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忘れ形見の孫娘たち

作者:おかぴ1129
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6.お別れをしに来たんじゃない

「大体なんでアンタと一緒に提督さんに挨拶しなきゃいけないのよ!」

 午後三時を過ぎた頃。ピンポンの音よりも早く、玄関から聞こえてくる怒号が来客を告げるという珍しい経験をした。

『かずゆき〜……早く開けて〜……鈴谷もうムリ……』
「はいはい今玄関開けますよ〜……」

 スマホに届いた珍しい鈴谷からのSOSを見て、急いで玄関を開ける。その途端……

「もう一回言ってみなさいよ一航戦!!」
「何度でも言うわ。あなたたち五航戦なんてまだまだよ」
「私だけじゃなく翔鶴姉まで……!!」
「この前『あんなん余裕でしょ』って調子こいて出撃したくせにすぐ大破して戻ってきたのは誰だったかしら?」
「ムギギギギギ……!!」
「文句言われたくなかったら実力で黙らせることね」

 そんな言い合いが玄関に響き渡り、僕の精神テンションはひどくげんなりしてしまった。

 いつもの女子高生スタイルの鈴谷と一緒にいたのは、妙に仲が悪そうな弓道着姿のふたり組。一人は青を基調とした弓道着を着ている黒髪でサイドテールのクールビューティーぽい感じの女性で、もう一人は迷彩柄という珍しい弓道着を着たツインテールの賑やかな子。

「……やっぱコスプレか」
「……あんた誰よ?」

 ツインテールの子が僕のコスプレ発言に噛み付いてきた。……あーなるほどねー。もうキャラそのものになりきってる感じなのねー。

「タハハ……瑞鶴さん、もうずっとこんな感じで……」

 珍しい光景だ。あの傍若無人な鈴谷が困り果てて苦笑いをしておるわ。まぁ気持ちはわからなくもない。……一人は常にカリカリしてるし、もう一人はそのカリカリを涼しい顔で受け流しつつ正論で追い詰める。このふたり組と同じ空間に居続けるとげんなりして胃が痛くなってくるだろう。

 ツインテールの方……瑞鶴さんとは対照的なクールビューティーな女性は、顔色ひとつ変えず僕の方に頭を下げた。

「和之さんはじめまして。あなたの祖父のひこざえもん提督にお世話になっていました。正規空母の一航戦、加賀です」
「ゲッ……この人が提督さんのお孫さん……?」
「そうよ。ちゃっちゃと挨拶しなさい五航戦」

 クールビューティーな加賀さんにそうたしなめられた瑞鶴さんはちょっとぶすっとした表情で、僕に向かって頭を下げた。

「はじめまして。五・航・戦! の正規空母、瑞鶴です。ひこざえもん提督にはいつもお世話になってました」
「……はじめまして。彦左衛門の孫の和之です」

 二人は僕に向かって会釈をしてはいるが……こんな経験初めてだ。トゲトゲした体感温度が低い空気を目視で確認できるぞ……ここまで険悪なふたりが一緒に挨拶ってどういうこっちゃ?

「あ、アハハ……お二人とも空母なんすか」
「こいつなんかと一緒にしないで!」
「私も五航戦なんかと一緒にされると頭にきます」
「あは、アハハハハ……」
「ちょっとかずゆき……余計なこと言って刺激しないでよ……」
「いや、正直すまん……」
「ぷーい……」
「つーん……」

 刺々しい空気が肌に刺さる感触を感じながら、僕は三人を家に上げ、億の和室に案内してさしあげる。しかしすごいなこの二人。

「ぷーい……」
「つーん……」

 お互いがお互いを自分の視界に入れたくないのか、二人とも目線が外側を向いてて、前を向かずに僕についてきている。前見てないのにまっすぐ歩いてるってすごいぞ。

「……着きましたよ。こちらです」
「「……!」」

 和室の入り口のふすまを開ける。その途端、加賀さんと瑞鶴さんの顔色が変わった。さっきまでは互いに敵対心むき出しだったのに、その敵対心が急激にこの場から消え失せたのが僕にも分かった。

「ひこざえもん提督……」
「ホントだったんだ……」
「本当に……逝ったのね……」
「提督さん……冗談だよね……?」

 瑞鶴さんがフラフラと和室に入り、爺様の遺影に近づいていった。一方の加賀さんはその場から動かず、だけど右手を力いっぱい握りしめて、悲しみをがまんしているように僕には見えた。

「和之さん」
「はい」
「ひこざえもん提督に……お線香をあげてもいいですか?」
「はい」

 弓道着を着ているせいなのか……それとも背筋が伸びた綺麗な姿勢をしているためか……加賀さんは美しい立ち居振る舞いで和室に入り、仏壇の前に座って爺様に線香をあげていた。線香の香りと煙が、僕と鈴谷にも届いた。

「五航戦」
「うう……提督さん……」
「あなたもお線香をあげなさい」
「……うん」

 加賀さんに静かにそう促され、瑞鶴さんは目に涙をいっぱい浮かべながら加賀さんの隣りに座り、わなわなと震えながら線香を上げた。僕には、瑞鶴さんが大声を上げてしまいそうになるのをガマンしているように見えた。

「ねえねえ」

 殺気までの喧騒と痛い空気はどこへやら……一辺して静かになった加賀さんと瑞鶴さんを見守る僕に、鈴谷がこそこそと話しかけてきた。いつぞやのようにパーソナルスペースが近い近い……でもあんま気にならなくなってきたな。

「かずゆき……そろそろ私たち、外に出よっか」
「そうだな。キチンと挨拶させて……」
「鈴谷、そこにいなさい。和之さんも」

 僕と鈴谷が気を利かせて部屋から出て行こうとするのを、加賀さんが静かな声で止めた。本当なら、お世話になった人との別れは誰にも邪魔されたくないはずなのに……だから僕と鈴谷は部屋から出て行こうと思ったのに。

「でも僕らがいると爺様とお別れがキチンと出来ないでしょ?」
「いいんです。五航戦はともかく、私はひこざえもん提督にお別れをしに来たのではありません」

 ? どういうこと? お別れしにきたんじゃないなら何しに来たんだこの人は? 鈴谷を見ると、やっぱり僕と同じで頭にはてなマークが浮かんでるようだ。

「……どういうことよ一航戦。あんた、提督さんが死んでも悲しくないの?」
「そうじゃないわ。私もひこざえもん提督がお亡くなりになったのは悲しい」
「じゃあ何なのよ……一航戦がここにきた理由って……」

 瑞鶴さんはうつむいているせいで、自分の袴? スカート? に涙がぽろぽろこぼれていた。肩をわなわなと震わせて、泣くのを静かにこらえながら、加賀さんにそう聞いていた。

 一方の加賀さんは、急に僕と鈴谷の方を……というより僕の方を見た。そしてまっすぐな眼差しで僕を見つめ、よどみなく、すっぱりとこう言った。

「ひこざえもん提督は常々“俺のバカ孫に、自慢の孫娘たちを見せてやりてぇ”と言っていました。だから私は、ひこざえもん提督逝去の報告を受け、提督の希望を叶えたいと思いました」
「爺様が……そんなことを? あなた達のことを孫娘だと?」
「ええ」

 爺様……言ってることは素敵だけど、バカ孫は余計だ……。

「でも、さすがに全員をここに連れてくるわけにはいかない。あなたにも迷惑がかかる。苦労してあなたとの約束をとりつけてくれた鈴谷にも悪い」

 確かに、突然200人以上の子が突然やってくるのは迷惑以外の何者でもないわなぁ……ついでに言うと、最初にうちに来て僕の家族と『一人二人なら来てもいいよ』って約束を取り付けた鈴谷の頑張りを無視することになる。それは加賀さんの言うとおり、鈴谷に対して失礼だ。

「そんなん……別に気にしなくていいのに……鈴谷気にしないよ?」

 いや鈴谷。そこは加賀さんの気持ちを汲んであげよう。……そして現実問題として、お前は気にしなくてもうちが気にするから。いっぺんに200人も来られたら無理だからうちの収容能力じゃ。

「一航戦、そんなこと考えてたんだ……」
「そうよ。だからあなたを連れてきたのよ。私自身と、私が最も信頼しているあなたを見てもらいたくて」
「?!」

 なんか空気が変わったぞ? 瑞鶴さんがハッとして顔を上げ、驚いた表情で加賀さんを見つめてる。一方の加賀さんは、顔色一つ変えずに真っ直ぐに僕と鈴谷を見ていたが、やがて鈴谷の方に向き直り、頭を下げた。

「鈴谷。こんな機会を作ってくれたのはあなたのがんばりのおかげ。本当にありがとう。私に、ひこざえもん提督の望みを叶えさせてくれてありがとう」
「い、いや……どういたし……まして……」

 加賀さんにそう感謝され、困ったように……でもちょっとうれしそうに、赤いほっぺたをポリポリとかいていた。つづいて加賀さんは僕に……

「あなたにも感謝しています。ひこざえもん提督にお別れを言える機会をくれて……あの人の自慢であったあなたに、あの人の自慢だった私たちを見てもらう機会をくれて、本当にありがとうございます」

 そう言って、やっぱり頭を下げていた。やっべ。なんかすんごく胸が熱い。もはや存在がギャグだった爺様絡みの話のはずなのに、なんだこの胸にこみ上げる熱いものは。

 頭を上げた加賀さんは仏壇の方に向き直り、瑞鶴さんはそんな加賀さんを涙目で見つめ続けていた。

「ひこざえもん提督……あなた、いつも『五航戦も頑張ってるんだから』って言って私を諌めてたわね。これが答えよ。私は五航戦・瑞鶴を認めているわ。私たちの後を継ぐのはこの子たちしかいない」
「一航戦……」
「今日はいい日になったわ。あなたにそれを伝えることが出来て、あなたの望みを叶えることが出来た……あなたの孫に、私が一番信頼している子を見てもらうことが出来た」
「提督さんは……気付いてたよ」
「……?」
「……提督さんね。いつも私に言ってた。“あいつもお前たちの事を認めてるからこそ厳しいんだ”って言ってたんだ……」
「そうだったの……ひこざえもん提督……あなたは全部お見通しだったのね……」
「うん……でも私……ひぐっ……全然聞かなくて……いっつもあんたに悪態ばっかりついて……ひぐっ」

 なんだかほんわかしたいい雰囲気になってきた。僕は改めて、鈴谷のそばに移動して……

「鈴谷」
「ん?」
「外に出よう」
「そだね。鈴谷たち、お邪魔になっちゃうね」

 鈴谷と一緒に部屋を出た。

「ただいま〜しこたま肉買ってきたから今晩はやきに……うおなんだこのデカい靴?」
「あらホント……」

 タイミング良く仕事から帰ってきた父ちゃんと買い物から帰ってきた母ちゃんが玄関に入ってきたその直後、和室から盛大な泣き声が聞こえてきた。

『うわぁあああんていとくさんごめんなさいぃぃぃぃぃ!』
「ぉおッ?! 何事っ?」
「今日も誰か来てるの?」
「んー……まぁ、ね」
『あ゛だじぃぃいい!! ごれ゛がら゛い゛っごう゛ぜん゛どな゛がよ゛ぐずる゛がら゛ぁぁああああ!!!』
「な、なんかスゴいな……」
『い゛っごう゛ぜん゛ごめ゛ん゛な゛ざい゛ぃぃいいいいい!!』
「鈴谷ちゃんの知り合い?」
「そうだよー」

 あんな叫び声が聴こえたら、流石に父ちゃんと母ちゃんも困惑するだろうなぁ……鈴谷を見ると、僕と同じく苦笑いをしながらこちらを見ていた。きっと鈴谷も、僕と同じことを考えているんだろう。

 その後は父ちゃんかあちゃんが買ってきた肉を使って、鈴谷と加賀さん瑞鶴さんコンビも交えて焼き肉パーティーとなった。瑞鶴さんは最初遠慮していたのだが……

「ひこざえもん提督の実家で焼き肉ですか。流石に気分が高揚します」

 というクールビューティー加賀さんにあるまじき発言を受けて、鈴谷たち三人も交えての大焼き肉パーティーになった。僕の隣に座っている鈴谷は、僕が焼く肉を僕よりも早く片っ端から自分の口にほおり込んでいく。

「……おい鈴谷」
「なにー? ひょいぱくひょいぱく」
「なんで僕が焼いた肉を片っ端から食べていくんだよ」
「焼けたから。もぐもぐ」
「自分で焼けよ! これは僕が食べるために焼いてるの!」
「ぇえ〜?! 鈴谷のために焼いてくれてるんじゃないの?!」
「当たり前だ!」
「いいじゃん一枚ぐらい。ひょいぱくひょいぱく」
「一枚どころか全部食ってるじゃんか!! おかげでぼくはまだ肉食ってないんだぞ!!」

 そして、同じ被害に遭っている人物がもう一人いる。コンロを挟んで僕の向かいには瑞鶴さん。そしてその隣には加賀さんがいるのだが……

「ちょっと一航戦! なんで私が焼いてる肉をひょいひょい奪っていくのよ!」
「あなたが食べるのが遅いのよ。ひょいぱくひょいぱく」
「自分が焼いたの食べればいいでしょ! なんで自分で焼かないのよ!!」
「代わりに私が焼いたピーマンを上げるわ。あなたにぴったりでしょ」
「あー確かに私の艤装と髪の色って緑だしねー……って張り倒すわよアンタ!」
「お肉が美味しいとビールも進むわね。ぐびっぐびっぐびっ」
「やっぱり一航戦ムカつく!」

 とこんな感じで、瑞鶴さんが焼いた肉を加賀さんは片っ端から口に運んでいた。おかげで瑞鶴さんは肉にまったくありつけていない。

「ははは……みんなよく食べるなぁ……ははは……」
「ホントね〜。かあちゃんも気持ちいいよ〜」
「ははは……ホントよく食べるなみんな……」

 父ちゃん母ちゃんは凄まじい勢いで肉を食べ尽くしていくぼくたちの……というより加賀さんと鈴谷の食欲に圧倒されているのか、まったく箸が進まず冷や汗をかいていた。

「瑞鶴さん」
「ん? どうしたの?」
「はい肉。全然食べてないでしょ?」
「え? いいの? ありがと!!」
「五航戦。その肉も一航戦の私によこしなさい。ひょいぱくひょいぱく」
「アンタは充分食べてるでしょ!!」
「あー! その肉鈴谷の肉なのに!!」
「お前も肉をそろそろ自重しなさいッ!! つーか僕が焼いた肉だッ!!」

 しかしあれだね。加賀さんと瑞鶴さん……表面上は来た時と変わらないけど、今はさっきまでと違うね。なんというか……ここに来た時は単にお互い素直じゃなかったんだなーって思える。今はお互いが素直になってる感じだ。今のこの焼き肉戦争も、仲がいいからこそお互い本音を言い合ってる感じがして、仲の良さがこれでもかと伝わってくる。

「その通りよ五航戦。私はあなたを認めているわ。もっきゅもっきゅ」
「私から強奪した肉とご飯を口いっぱいに頬張りながら言っても説得力ないわよ!」
「そんなあなたのために、一航戦のこの私が玉ねぎを焼いてあげたわ。喜んで食べなさい」
「肉! 私のために野菜を焼いてる暇があるなら自分のために肉を焼いて!!」
「加賀さんクールビューティーだと思ってたんだけど、全然違うんだね」
「ホントだよ。鈴谷もずっと勘違いしてた」
「ホンットそうよね……ほら一航戦! 口に焼き肉のタレがついてるわよ!!」
「拭きなさい五航戦。キリッ」
「何偉そうに子供みたいなこと言って甘えてんのよ!!」
「プッ……」
「楽しそうに吹いてるけど口周りにタレつけてるお前も大概だからな鈴谷」
「かずゆきー拭いてー」
「こっちに向かって口をとんがらせるんじゃありませんっ」

 こんな感じで焼き肉パーティーは終わりを告げ、鈴谷たち三人は帰っていった。酔っ払って『ひこざえもん提督の元から離れたくありません。ここに住みます』と大真面目な顔でわがままを言いながら寝てしまった加賀さんを瑞鶴さんがおぶって帰っていった。

「まったく……泣く子も黙る一航戦が情けないわね……」

 口ではそう言いながらもどこか嬉しそうな瑞鶴さんが、笑顔で加賀さんをおんぶしている姿がとても印象的だった。

「瑞鶴さん大丈夫? 鈴谷も手伝おっか?」
「あー大丈夫大丈夫。それにね。今日はこいつをおんぶしてあげたいんだ」
「スー……スー……」
「ったく……起きてる時はあんなに口うるさいのに……寝たら赤ちゃんみたいなんだから……」

 三人が帰ってしばらく経った頃……ちょうど焼き肉があまり食べられなかったために小腹がすいて、夜食に麦茶でお茶漬けを作って食べていた僕のスマホに、鈴谷からメッセージが届いた。夜にLINEでやりとりするのが恒例になってきたなぁ。

『今日もありがと! 加賀さんこっちで目を覚ましたんだけど、瑞鶴さんとすごく仲良くなってるよ! ホント、かずゆきの家族と提督のおかげだね!』
『最初はどうなることかと思ったけどね。なんとかなってよかったよかった』
『あ、あと明日もまた二人連れて行くから』

 それは別にいいんだけど……明日は父ちゃんが仕事休みだから家にいるけどいいのかな……。

『大丈夫。二人には鈴谷から伝えとくから!』
『りょうかいしたー。どなた?』
『妙高さんと那智さん。二人とも私と同じ重巡洋艦!』

 どうせあれだろ……もうグーグル先生に聞くまでもなく、その人たちも艦これのキャラなんだろ……もう受け入れたよ……コスプレ集団でいいよ……。

 ……あ、思い出した。そういや爺様がレベルキャップした艦娘が誰か調べるんだった。僕は居間まで戻り、母ちゃんが使っているパソコンに電源を入れ、爺様のアカウントで艦これにログインしてみた。パソコンの隣には冷たい麦茶、その反対側にはスマホ。麦茶が入ったコップには水滴がたくさんついていて、最近がもう夏真っ盛りの様相を呈してきているのが分かる。

『鈴谷だよ! 賑やかな艦隊だね! よろしくね!!』
「はーい。よろしくおねがいしますよーっと」

 鈴谷の挨拶にテキトウこの上ない返事を返してしまう。だってなんだか返事しないと申し訳ないような気がしちゃうんだよね。このまんまの姿の鈴谷がほぼ毎日うちに来てる手前さ……

 さて、編成を少しいじってみるとしよう。通常のレベルキャップが確か99だから、それより上のレベルの子を探せばいいのかな。艦娘のリストを見てみる。以外にもレベルが99より高いキャラはすぐに見つけた。見つけたのだが……

「……あれ?」

 レベル127のキャラクターの名前がいることは分かる。光り輝く指輪のグラフィックが表示されているから、きっとこの子がレベルキャップを開放しているのも分かる。だが、そのキャラの名前は表示が消えていて、それが誰かはわからなかった。

「なんだこりゃ? バグ?」

 試しにそのキャラをクリックしてみる。いつもならクリックすれば、キャラの容姿が表示されて『変更しますか?』的なUIが表示されるはずなのだが、今回はそのキャラをクリックしてもUIすら表示されない。クリックできないみたいだ。

――ぴーひょろろ〜……

 ほらきた。なんとなく鈴谷からメッセージが届きそうだったからスマホも持ってきたんだよ。どれどれー……

『かずゆきごめんねー。まだ立ち直れてないみたいなんだ。ちょっと今は秘書艦は勘弁してあげて』

 なんでこんなジャストタイミングでジャストな内容のメッセージを飛ばしてくるかねこの子は……ひょっとして盗聴盗撮の類でもされてるんですか……?

『かわりに鈴谷が秘書艦やってあげるからさー。オールナイトで出撃しよ?』

 僕は即座にブラウザを閉じ、パソコンの電源を切った。

『ぇえー?! いいじゃんオールナイトで出撃しようよぉぉおおお!!』
『いいから寝なさいッ!!』
『鹿島さんからもかずゆきと仲良くしなさいって言われたし!!』
『それとこれとは別だッ!! 明日も来るんだろ?! 寝ろッ!!』
『ちぇ〜……』

 でもさー……鈴谷が言ってることと、爺様の艦これのゲーム内容がいちいちリンクしてるのはどういうことだ? ……まぁいいか。
 
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