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装甲車両解説(日本編)その1

 
前書き
陸上自衛隊が採用する戦車や装甲車などの解説を1・2双方で行います。少しアレンジされておりますのでご注意ください。なお、戦車研究室というサイトの作者からは、同志田中というネームできちんとメールを送り許可を頂きました。

データの引用元は
wikipedia
「74式戦車」
「90式戦車」
「10式戦車」
「73式装甲車」
「89式装甲戦闘車」
「82式指揮通信車」
「化学防護車」
「87式偵察警戒車」
「96式装輪装甲車」
「軽装甲機動車」
「輸送防護車」
「NBC偵察車」
「生物偵察車」
「16式機動戦闘車」

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戦車研究室(第2次世界大戦後~現代編)

戦車(日本)
「74式戦車」
「90式戦車」
「10式戦車」

装軌/半装軌式装甲車(日本)
「73式装甲車」
「89式装甲戦闘車」

装輪式装甲車(日本)
「82式指揮通信車/化学防護車」
「87式偵察警戒車」
「96式装輪装甲車」
「軽装甲機動車」
「16式機動戦闘車」

(オーストラリア)「ブッシュマスター装甲車」

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「最強 世界の歩兵装備図鑑」 p196~199

 

 
「74式戦車」(240両)


全長:9.41m

車体長:6.70m

全幅:3.18m

全高:2.25m(標準姿勢)

重量:38t

速度:50km/h(不整地)

行動距離:400km

主砲:51口径105mmライフル砲L7A1(66発)

副武装:74式車載7.62mm機関銃(主砲同軸/4800発)
12.7mm重機関銃M2(砲塔上面/1200発)

エンジン:三菱10ZF22WT
空冷2ストロークV型10気筒ターボチャージド・ディーゼル

乗員:4名


74式戦車は、戦後初の国産戦車である61式戦車の後継として開発された陸上自衛隊の第2世代MBTである。三菱重工業が開発を担当した。105mmライフル砲を装備し、油気圧サスペンションにより車体を前後左右に傾ける姿勢制御機能を備え、
射撃管制装置にレーザー測距儀や弾道計算コンピューターを搭載するなど、61式の開発された時点では実現できなかった内部機器の電子化も行われている。


軽量化のため内部容積を減らして小型化している。配備開始から装甲増加などの大幅な改修は行われていないが、新たな砲弾への対応能力が付与され戦闘力を向上させている。後継車輌として第3世代主力戦車である90式戦車が開発・生産されたが、こちらは重量が重いので北部方面隊以外では富士教導団など教育部隊にしか配備されていないため、全国的に配備された74式が数の上では主力であった。


61式戦車が制式化された1961年に、仮想敵であった旧ソ連では61式戦車の90mmライフル砲よりはるかに大口径の115mm滑腔砲を装備するT-62中戦車の生産が開始され、西側諸国でもM60戦車やレオパルト1戦車、AMX-30戦車などの105mmライフル砲を装備する戦後第2世代MBTが1960年代に相次いで登場したため、
61式戦車は一気に旧式化してしまった感があった。この事情から、新型戦車は各国の強力な第2世代主力戦車に技術的に追い付くことが開発目標とされた。


開発は車体と砲塔を三菱重工業、主砲の105mmライフル砲を日本製鋼所、FCS(射撃統制装置)と通信機材を三菱電機、レーザー測遠機と暗視装置を日本電気、発煙弾発射装置を豊和工業が担当することになっていた。


1950年代には成形炸薬弾を用いた対戦車兵器が進歩し、「戦車無用論」も一時は広まった。後に高初速の砲弾や複合装甲の登場により、成形炸薬式兵器の優位は崩れたが、当時の日本における複合装甲は未だ試行錯誤の段階であったため、
低シルエットと徹底した避弾経始を採用することとなった。
特に低車高化については力を入れ、実寸大模型を製作し研究が行われた。結果として74式戦車の車高は無砲塔型であるスウェーデンのStrv.103を除くと、第2世代主力戦車の中でも低いものとなっている。


装甲材には単純な防弾鋼を採用しており、同様の思想で設計されたレオパルト1、AMX-30と共通した外観を持つ。対戦車ミサイルなどの対戦車兵器については、
装甲で受け止めて防ぐのではなく、流線的装甲による避弾経始と機動力で被弾そのものを回避するのが74式を含めた第二世代主力戦車の運用思想だった。


防弾鋼板の溶接構造を採用し、90式戦車のような複合素材は採用されていない。
だが、避弾経始の思想が随所に見られる設計となっており、
車体前方装甲を例にあげると、約80mmの装甲板が斜めに溶接されており、水平弾道に対する厚さは上部装甲板で190mm、
下部装甲板で140mmとなっている。


車体側面は厚さ35mmの装甲板で構成されている。車体後面装甲は厚さ30mmとされる。防弾鋳鋼製の砲塔に関しては、砲塔上面が約40mm、前面装甲は190~200mmと推測されている。
他国の第2世代戦車と比較しても、車体前面装甲厚はレオパルト1の122mm・140mmより厚く、T-62の174mm・204mmよりやや劣る程度である。車体側面・後面装甲厚もレオパルト1と同程度とされる。


射撃管制装置にはレーザー測距儀や弾道コンピューターなど、当時の最新技術が盛り込まれた。車体の挙動に影響されずに主砲の照準を保持する安定化装置(スタビライザー)の開発では、砲塔を駆動する油圧システムとジャイロの電気信号で制御される安定化装置の制御が特に開発が困難だったとされている。


74式の特徴の一つが、山地の多い日本の地形に合わせ、油気圧サスペンション(ハイドロニューマチック)による姿勢変更機能を有することである。伸縮するサスペンションにより標準姿勢から車高を上下に各20cmずつ変化させることができ、サスペンションを前後左右別々に作動させることもできるため、車体全体を前後に6度ずつ、左右に9度ずつ傾ける姿勢制御が可能である。


このことで丘などの稜線から砲塔だけを覗かせて攻撃する稜線射撃も容易としている。これはスウェーデンのStrv.103を参考にしたといわれており、専守防衛思想のもとで運用され、待ち伏せ攻撃も想定する74式にとって都合の良い機能となっている。また、
車体の水平を保つことで乗員への負担を軽減する効果もある。この特徴的な油気圧サスペンションは姿勢制御機能のためストロークが大きく、悪路での走破性が他国の戦車に比較して高い。


丘陵地や傾斜地の多い国土での運用に長けた74式の姿勢制御技術は、74式の車体をベースに開発された78式戦車回収車や87式自走高射機関砲、91式戦車橋などにも一部改良され受け継がれた他、実用的な技術として90式戦車や10式戦車にも引き継がれている。操縦士用装置には高車制御スイッチの他に、あらゆる姿勢から通常姿勢にワンタッチで復帰させる標準姿勢スイッチが付属している。


74式戦車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、車内レイアウトは車体前部左側が操縦室、前部右側が40発の主砲弾を収納する弾薬庫、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載する戦闘室、車体後部が機関室となっている。
砲塔は防弾鋳鋼製で低平な亀甲型になっており、良好な避弾経始を実現している。74式戦車は副武装として主砲防盾の右側上方に74式車載7.62mm機関銃を同軸に装備している他、砲塔上面の車長用キューポラと装填手用ハッチの間に設けられたピントルマウントに対空用の12.7mm重機関銃M2を装備している。


乗員は車長、砲手、
装填手、操縦手の4名で、操縦手以外の3名は砲塔内に搭乗する。配置は車体前方左側に操縦士、砲塔右側に前から砲手、
車長、砲塔左側に装填手となっている。
前方から見て左右に2人ずつ配置されるのは、被弾の際に一度に機能を失うリスクを軽減するためでもあった。車内は狭く、砲手席に乗り込むには一旦車長席に座り、次に砲塔天井裏の取っ手につかまって体を持ち上げ、
その足先にある座席に滑り込む。


74式戦車は日本の戦車としては初めて上部転綸が無く、直径の大きい下部転綸を採用している。61式戦車では超信地旋回ができなかったが、
74式戦車からは可能になっている。61式戦車では機関のパワーパック化ができなかったため変速・操向装置は車体前部左側に配置され、車体後部に搭載されたエンジンからプロペラシャフトを伸ばして動力が伝達されていたため車高が高くなってしまったが、74式戦車ではエンジンと変速・操向装置がパワーパックとして一体化されたため、
機関系のコンポーネントは全て車体後部の機関室に収めることができ、61式戦車より車高を低くすることに成功した。


操縦席にはT字型のハンドルがあり、アクセル・クラッチ・ブレーキがそれぞれ備わる。左側に変速レバー、コントロールボックス、前後・上下調節式の座席下には緊急脱出用のハッチが設けられている。また、緊急時用に油圧式懸架装置の手動コントロール装置も配置される。右側の弾薬庫に沿った上部にサイドパネル、
その下方前方に懸架主油圧計、ブレーキロックレバーがある。


水密構造であるため、潜水キットを取り付けることで2メートル強の潜水渡河が可能となっている。
この密閉効果を利用することで、NBC汚染地域では車内を与圧し、乗員を汚染物質から防護することができる。潜水渡河の際、操縦士は雨衣を着用する。車体後部には外部と搭乗員との会話用に、62式車上電話機が装備されている。砲塔側面には3連装式の74式60mm発煙弾発射機が備わる。


74式戦車の加速性能は0-200m加速が25秒、登坂能力は60%(堅硬土質において)、
超堤能力は1.0m、
超壕能力は2.7m、
最小回転半径は約6m。履帯幅は550mmとなっている。燃料消費量は2.5L/km(時速35km/h時、水平堅硬道において)。搭載燃料は主タンク780L、補助タンク200Lとなっている。


後に登場する諸外国の第3世代戦車と同一条件で74式の加速性能を比較した場合、
レオパルト2A4が推定23.5秒、M1エイブラムスの試作車XM1が推定29秒であることから、74式の加速性能は0-200m区間に限定した場合、諸外国の第3世代戦車と同等水準と言える。本車のパワーウェイトレシオを考慮すると最高速度よりも加速性能を重視したものと考えられる。エンジンは戦前以来の伝統である空冷ディーゼルエンジンで、2サイクルツインターボのエンジンはパワーバンドが狭いが瞬発力に優れるため、これも悪路における機動性向上に寄与している。


74式戦車の主砲は、
イギリスの王立造兵廠が開発した51口径105mmライフル砲L7A1に日本製鋼所が独自の改修を施した砲尾部を組み合わせたものが搭載されている。L7系の105mmライフル砲は西側の戦後第2世代MBTの標準武装ともいえるもので、
本来L7A1の閉鎖機は水平鎖栓式であるが、74式戦車の主砲の砲尾部は垂直鎖栓式に変更されている。


74式戦車が使用する砲弾は運動エネルギー弾がL28A1 APDS(装弾筒付徹甲弾)、
M735 APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、
93式APFSDSの3種、
化学エネルギー弾が75式HEP(粘着榴弾)、91式HEAT-MPの2種となっている。L28A1は74式戦車が当初から使用したイギリス製のAPDSで、射距離1500mで240mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能であった。


M735はアメリカが1970年代中頃に開発したもので、西側で最初に実用化されたAPFSDSである。射距離1500mで360mm、
2000mで325mmのRHAを貫徹することが可能で、戦後第2世代までの旧ソ連製MBTを遠距離から撃破できる威力を持っていた。
74式戦車に使用が開始されたのは1984年で、ダイキン工業がライセンス生産を担当した。93式APFSDSはダイキン工業が開発した初の純国産APFSDSで、1993年に制式化されている。装甲貫徹力は公表されていないが射距離2000mで424mm程度と推定されている。


HEPは通常の榴弾と異なり装甲目標と非装甲目標の両方に使用することができるもので、75式HEPを装甲目標に使用した場合は120~150mm厚の装甲板を内部剥離させることができる。91式HEAT-MPはダイキン工業が開発した純国産のHEAT-MPで、1991年に制式化された。HEAT-MPはHEPと同様に装甲目標と非装甲目標の両方に使用することができ、装甲目標に使用した場合は超高速・高温のメタルジェットを発生させて装甲板を穿孔し、車内の乗員を死傷させ搭載弾薬を誘爆させる。
91式HEAT-MPの装甲穿孔力は公表されていないが、360~425mmの装甲穿孔力を持つアメリカ製のM456 HEATより装甲穿孔力が高いらしい。


「門」の向こう側の異世界である、「特別地域」(特地)に派遣された陸上自衛隊の主力戦車として使用されており、
最新式の10式戦車や90式戦車などではなく旧式である本車が派遣された理由は、人工衛星などの近代的な技術が使えないことや、万一装備を全て放棄して撤退する事態が発生した際に投棄してきても惜しくないためとされている。


現地ではアメリカから供与されたTUSK(市街戦など都市環境下での運用に適応させるための強化キット)とサイドスカートに加え、シュルツェン(二次世界大戦時のドイツの戦車の側面や砲塔等に取り付けられた増加装甲)を装着している他、機銃を更に追加装備したり、車体側面に丸太を装着するなど、自衛隊が登場する各種SF作品を研究して得られた成果を元にして、防御力向上のための改修が行われている。






「90式戦車」(450両)

全長:9.7m

車体長:7.5m

全幅:3.4m

全高:2.34m

重量:50t

速度:60km/h(不整地)

行動距離:400km

主砲:44口径120mm滑腔砲Rh120(64発)

副武装:74式車載7.62mm機関銃(主砲同軸/4800発) 12.7mm重機関銃M2(砲塔上面/1200発)

エンジン:三菱10ZG32WT
水冷2ストロークV型10気筒ターボチャージド・ディーゼル

乗員:3名


90式戦車は、第二次世界大戦後に日本国内で開発生産された主力戦車としては61式戦車、74式戦車に続く三代目にあたり、防衛庁(現・防衛省)の技術研究本部(TRDI)が10数年の期間を費やして完成させた陸上自衛隊の第3世代主力戦車に分類される。本車は当時開発が進められていた旧西ドイツのレオパルト2戦車や、
アメリカのM1エイブラムズ戦車などの西側戦後第3世代MBTに匹敵する戦車を目指して仕様の検討が続けられた。


当時の日本の仮想敵であった旧ソ連では74式戦車の制式化以前に複合装甲を備え、125mm滑腔砲を装備する戦後第3世代MBT、T-64およびT-72戦車を実戦化させており、ソ連軍及びワルシャワ条約機構軍の質的向上、量的増大による東側陣営の軍事的脅威が高まっていた時期でもある。
着上陸侵攻してくるソビエト連邦軍の機甲部隊の主力を務めるのが予測されるので、対抗するために新型戦車は120mm級の戦車砲と高い防御力を備える複合装甲を装備することが求められた。


開発の中心となったのはTRDIの第4研究所(2006年7月に陸上装備研究所に改組、神奈川県相模原市)で、民間側の主担当企業はこれまでも一手に陸上自衛隊の戦車開発を引き受けてきた三菱重工業であった。三菱重工業は車体・砲塔と機関系を開発し、三菱電機、
富士通、日本電気がFCS、主砲と自動装填装置は日本製鋼所、
弾薬はダイキン工業が開発を担当した。


120mm滑腔砲向けの自動装填装置の開発は世界初となったが、
当初から主砲に関してはドイツのラインメタル社製44口径120mm滑腔砲Rh120をライセンス生産するをライセンス生産したものを搭載することがほぼ決まっていたが、そのための比較素材として国産の120mm滑腔砲と弾薬が試作されることになった。そしてラインメタル社製120mm滑腔砲と国産120mm滑腔砲の比較射撃試験を行った結果、国産砲はラインメタル社製砲を上回る装甲貫徹力を示した。


このため関係者の一部が主砲を国産砲にするべきであると強く主張し、主砲をラインメタル社製砲のライセンス生産にするか国産砲を採用するかを巡って長期に渡って議論が続けられることになった。
結局、国産砲の製造コストがラインメタル社製砲をライセンス生産した場合よりも高くなってしまうという理由で、最終的にラインメタル社製120mm滑腔砲のライセンス生産を行うことが決定したが、
結論が出るまで長い時間を要したことで第2次試作を開始するのが予定より大幅に遅れてしまい、それに伴って90式戦車の制式化も当初の予定より数年遅れる結果となった。


結局90式戦車では国産砲の採用は実現しなかったが、その後90式戦車用の120mm滑腔砲のライセンス生産を一貫して手掛けた日本製鋼所はこの経験と持ち前の高い技術力を活かし、
陸上自衛隊の最新鋭MBTである10式戦車用にラインメタル社製砲を上回る高性能120mm滑腔砲を開発することに成功した。


日本の戦車開発は、
世界の主力戦車が第2世代へと移行する中に制式化された先々代の61式戦車、第2世代戦車としては他国に並ぶ性能を有するものの、やはり世界の情勢は第3世代戦車に移行している中の制式化という一歩遅れることとなった先代の74式戦車と、
他国の後塵を拝する状況であったが、
ようやく本車に至り、他国新鋭戦車に並ぶ能力を持つに至ったのだ。


前述のように、90式戦車の主砲はドイツのラインメタル社製の44口径120mm滑腔砲Rh120を日本製鋼所でライセンス生産したものを搭載している。120mm滑腔砲は西側の戦後第3世代MBTの標準武装ともいえるもので、イギリス以外の西側諸国の戦後第3世代MBTの主砲に採用された。


中でもラインメタル社製のRh120およびその派生型が大きなシェアを占めており、
ドイツのレオパルト2戦車に採用されたのを皮切りにアメリカのM1A1およびA2戦車(改修型のM256)、
日本の90式戦車、
韓国のK1A1戦車(M256のライセンス生産型のKM256)などに採用されている。


90式戦車の主砲は基本的にオリジナルのRh120と同じであるが、日本製鋼所が開発した自動装填装置と組み合わせることで装填手が不要となったため、乗員が61式、74式戦車の4名から3名に減らされている。この自動装填装置は回転式のベルトコンベアのような構造になっており、砲塔内の砲手もしくは車長が装填したい弾薬の選択スイッチを入れると、砲塔後部のバスルに収容されている弾薬から選択された弾種を選んで装填トレイに搭載し、
装填トレイが前進してラマーで弾薬を主砲の砲尾に押し込むようになっている。


弾薬の装填は4秒以内に完了するといわれており、装填手が人力で弾薬を装填するレオパルト2戦車やM1戦車、メルカヴァ戦車などより迅速に射撃を行うことが可能である。しかし実戦経験が豊富なイスラエル軍は、「戦車の乗員は掩体構築や車両整備、周辺警戒などで最低4名必要であり、自動装填装置を搭載して乗員を3名に減らすのは好ましくない、熟練した装填手なら自動装填装置と変わらない速度で装填を行える」と主張しており、自動装填装置の採用には賛否両論あるようである。更にメルカバやM1エイブラムスのように、技術的には可能とされながらも乗員減のデメリットを考慮し、自動装填装置の搭載を見送った例もある。


弾種はAPFSDS(120mm TKG JM33装弾筒付翼安定徹甲弾)とHEAT-MP(120mm TKG JM12A1対戦車りゅう弾)を使用する。
この120mm滑腔砲用砲弾の薬莢は、焼尽薬莢と呼ばれるもので、底部を残して燃えて無くなる仕組みで、射撃後に空薬莢を捨てる必要がない。
照準具安定装置、
自動装填装置、熱線映像装置、各種のセンサーと連動したデジタル計算装置を備え、照準具安定装置の自動追尾機能は車体が上下に揺れたり、左右に方向転換しても常に目標を捉え続け、砲を目標に指向できる。


90式戦車の主砲に使用する弾薬は運動エネルギー弾がJM33 APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、化学エネルギー弾がJM12A1 HEAT-MP(多目的対戦車榴弾)で、その他に演習・訓練用の00式演習弾が用意されている。
JM33 APFSDSはラインメタル社が開発したDM33 APFSDSをダイキン工業がライセンス生産したもので、
射距離1500mで499mm、2500mで459mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能である。


JM12A1 HEAT-MPはやはりラインメタル社が開発したDM12A1 HEAT-MPをダイキン工業でライセンス生産したもので、成形炸薬弾と破片効果榴弾の両方の特性を兼ね備えているため装甲目標と非装甲目標のどちらにも使用可能である。砲口初速は1,140m/秒で装甲目標に使用した場合、
射距離に関わらず600~700mm厚のRHAを穿孔可能である。


射撃管制装置がレーザー測遠機や砲耳軸傾斜計、装薬温度計、横風センサーなどから送られてくる情報を計算し、弾道へ与える各種要素を割り出す。そして照準装置への入力・設定を照準制御器に送ることで、砲弾は的確な軌道を描いて目標に命中する。


これら国産ハイテク技術が導入された射撃管制装置や自動装填装置を用い、射撃には大容量のデジタル弾道コンピューターとジャイロを併用することで、目標及び自らが移動していたとしても高精度な行進間連続射撃が行え、急激な制動で車体が前後に傾いた状態でも正確な射撃が可能となった。なお、90式戦車の滑腔砲は仰俯角範囲が狭いものの、サスペンションによって車体を傾斜させることでこれを補う。


90式戦車の車体と砲塔は圧延防弾鋼板の全溶接構造となっており、スマートな曲線を持つ74式戦車とは対照的にマッシブで直線的な外観となっている。また特に被弾確率の高い砲塔前面と車体前面の装甲板には、防弾鋼板とチタンやセラミックを組み合わせているといわれる複合装甲が導入されている。セラミック系複合装甲の実用化と車両そのもの小型化により、軽量ながら防護力は高いとされている。


セラミックは硬度があるぶん割れやすい素材だが、APFSDSなどのように、セラミックが割れる速度より高速で衝突してくる物体に対してはその硬度を防御力に転換でき、劣化ウランなどの重金属装甲よりも軽量化することができる。これによって90式戦車は防御力を維持しつつ、
他の同世代戦車に比べて軽量化することに成功しており、
車体そのものが小型化されたことで被弾率が低下し、発見される可能性も抑えている。


砲塔前面の複合装甲が垂直の平面で避弾経始を考慮していないのは、装甲を傾斜させると前面投影面積あたりの重量が増加し車内容積が減少する点のほか、高速で衝突し流体状の振る舞いで貫通するAPFSDSに対しては装甲傾斜による避弾経始が意味を成さないこと、また、傾斜させずともそれに耐えられるだけの装甲材の開発に成功したことなどが理由に挙げられている。


重装甲化が進んで戦闘重量が60tを突破しているレオパルト2戦車やM1戦車、チャレンジャー戦車等の西側第3世代MBTに比べ、90式戦車の戦闘重量は50.2tとやや軽量であるが、これは90式戦車が日本の道路事情(横幅と重量の制限)を考慮して他国の戦車に比べて横幅を狭く設計していることと、各部の装甲を薄くすることで軽量化を図ったことによると思われる。


しかし軽量だからといって他国の戦車より装甲防御力が劣っているわけではなく、高性能な複合装甲を採用したことで90式戦車の砲塔前面と車体前面の装甲防御力はM1A2戦車と同等かやや上回るレベルともいわれており、
試作車を用いた耐弾試験ではラインメタル社製120mm滑腔砲の零距離相当射撃が4発以上命中したにも関わらず、ほとんど機能に影響が見られなかったという。


90式戦車の複合装甲の詳細は重要機密であるため公表されていないが、防弾鋼板の箱の中にチタン合金で拘束したセラミック板をハニカム構造に何層も敷き詰めた構造になっているのではないかと推測されている。セラミックは非常に硬度が大きく耐摩耗性に優れているため、特にAPFSDSのように細長い侵徹体を高速で突入させるタイプの運動エネルギー弾の装甲貫徹力を大きく減少させる効果がある。


また成形炸薬弾に対しては、発生したメタルジェットがセラミックを穿孔する際に剥離したセラミック片がメタルジェットを側方から押し包んで流れを妨害するため、通常の防弾鋼板に比べて圧倒的に高い防御力を発揮する。一説によると、
90式戦車の複合装甲は成形炸薬弾に対して1500mm厚のRHAに相当する防御力を備えているといわれる(M1A2戦車の劣化ウラン複合装甲は成形炸薬弾に対して1300mm厚RHA相当の防御力)。側面は35mm徹甲弾の掃射に耐えうる性能があり、上面は榴弾の破片に耐えうる耐弾性能を有しているとされる。


また90式戦車は61式、74式戦車には装備されていなかったサイドスカートが装着されており、車体側面の防御力を向上させている。このサイドスカートは圧延防弾鋼板製で、厚さは8mm程度と薄いため運動エネルギー弾にはあまり効果が無いと思われるが、車体側面装甲板とサイドスカートとの間の空間が中空装甲の役目を果たしているため成形炸薬弾の装甲穿孔力を減少させるのには有効である。


90式戦車のエンジンは、三菱重工業が開発した10ZG32WT 90度V型10気筒液冷ディーゼル・エンジンが搭載されている。日本の戦車のエンジンは旧軍時代から一貫して空冷ディーゼル・エンジンが採用されてきたが、90式戦車のエンジンは従来よりはるかに大出力であるため空冷方式では冷却能力が不充分で、より冷却能力に優れる液冷方式が採用されたのである。


車体の砲塔左下側に操縦士が乗車する。
操縦席には、位置可変T字型操向ハンドル、電気式アクセルペダルや常用ブレーキ、アシストシリンダー付の駐車ブレーキなどの操縦装置、57個のボタンや計器類がある。ペリスコープにはワイパーが備わる。車体底部に燃料タンク、後部に冷却ファンとそれを挟む形で潜水用逆流防止弁が付いた排気管がある。その上部に変速操行機オイルクーラーとラジエーターがある。操縦席の右側が予備弾薬庫となっている。


また、先々代の61式戦車、先代の74式戦車と、伝統的に踏襲されてきたヘッドライトの位置(左右フェンダー先端の上方)が、本車からは車体正面装甲板の左右両側となった。90式戦車は北海道の地形や道路条件を想定して開発されたものであり、他地域でのより柔軟な運用を行うには更なる小型軽量化が望ましいとされた。このため、後継の10式戦車は40t級の戦車として開発されている。


砲塔内の車長席には正面に照準潜望鏡、
潜望鏡操作パネル、
サーマルモニター、
照準器ハンドルなどがある。潜望鏡操作パネルには28個のスイッチとランプがあり、車長はこれらを見る事で自らの車輌の状態を知る事ができる。また、車外の車長用視察・照準装置を介して外の様子を知ることができる。車長席側の装填装置にはハンドルを取り付ける穴があり、
装填装置が使用不能になったとしても、
車長がハンドルを取り付けて回すことで弾薬を装填できる。


砲手席には正面とサイドにパネルがあり、正面のパネルには14個、サイドパネルに20個のスイッチが備わっている。砲手席左側には無線装置がある。照準ハンドルには追尾スイッチ、角速度ボタン、
レーザー発射スイッチ、撃発安全レバー、撃発ボタンの計5個のボタン・スイッチがあり、両手の指を使い操作する。砲塔後部にはラックと、
円筒形の風向センサーを備えている。


懸架装置は、前側の第1転輪と第2転輪、
後側の第5転輪と第6転輪が油気圧式、
中央の第3転輪と第4転輪はトーションバー式というハイブリッド式サスペンションとなっている。
車体を前後に傾斜させる機能と、車高を昇降させる機能により、丘などの稜線を利用した射撃において効率的に車体を隠すのに役立つ。74式のように左右に傾斜させることはできない。制動能力は高く、全制動時では時速50kmの速度から2m以内で停止可能。


ストレートドーザを装着した車両も存在し、待ち伏せなどでの陣地構築の際に用いられる。また、
専用の装備を持つ一部の車両は車体前面に92式地雷原処理ローラが装着できる。
更に諸外国戦車との比較では90式が装備していないC4I機能を諸外国の最新鋭戦車が装備しているので、現在90式戦車には次々と戦車連隊指揮統制システム(T-ReCs)端末の搭載が開始されている。


ただし、90式の内部スペースや給電能力の制約により、これ以上に高度なC4I機能の付加は困難であるとされている。このことから、より充実したC4I機能などが付与された後継の新主力戦車として10式戦車が開発された。
「銀座事件」の際に出動し、国会議事堂前に展開した。基本的にその重さから特地には向いていないと判断されており、一応派遣されているがその用途は主に防衛用という悲しい扱いを受けている。






「10式戦車」(150両)

全長:9.48m

車体長:7.5m

全幅:3.24m

全高:2.30m

重量:44t(全備重量)

速度:80km/h(前進・後進速度)

行動距離:400km

主砲:44口径120mm滑腔砲(64発)

副武装:74式車載7.62mm機関銃(主砲同軸/4800発) 12.7mm重機関銃M2(砲塔上面/1200発)

装甲:複合装甲(正面要部)増加装甲(砲塔側面)

エンジン:水冷4サイクルV型8気筒ディーゼル

乗員:3名


10式戦車は陸上自衛隊の第4世代MBTであり、防衛省の技術研究本部(TRDI)が旧式化した74式戦車の代替車両として開発したものである。
本車は「TK-X」の試作名称で1996年度から部分試作が開始され、2002年度から全体試作が開始された。TK-Xの開発の中心となったのは、これまでの陸自MBTと同じくTRDIの第4研究所(2006年7月に陸上装備研究所に改組、神奈川県相模原市)である。TK-Xの試作・生産の主契約企業は旧軍時代から日本の戦車開発の中心を担ってきた三菱重工業で、日本製鋼所が主砲と自動装填装置、
ダイキン工業が主砲弾薬の開発を担当した。


日本を防衛するための能力を将来にわたって維持するため、
将来戦に対応できる機能・性能を有した現有戦車の後継が必要とされた。導入する戦車の条件として、C4Iシステムによる情報共有および指揮統制能力の付加、
火力・防護力・機動力の向上、全国的な配備と戦略機動のための小型軽量化が求められた。


現有戦車の改修や、
諸外国で装備されている戦車の導入も検討されたが、防衛省の政策評価書によれば次のような理由から不適当であるとされた。

・現有の74式戦車および90式戦車を改修する場合、C4Iシステムを付加するには内部スペースが足りず、設計が古いことから将来戦に求められる性能が総合的に不足する。

・諸外国の新鋭戦車を導入する場合、
いずれも90式戦車より大型で重量が約6~12トンも重い上、
陸上自衛隊でそのまま利活用できるC4Iシステムを搭載しておらず、独自のC4Iに適合させるための改修が必要である。

以上の理由から既存の戦車の改修によって目標を達成することは困難であり、
将来の各種任務に必要な性能を満たす戦車を装備するためには新戦車の開発を行うことが適当と判断された。ただしC4Iシステムを車外に取り付けることは可能である。


10式戦車の主砲は90式戦車と同じく44口径120mm滑腔砲が搭載されているが、90式戦車の主砲がドイツのラインメタル社製の120mm滑腔砲Rh120のライセンス生産品だったのに対し、10式戦車の主砲は日本製鋼所が独自開発した国産の120mm滑腔砲が採用されている。砲身途中にある排煙機はやや小型化されて位置が基部方向に少し移動しており、温度の影響による歪みを補正するために砲身を覆っているサーマル・スリーブの形状もやや異なっている。


主砲は従来の44口径120mm滑腔砲より13%軽い、新開発された軽量高腔圧砲身の日本製鋼所製の国産44口径120mm滑腔砲を装備、砲弾は発射薬や飛翔体構造を最適化した国産の新型徹甲弾(APFSDS)が開発され、新型弾薬に合わせ薬室の強度も強化されている。10式戦車の設計では90式戦車で使われる120mm戦車砲弾の使用も考慮されている。弾薬の互換性を保持するため主砲には一部にラインメタルの砲と共通の設計がなされ、
90式の主砲弾やその他のNATO弾も使用できるとされている。


国産120mm滑腔砲は外見の違い以外にも砲システム全体の重量がRh120より軽量化されており、ダイキン工業が開発した新型の120mmAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)である徹甲弾III型を使用できるようになっている。徹甲弾III型の性能については公表されていないが、ラインメタル社製の120mmAPFSDSの中で現在主力となっているDM53と同等かやや上回る性能と推測されている。DM53は44口径120mm滑腔砲で発射した場合、距離2500mで650mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を貫徹可能とされている。


現在、EU諸国を中心に広く普及しているドイツ製のレオパルト2A6戦車はラインメタル社製の55口径120mm滑腔砲Rh120-L55を搭載し、
韓国が開発を進めているK2「黒豹」(フクピョ)戦車にも同じ主砲を搭載することが予定されている。またフランスのルクレール戦車はGIAT社(現ネクスター社)製の52口径120mm滑腔砲CN-120-26を装備しており、世界的にMBTの主砲はより長砲身の120mm滑腔砲が主流となりつつある。


これに対して、10式戦車は50~55口径の長砲身120mm滑腔砲も搭載できるように最初から設計されており、他国のMBTの火力や装甲防御力が向上して44口径砲では威力不足となった場合、より長砲身の120mm滑腔砲に換装することでこれに対処できるよう考慮されている。10式戦車の副武装は90式戦車と同様で、主砲と74式車載7.62mm機関銃を1挺、砲塔上面に12.7mm重機関銃M2を1挺装備している。


90式戦車では、車長用キューポラと砲手用ハッチの中間前寄りにピントルマウントを設けて12.7mm重機関銃M2を装備していたが、10式戦車では車長用キューポラの周囲にリングマウントを設けて装備するように変更されており、12.7mm重機関銃M2はリングに沿って好きな方向に移動できるため使い勝手が良くなっている。また10式戦車の生産型では、車長用キューポラ上面のハッチもリングに沿って開閉位置を変更できるようにされており、開閉位置が固定されていた従来の陸自MBTより使い勝手が向上している。


10式戦車の車内レイアウトは一般的なもので、車体前部が操縦室と主砲弾薬庫、
車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部がエンジンや変速機、
冷却装置を収納した機関室となっている。10式戦車の車体と砲塔は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、車体前面と砲塔の前/側面には新開発の外装式モジュール装甲が装着されている。


このモジュール装甲は2層構造になっており外側の層が化学エネルギー(CE)弾対策の中空装甲、内側の層が防弾鋼板の箱の中にチタン合金の外殻で拘束したセラミック板をハニカム構造に何層も敷き詰めた構造の複合装甲になっていると推測されている。90式戦車では砲塔側面に外装式に左右各4基ずつ76mm発煙弾発射機が取り付けられていたが、10式戦車では砲塔前面左右のモジュール装甲の最外部上面に左右各4基ずつ76mm発煙弾発射機が内蔵されている。


このことからも、
モジュール装甲の外側部分が中空装甲であることが分かる。
また砲塔のモジュール装甲は外側の中空装甲部分を収納スペースとして利用できるようになっており、側面装甲板にはブロックごとに収納ハッチが設けられている。


外装式モジュール装甲はフランスのルクレール戦車、イスラエルのメルカヴァMk.III/Mk.IV戦車、韓国のK2戦車などにも導入されており、
最近のMBTでは必須の機能となりつつある。10式戦車は想定される脅威の度合いに応じて、複数のモジュール装甲を使い分けることで防御力の調整が容易にできるようになっており、
より高い防御力が必要な場合には、外側の層も複合装甲にした重装甲タイプのモジュール装甲(総重量約8t)に換装することで迅速に防御力を強化できる。


また、操縦士用ハッチ上方の一部の部分は内側に引き込まれる形で垂直になっており、この垂直部分を隔てた更に奥に複合装甲からなる主装甲が存在する。車体部の装甲板の内側には前照灯が確認できる。砲塔部・車体部どちらの装甲板も、
90式のキャンバスカバーのように正面要部を覆うようにボルトで取り付けられている。90式の防盾は正面投影面積が左右対称だったが、10式では直接照準眼鏡と同軸機銃のない側である防盾右半分の面積を小さくしている。


砲塔の四隅にはレーザー検知器が搭載されている。詳細については非公開だが、
アメリカ・グッドリッチ社製のレーザー検知器だと言われている。 砲塔側面前方には発煙弾発射装置が取り付けられている。
なお、90式戦車の発煙弾発射装置はレーザー検知装置と連動するようになっており、10式戦車も同様の機能を有していると考えられる。また、赤外線放射を抑えるために、サイドスカート下部のゴム製スカートで赤外線を遮断させたり、排気管を内側へ寄せるなどして、IRステルス化を図っている。


10式戦車は外装式モジュール装甲(通常タイプ)を装着した状態で戦闘重量44tとされており、90式戦車より6t以上軽量になっているが装甲防御力については90式戦車と同等とされている。他にも炭素繊維やセラミックスの装甲板への使用や、
小型化などにより、
全備重量は90式より約12%ほど軽量になったとされる。これは20年の技術の進歩により軽量で強度の高い素材が使用できるようになったことや、設計を工夫することで防御力を落とさずに重量を削減する等の努力を積み重ねたことが貢献していると思われる。
また、後述する新型サスペンションの導入も10式戦車の軽量化に大きく貢献している。


10式戦車の装甲防御力の具体的な数値については重要機密であるため公表されていないが、外装式モジュール装甲(通常タイプ)を装着した状態で90式戦車と同等の防御力を有しているとされていることから、この状態において砲塔と車体の前面で運動エネルギー(KE)弾に対してRHA換算で700mm程度、CE弾に対してRHA換算で1500mm程度の装甲防御力を有しているのではないかと推測される。


10式戦車の車体側面には90式戦車と同様にサイドスカートが装着されているが、
90式戦車のサイドスカートが圧延防弾鋼板製だったのに対し、10式戦車のサイドスカートは圧延防弾鋼板製の上部とラバー薄板の下部に分かれている。サイドスカート上部の圧延防弾鋼板の装甲厚は薄いため、この部分の防御力は小口径弾や榴弾の破片に耐えられる程度で、戦車砲から発射されるKE弾に対してはあまり効果が無いと思われる。しかしサイドスカートと車体側面装甲板の空間が中空装甲の役目を果たすため、CE弾の装甲穿孔力を減少させるのには一定の効果が見込める。


サイドスカートの下部がラバー薄板になっているのは、転輪が走行時に熱を持つため赤外線センサーで検知されないよう覆い隠すことを重視したためで、90式戦車のように下部まで防弾鋼板だと走行時に邪魔になるので、
10式戦車ではサイドスカート下部を柔らかいラバー製にすることで広い面積を覆うようにしている。


10式戦車の足周りは前方の誘導輪、後方の起動輪、片側5個の転輪と上部支持輪で構成されており、90式戦車に比べて転輪数が片側1個減らされている。転輪数を減らしたのは重量の軽減を図ったことが主な理由と思われるが、戦車が信地旋回や超信地旋回を行う際には転輪数が奇数の方がスムーズに行えるといわれていることから、このことも転輪数の変更に影響しているかも知れない。


10式戦車のサスペンションは、90式戦車と同じく油圧によって高さを調節できる油気圧式サスペンションが採用されている。ただし、90式戦車は前後の4軸が油気圧式サスペンションで中央の2軸はトーションバー式サスペンションだったが、10式戦車は全軸が油気圧式サスペンションになっている。90式戦車ではこの機構により車体を前後方向に傾けることができたため、これを利用して主砲の実質的な俯仰角を増大させることができた。


10式戦車ではこの前後方向の高さ調節に加えて、74式戦車のように左右方向の高さ調節も行えるようになっており、車体を左右に傾けることで主砲を横に向けた場合にも大きな俯仰角を取ることができるようになった。
油気圧式サスペンションを採用している戦後第3世代MBTで、
転輪数が片側5個のものは10式戦車以外に存在せず、このような強力なアクチュエイターを開発した日本の技術力の高さが伺える。また10式戦車の油気圧式サスペンションは可変ダンパーを備えたセミアクティブ方式で、車体の加速度等を検出して自動的にサスペンションの挙動を制御するようになっており、機動性能の向上に貢献している。


このセミアクティブ・サスペンションは、10式戦車が主砲の射撃を行う際に反動を大幅に減少させる役割も果たしている。120mm級の戦車砲を安定して射撃するには車体重量が最低50t必要といわれており、10式戦車はこのセミアクティブ・サスペンションの実用化により大幅な軽量化が可能になったのである。10式戦車の戦闘重量は44tと、90式戦車の50tから大幅に軽量化されているため出力/重量比はあまり変化しておらず、新開発の無段階自動変速・操向機の採用により動力の伝達効率が向上したことも手伝って、10式戦車は90式戦車と同じ機動性能を発揮できる。


指揮・射撃管制装置に関しては、走行中も主砲の照準を目標に指向し続ける自動追尾機能があり、
タッチパネル操作でも主砲の発砲が可能である。無線通信、
レーザーセンサー、
赤外線、ミリ波レーダーなどのすべてのセンサーが完璧に機能する条件下では、
小隊を組んだ10式戦車同士の情報のやり取りで、8標的まで同時捕捉し、これに対する同時協調射撃が可能となる。


小隊長は10式に装備された液晶ディスプレイをタッチパネル操作することで、
各車に索敵エリアを指示したり、「自動割り振り」表示を押すことで各車に最適な標的を自動的に割り振り、同士討ちや重複射撃(オーバーキル)を避けながら効率よく標的を射撃することが可能になっている。10式には自動索敵機能があり、
センサーが目標を探知すると、目標の形状などから目標の種類(戦車、装甲車両、非装甲車両、航空機、固定目標、人など)を自動的に識別する。FCSは探知・識別した目標の脅威度の判定を自動的に行い、ディスプレイに目標を色分けして強調表示させる。


また車長用サイトは砲手用サイトへのオーバーライド機能を持っており、車長が砲手に代わって主砲の操作を行うことも可能である。砲塔上面最後部にはポール状の環境センサーが装備されており、
センサーで検知した風向と風速のデータを主砲の弾道計算に反映させることで特に走行間射撃時の主砲命中率を向上させるのに貢献する。


これらの情報は、
小隊内各車の状況(燃料、弾薬、故障状況など)とともに小隊内でリアルタイムに共有することができる。脅威度が高い目標が出現した場合は、90式戦車と同様に車長が砲手をオーバーライドできるだけではなく、小隊長が他の小隊車のFCSを強制的にオーバーライドして照準させることができる。照準する際には、データベースから目標の弱点部位を自動的に精密照準する。射撃後、FCSは着弾した場所を精密に計測し、効果判定を行う。FCSが目標の撃破は不確実と判断したならば、
FCSは乗員に次弾射撃をリコメンドする。


車長用潜望鏡後方の高い位置に設置された、車長用視察照準装置の赤外線カメラ部は全周旋回可能、
C4Iによる情報の共有などもあり、味方と連携して索敵、攻撃を行うハンターキラー能力は90式と比べて向上しているとされる。エンジンの燃費に関しては90式と比べ省燃費となり、
携行燃料は90式の1100リットルから880リットルに減少しているとされ、これによるタンク容積の節約も車体の小型・軽量化に寄与しているとされる。


なお10式戦車のFCSは基本的に国産のコンポーネントで構成されているが、この環境センサーについてはフランスのタレス社製のものが用いられている。また10式戦車は、最近のMBTで必須の機能となりつつあるC4Iシステムの運用が可能となっている。C4Iとは”Command(指揮),Control(統制),Communications(通信),Computers(コンピューター),and Intelligence(情報)”の略語で、軍隊におけるこれら5要素の管理機能がC4I機能である。


陸上自衛隊の戦車連隊では2007年度から、「戦車基幹連隊指揮統制システム」(T-ReCs:Tank-Regiment Command Control System)と呼ばれるC4Iシステムの運用を開始している。
T-ReCsは戦車連隊/大隊本部に設置される中央処理装置と、
中隊以上の部隊本部が装備するラップトップ型端末、中隊以下の部隊が装備する携帯型端末を用い、
各部隊の情報の共有化と指揮統制の効率化を図るものである。


陸上自衛隊では第2戦車連隊が装備する90式戦車にT-ReCsの端末の搭載を開始しているが、90式戦車はC4I機能を付加できるように設計されていないため運用に制約がある。このことが10式戦車が開発された大きな理由の1つであり、90式戦車と同等の火力と防御力を備え、本州での運用を考慮して車体の軽量化とコンパクト化を図り、高度なC4Iシステムを運用できるMBTとして誕生したのが10式戦車というわけである。


10式戦車は高度なC4I機能を付加することを想定して設計されているため、将来的にT-ReCsより高度なC4Iシステムが導入されても対応することが可能である。T-ReCsは本部と各部隊の情報共有と指揮統制に用いられる他、部隊内の各戦車が各自の位置や敵情報を相互に交換し車内のディスプレイで見ることもできるようになっており、10式戦車はT-ReCsによって部隊単位の戦闘力が大幅に向上することが期待できる。


また、基幹連隊指揮統制システムに連接させることで司令部や味方部隊との通信能力が向上し、戦車部隊と普通科部隊が一体化した作戦行動が可能となるという。将来的にはOH-1観測ヘリコプターやAH-64D戦闘ヘリコプターからの情報も入手できるようになると言われている。


90式戦車は北海道での運用を考慮して開発されたために重量が約50tあり、橋梁や路面の許容重量と活荷重の面で北海道以外での平時における配備・運用が難しいとされている。このため、10式戦車の開発においては本州、
四国、九州など全国的な配備運用に適した能力、砲塔・車体一体でのトレーラー輸送など戦略機動性の向上が求められた。その結果、90式と比べて全長で約38cm、全幅で約16cm小型化され、全備重量は約6トン軽い約44tとされている。


全国的な道路交通網の整備がなされ、61式戦車が開発された頃に比べると鉄道に頼らずに済むようになったため、陸上自衛隊では74式戦車の開発以降、鉄道輸送は事実上断念している。90式の場合、
専用のトランスポーターによる輸送を行えば、道路の許容重量によって走行できるルートが限られてしまう可能性が存在し、長距離を自走させた場合に足回りを傷める可能性があったが、小型の40t級車輌とすることで車体と路面へのダメージ低減に成功した。
全国の主要国道の橋梁17920ヶ所の橋梁通過率は10式(約44t)が84%、90式(約50t)が65%、海外主力戦車(約62~65t)は約40%とされる。


74式をトランスポーターで輸送する場合、73式特大型セミトレーラで砲塔と車体が一体の状態で輸送できる。一方、90式の場合は最大積載量50tの特大型運搬車であれば砲塔と車体が一体の状態で輸送できるが、最大積載量40トンの73式特大型セミトレーラでは砲塔と車体を分離して別々に輸送する必要があった。
10式は74式と同じ輸送インフラを利用できるよう小型軽量化され、全備重量は約44tとし、約4t分の装甲などを取り外すことで73式特大型セミトレーラの最大積載量に収めている。


現在配備は主に74式を装備していた本州や九州などに展開する戦車部隊を中心に着々と更新が進んでおり、今後は同じく新しく開発された16式機動戦闘車と共に21世紀の機甲部隊の中核を成す予定である。そして90式と比べて軽い重量なので特地でも使用できると判断され、試験運転も兼ねて自衛隊特地派遣部隊に12両ほど送られている。






「73式装甲車」(320両)

全長:5.8m

全幅:2.9m

全高:2.21m

重量:13.3t

速度:55km/h(不整地)浮航 10km/h

行動距離:400km

武装:74式車載7.62mm機関銃(4800発) 12.7mm重機関銃M2(砲塔上面1200発)

エンジン:三菱4ZF 2ストロークV型4気筒空冷ディーゼル

乗員:4名


73式装甲車は、60式装甲車の後継として開発された国産のAPC(装甲兵員輸送車)である。小銃班の改編により、定員10名の60式装甲車では1個班11名が乗車できず、またNBC装備が無い等の理由により新型装甲車「SUB」が開発されることになった。部分試作は1967年に三菱重工業の手で開始され、翌68年には「SUT」と呼ばれる試作車体が完成しているが、エンジンの試作はこれより前に始められている。
この三菱が開発したZFシリーズの空冷ディーゼル・エンジンは、必要な出力に合わせて気筒数を増減させた同系列のエンジンを各種の装甲車両に搭載することで部品を共通化し、整備補給を容易にする目的で開発された。


基本的なレイアウトは車体前部右側に操縦手席、前部左側に74式車載7.62mm機関銃の銃座と前方銃手席、その後方中央に車長席というもので、車体中央部左側にエンジン、反対の右側に12.7mm重機関銃M2の銃座と銃手席が置かれ、車体後部は兵員室となっている。全体的なデザイン及び車内レイアウトは60式を踏襲しており、車体前部右側に操縦士席、左側に銃座と前方銃手席がある。


M2重機関銃は、6基のペリスコープが備えられた手動旋回式のキューポラに取り付けられており、車内からリモコン操作が可能となっている(その代わりに対空射撃能力はほとんど無い)。車体は60式より1m延長され、兵員室上面に大型の両開き式ハッチを備え、
側面にT字型のガンポートが6箇所設けられている。また車体後部の左右端には、3連装の発煙弾発射機が各1基ずつ装備されている。後部兵員室には8名の完全武装の兵員が搭乗でき、向かい合わせに左右各4席ずつ折り畳み式シートが備えられている。


兵員の乗降は車体後面に設けられた観音開き式のドアから行うが、兵員室上面にも大型の両開き式ハッチが備えられている。また車体左右側面に各2基ずつと、
後部ドアに2基のT字型のガンポートが設けられており、乗車戦闘を行えるよう考慮されている。このように旧式の兵器だが戦車と同じく装軌式なのでインフラの整っていない特地にも派遣されており、
96式では運用が難しい悪路などで運用されている。


73式装甲車は車体が軽量な防弾アルミ製であるため、アメリカのM113装甲兵員輸送車と同様に履帯による推進で浮航可能となっているが、
波切り板、転輪に装着する浮航フロート等の取り付けに約30分を要し、またこれらの浮航キットが常時搭載されていないので、浮航能力を持つこともできると言った方が良いように思われる。


現在では国内の河川の護岸整備が進み、
陸上自衛隊の施設科部隊に81式自走架柱橋などの本格的な架橋装備が行き渡っているので、このような車両独自の浮航装備の必要性は薄いと思われてきた。また、装甲面では世界的にも高熱や被弾に弱いアルミ製車両は使用されなくなってきており、その点からも時代遅れとの指摘は多い。この兵器は師団/旅団の戦車大隊の各戦車中隊本部や、方面の施設群(施設大隊など)に配備されている。現状では96式装輪装甲車が後継車として配備が進んでいる。








「89式装甲戦闘車」(180両)

全長:6.8m

全幅:3.2m

全高:2.5m

重量:26.5t

速度:70km/h(不整地)

行動距離:450km

主武装:90口径35mm機関砲KDE(480発)

副武装:79式対舟艇対戦車誘導弾発射装置×2 74式車載7.62mm機関銃(4800発)

エンジン:三菱6SY31WA型
水冷4サイクル直列6気筒ターボチャージド・ディーゼル

乗員:3名+兵員7名


89式装甲戦闘車は、
戦車に随伴する装甲兵員輸送車に武装と装甲を施した車両として開発された、
日本の陸上自衛隊が運用する歩兵戦闘車(IFV)である。陸上自衛隊は、これまで装甲兵員輸送車として60式装甲車および73式装甲車を装備してきたが、戦車と共に行動する普通科隊員の装甲強化、支援火力の強化が望まれていた。1980年より三菱重工業による開発が始められ、実用試験を経て1989年に制式採用された。


車体は圧延防弾鋼板を使用しており、
アルミ合金製の73式装甲車よりも生存性が向上している。
砲塔と車体は兵員輸送車と砲塔架台車を兼ねているため、
全高が74式戦車や翌年に制式化された90式戦車よりも高くなっている。車体前部左側にはエンジンと変速・操向機が搭載されているが、73式装甲車と違ってパワーパックとして一体化されているため整備性が大きく向上している。


浮航性は仕様に盛り込まれなかった。
これは、道路網が発達して大抵の河川には橋が架かっている国内では必要性が低いと判断されたこと、より重量の大きい戦車は施設科(工兵)の架橋・渡河の支援が不可欠であり、
その戦車と共同行動をとるのであれば浮航性は必須ではないこと、そして車体の軽量化(その有力な手法であるアルミ化)に起因する防御力の低下や価格の上昇を忌諱したことが原因である。


主武装に、歩兵戦闘車としては強力なエリコン社の90口径35mm機関砲KDE(日本製鋼所ライセンス生産)を備えている。
エリコンKDE 35mm機関砲は、低高度防空用として有名なエリコンKDA 35mm機関砲をもとに砲尾を短縮するなどして軽量化したものである。
その分だけ発射速度が低下しており、KDAが600発/分であるのに対してKDEが420発/分である。


使用する弾薬は35x228mm弾、APDS(装弾筒付徹甲弾)やHEI(焼夷榴弾)等の弾種が用意されており、APDSはは撃角90°距離1000mで90~100㎜の装甲を貫通、撃角60°の場合射距離500mで80㎜、1000mで45mmの貫徹力を持つ。航空機への対空射撃も行える。即応弾はAPDSとHEI各30発の合計60発。30発入りのマガジンを用い、それぞれ砲の左右から給弾する方式となっている。


砲塔両側面には各1基ずつの79式対舟艇対戦車誘導弾発射装置(略称:重MAT)を装備している。重MATは対戦車用はもちろんのこと、対上陸用舟艇用の弾頭もある。
重MATの照準・誘導サイトは35mm砲右側にあり、普段は前扉が閉じられている。
重MATの再装填は車外より行なう。


重MATは赤外線半自動誘導方式で最大有効射程は約4000m、最大飛翔速度は約マッハ0.7。弾数は6発で、
内2発はランチャー内部、残り4発は車内弾薬庫内で保管し、
発射後に射手が自ら再装填を行う。この他に副武装として機関砲同軸に74式車載7.62mm機関銃を装備するほか、砲塔両側面に発煙筒を4基ずつ装備する。また、
砲塔上部前面には、
車長及び砲手用の照準サイトがそれぞれ設けられている。


乗員は、操縦士が車体前部右側に座り、
砲塔右側に車長、
左側に砲手が座る。
兵員は操縦士の後ろ側に1名が乗車できるほか、車体後部の兵員室に背中合わせに6名分のシートがあり、シートの間は35mm口径弾や重MATの予備弾保管庫となっている。車体前部右側は操縦手席となっているため、73式装甲車までの前方機関銃は無くなった。


その後ろにも座席があり、砲塔の脇は非常に狭い通路になっている。車体後部は兵員室になっており、普通科隊員7名から成る完全装備の1個班(分隊)を収容することができる。
兵員室内には背中合わせに6名分のシートがあり、背もたれの間は79式対舟艇対戦車誘導弾および35mm機関砲弾の弾薬庫となっている。


兵員室には、天井と車体後部にハッチが設けられており、
通常の乗降は車体後部の観音開き式のハッチから行なう。
兵員の乗車射撃は、兵員室天井の左右開き式のハッチを展開して行なうことも可能だが、車内から隊員が射撃できるよう、防弾ガラスを使用したガンポートが車体両側面各3基と車体後部扉の1基、計7基が設けられている。


内部のハンドルを上げると展開し、89式5.56mm小銃を被筒部まで差し込んで射撃できる。このガンポートは装甲の弱点になるため時代遅れであるという評価があるものの、イスラエル国防軍のナグマホンのように、新型の装甲車であってもガンポートを採用した例も存在する。なお、ガンポートとは別に兵員の外部視察用ペリスコープも8ヶ所に設けられている。


ガンポートには照準用の小さなガラス窓がはめ込まれており、諸外国のIFVのようにやや離れた場所にあるペリスコープを使って照準をする場合よりも、命中精度を重視していることが感じられる。砲塔は2名用で車体と同じく圧延防弾鋼板の全溶接構造であり、
砲塔内右側が車長席、左側が砲手席となっている。


武装が強力で同級のIFVはもとより敵MBTとの交戦能力も備え、同世代の90式戦車との共同運用能力を持つことは89式装甲戦闘車の優れた点だが、こうしたカタログ・データに現れない問題点には90式戦車と同様、価格の高いことが挙げられる。通常このようなIFVとMBTとで機甲・機械化部隊を構成する場合には、前者の数が後者の1.5倍から2倍必要だが、89式装甲戦闘車では1両当たりの価格が7億円弱と世界で最も高額になってしまっているため、年間の調達数は数両に留まっており、
長期間に渡って充分な数を揃えられないことが構造的な問題になっている。


 
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