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Blue Rose

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第十八話 新幹線の中でその九

「包丁で刺されて死ぬとか」
「アニメじゃあまりないお話ですね」
「そういえばそうだな、わしはアニメはあまり観ないが」
 それでもとだ、男は優花に話した。
「アニメじゃあまりない話だろうな」
「そうですよね」
「刺しただの刺されるだのな」
「それじゃあ本当にドラマですね」
 優花も言う、二時間ドラマや昼のドラマだとだ。
「ドロドロしてて」
「人間ドロドロもしてるがね」
「そういう一面もありますよね」
「君もわかるさ、ドロドロしたのも人間だよ」
 男はここでも彼が自分の人生で見てきたものを思い出しつつ優花に話した。
「いや、嫌なものだよ」
「そうしたことはですね」
「ああ、見ていてもな」
「三角関係とか」
「一口にそう言えば楽なんだがね」
「実際は、何ですね」
「見ていて嫌になるよ」
 そのドロドロしたものはというのだ。
「まあ見る時もあるが見た時は覚悟することだよ」
「嫌なものだからですね」
「そう、だからね」
「じゃあそういうものを見る時は僕も覚悟します」
「そうしておくといいよ、ではまた何処かで会ったら」
「はい、お願いします」
 丁度別れる場所に来てだった、二人は別れの挨拶をした。そして。
 優花は長崎駅まで来た、すると駅から出たその場にだった。
 一人の若い、黒髪をオールバックにした長身で細い目に締まった唇の細面の男が立っていた。白衣の下はスーツだ。
 その男が優花の顔を見るとだ、すぐに声をかけてきた。
「蓮見優花君だね」
「あの、ひょっとして」
「そう、療養所から来たよ」
「そうなんですか」
「君のことは聞いているから」
「だから僕に会ったことがなくても」
「そう、わかったよ」
 優花だと、というのだ。
「写真の通りの顔だったからね」
「そうですか、じゃあ」
「うん、今からね」
「はい、療養所にですね」
「行こうね」
「わかりました」
「そう、そして僕の名前だけれど」
 男は微笑んだまま優花にさらに言った。
「岡島幸雄というんだ」
「岡島さんですか」
「療養所で働いている医師だよ」
 自分の職業のことも話した。
「そして君の姉さんの先輩になるんだ」
「じゃあ姉さんの」
「うん、蓮見先生はね」
 岡島は優子のことを先生と呼んで優花に話した。
「立派な先生だね」
「姉さんのこと知ってるんですね」
「うん、普段は明るくてそれでいて勉強家で」
 そしてというのだ。
「手術のことになると凄くてね」
「いいお医者さんなんですね」
「そうなんだ、だから僕もね」 
 先輩としてだ、優子を見てというのだ。 
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