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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第53話剣を交えた兄妹のシンクロ


ライリュウside

桐ヶ谷兄妹が戻って来るのを待ちながらオレは世界樹を攻略するためについさっきグランド・クエストをユイちゃんを連れて情報収集の意味合いで受けてみた。まあ敵の数が多くて最後は退却しちまったけど、情報収集だけだからまだ大丈夫だ。それで分かったのは、世界樹を守るNPCガーディアンのステータスはそこまで高くないけど数が出現数が多すぎて攻略不可能な難易度に設定されているとしか思えないという事だ。
とにかく今はこのアルンの北側に位置する浮島のテラスで桐ヶ谷兄妹が戻って来るのを待とう。あいつらならーーーきっと戻って来る。そう思っていたらーーー桐ヶ谷兄妹の兄、キリトがここへ飛んできた。

「お前ら・・・」

「オレ達はお前ら兄妹に関わった、だから見守る事にした。余計なお節介とは言わせねぇぜ」

オレと《リトルギガント》に気付いたキリトにオレはそう言う。お互い素性を知らなかったとはいえ、一緒に冒険した。一緒に戦った。だったらーーー見守る権利、いや、義務がある。

「竜」

「!・・・来たか」

翼の声で彼女の接近に気付いた。緑と白を基調とした服、長い金髪のポニーテール、半透明な緑色の羽。リーファ。キリトの発した名前によると、彼女の本名は恐らくーーー桐ヶ谷直葉。彼女は緑の羽で空を進み、このアルン北側のテラスに足を着けた。

「やあ」

「お待たせ」

この何気ない挨拶も、さっきのやりとりがなければ普通に仲の良い兄妹なんだろうけどなーーーそう思っていたらリーファがオレ達の存在に気付き、またキリトに向き直った。

「スグ・・・」

キリトが現実で呼んでいるのであろう彼女の名前を呼んだところで、リーファが手を前に突き出しキリトのセリフを強制的に止める。

「お兄ちゃん・・・試合しよ?あの日の続き」

現実での話をしているのだろうか。あの日と言うからには、恐らくSAO前、あるいはキリトがーーー和人が現実世界に帰って来てから数日後といった時の話だろうか。オレが見守るという表現をしていたのはーーーきっとあの二人、桐ヶ谷兄妹が剣を交える事を心のどこかで感じ取っていたのかもしれない。
リーファが腰に挿して、キリトが背中に背負っている鞘から互いに剣を抜く。左手を前に突き出し、右手の剣を身体より少し後ろに構えてるキリトに対し、リーファは刀にも似た片手剣、長刀の先端をキリトに向けた状態で兄を突くように構えーーー

「・・・いくよぉっ!!」

戦闘開始、キリト目掛けて突撃する。その突きはキリトが持つ大剣に弾かれ失敗に終わる。キリトは彼女の追撃を許さず右から剣を横一文字に振るうがーーーすでにそこには妹の姿はなく、飛翔して回避していた彼女を追うために黒い羽を背中に携え空を駆ける。それからも空中で一度剣をぶつけ、リーファとキリトは高さの揃っていない別々の浮島に足を着けた。

「あの二人・・・なんや分からへんけど、おんなじ事考えとる気ぃすんねん」

「私も・・・」

かんなの言葉に亜利沙がそう言う。オレもそう思ってる。なぜだか分からないけどーーーいや、分からなくなんてない。頭で考えるんじゃなくて、心で感じれば。
キリトとリーファは互いに浮島から足を離し、リーファはーーー

「剣を捨てた!」

「斬られるつもりだ!」

「リーファちゃん・・・!」

「大丈夫だろ」

「竜をなんでそんな事言えるん!?」

突然だが、『シンクロ』という言葉を知っているだろうか。長年連れ添った夫婦に阿吽の呼吸が生まれるという事、共に戦ってきた戦士達が動きが見えなくても感じる事が出来るという事。それらはシンクロと言えると思ってる。だったら、今空中でーーー互いに剣を捨て、抱き合っているあの影妖精(スプリガン)(キリト)風妖精(シルフ)(リーファ)の兄妹もまた、シンクロ。

「兄妹考えてる事は一緒だって事だよ」

「シンクロか・・・じゃあ、()()もシンクロ?」

亜利沙が指を指した方向を見てみるとーーー確かに納得出来る。兄妹共に手放し、必然的にーーー地面に×印のように重なり、突き刺さった二人の剣を見たら、シンクロと言いたくなってしまう。

「みんな、軽くで良いからウォーミングアップしとけ」

『・・・うん』

ーーー決戦に向かうために。




******




「ガーディアンはステータス的にはさほど強くはなかった。だけど出現数が多すぎる、攻略不可能な難易度に設定されているみたいだ」

「でもパパやおいちゃんのスキル熟練度があれば瞬間的な突破は可能かもしれません」

オレとユイちゃんがさっきグランド・クエストを受けて情報収集をした時の解析結果をキリトとリーファ、そしていつの間にかここへ来ていたレコンに伝えた。その時ユイちゃんが言った、『おいちゃん』という言葉を聞いて笑っている翼とかんなにデコピンをして黙らせる。亜利沙は別に小バカにしている様子もないし、弾も冷静に作戦会議に参加してるからまだ大丈夫だけどーーー

「・・・ブフッ!」

「吹いたなこの野郎」

冷静なフリして最終的に笑いを堪えきれなくて結果吹くってのが一番腹立つんだよ。耳ちぎるぞ中二病が。
作戦はこうだ。リーファ、レコン、翼、かんな、亜利沙が後衛から回復(ヒール)などのサポートに徹してもらう。これだけならガーディアンの標的にされる心配はないはずだからな。敵に突っ込むのはオレ、キリト、そしてーーー

「お前が来い・・・ミスト」

「俺が!?」

オレ達スプリガン三人が前線に出る。

「あいつはお前に会いたがってるんだ・・・お前が行かなきゃ誰が行くんだ?」

未来は弾が好きだった。弾も未来が好きだった。でも未来は弾が死んだと思ってる。だったらーーーあいつの中で弾を死なせたままにしない。

「みんな、もう少しだけ・・・俺達のわがままに付き合ってくれ」

キリトの言葉を筆頭に、リーファが前に出した手の上にレコンが両手を乗せる。その上に翼が、その上に弾が、かんなが、亜利沙が、オレが、キリトが手を重ね最後にユイちゃんが一番上のキリトの手に座り込む。

『いくぞぉっ!!』

『おう!!』
 
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