・・学園女子のハート射抜いている学校一のイケメン王子と呼ばれている。つまり、俺たちモテない男子生徒全員の敵だ!
 そんな木場をクラスの女子たちはうっとりした表情で見つめていた。
 ちなみに、明日夏も木場ほどじゃないが結構モテてる。
 フン! イケメン死ね!

「ちょっと、失礼するよ」
「どうぞどうぞ!」
「汚いところですけど、どうぞ!」

 木場は女子たちの輪から抜け出すと、まっすぐこちらにやってきて、声をかけてくる。

「や。どうも」
「・・・・・・なんだよ?」

 俺がおもしろくなさそうに返してると、明日夏が木場に問いかける。

「おまえがグレモリー先輩の使いか?」
「うん。そうだよ」
「ッ!? じゃあ、おまえが!」

 まさか、先輩の使いが木場だったなんて。

「二人とも、僕についてきてくれるかい?」

 それを聞き、俺と明日夏は立ち上がる。
 すると、話を聞いていたクラスの女子たちが一斉に悲鳴をあげる。

「そんなぁ!? 士騎くんはともかく、エロ兵藤が木場くんと一緒に歩くなんて!?」
(けが)れてしまうわ、木場くぅん!?」
「木場くん×士騎くんはありだけど、木場くん×エロ兵藤のカップリングなんて許せない!?」

 クッソォ、わけわかんねぇこと言いやがって。
 女子たちの言葉をなるべく聞かないようにしながら、俺は明日夏と一緒に歩き始めた木場についていく。
 そんな中、明日夏が木場に話しかける。

「木場」
「ん。なんだい?」
「妹も連れてっていいか? ちゃんと事情は知っている」
「うん。それならいいと思うよ」

 了承を得た明日夏は、ケータイで千秋を呼び出す。
 呼び出された千秋はすぐにやってきて、再び歩き始めた木場に俺たちはついていくのだった。


―○●○―


 木場に連れらてやってきたのは、以前リアス先輩を見かけた学園の旧校舎だった。
 旧校舎っていうから、古くてボロボロなイメージがあったけど、中に入ってみると、多少の古くささはあったが、埃などは一切なく、小綺麗なものだった。
 それを見て、家事好きの明日夏も感嘆の息を吐くほどだ。

「着いたよ」

 木場がとある教室の前で止まって言う。
 戸にかけられたプレートには『オカルト研究部』と書かれていた。
 そういえば、リアス先輩って、オカルト研究部の部長を務めてるって聞いたことがあったな。

「部長、連れてきました」
「ええ、入ってちょうだい」

 木場が確認を取ると、中からリアス先輩の声が聞こえてきた。
 それを聞いた木場が戸を開け、俺たちもあとに続いて室内に入る。
 室内は薄暗く、なんとも不気味な雰囲気を醸し出していた。灯りもロウソクの火だけだ。
 奥のほうに立派なデスクと椅子のセットがあり、ソファーがいくつかとテーブルがあった。
 で、ソファーに一人、小柄な女の子が座っていた。
 ──て、この子は!? 小柄な体型、無敵のロリフェイス、そのスジの男子だけでなく、女子にも人気が高いマスコットキャラ、塔城小猫ちゃんではないか! 
 こちらに気づいたのか、視線が合う。

「彼女は一年の塔城小猫さん。こちら、二年の兵藤一誠くんと士騎明日夏くん」

 木場が紹介してくれ、塔城小猫ちゃんがペコリと頭を下げてくる。

「あ、どうも」

 俺と明日夏も頭を下げる。

「同じクラスで知ってるかもしれないけど、こっちは士騎明日夏くんの妹さんの士騎千秋さん」

 そういえば、千秋と塔城小猫ちゃんって同じクラスだったな。
 千秋も頭を下げ、それを見た塔城小猫ちゃんは再び頭を下げると、黙々と羊羹を食べ始める。
 うーむ。噂通り、寡黙な子だな。
 ──まぁ、それがまた、マスコットとして人気があるのだが。

 シャー。

 部屋の中から水が流れる音が聞こえた。
 奥のほうを見ると、シャワーカーテンがあった。
 シャワー! 部室に!
 ッ!? こ、これは!
 カーテンに女性の陰影が映っていた!
 アート、まさにアートと言っても過言ではない、その陰影は美しいラインだった!

「部長、お召し物です」
「ありがとう、朱乃」

 この声はリアス先輩! つまり、あの陰影はリアス先輩のもの! なんて素敵な部室なんだぁ!

「・・・・・・いやらしい顔」

 ぼそりと呟く声。声の発生源は塔城小猫ちゃんだ。
 ・・・・・・いやらしい顔をしていましたか。それはゴメンよ。

「あら?」

 ふと、別の女性の声が聞こえてきた。
 そちらのほうを向けば、黒髪のポニーテールの女性がニコニコフェイスでこちらを見ていた。

「あらあら。うふふ。はじめまして。私、副部長の姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを。うふふ」

 こ、このお方は! 絶滅危惧種の黒髪ポニーテール、大和撫子を体現した究極の癒し系にして、リアス先輩と並び、この学園の二大お姉さまの一人、姫島朱乃先輩!

「ひょ、兵藤一誠です。こちらこそ、はじめまして」
「はじめまして。二年の士騎明日夏です。こっちは妹の──」
「一年の士騎千秋です。はじめまして」

 俺たちも姫島先輩に挨拶を返す。
 それにしても、学園の二大お姉さまのリアス先輩と姫島先輩、学園のマスコットの塔城小猫ちゃん──学園を代表とするアイドルたちがいるなんて──オカルト研究部、なんて素敵な部活なのだ!
 ・・・・・・学園一のイケメン王子の木場という余計な奴もいるけどな。

「お待たせ」

 カーテンが開いて、リアス先輩がタオルで髪を拭きながら出てきた。

「ゴメンなさい。あなたたちが来るまえに上がるつもりだったのだけど」
「い、いえ、お気にせず」

 リアス先輩が千秋のほうを見る。

「あなたは士騎明日夏くんの妹さんだったわね?」
「はい。士騎明日夏の妹の士騎千秋です」

 リアス先輩が千秋と軽く挨拶すると、周りを見てウンと頷いて言う。

「さあ、これで全員揃ったわね。私たちオカルト研究部はあなたたちを歓迎するわ」
「え、ああ、はい。・・・・・・俺の場合は悪魔として、ですか?」
「ええ、その通りよ、兵藤一誠くん。イッセーと呼んでもいいかしら?」


―○●○―


「粗茶です」
「「「あっ、どうも」」」

 ソファーに座る俺、イッセー、千秋に姫島先輩がお茶を淹れてくれた。
 とりあえず、俺たちは出されたお茶をずずっと一飲みする。

「うまいです」
「ああ、うまいな」
「おいしいです」
「あらあら。ありがとうございます」

 俺が淹れたのよりもうまいな・・・・・・。
 なんて、少し対抗心を燃やしている()に、姫島先輩はグレモリー先輩の隣に座る。
 俺、イッセー、千秋はソファーに並んで座っており、テーブルを挟んで、対面のソファーにグレモリー先輩たちが座っていた。

「さて、イッセー。彼からどのあたりまで説明されたのかしら?」
「えーっと・・・・・・先輩方がこの町で活動する悪魔で、死んだ俺を先輩が自分の眷属の悪魔として生き返らせてくれたこと、俺を殺したのは堕天使というやつで、俺が殺された理由は、俺が神器(セイクリッド・ギア)っていうのを持ってたからていうところまでは」
「そう。だいたいのことはもう把握しているわけね。それじゃあ、神器(セイクリッド・ギア)は出せるかしら?」
「あ、はい」

 イッセーは立ち上がると、左手を前に出す。すると、イッセーの左手から光が赤く輝き、赤い籠手が現れる。

「これが俺の持つ神器(セイクリッド・ギア)みたいです」
「そう。それがあなたの神器(セイクリッド・ギア)なのね」

 先輩はイッセーの籠手を数十秒ほどまじまじと見つめる。

「ありがとう。もうしまっていいわよ」
「あ、はい」

 先輩に言われ、イッセーは籠手をしまう。

「さて、私たちのことも改めて説明するまでもないでしょうし、これからは私の下僕としてよろしくね」
「は、はい」

 先輩は視線を俺と千秋のほうに向けてくる。

「──次は、あなたたちのことね」

 ・・・・・・やっぱり、そう来たか。
 俺たちを呼んだのは、俺たちのことを明かす、そのためだろうとは思っていた。
 もともと、先輩たちに関わるつもりはなかったが、イッセーが先輩の眷属になったのなら仕方がないか。

「実はね──この間、町外れの廃工場で私の領地に侵入して勝手をしようとしたはぐれ悪魔が誰かに討伐されていたの」
「はぐれ悪魔?」

 はぐれ悪魔のことで怪訝な表情になるイッセーに先輩が説明する。

「イッセー。はぐれ悪魔というのはね、下僕が主を裏切ったり、または主を殺して主なしとなり、各地でその力を自己の欲求のままに振るう不定の輩のことよ」
「そのはぐれ悪魔が、この町で殺されていたってことですか?」
「ええ。そして──士騎明日夏くん。そのはぐれ悪魔を手にかけたのは、あなたじゃないかしら?」

 先輩が俺に探りを入れてくる。
 自分の管理地で妙なことをする者がいるのなら、気になって当然か。

「ええ。そうです」

 隠してもしょうがないので、正直に言う。

「理由を聞いてもいいかしら?」
「遭遇したのは、まったくの偶然です。俺を襲おうと向こうから接触してきたので──」
「──自己防衛の結果、というわけ?」
「いえ。一目見て、すぐにはぐれとわかり、他の犠牲者が出る前にと思いまして」
「そう。つまり、あなたたちは特にこの町で何かをしようとしているわけではないのね?」
「ええ。先輩たちに累を及ぼすつもりもありません。イッセーのことがなければ、特に関わるつもりもありませんでしたし。とはいえ、先輩の管理地で勝手なことをしたのは事実ですので」

 先輩はそれを聞くと、ふぅと息を吐く。

「はぐれ悪魔の件はまぁ、とくに私たちに累を及ぼすことではないことだし、気にしなくていいわ。おかげで犠牲者が出なかったわけだし」

 先輩は微笑みながらそう言う。

「でも、これだけははっきりさせてちょうだい」

 が、すぐに先ほどのように、俺たちを見据えてくる。

「──あなたたちは何者なのかしら?」


―○●○―


 先輩が少し視線を鋭くして明日夏たちを見る。
 その視線にひるむことなく、明日夏は言う。

「俺──俺たち兄弟は異能と関わりのある職業で生計を立てている人間です」
「その職業とは何かしら?」

 明日夏は昨晩、俺に話してくれた自分たちの正体を先輩たちに明かす。

「異能専門の『賞金稼ぎ(バウンティハンター)』です」

 賞金稼ぎ(バウンティハンター)──それが明日夏たちの正体だった。それも、一般で知られているものではなく、魔物とかそういう類い専門のだそうだ。
 明日夏から聞いた話によると、ハンターギルドってのがあって、そのギルドが賞金を懸けた人間などに被害を及ぼす存在──魔物とか(たぶんさっき出てきたはぐれ悪魔もだろう)を討伐して、お金をもらう職業だそうだ。普段はハンターと呼ぶらしい。

「・・・・・・まぁ、俺と千秋はまだ見習いですが」

 どうにも、ハンターには見習いと正式っていうのがあって、明日夏と千秋が見習い、冬夜さんと千春さんが正式のハンターだそうだ。
 基本的には未成年が見習い、成人が正式になるみたいだ。
 例外もあって、未成年でも正式になることができるらしく、冬夜さんと千春さんがその例外だそうだ。

「なるほどね・・・・・・ご両親が亡くなって、それで生計を立てるために・・・・・・」

 明日夏たちは幼いときに両親をなくしている。当時は生計を立ててくれる親戚がいたって聞いてたけど、実際は冬夜さんがそのハンターの仕事で生計を立てていたのだ。
 ちなみに、明日夏たちもよく知らないみたいだけど、そのとき、冬夜さんにはなぜかハンターの知り合いがいたみたいで、そのヒトのお世話になっていたみたいだ。

「・・・・・・ゴメンなさい。辛いことを思い出させたかもしれないわね・・・・・・」

 先輩は明日夏たちに辛いことを思い出させたかもしれないと、申し訳なさそうにする。

「・・・・・・いえ、気にしないでください。それで、俺たちのことはどうするつもりですか?」

 明日夏は若干の警戒心を出しながら先輩に訊く。

「どうするも何も、とくに私たちに累を及ぼすわけでもないし、イッセーの友人だというのなら、イッセーの主としても、学校の先輩後輩としてもこれからもよろしくお願いって感じかしら。なんだったら、イッセー共々このオカルト研究部に入部しない?」

 先輩は微笑みながら明日夏たちに言う。
 明日夏と千秋は少しの間、互いに見つめ合うと、笑みを浮かべてウンと頷く。

「じゃあ、せっかくなので入部します」
「私もします」
「あっ、苗字で呼ぶとややこしくなりそうだから、これからは明日夏と千秋と呼んでもいいかしら?」
「かまいません」
「私も大丈夫です」

 先輩の提案に二人はすぐに了承する。

「フフフ。それじゃあ、よろしくね、イッセー、明日夏、千秋」
「「「よろしくお願いします」」」

 こうして、俺たちはオカルト研究部に入部することになるのだった。 
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