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ウルゼロ魔外伝 超古代戦士の転生者と三国の恋姫たち

作者:???
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少年の日常、崩れ去るの事

 
前書き
今回もルークの話です。今回も別作品のキャラクターたちが出ます。 

 
「よいですか。この星『エスメラルダ』は約20年前…」
その日も、学院に通ったルークは授業を受けていた。科目は歴史。今回の授業内容は、自分が生まれる少し前の時期、母たちがこの世界を襲った大乱に立ち向かった当時のことだった。
学院の教室はまるで大学の集会室のような、自然と黒板に生徒たちの視線が向けられるような構造、普通の学校の教室の倍以上の広々としたものだ。
コルベールが教壇に立ちながら、内容の説明を続けていく。しかしこの手の授業は先生の話があまりに長いものだから、中には爆睡し始めている者もいれば、クラスメートと小声でお喋りしている者もいる。
ルークも退屈そうに授業を受けていた。何度も実家で雇われた家庭教師からの講義で学んでいた内容はもうとっくに知っているせいだ。喧嘩っ早いルークは不良のレッテルこそ貼られているが、一応勉強はできる方なのだ。
だが、うまくできていることが多くて、授業がかなりつまらなく感じてきた。勉強する意味を見出せなくなってきていた。
テストで100点とったところで、労いの言葉が返ってきた記憶がないわけではない。ただ、高い点数を取ったところで何の意味があるのか。このようなことを学び続けたところで一体自分の未来にどこまでいい意味で影響するのか。そんなものが見出せないのに、それどころか役に立つ機会なんてないに等しいと思うのが自然なのに、どうしてこんなことを学び続けなければならないのか。それをルークは理解できずにいた。かといってサボったら、叔母がどんなにうるさく言ってくるか。テラからも、叔母と違って癇癪持ちではない分優しいが、お説教を食らうことに変わりない。
(コルベールのおっさんには悪いが、いっそ寝てしまうか…)
寝たら寝たで困ることはあるが。
テラに話していたように、困ることといえば時折ルークは幼い頃から悪夢によく苛まれることが多い。燃え盛る都市で戦う巨人と怪獣の姿を、頭の中に暗記しているほどだ。あまりにしつこくてイラッと来ることがあるが、授業が面白くないおかげで、寧ろその夢が悪夢じゃなく、面白い夢として記憶に刻まれ始めるくらいだ。
「ずいぶんつまらなそうな顔をしていますね。君は」
「あ?」
ふと、彼は隣から小声で声をかけられた。右隣に顔を向けると、眼鏡をかけた長身の、挑発の青年がルークを見ていた。
「今は授業中ですよ。しっかり聞いておかないと、テストに響きますよ?」
「別に…」
問題行動こそ多いが、ルークは成績に関しては特に問題は無かった。寧ろ頭がいい方で試験になると上位に立っていた。だからこんな大事な授業でもだらけることもできるのだが、同時に授業がそこらの生徒以上に退屈に感じてしまう。
「そういうてめえこそ人のこと心配してる場合か?ガリベン臭いナリしてっけど」
「僕も心配はありませんよ。見た目どおり頭もいいですし、運動もそれなりにできますから」
「……」
見た目だけだとそうは見えない。ルークから見れば、背が高いだけのノッポ…まさに独活の大木のようだ。それに、なんかこいつは怪しい。いやな感じがする。
「ま、かまいませんけどね。もうじき、あなたにとっても不満要素だらけな日々は終わりますよ」
すると、彼はふ…と笑みをルークに向けて浮かべる。
「?終わるって…どういう意味だよ」
「さあ、それはご想像にお任せしますよ」
授業終了のチャイムにつられるように、生徒たちが教室を出て行く。それに続いて彼もまた教室を後にするのだった。
(なんなんだあいつ?)
よく分からんが、…君の悪い野郎だった。まるでこっちを見透かしてくるような目だった。
まぁ、どうでもいいだろう。ルークはさっきのやり取りのことなどさっさと忘れて、街へ繰り出すことにした。



「なるほど、では今日、まもなくですね?」
『あぁ、これでまた一つ…俺たちの目的に近づいた。だが、なぜこの世界から潰す気になった?』
「それは、やはりこの『外史』の守護者である存在です。「彼女」のおかげで、彼らに我々の存在は既に悟られている。秘密裏にことを進めなければ、彼らに気取られてしまいます」
『ち…そのために外史に生きる傀儡ごときをけしかけねばならんとはな…』
「いつでもやってきたことじゃないですか。今更でしょう?」
『この手で直接手を下さないと我慢ならん』
「それができるように、今のあなたにはそちらの世界での作業に取り掛かってもらってるんです。あなたの大嫌いな『彼』もまたその外史で生きています。ちょうどいい意趣返しになるからいいじゃありませんか」
『…ふん、まぁ否定はしないがな。あの男をまだ殺せないのは腹立たしいが、奴を苦しめる時間を延ばせるというのなら…望むところだ。とことん苦しませてから殺巣のが楽しみだ。それより…』
「なんでしょう?」
『例の傀儡と、それを見張っているあの裏切り者はどうしている?』
「傀儡の居所は判明しています。そして、彼女が彼を見張っていることもね」
『あいつには常々邪魔をされたからな。おい、あの女は…』
「ええ、わかってます。いずれ確実に…仕留めて見せましょう。ですがまずは…彼を確保しなければ」



ルークは結局、全ての授業が終わってもすぐに家に戻らず、城下町『トリスタニア』にある知り合いの店に寄って行った。
その店の名前は…『魅惑の妖精亭』。20年以上も前から繁盛し続けている大人気の店である。『妖精さん』と呼ばれている女性店員たちが色気と可憐さを備えたコスチュームを着てお客様をおもてなしする…地球で言うメイドカフェに近い。ルークもそこの常連である。
色気ある女の子たちのきわどいコスチュームから見え隠れする胸や足などに、つい目を生かせてしまうこともしばしばだ。
ただ、この店には知り合いの女性がよく顔を出しに来てくれるのだ。
「あら、ルーク。今日も来てくれたの?」
ルークの元に、注文を聞きに一人の女性店員がやってくる。碧の給仕服を着込み、ショートカットに切ってある美しい黒髪をした女性だった。外見でもまだ20代にしか見えないが、彼女はすでに30後半だった。
「なぁ、ジェシカさん。シエスタおばさんは今日来てねぇの?」
ルークはジェシカに尋ねる。
「シエスタ?しばらくタルブ村での仕事で来れないって言ってたわ」
「んだよ…通りでしばらく見ないって思ったら…」
どうやらルークはそのシエスタという女性に、近所の優しいおばさんのような感じで、好感を持っているようだ。でもいないのなら、仕方ない。
「適当にドリンクでも飲んで後は街で時間を潰そうとすっか。ゲーセンもあるし」
ゲームセンターも地球の文化を取り入れ始めてから設置されるようになり、ルークもよく立ち寄るようになった。長時間立ち寄りすぎて帰りが遅くなって、お叱りの台詞が帰ってきた途端に飛んでくるが。
「……」
そんな彼の傍らの座席に、一人の男が現れ、座席に座った。その男の姿に、ふとルークは視線を寄せる。
(な、なんだこの人の迫力……)
短い髪に黒いコートを羽織ったその姿からは、見た目の若さ以上の年季と幾多の修羅場を潜り抜けた戦士としての風格が漂っていた。思わずルークはゴクッと唾を飲み込む。
「いらっしゃいませ!ご注文は何にいたしますか?」
新しいその客に、ジェシカは注文を尋ねる。
「あぁ…ワインをくれ」
「ワインですね?かしこまりました!」
彼女はオーダーを聞いて厨房に向かうと、すぐに注文どおりのワインを持って彼の元に戻ってきた。
「何かお悩みですか~?」
「…そのわざとらしい口調はなんだ。ジェシカ」
男はその色気を漂わせた口調を言い放つジェシカに、全く媚びることもなく冷静さを保ったまま、呆れた様子でその女性に言い返す。そのクールな態度の彼にやりがいがないな、と女性もまた彼に対して呆れた。
「んもう、相変わらず無愛想なこと」
「その人…知り合い?」
何かと威圧感を漂わせる其の男に、妙に親しげに会話するジェシカにルークは尋ねてきた。
「誰だと思う?」
それに対し、ジェシカは少し悪戯っぽい漢字で、質問に質問で返す。
「もしかして…彼氏さん?」
「違う」
それとも旦那?とルークが追加する其の前に、男は真っ向から、それも冷静に否定した。
「そんな風に冷たく返されると、流石に傷つくわよ?」
「冗談でその小僧の質問を肯定したら、浮気者扱いは免れないからな。俺はグラモンと違って一途だからな」
あまりに冷たく感じ取れる返しにジェシカは言うが、ここにいない誰かの事を詫びれなく貶しつつ、自分のハートが強固なものであることを主張する男。
「小僧じゃねぇ!俺はルーク・ド・ラ・ヴァリエールだ!」
子ども扱いしてきた男の言動に、ルークは少しムキになって反発する。
「…さすがはヴァリエールの子だな。変なところで意地を張るところもよく似ている」
しかし、男はルークの強気の態度に全く気落ちせず、まるでふてくされる子供をあやすように言った。
「ヴァリエールの子…?あんた、お袋のこと知ってんのか?」
「当然だ。奴とは20年前からの付き合いだならな」
男の言い回しが、自分の母のことを知っているような口ぶりだったこともあって尋ねると、男はルークの質問に頷いた。ルークはその男が、母の知り合いであることに驚いた。
「じゃあ…ちょっと聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「あんた、お袋の旦那を…親父を知ってるか?」
「ヴァリエールから聞いていないのか?」
「お袋は、俺が子供の頃からずっと家を開けてばかりなんだ。国から特殊な任務を任されているとか言ってたけど、それがなんなのかも…昔の事だって俺にほとんど話してくれちゃいないんだ。叔母上も…親父の話を持ち上げた途端、眉間にしわを寄せてばっかでまともに話さねぇし」
親父の話をするな、とテラに言っていたが、内心では父がどんな男なのか、ルークは気になっていた。
ルークが父の話をしたがらないのには理由があった。その話をすることで叔母がいちいち不機嫌になるからである。ただでさえ平時でも不機嫌オーラを撒き散らす叔母が怖くもあったし、煩わしかったのだ。
「……もし、父のことを知ったとして、お前はどうする気だ?」
「…決まってんだろ」
男からのもしもの問いを聞いて、ルークは静かに立ち上がった途端、気合のポーズをとるようにパン!と音を立てながら、右拳を左手で受け止めた。
「親父を殴る!お袋や俺のことを放り出したことを反省させるまで殴りまくってやる!泣いて謝ったって許さねぇ!」
エレオノールのヘイトスピーチも原因かもしれないが、ルークは子供の頃からずっと、顔も名前も知らない父に対する不満を募らせていたのだ。さらにルークは、自分の異常な身体能力を持つが故の苦労に対する不満や愚痴をありったけに吐きまくった。
男はルークの言い分を聞いて、顔を覆ってため息をつきたくなった。
(…だから言ったんだ、ヴァリエールの奴め。息子の世話ができないなら、無理しないでこっちに任せればよかったものを。二番目の方ならまだしも、自分の一番上の姉がガキの教育に向かないことなど百も承知だっただろうに…)
「で、あんたは…親父を知ってるんだよな?」
「…知らんな。奴とはあの戦いが終わってから、会う回数がめっきり減ったからな。結婚したかどうかさえも聞いていない」
「そうか…」
改めて父の事を尋ねるルークだが、男は何も知らないと主張した。
ちょっと空気が不穏に成りつつあったのを察し、ジェシカはここで男のグラスにワインを注いで、今度は自分が男に質問してきた。
「それにしても、奥さんも連れてこないでここに一人で来るなんて珍しいじゃない『シュウ』。何かあったの?」
「久しぶりに『あいつ』からの連絡が来たからな。ここで集合する予定だ」
「あいつ…?」
「あぁ。あいつだ。お前も知っている、あいつだ」
「…あぁ、あいつのことね!」
その男…『シュウ』の言う『あいつ』のことが誰なのか、ジェシカは察した。
「最近、別の次元との繋がりが濃くなり始めている。普通次元の壁に穴があくことは滅多にないが、それが数件にもわたって発生している。あいつはそれを異常に感じて、俺に直接会って話をしたいといってきている」
「なんだかよく分からないけど、あなたたちほどの人がそれほど懸念しているってことは、また何か大変なことが起きるってこと?」
「あぁ…おそらくな」
ワインを少し口に含みながら、シュウは顔を険しくする。
「…こんなときにあいつらは5年間もどこに姿を消したのか…」
「どうかした?ぶつぶつ言ってますけど」
「いや、なんでもない。ただの独り言だ」
シュウの独り言に耳を傾けてきたジェシカに、彼は首を横に負って何も言わなかったことにした。
(別の…次元…?)
ルークはその会話を聞いて興味を引かれた。なにやら、普通ではない奇妙な出来事が起こることをこの男は察しているような気がした。それを予想した時、先刻のあの眼鏡の同級生が言った言葉が蘇る。
この退屈な日々も終わる…と。
偶然なのか、奇妙な接点がこの男の言葉と、あの眼鏡の学生の間にあるような気がした。
「なぁ、あれなんだ?」
ふと、街の人たちの会話を聞いてルークは顔を上げる。彼らは空に向けて指を差して騒いでいる。ルークもそれに釣られて店の外に出て空を見上げた。
いつものような青空が広がっていて、昼間もその姿を見せている赤い月と青い月が見える。
だが、街の人たちが指摘していた異変は、すぐに何なのかをルークは知ることになった。


空に、虹色と暗雲が混じったような現象が起きていた。
そして、空間に赤黒いヒビがぴしぴしと音を立てながら生じるという、非現実的な現象が相次いで発生する。
「さて、まずは…一手」
その現象は、ルークに意味深な言葉を送っていたあの青年も見ていた。
彼は普通ではありえない場所に立っていた。そこはなんと…街の中央にシンボルとして存在している『トリスタニア城』の最も高い塔の…針の上に立っていたのだ。
「さあ…来るのです。我らの招待を受けし、異界のお客人たち」
彼がどこか楽しげに言うと、彼の額に不思議な刻印が刻み込まれた。
やがて、彼の声に反応したように、ひび割れた空間が割れた。
その奥から見えた赤黒いひずみの中から…巨大な3体の巨大生物が姿を現した。


一方その頃…
ルークたちのいる世界と同じ次元に存在する宇宙、そこには青と赤色の肌を持ち、頭に二本の短剣を携えた戦士が、宇宙空間を飛行していた。ふと、彼はその金色の目にあるものを眺める。
「あの星、何年ぶりかな…」
その巨人は、懐かしむように視界に映る、青く美しい星を見つめる。
その名は惑星『エスメラルダ』。赤と青の二つの月を持つ、地球のように美しい緑と海の広がる星。この巨人にとってとても感慨深い星なのだ。
だが、懐かしむ彼を、すぐに戦士としての姿に引き戻す事態が起きた。
「な、なんだ!?」
同じ頃の地上と同じように、エスメラルダのすぐ傍の空間に歪みが生じ、ひび割れたのだ。
「空間が割れた!?まさか、ヤプールか!?」
戦士…『ウルトラマンゼロ』は絶句する。
そんな彼の驚きを他所に、ひび割れた空間から新たに巨大な影が出現する。
その怪獣の名は『彗星怪獣ドラコ』。目の前にゼロという獲物を見つけた途端、彼に襲い掛かってきた。そのスピードはゼロの予想を上回っていた。
「グワ!!」
予想以上の早さでゼロに向かい、すれ違いざまの一撃をゼロは食らってしまう。
(こいつ、普通のドラコよりもかなり強化されている!?)
ゼロは同族たちの仲でもまだ年若い方だが、これまで何体もの怪獣を相手にした戦士である。同種族の相手も何度も行ってきた。故に、このドラコの強さが本来の固体よりも異常であることに驚かされた。
ゼロはドラコの攻撃に耐えながら、奴の姿を見る。よく見ると、奴の体の一部に奇妙な水晶体がへばりついていた。
(あの水晶体はまさか!)
彼はその水晶体を見て驚きを見せる。その水晶体からは強烈なエネルギーが感じ取られた。
(奴は、あの水晶体の影響でパワーアップしたのか!)
考えている間も、ドラコはゼロを狙って突進を繰り返す。
「この、調子に乗るな!!」
ゼロは頭に装着されていた短剣型ブーメラン〈ゼロスラッガー〉を二本共手に取る。すると、彼の左手の項に刻まれた、文字のような印が青い輝きを解き放つ。それと同時にゼロは二本のゼロスラッガーを投げつける。
スラッガーは円を描きながら周り、ゼロに向かってきたドラコと正面からぶつかり合う。
双方がすれ違ったところで、ゼロの頭にスラッガーが戻ってくる。しかしドラコはゼロに向かって一直線に飛び続ける。だが、ゼロにドラコの突進が届くことはなかった。
届きそうなところで、ドラコの体が頭から真っ二つに切り裂かれ、そのままゼロとすれ違って宇宙の藻屑となったのだ。
少し厄介な敵だったが、長く戦い続けてきたゼロの敵ではなかった。
とはいえ、今この惑星に起きた異常事態を解決したわけではない。
「地上が心配だ。すぐに行かないと!」
ゼロは一筋の青い光となってその星へと向かったのだった。



「か、怪獣…!」
突如街に現れた巨大な怪獣に、ルークだけじゃない。街の人たち全員が恐怖した。
20年前の大乱を機に、この星にも出現するようになった巨大生物…人は彼らを『怪獣』と呼び恐れた。何度も教科書で見たことがある。

地球の名画「ムンクの叫び」のような不気味な顔が掘り込まれた『フィンディッシュタイプビースト・クトゥーラ』。
その強靭な肉体で敵を翻弄する、一度認めた主に忠実な『用心棒怪獣ブラックキング』。
二つ何ふさわしく、何度倒しても蘇ることが可能な『再生怪獣サラマンドラ』。
いずれも、この星をはじめとした、あらゆる宇宙文明の危機を救ってきた英雄ウルトラマンたちを苦しめた強敵たちだった。

ふと、ルークの脳裏に…ある言葉が浮かぶ。
この退屈な日々は終わる、と。
「まさか…」
あの眼鏡野郎が何かしでかしたとでも言うのだろうか?
けど、この世界には当時の戦いから設立され、この星を守ってきた防衛チームが存在している。
その名は『ウルティメイトフォースゼロ(UFZ)』。かつて彼らと共にこの星を守ったウルトラマンの名前に謝って名づけられた組織だ。
彼らの乗る飛行兵器が、怪獣たちに向かって攻撃を開始、ウィングに仕込まれた砲口より発射した。さらに地上からは、魔法、銃器を発砲して怪獣たちを攻撃する別働隊も援護に回っている。
「ああああああああああ!!」
「落ち着いて!こちらへ避難してください!」
彼らは地上でパニックを起こしている人たちの避難誘導も担当していた。彼らの計らいで街の人たちは恐れおののきながらも、UFZの的確な動きと指示のおかげで、避難先へ急ぐことができた。
だが、怪獣たちはそんな彼らの動きさえも嘲笑うように暴れまわった。クトゥーラの振り回す触手が上空を舞う飛行兵器を撃墜し、そんなクトゥーラを守るようにブラックキングが自らの肉体を盾にしてやり過ごす。其の間にサラマンドラも地上にいる人々を蹂躙しようと、周囲の建物を破壊しつくそうとする。
もちろん街の人たちは大騒ぎになった。少しでも早く逃げ延びようと、中には魔法など、あらゆる手段を弄して避難しようとしていた者も居た。
さっきの男や、あの眼鏡男が言っていたことって…こういうことなのか?
「その通りですよ」
「!」
ルークは突然背後から聞こえた声にぎょっとした。振り返ると、やはり思ったとおり、あの眼鏡の男がルークの前に姿を見せていた。
「お前、こうなることを最初から知っていたのか?」
「知っていた?そんなこと、これからのあなたには関係のないことです」
その男の眼鏡の奥から見える視線には、氷のような冷たさをルークは感じた。
「どういう意味だよ?さっきから訳のわかんねぇこと言ってんじゃねぇぜ」
ルークの言葉を聞いて、眼鏡男は、はぁ…とため息を漏らしながら眼鏡をかけなおした。
「やれやれ…知らない間にずいぶんと聞き分けのない子になったようですね」
「はぁ?」
「まぁ、いいでしょう。次元の壁に穴が開かれ、彼らが暴れている今…あなたを取り戻す絶好の機会ですからね」
眼鏡男が改めてルークは見て、指を頭上でぱちんと鳴らす。すると、周囲の建物の中、隙間からぞろぞろと、白い装束に実をまとった怪しげな集団がルークを取り囲んだ。
「な、なんだ…お前ら!?」
「あの男を捕まえろ」
「はっ…」
心というか、魂のこもらない返事をした、白装束の一人。そして、白装束たちは一斉にルークに襲い掛かった。
「んの野郎が!」
真っ先に襲い掛かってきた白装束の一人を、ルークは殴り倒した。だが相手は人間、ちゃんと手加減を忘れずに殴っておいた。殴られた白装束は地面の上でそのまま伸びた。
「んだよ、大したことねぇ…な!?」
小さな勝利に浸るのも、束の間だった。今までルークと喧嘩して倒された連中は、彼の軽い感覚で放ったパンチで簡単に気絶してきた。本気を出せば、人間の体だって粉砕できる。
しかし、今殴り倒したはずのこいつは、ルークから殴られたというのに、ちっともダメージを受けたようなそぶりを見せない。
「馬鹿な!間違いなく落としたはず…」
「あなたがいくらがんばっても、彼らは不死身です。何度倒しても蘇りますよ。あなたを捕まえるまでは…」
「お前が操ってるのか!?」
眼鏡の男は、決してそこらへんにいるような、ただの人間ではない。この男を見てルークは確信した。それにしても、人間を操って戦わせて置きながら自分は高みの見物。この眼鏡野郎の手腕の汚さにルークは怒りを覚えた。
「こいつらだって人間だろ!?何てことしやがる!」
「彼らは使い捨ての駒…いくら死のうが関係ありませんよ。傀儡は使われるために存在しているのです。そしてそれは…あなたにも言えることです」
「…!?」
俺にも言えること?意味が分からない。怒りの代わりに、今度は困惑の念が湧き上がるルーク。この男は一体何をどうしたいのだ。俺を襲って、一体何をする気なんだ。
「これ以上語ることはありません。大人しく、我々の元に戻りなさい」
「!」
眼鏡男が言うと、再び白装束たちがルークをひっとらえようと飛び掛ってきた。ルークは直ちに応戦した。こいつらは、操られているとはいえ自分と同じ人間だ。加減なしで戦うには、どうも気が引けた。だがそれでも、力加減をしながら戦うことになるからあまりにもしんどい。しかも、いくらルークが殴り倒しても蹴ったり投げ飛ばしたりしても、白装束たちは立ち上がって再びルークに戦いを挑んでくる。
(くそ、分が悪い!逃げるしかねぇ!)
あんな眼鏡男を相手に逃げるのは屈辱ではあるが、逃げるのは得意だ。ルークは一度体制を整えるためにも一時離脱を図った。


ルークの実家であるヴァリエール邸でも、怪獣出現に伴う異変によって騒ぎが起きていた。
テラが洗濯物を干していると、トリスタニアの方角の空がひび割れている光景が目に映った。
(何かしら…?)
目を凝らすと、3体もの怪獣たちが出現し、彼女の表情が一変する。
だが、彼女が驚いたのは『怪獣が現れた』ことではなかった。
「次元の壁に穴が!?まさか…『奴ら』が…!?」
その言葉には、ただ聞くだけでは読み取れない深い意味が含まれていた。
「坊ちゃまが危ない…!」
彼女は仕事中にもかかわらず、洗濯物を放り出して駆け出していった。


ルークが店を出た頃、店の外の騒ぎが大きくなったのを聞きつけたシュウは、空を見上げた。肌で感じとれる。またこの星に脅威が訪れたのだと。
「また怪獣が…!」
それを、彼の後を追って店の外に出たジェシカも見上げる。彼女も20年前の戦いの時代を生きていたため怪獣を知っていた。何度もあのような怪獣が現れたおかげで、この街は何度も甚大な被害に見舞われた。できればもう二度と見たくなかったが股こうして現れるとは。
「ジェシカ、お前は避難しろ」
「わかったわ」
シュウは、懐から白い探検を取り出しそれを鞘から引き抜く。同時に彼の体は、刀身から放たれるまばゆい赤い光に包まれ始める。その光に包まれた果てに彼は…。

巨大な銀色の巨人となって、怪獣たちの前に立ちふさがった。

その戦士の名は『ウルトラマンネクサス』。この星を救った英雄の一人が変身する、銀色の巨人である。

だが、戦うのは彼だけではない。他にも彼と共に戦う頼もしい仲間が危機を察して現れる。空の彼方から、二つの飛行機械が飛来する。その二つの飛行兵器は、まるでロボットアニメの変形シーンのように、武人の姿へと変形し、ネクサスの隣に降り立った。
「ジャンボット!」「ジャンナイン!」
「「我ら鋼鉄のジャン兄弟!ジャンファイト!」」
この星の人類の祖先たちが、別の星からこの世界に降り立つまでに頼った、守護騎士『ジャン兄弟』。彼らもまた、20年前の戦いでこの星の平和を勝ち取るために戦い抜いた英雄の一人である。
「…油断するなよ。お前たち」
「了解した。ナイン、気を抜くな」
「二人とも、それは僕に言っているのか?言われるまでもない」
ネクサス、ジャンボット、ジャンナイン。
三人は、時空のゆがみより現れた、新たなる脅威に果敢に立ち向かっていった。



エレオノールの説教から逃げたある日、浮遊効果のある魔法〈フライ〉を駆け忘れて二階の窓から飛び降りたことがあった。そのとき、たまたま自分が魔法をかけ忘れたことに気がついて後悔する前に、自分は怪我一つ負うことなく、なんてことなく地面に着地した。それ以来、屋根によじ登って逃げることも得意になったし、いつしかビルとビルを飛び越えるほどにまでルークは自分の身体能力の扱いに慣れていった。
だが、そんな白装束たちは…
(マジかよ…!)
全力で逃げているというのに、彼をしっかり追いかけるほどの速度でルークを追っていたのだ。
(何者なんだこいつら!?まさか、エイリアンか!?)
これまでこの星は、怪獣のほかにも、侵略目的で襲ってくる宇宙人たちも大勢いた。そいつらは人間をはるかに凌駕した力を持ち、ハルケギニアの各地に甚大な被害を及ぼした。こいつらもその仲間なのか?
だが、例え相手にわざわざ尋ねようにも、質問に答えてくれる雰囲気などでは決してない。ルークはあまり振り返りすぎることがないように逃げ続けた。


「ハアアアア!!」
ネクサス・ジャンボット・ジャンナインの三人の猛攻は、怪獣たちを上回っていた。
かつてこの世界を覆った大災厄からあらゆる種族に属する人々を救った戦士たちが、今更自分たちが相対する怪獣一体に負けることなど、実力的にありえなかったかもしれない。
「ジャンナックル!」
ジャンボットのロケットパンチが飛び、ブラックキングを押しのける。殴り飛ばされたブラックキングに追撃の一撃をお見舞いすべく、自身の背中にセットされていた斧を手に取り、ブラックキングの真上に飛び上がって落下と同時に振りかざした。
「ジャンバスター!!」
続いてジャンナインの、腹部に搭載されたコアから発せられる超威力のレーザービームが飛び、サラマンドラを貫く。レーザーが貫いたのは、サラマンドラが再生怪獣と呼ばれる由来となった、喉の中にある再生機関。目に搭載された透視機能を用いて、ジャンナインはその箇所を的確に狙い、喉を潰したのだ。
そしてネクサスのほうは、彼に向けてクトゥーラの触手が伸びて彼の動きを封じた…かに見えた。ネクサスは縛られたにもかかわらず、全く動きに滞りを見せなかった。自分を縛る触手を握ると同時に、発光した彼の体の模様に変化が現れた。発光が終わったと同時に、彼の体は黒と銀の模様から、新たに力強い赤と澄んだ青い模様をその身に刻み込んだ。
彼が若き日から培ってきた仲間たちとの絆の証にして、ネクサスのもう一つの姿『ジュネッストリニティ』である。
豪快にもハンマー投げのごとくクトゥーラ振り回し始め、そのまま宙に向けて投げ飛ばした。落下していくクトゥーラに、ネクサスは一切の容赦を見せなかった。両腕にほとばしるエネルギーをスパークさせ、十字型に両腕を組み、必殺の光線を放った。
〈オーバークロスレイ・シュトローム!〉
「デア!!」
十字型の破壊光線によって貫かれたクトゥーラは白く発光した後、蒼白い結晶のような粒子となって弾け飛び、消滅したのだった。


ネクサスたちが戦っている間、ルークは必死に逃げ続けた。自分の出せる全力の速度で白装束をやり過ごそうとした。だが、どれほど逃げ回ろうとしても、奴らは追い続ける。
(くそ、しつけーんだっての!!)
いい加減にバテてそのままはいつくばってほしいものだ。だがそんな願いを裏腹に、白装束たちはルークを追い回し続けた。
そのとき、クトゥーラの攻撃による触手が、走り続けるルークのすぐ目の前で跳ね上がった。当然ルークは立ち止まってしまう。
「今だ!」
白装束の一人が仲間たちに命令すると、白装束たちは直ちにルークの両腕と両足を一人ずつ捕らえた。ルークは当然振りほどこうとしたが、白装束たちの力はルークの予想を上回っていた。
「ぐ、この!離せ!離しやがれ!」
「まったく、手間をかけさせる…」
もがくルークを見て、さきほどの眼鏡男も遂に駆けつける。
「あまり手間をかけさせるものじゃありませんよ。私一人だけでもこの世界へもぐりこむのには苦労いたしたんですからね」
「てめえ…やぱりこの世界の人間じゃねぇのか!目的はなんだ!俺みたいな奴を捕まえて一体何をする気だ!?」
「だから言ったでしょう?これからのあなたにそんなことを知る必要はないのですよ」
二度も同じことを言わせるなといわんばかりに、眼鏡男は呆れ気味に言う。
「…あぁそうだな。てめえみたいな不届きな野郎に理由を聞いた俺が馬鹿だったぜ」
一人の人間にここまで追い詰めるような真似をしたのだ。どうせろくでもない理由に違いない。ルークはそれ以上何も聞かず、抵抗を続けた。
「無駄です。彼らの力は、たとえ…

『ウルトラマン』の血と力を受け継いで生まれたあなたでも解けませんよ」

「!」
こいつ…なんて…?
ルークは一瞬頭の中を射抜かれたような感覚を覚えた。
「てめえ、何を知って…」
こいつとは今日初めて知り合ったばかりじゃないか。しかしこの男はルークさえも知らないはずのことを、知っている?ウルトラマンの血を引いている?だとしたら、やはり俺の親父は…!
「では、連れて行きますよ。あまり待たせると、ただでさえせっかちで短気な彼が怒りますからね」
眼鏡男が、自分の配下である白装束たちに捕まっているルークに近づくと、両手に、見たこともない文字を刻んだ奇妙な札を持って、何かをぶつぶつと呟き始める。
(魔法の詠唱!?いや…)
よく聞き取れないが、ルークはこの眼鏡男が呟いている言葉が、魔法の詠唱とは異なるものだと察した。ハルケギニアの4大系統魔法でもなければ、エルフたちの使う精霊魔法でもない。根本的に違う何かを使おうとしている。
眼鏡の男は、ルークの周囲に向けて札を、円を描くように数枚ばら撒いた。すると、札が怪しい光を放ち始め、ルークを捕まえている白装束たちもろとも彼を筒込み始めた。
そのときだった。
「お坊ちゃまから離れなさい!」
テラが現れたのは。ルークたちの下に、どこからか飛び降りてきて
「て、テラ!?なんで…!?」
「……」
眼鏡の男は後ろを少し振り返って、迫ってくるテラを見る。
「また邪魔をするのですね…」
彼にとってテラの存在は邪魔でしかない。その意思を察してか、白装束たちが壁となってテラと対峙する。
「この!」
自分に迫ってきた白装束を張り倒し、殴り飛ばしながらテラはルークを助け出そうとする。だがあまりに大人数であるせいか、なかなか近づけずにいる。
一方で眼鏡の男は、テラが白装束と戦っている間、呪術の詠唱を続行した。ルークたちの周囲を囲む札の光が強まっていく。このままでは、最悪殺されるかもしれない。だったら…いっそ…
「うおおお!!」
ルークは覚悟を決めると、足に力を込めて乱暴に、自分の足を掴んでいる白装束の腕を振り払った。そして同時に、眼鏡の男の顔面を蹴飛ばしてしまう。
「ぬぅ…!!?」
顔を蹴られ、鼻を押さえる眼鏡男。ちょうど鼻の頭を蹴り押されたようだ。捕まえていたルークの足が彼によって払われ、白装束たちは彼の腕を捕まえる力をも緩めてしまう。それを突いて、ルークは両腕で思い切り、自分をさっきまで捕まえていた白装束全員を札の外側へと投げ飛ばした。吹っ飛ばされた白装束たちは周囲の建物に激突してしまう。
だが、そのときだった。
「!?」
ルークはまだ、眼鏡男の手によって発光し、輝きが収まらない札の中心に立っていたままだった。その光がやがて、彼の姿を覆い隠してしまう。
「テラ…!」
ルークが寺の名前を呼んだその瞬間…まばゆい白い光が放たれた。
「う…!」
テラはそのまぶしさに目を覆う。そしてその直後、輝きが収まったその場所には、ルークの姿は陰も形も残らなかった。
「坊ちゃま!!」
それを見てテラは悲鳴を上げてしまう。一方で、眼鏡男はなんの詫びれもなく、ルークの消えた場所を見下ろした。
「おやおや、『彼』の元へ転移させる予定だったのですがね…まあいいでしょう。場所は違えど『同じ世界』に転移させたことに変わりないですから」
この男にとっては、一つ予定外な事があったらしいが、結果的には特に問題は無かったようだ。
「あなたはそこで遊んでいなさい。私たちはこちらでやらねばならないことがありますので…では、ごきげんよう」
既に時間は十分だ。眼鏡の男は、指をぱちんと鳴らす。すると、ルークに殴り飛ばされた白装束たちが再び立ち上がり、テラに向かって襲ってくる。
「待ちなさい!」
テラは自分に再度迫ってくる白装束たちを退けながら、眼鏡男に近づこうとしたが、白装束たちは思った以上にしつこかった。バリケードを作るように立ちふさがってテラを一歩も通そうとしない。
その間に眼鏡男は奇怪な呪術の詠唱を完了させ、彼もまた光に包まれ、一瞬にしてその姿を消してしまった。
「しまった…!!」
テラは苦虫を噛み潰す。助けに来たというのに、まんまとルークの誘拐を許してしまった。



ルークの波乱に満ちた戦いの…

新たな異世界の戦士たちの…


かつてこの世界を救った英雄たちの、最後の戦いの物語が始まる。


 
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