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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第45話バット・チェイサー

アリーside

再びALOにログインしたら、ライトとミストが口を抑えて悶え苦しんでいた。何故かライリュウくんは先にログアウトしているみたいだし、キリトくんは平然と寝そべっている。リーファちゃんとキャンディは先に戻って来てたみたい。とりあえず何があったのか聞いてみたらーーー何故か赤い木の枝を投げ渡された。

「《スイルベーン》特産なんやて。しかもごっつ辛い」

「何も知らずに食べさせられた・・・」

「・・・お気の毒に」

キリトくんが出発する前に雑貨屋さんで買い込んでいたこの《スイルベーン》特産の枝。ライトとミストはこれを食べてーーーというかしゃぶったらご覧の通りの体たらく、リーファちゃんとキャンディは咳き込んでしまったらしい。キリトくんが凄い辛党だっていう事がよく分かった。それより何故ライリュウくんがログアウトしているのかと言うとーーー

『辛ぁぁぁぁおおぁおぁぁぁおおお!!ぎぇぇぇぇ!キリト殺す気かテメーコルァァァァァァァァ!!先に落ちさせて貰うからなっっ!!!!!』

ーーーという事らしい。甘党のライリュウくんにはコレはキツかったのかな。

「ただいま」

「あっ!戻って来やがったなコノヤロウ!!」

「ライリュウ!お前が勝手に先に落ちたから『人手が足りなくなる』ってキリトが言うからずっとマッチをくわえてるような状況だったんだぞ!!」

「知らねーよ。だったら食わなきゃよかっただけじゃねーか」

ライリュウくんが再びログインしてきてライトとミストが食い掛かって来る。ずっとマッチをくわえてるような状況ってーーー確かにライリュウくんの言う通り食べなければいいだったと思う。そんなに辛かったの?その赤い枝ーーー

「じゃ、今度は俺達が落ちる番だな」

「ったく・・・女子達、護衛よろしくな」

「あっ!よく考えたらライリュウ中心ハーレムみたいじゃねーか!テメーそれが狙いだったのか!?」

「違ぇーよ。あの枝辛かったし、軽く米を5合食ってただけだよ」

『5合!?』

5合ってーーーライリュウくんの食生活ってどうなってるの?もしかしなくても相当な食いしん坊?しかも5合で軽くって言えるなんて、本気の空腹だったらどれぐらい食べるんだろう。
結局キリトくん達がさっさと休憩してくれないと今後に支障をきたすという事で、ライリュウくんを除いた男子達がログアウトして身体(アバター)だけがこの場に残った。
すると突然、リーファちゃんが残ったキリトくんのアバターの顔を除き込む。

「リーファちゃん・・・どうしたの?」

「キリトの顔に何か付いてんのか?」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「だったらどないしたん?」

私とライリュウくんがリーファちゃんそう尋ねて、リーファちゃんはそれを否定する。キャンディがその理由を聞き出してーーー

「キリトくんの顔が・・・どことなく、あたしのお兄ちゃんに似てて・・・」

『似てる?』

お兄ちゃんってーーーリーファちゃんの?キリトくんの顔ーーーというか、私達の顔って一応SAOのデータを使ってるから、現実(リアル)と一緒なんだよね。でもリーファちゃんはそんな事を思い付く訳でもなく、『偶然かな?』程度にしか感じないんだろうなーーー

「うわぁぁぁ!?」

私がそんな事を考えていたら、リーファちゃんが突然大声を挙げた。その原因はーーーキリトくんのコートの胸ポケットから出てきたユイちゃん。

「あ、あなた・・・ご主人様がいなくても動けるの!?」

「そりゃあそうですよ、私は私ですから。それと、『ご主人様』じゃなくて『パパ』です!」

「完全なログアウトじゃないから・・・かな?」

「ユイちゃぁぁぁぁん!ホンマ可愛ェェェ「やめろ!ユイちゃんに手を出すな!」きゃあ!!」

ユイちゃんの登場に驚き質問するリーファちゃんに、ユイちゃんがそう答える。私はローテアウトは完全なログアウトじゃないから行動出来るのかなと考えて、それを尻目にユイちゃんに飛び掛かろうとするキャンディをライリュウくんが阻止する。
ライリュウくんってユイちゃんに凄く過保護な気がするけどーーーまさか、こういう小さい女の子が好きとかじゃないよね?

「そういえば、なんであなたはキリトくんの事を『パパ』って呼ぶの?もしかして、その・・・彼がそういう設定にしたの?」

そういう場合、普通『パパ』じゃなくて『お兄ちゃん』とかがすぐに思い浮かぶけどーーー仮にそうだったらキリトくんが相当コアな人になるけどーーー生憎そういう訳でもない。だってこの親子はーーー

「・・・パパは私を助けてくれたんです。『俺の子供だ』って、そう言ってくれたんです。だから『パパ』です!」

「そ、そう・・・?」

あのデスゲームで本当に親子になったから。リーファちゃんは何も知らないから、色々事情があると言うのが一番得策かな。
それよりもーーーライリュウくんの表情がさっきよりも暗くなった。ユイちゃんの話を聞いてからかな?私達の知らない所で彼はーーー何か重い物を抱えていたのかもしれない。

「・・・パパの事、好きなの?」

突然リーファちゃんがユイちゃんにそんな事を聞いてきた。ユイちゃんがあんなに慕って、なついてるんだから、当然好きに決まってーーー

「・・・リーファさん、好きってどういう事なんでしょう?」

ーーー意外すぎる返答(質問)が返ってきた。好きってどういう事、それはーーー『いつでも一緒にいたい』、『一緒にいるとドキドキワクワクする』、そんな感じかな?私がーーー神鳴竜くんに感じる『好き』は。
でもそれは『恋愛』の『好き』であって、『好き』には色々な形がある。『家族』として『好き』、『友達』として『好き』、そんな感じに『好き』には色々な形がある。それをユイちゃんに分かるように伝えるにはどうすればーーー

「・・・ユイちゃん、『好き』には色々な形があるんだ。『恋人』として『好き』、『家族』として『好き』、『友達』として『好き』。『好き』にはたくさんの意味があるんだ。形は違えど、大事な物は一緒っていうか・・・優先順位みたいな物はないんだ」

『え!?』

「う~ん・・・具体的な例を教えてください」

なんでライリュウくんが答えるの?別にいけない訳じゃないけどーーーこういうのは女の子が言う物なんだと思うけど。ユイちゃんに具体的な例を迫られ、『う~ん』と頭を捻ってーーーピコンと電球が光ったような顔をした。

「じゃあ・・・ユイちゃんにとってパパとママ、優先順位はどっちが上?」

この心理は、ユイちゃんのような幼い子供に対して使うのが一番正しいのだろうかーーーその問いに対して、ユイちゃんも『う~ん』と頭を捻るけれど、そう簡単に答えが浮かぶ訳もなく。選択した答えはーーー

「・・・比較不能です」

「それで・・・いいんじゃないかな?」

比較不能でいい。その言葉を機に、《スプリガン》の少年と《ナビゲーション・ピクシー》の笑い声がこの場所を支配した。リーファちゃんが状況を理解出来ていないのは仕方ないだろうけどーーー

「なんだ?この状況は・・・」

「キリト、もう戻って来たのか」

「お帰りなさい、パパ。今ライリュウさんとお話しをしてました。『『好き』という気持ちに優先順位は存在しない』って、教えて貰いました」

「ライリュウ・・・お前ユイに何を吹き込んだんだ?」

「睨むな親バカ」

キリトくんがたった今戻って来て、この状況に関して質問をしてくる。ユイちゃんに事の経緯を教えて貰ったら彼はーーーライリュウくんを睨みだした。ライリュウくんも親バカは言い過ぎーーー

『『パパ』と呼べ『パパ』と!もしくは『ダディ』でも可っ!!』

ーーー何も言わないでおこう。
キリトくんはご家族がご飯を作り置きしてくれていたから、そこまで時間はかからなかったらしいーーー

「・・・っ!?」

「?ライリュウ、どうしたん?」

突然ライリュウくんの様子がおかしくなった。辺りを見回して、何かを探しているかのように顔が険しくなっている。

「いや、なんだか誰かに見られてるような気がして・・・」

「え?」

「誰もおらへんみたいやで?」

「ユイ、近くにプレイヤーはいるか?」

「いいえ。反応はありません」

誰かに見られてるーーーライリュウくんはそう言うけれど、近くにプレイヤーはいない。それは《ナビゲーション・ピクシー》であるユイちゃんが証明している。だとするとーーー

「リーファちゃん、ひょっとしたら・・・」

「うん、《トレーサー》が付いてるのかも」

『《トレーサー》?』

「追跡用の《魔法》や」

追跡魔法(トレーサー)》ーーーそれは大概小さい使い魔の姿で、術者に追跡対象の位置を教える《魔法》。解除は《追跡魔法(トレーサー)》を見つければ可能だけれど、術者の《魔法スキル》が高いと対象との間に取れる距離も長くなるから、今私達がいるようなフィールドでは可能性は不可能に等しい。

「そっか、まあ気のせいかもしれないぜ?」

「せやで?ライトとミストが来るまで待って、《ルグルー回廊》に入ろうや」

「それはいいんだけど、遠くから覗き見されてると思うと気分が悪い・・・見つければいいんだろ?」

確かにライリュウくんの言う通り、遠くから覗き見なんてされてたら気分は悪いけどーーー流石に無理じゃないかな?そう思っていたら、ライリュウくんは身を屈め地面に右手を添え、目を閉じた。その謎の行動にキリトくんだけが心当たりのあるような顔をしている。そして目をカッと見開いた瞬間ーーーライリュウくんの姿が消えた。

「え!?消えた!?」

「どないなっとんの!?」

「ライリュウくんはドコ!?キリトくん何か知ってるんでしょ!?知ってるなら教えてェェェェェェ!!」

「アリー苦しい!!首絞まってる!!そんなに首絞めてたら何も説明出来ないだろォォォォォォオ!!」

だってライリュウくんが!!竜くんが消えたんだよ!?何がどうして私の好きな人が目の前から消えたの!?教えてよ!!

「捕まえた!!」

『戻って来た!!』

「ライリュウ、お前また()()使ったのか?あんまり乱用したら・・・」

「大丈夫だよこれぐらい。それより、コレ・・・」

よかったぁ、ちゃんと戻って来てくれて。キリトくんと何かコソコソと話してるけど無事ならなんでもいいよ。何故かコウモリなんて掴んでるけど無事ならーーー

「コウモリ・・・?」

「なんやそれ?」

「コイツが覗き魔の正体だ。赤い目のコウモリ・・・」

赤い目のコウモリーーー『赤』というと真っ先に思い付くのは、ALOの妖精種族ーーー《火妖精(サラマンダー)》。

「《サラマンダー》の《トレーサー》!?」

「じゃあ、今こうしてる状況も・・・」

「バレてるな」

《サラマンダー》が私達に《トレーサー》を仕掛けていた。つまり私達の行動も読まれてるし、会話もあまり聞こえてはいないだろうけど目的地も知られた。
ALO最大勢力《サラマンダー》を敵に回すとなると、かなり厳しいかなーーー

「・・・まあコイツの存在がオレ達に知られた以上、例え《サラマンダー》でも迂闊に動けないだろ」

ライリュウくんが右手に掴んでいるコウモリを握り潰しながら、そう言う。

「念のため回りの変化に気を付けながら《ルグルー回廊》まで行こう」

未だログインしてこないライトとミストの身体(アバター)の服の襟を掴んでいるライリュウくんを筆頭に私達は再び大地から足を離した。その間、ようやくログインしてきたライトとミストと悲鳴が空に響いたのは言うまでもなかったーーー
 
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