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ドリトル先生北海道に行く

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第十幕その七

「沢山の人が死ぬから」
「それもね」
「それって本当に鬼熊だよ」
 ダブダブは先生が言ったその妖怪のことをお話に出しました。
「というかもっと怖いよ」
「羆は大きいっていうけれど」
「ツキノワグマさんよりもね」
 オシツオサレツも言うことでした。
「そこまで凶暴だとね」
「銃がないとどうにもならないね」
「その村では銃がなかったので」 
 だからと言ったシホレさんでした。
「どうしようもなかったそうです」
「肝心の銃がなんだ」
「なくてなんだ」
「そこまでのことになったんだ」
「犠牲者は七人、八人とも言われています」
「一匹で八人」
「そこまでなんだ」
「それはまた凄いね」
「無茶苦茶な話だね」
 動物の皆も驚愕することでした。
「それはまた」
「かなり怖いね」
「無茶苦茶じゃない」
「一匹の羆に八人もって」
「確か一九一五年のことだったね」
 先生は西暦から言いました。
「この事件はね」
「あれっ、百年位前のことなんだ」
「十九世紀のことかって思ってたら」
「案外近いね」
「そうだね」
「その頃はまだ北海道もね」
 この地域自体がというのです。
「そんな感じだったんだ」
「怖い羆もいて」
「それでなんだ」
「人も襲われていた」
「そうだったんだね」
「うん、移住した人達の開拓村もね」
 それもというのです。
「粗末なもので家も小さくてね」
「熊も防げなかった」
「そうだったんだ」
「僕達が今住んでいるお家はお屋敷だよ」
 神戸で先生達が住んでいるそのお家はというのです。
「立派なね」
「うん、確かにね」
「立派な日本のお屋敷だよね」
「奇麗な和風のね」
「頑丈でいいお屋敷だよね」
「その頃の開拓村のお家はね」
 それこそというのです。
「小さくて台風が来たら吹き飛ぶ様なものだったんだ」
「じゃあ寒かっただろうね」
「北海道でそんなお家だとね」
「そうだろうね」
「勿論だよ、皆凍えていたんだよ」
 それこそというのです。
「冬にはね、そしてその冬になんだ」
「その羆が来て」
「そんなことになった」
「そうなんだね」
「大抵の羆は冬眠します」
 シホレさんもそのことは確かだとお話します。 
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