| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは -Second Transmigration-

作者:navi
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5話 力の在処

 
前書き
第5話です
ではどうぞ~ 

 
前回から3日後


「行くぞ、悠里」


俺は高町家の道場にて、恭也さんと竹刀を構える。……冒頭から物騒な光景だが、こうなったのは理由がある。……と言いたいところだが、今の俺にそんなもの無い。いきなり恭也さんから勝負を申し込まれたからな。


「……死なない程度に頑張ろう」


今の俺からはとりあえずそれしか言えない。
目標は『死なない』だ。





恭也side

俺は今、悠里と一戦交える所だ。あの後、俺は悠里をよく見るようになった。なのはと一緒にいる時間が前にもまして増えたが、アイツは鍛錬を怠らなかった。
それと、今まで気にしなかったが、悠里はまだなのはと同い年たが、走り込み等の基礎訓練は俺と同じくらいだ。確かに琉聖さんの言ってることは半分当たってる。悠里は強い。
しかし、だ。いくら悠里が強くてもまだなのはと同い年の5歳。そんな子供に負けるわけがない。
だから確かめたまかった。琉聖さんの言葉の真意を。そして今、悠里と一勝負行うというところだが、悠里はというと、明らかにやる気の無さそうな感じだ。
……無理に誘ってしまったのだから無理もないか。


「……悠里、もし俺に勝てたらなんでも一つ、言うことを聞いてやろう」


そのセリフを聞いて、悠里はピクリと反応した。目つきも少し鋭くなる。


「……『何でも』、ですか?」

「ああ。『何でも』だ」


『何でも』の部分を強調して言う。悠里は少し考える素振りをした後に口を開く。


「なら……『なのはと一緒にいる時間を増やす』でお願いします」

「……そんなことでいいのか?」

「失礼な。そんなこと言うならやめますよ」


ムッと、不機嫌そうな声を出した悠里を慌てて止めると、俺達は互いに竹刀を構える。





悠里side

「いくぞ……!」

「……」


俺が構えるところを見た恭也さんはまずは小手調べ、といった感じに俺に接近して竹刀を振る。
バカにしているのか、という感じのスピードだったので、俺はそれを竹刀で逸らして恭也さんに横へ一閃した。


「なに…!?」


恭也さんは予想は予想出来た筈だが、剣速までは予想外だったらしく、恭也さんは反射的に防御しながらバックステップで距離を取った。


「逃がすか……!」


俺は距離を詰めて連撃を加える。背丈が小さいため恭也さんへの攻撃は足まわりへの攻撃だが、恭也さんより小回りが利くので避けやすい。なにより、恭也さんは自身と同じかそれより大きい人しか想定していないから、足まわりは鍛えていない。

故に


「散沙雨!」


連続して突きを放つ。速度はこちらが勝っているためか、恭也さんは今度は態勢を崩した。
そこへ更なる追い討ちを掛けるべく、俺は竹刀を振り下ろした。

バシィィィン!!

恭也さんは咄嗟に竹刀でガードする。力はあっちが強いので、俺は後ろに飛んで距離を取った。


「やっぱり、そう簡単には入れさせては貰えないよな……」


いくらうまくいっても相手は恭也さん、そうそう今みたいなチャンスは無いだろう。今ので警戒して来るから尚更だ。
けど、父さんから本気出し過ぎると成長に支障をきたすから、あまりやりすぎないようにいつも言われてるし……


「まぁ、とにかく頑張ろう」


俺は再び恭也さんへ竹刀を構え直した。
恭也さんは立ち上がってから再び竹刀を構える。


「驚いたぞ悠里。まさかここまでとはな……」

「それはどうも。鍛えてますから」


俺は恭也さんに軽口で返事をする。恭也さんは竹刀を構えてまた打ち合うようだ。……少し様子見てみるか。


「いざ……!」


恭也さんは踏み込んで打ち込んでくる。先ほどとは違い、速さも正確さも違う。改めて俺を敵として認めたことがわかった。
だがそれでも、いつも以上に殺気立っている恭也さんの太刀筋を見極めるのは簡単だった。
俺は恭也さんの剣を素早く右へ左へと避ける。


「くっ……!」


攻撃が全く当たらないことに、恭也さんは焦りを募らせていく。
俺からすれば、そんな殺気を出して攻撃しては読みやすいだけだ。それに、剣だったら前世のまゆっちと義経、クリスもいたし、あっちの方が今の恭也さんよりも強い。


「隙アリ!」


俺は恭也さんの攻撃を避けて手首へ攻撃を入れた。





恭也side

悠里と勝負を始めて恐らく数分は過ぎただろう。状況は俺が悠里に攻撃を加えるが、悠里はそれを避けて俺にカウンターを入れる。その繰り返しだった。


(何故だ……?)


別に疲れている訳ではない。悠里との体力差もあるが、互いにまだ始めたばかりでまだ余裕もある。


(何故だ?)


先程も言ったとおり、俺は悠里より多く鍛錬を積んできた。悠里の使う技は琉聖さんの技と同じ物だし、完成度等も琉聖さんの方が勝る。


(なのに……なのに、何故……)


何故、悠里に技が一つもあたらない!?
いくら悠里が強くても技が全く当たらないなんて有り得ない。
いや、有り得る筈がない。
悠里との実力差は俺の方が上のはずだ。鍛錬だって長く続けてきた。
何が足りない?何を間違った?何が俺に欠けている?

何が……
なにが……
ナニガ……


「虎牙破斬!」


何が、お前に劣っているんだ?

悠里……





悠里side

虎牙破斬を放った後、恭也さんは再び態勢を崩した。俺は追撃せずに後ろに跳び、恭也さんから距離を取った。追撃できないわけではなかったが、しないのには理由がある。
……まぁ早い話、恭也さんの太刀筋が変わった。
普通はそれくらい当たり前だが、俺が言いたいのは太刀の意味だ。恭也さんの攻撃は相手を『倒す』ものから、相手を『殺す』ものへと変わった。
いや、変わって『しまった』。


「っ……!」


恭也さんは体を起こして俺を見る。その目に映っているのは自身がうまく戦えないという苛立ち、思い通りに行かないという焦り、そして……
目の前の敵を叩き潰すという、明確な殺意。


(あんまりやりたくないな……今の恭也さんとは)


面白くないし、何より戦う意味もない。どうやってこれを終わらせようか……
そうこう考えている内に、恭也さんは立ち上がって再び竹刀を構えた。


「(……しゃーない。あんまりしたくなかったけど……)……まだやるんですか?」

「……当たり前だ。俺はまだやれる」

「そうですか。……どうでもいいですけど」


俺は恭也さんに接近して攻撃を加える。俺の攻撃にはもう馴れた筈だが、恭也さんは敢えて俺の攻撃を竹刀でガードし、鍔迫り合いの状態になった。


「恭也さん、一つ気になったんですけど」

「……なんだ?」

「……恭也さんの剣って、なんの為の剣ですか?」

「なに……?」

「言い方を変えましょうか。あなたの敵は俺ですか?それとも、別に誰かいるんですか?」

「……どういう意味だ?」

「恭也さんは俺と戦っていますが、目は俺を見ていませんでした。それに……恭也さん、殺気が漏れまくってますよ?それじゃ、今から斬りに行くって言ってるようなもんですよ」


俺が言い終えると、恭也さんと俺は互いに距離を取った。恭也さんは自分が殺気を漏らしていることに気付いていなかったようで、顔には驚きが浮かんでいる。
ホントに気付いてなかったのか……重症だな。


「本当に気付いてなかったんですか?驚きです」

「……さい」

「大方、犯人への復讐が目的なんでしょうけど、そんな状態でやっても、絶対に失敗しますよ?」

「…だ…れ……」

「今の恭也さんは、ただ自分の力を相手にぶつけてるだけじゃないですか。そんなので「黙れぇぇぇ!!!」」


俺が言い終える前に恭也さんは突進して竹刀を振り下ろした。
直線的な軌道それは簡単に避けられた。だが、恭也さんはそれにかまわず竹刀を続けて振ってきた。


「お前に、お前に何がわかる!?」

「えぇ……わかりませんし、わかりたくもないです。……同情もしますし、可哀想だとも思います。けど……だからと言って、恭也さんの判断は間違ってます」

「知った風な口をきくな!!」

「感情に流されて、他人に力をぶつけるよりマシです、よ!」


俺は恭也さんの攻撃をかいくぐって、胴に一閃を叩き込んだ。恭也さんは苦痛に顔を歪めるが、構わず竹刀を振ってきた。力任せに横に振られた斬撃を流して後ろに距離を取って避ける。


「くっ……!?」


恭也さんは無理に竹刀を振った反動か、態勢が崩れた。すぐに立て直すだろう。それは一瞬だけできた、僅かだが大きな隙だ。俺は迷いなく踏み込んで、竹刀を思い切り振り落とした。反応が遅れた恭也さんは竹刀でそれを防ごうとするが、普段より弱い防御だったため竹刀は叩き落とされ、道場内に竹刀が落ちる音が響き渡った。


「川神流……」


そのまま体を回転させ、体重と勢いの乗った横薙ぎの一撃を恭也さんに叩き込んむ。


「十文字!!」


強烈な一撃を食らった恭也さんは後ろへよろけて膝を付いた。
『川神流 十文字』。父さんかよく使う技の一つであり、前世でも基本的な技の一つとして使った。簡単な技ではあるがその分、極めれば威力は高いものになる。

「ぐ……ぁ……っ!」


痛みに顔を滲ませ、怒りを浮かべながら、恭也さんは俺へ顔を向けて、再び竹刀を取った。
今日、何度目かわからないこのやりたくないなやり取りに俺は溜め息を吐きたくなった。
……いい加減終わりたい。


「まだ、だ……まだ……俺は……!」

「もうそれくらいにしてくださいよ。これ以上は無意味ですよ?」

「無意味なものか…!俺は、まだ納得していない……!」

「この……わからず屋!」


俺達は竹刀をぶつけ合い、再び鍔迫り合いとなった。


「大体……恭也さんは勝手なんですよ!」

「なに!?」

「復讐に理由付けてますけど、結局は自己満足の理由を付けて正当化してるだけじゃないですか!なのはの気持ちも知らないで、勝手な事を言わないでくださいよ!」

「後で説明すればわかるだろ!なのはは俺の妹だ。なのはを寂しがらせたりしない!」


……あ?


「俺は犯人を絶対見つけだして仇を討ってみせる!母さんや美由紀やなのはだって、早く捕まえる事を望んでるはずだろ!!」


……なのはを寂しがらせたりしない?だったら、なんであの時なのははあんな寂しそうな顔をした?なんで俺にあんな事を話した?寂しいからに決まってるだろ?
それをわかってない恭也さんに、俺の中で怒りが宿った。


「……ふっざけんなぁぁぁ!!」


俺は怒声を上げると、恭也さんを蹴り飛ばして距離を取る。そして竹刀を投げ捨て、拳を握り構えてから、恭也さんに迫る。


「なっ…!?」

「歯ぁ食いしばれ!川神流、無双正拳突き!!!」


怒りの拳が恭也さんの頬に命中し、恭也さんは再び吹っ飛んだ。さらに地面に叩きつけられた。


「……ぁ…っ……!!」


声にならない呻き声を出す。ちなみに気で威力を底上げしとあるからかなり痛いだろうな。


「なのはを寂しがらせたりしない?みんなそれを望んでる?ふざけんなよ!!あんたは結局、自分の考えを押しつけてるだけだろうが!なのはの気持ちなんか全然わかってない!寂しくないなら、なのはが俺に相談なんかするかよ!!」

「な…に……!?」

「自分が飲まれるような力なら……捨てちまえ!そんなもの!!」


俺は収まらない怒り抱きながら、道場を出た。後ろで恭也さんがどうなっているかなんて、知りたくもなかった。





その日の夕方近く、俺は自室にいたのだが、


「……やっちまったよ」


ああ~……と、頭を抱えながら布団の中で呻いた。
恭也さんにあぁは言ったものの、自分はそんなに立派な人間でも無いだろうよと現在、自己嫌悪の状態に陥っていた。
そんな中、部屋の入り口が開き、


「悠里~……って、面白いくらい悶えてんな」


父さんが顔を出して、そのまま父さんは布団の隣に座り、苦笑しながら話しかけてきた。


「恭也と試合したんだってな?」

「……やるんじゃなかった」

「おいおい、責めてるわけじゃないぞ?恭也にはいい薬だろうよ。あとは本人次第だ」


そうだけどね、自分で言って後悔してるよ?ホントにそんな立派な人間じゃないもん、俺。


「まあ、恭也も結構ショックだったみたいだけどな。まさか『十文字』と『無双正拳突き』とはね……えげつないな」

「反省してるよ。……頭に血が上ってたし」


あれは流石に冷静でいられなかった。それに、怒りにまかせて拳を奮うなんて失格だよな。


「とにかく、お前はよくやったよ。あとは恭也となのはちゃん次第だろ。……課題はあるけどな?」

「……うるさいな」


俺は呟いてから寝返りを打つ。それを見て父さんはまた苦笑を漏らしていた。


「まだ晩飯には時間あるから、ゆっくりしてから来いよ?」


父さんは布団の上からポンポンと叩くと、部屋から出て行った。
とにかく、今回の件はこれにて終了だ。
恭也さんは約束通り、なのはといる時間を次の日から増やしたし、なのはも笑顔でいることが多くなった。
……翌日に恭也さんから謝られた時は驚いたけどな。土下座に最後は「俺を殴れ!」だし……
そして月日は8月、俺の運命が動き出す月へと移る。
 
 

 
後書き
というわけで、第5話でした。
恭也とぶつけたのですが、悠里のチートさが出ていたらいいと思いいます。
ちなみに、今回登場した「川上流 十文字」はオリジナルの技です。

感想お待ちしております。

それではまたノシ


3/4日修正。
マジ恋!のある人物を後に入れます。
この人いた方がいいかもですし… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧