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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第19話

~グランアリーナ~



「烈火衝閃!!」

戦闘開始の号令がかかるとバダックは大鎌を振るって放射状に火炎を放ち、エステル達は散開して回避した。

「せいっ!!」

散開して回避したエステルは棒を一振りして衝撃波の弾丸を放ち

「ぬあぁぁぁぁぁぁ、てやぁ!!」

エステル達が攻撃を開始している隙にジンは体内の気を練って自分の力とする気功技――――龍神功で自身の筋肉を一時的に上昇させた。

「フン!」

襲い掛かる弾丸をバダックは大鎌を一振りして真っ二つにした。その時ヨシュアがバダックの背後に現れ

「朧!!」

がら空きになった背中に向かって双剣で居合い斬りで斬りつけたが、双剣で背中を斬りつけられたにも関わらずバダックは一切怯まずそのまま振り向き

「獅子戦吼!!」

「くはっ!?」

獅子のエネルギーを放ってヨシュアを吹っ飛ばした!



「覇道………!」

吹っ飛ばされるヨシュアに追撃する為にバダックは大鎌を振りかぶって闘気を溜め込んだが

「フッ、させないよっ!!」

「!!」

オリビエの導力銃による早撃ち――――クイックドロウがバダックの周囲に撃ちこまれてバダックの気を逸らし

「ダイヤモンドダスト!!」

「ムッ!?」

オーブメントの駆動を終えたエステルが放ったアーツによってバダックの周辺に冷気が発生し、バダックの身体を鈍くした。



「魔王炎撃波!!」

しかしバダックが大鎌に闘気による業火を纏わせて一振りすると冷気やバダックの頭上にできた氷の塊は一瞬で溶けて水となり、バダックの身体を濡らした。その時”気功”によって肉体を強化させたジンが天高くへと跳躍し

「とりゃっ、雷神脚!!」

雷光のような速さで蹴りを繰り出したがバダックは大鎌でジンの蹴りを受け止め、攻撃を受け止められたジンは地面に着地して次々と手甲を付けた拳を繰り出し始めた。

「せいっ!ハッ!たぁ!」

「オォォォォォッ!!」

次々と繰り出される拳に反応するかのようにバダックは大鎌で繰り出される場所をガードしていた。そして連続で拳を繰り出したジンは最後の一撃に闘気を込めると共に正拳突きの構えをし

「月華掌!!」

闘気を溜め込んだ拳を繰り出した!

「獅子戦吼!!」

拳が繰り出されると同時にバダックは獅子のエネルギーを繰り出し、互いの攻撃によって互いの攻撃は相殺された!



「続けて行くぞっ!獅吼――――」

「!!」

そしてバダックは連続で獅子のエネルギーを放ち始め

「爆砕陣!!」

「ハッ!」

バダックが最後に巨大な獅子のエネルギーを繰り出すと同時にジンは後ろに跳躍して回避に成功した。



「それっ!エアロストーム!!」

その時ジンとの攻防に間にオーブメントの駆動を終えたオリビエがアーツを発動し、発動したアーツはバダックを中心に嵐となったが、バダックは吹き飛ばされず地面に立って自分に襲い掛かる暴風の刃に耐え続けながら大鎌を振りかぶって闘気を溜め込み

「ぬうんっ!!」

闘気を溜め込んだ大鎌を一振りした。すると暴風は大鎌の一振りによって霧散し、そこに棒に闘気を溜め込んだエステルが攻撃をしかけた。

「ハァァァァ……セイッ!!」

急所を狙い撃つ一撃――――金剛撃はバダックを襲ったが、バダックは片手で襲い掛かる棒を掴んだ!

「嘘っ!?」

「フン!」

「キャアッ!?」

棒を掴まれて驚いているエステルをバダックは棒ごとエステルを壁目掛けて投擲した後大鎌に闘気を溜め込み

「覇道………滅封!!」

「キャアアアアアアッ!?………」

膨大な闘気エネルギーを解き放ち、エネルギーをその身に受けたエステルは壁にぶつかって気絶した!



「まずは一人だ。―――次は厄介な後衛を鎮めさせてもらおうか。」

エステルの気絶を確認したバダックがオリビエに視線を向けて大鎌を構えたその時

「プラズマウェイブ!!」

「ガアアアアアアッ!?」

ヨシュアが放った雷のアーツがバダックを襲い、濡れていた身体は電撃をよく通し、バダックの全身に電気ショックを与えた。そこにジンが突撃し、バダック目掛けて跳躍した。

「もらったぁ!はぁっ!でやあぁぁぁ………!」

「ガッ!?」

跳躍したジンはバダックに高速の蹴りを繰り出し続け

「はぁっ!でやっ!たぁっ!!」

「グッ!?」

最後に回し蹴りを放って着地した後正拳突きをバダックの腹に命中させた後、後ろに跳躍してバダックから距離を取った。



「エステル君、今助けてあげるよ!―――キュリア!!」

その時再びオーブメントの駆動を終えたオリビエが発動すると気絶して地面に倒れているエステルに浄化の水が振りかかり、水はエステルに立ち上がれる程の力を与え、気絶していたエステルは立ち上がり

「んっふふ~、次は愛と真心を君に!」

オリビエが懐から薔薇の花束を出してエステルの頭上目掛けて放り投げた後銃で薔薇の花束を撃つと花束は花びらとなって舞いながら治癒の光を発し、エステルの傷を回復した。

「助かったけど、相変わらず訳のわらかない(クラフト)ね~。」

自身の傷を回復したオリビエの技――――ハッピートリガーをその身に受けたエステルはジト目でオリビエを見つめながら言った。



「フッ、中々の連携だ。かつて何度も剣を交えた小僧やメリル達との戦いを思い出させてくれる連携だな。」

一方バダックはエステル達の連携攻撃に感心し

「だが、その程度ではこの『獅子王』はまだまだ沈まんぞ!オォォォォォ―――――――――――――ッ!!」

そしてアリーナ全体に響き渡らせるほどのまるで獅子のような咆哮を上げながら全身に膨大な闘気を纏った!

「気を付けろ!あの咆哮は猟兵達が使う”戦場の叫び(ウォークライ)”と同じ、爆発的な闘気を引き出す(クラフト)だ!」

「………!」

「ここからが本番という訳ですか………!」

「どうやら眠れる獅子を完全に起こしてしまったようだね。」

ジンの警告を聞いたエステルとヨシュアは気を引き締め、オリビエは真剣な表情でバダックを見つめていた。



「雷光よ貫け、紫光雷牙閃!!」

そしてバダックが大鎌を振るうと雷光がヨシュア目掛けて放たれ

「な―――――うああああああああああああっ!?」

まさに”神速”といってもおかしくないスピードのエネルギーが見切れなかったヨシュアはその身に雷光を受けて悲鳴を上げた。

「ヨシュア!大丈夫!?」

「な、何とか……!それよりみんな、気を付けて!技のスピードや威力が明らかに上がっている……!」

エステルの言葉にヨシュアはよろよろと立ち上がって警告した。その時ジンが再びバダックに詰め寄り、詰め寄って来るジンに気付いたバダックは振り向いて大鎌を一振りした。

「獅吼――――」

すると大鎌から炎の闘気を纏った獅子のエネルギーが繰り出され

「爆炎陣!!」

バダックが大鎌を地面に叩きつけるとドーム型の爆炎が起こり、詰め寄って来るジンを襲った。



「ハァァァァ……!」

爆炎による火傷を全身に負いながらもジンは怯まず次々と拳を繰り出し、バダックは大鎌で次々と繰り出される場所をガードしていた。

「ふっ、これは避けられまいっ!!」

バダックが大鎌でジンが繰り出す拳をガードしているとオリビエの狙撃――――スナイプショットが大鎌を持つ片手の甲に命中した!

「グッ!?」

導力の銃弾を手の甲に受けたバダックは呻いて大鎌を持つ片手の力がぬけた。

「今だ!エステル、ヨシュア!」

「うん!」

「はい!」

その時ジンの号令によってエステルとヨシュアが一気にバダックに詰め寄り

「これで決めるっ!桜花!無双撃!!はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

エステルは棒で次々と突きを繰り出してバダックの全身に命中させ

「――断骨剣!はっ!はっ!」

ヨシュアはバダックの正面、背後を次々と斬り付け

「ぬおぉぉぉぉぉぉ!はぁっ!!」

ジンは瞑想をしながら大地の力を己に溜め込んで解放し、膨大な闘気を全身に纏った!



「これで止めよ!」

連打を終えたエステルは棒を振りかぶり

「獲ったぁっ!」

ヨシュアはバダックの頭上から双剣を振り下ろし

「泰山………玄武靠!!」

ジンは膨大な闘気を纏いながら突進した。

「全て塵と化しろっ!!」

その時バダックは膨大な闘気を溜め込んだ大鎌を地面に叩きつけた後跳躍し

「緋焔滅焦陣!!」

再び大鎌を地面に叩きつけると業火の衝撃波がバダックを中心に舞い上がり、同時に攻撃してきた3人の悲鳴をも呑みこみながら炎の柱が上がり、炎の柱が消えるとそこには地面に蹲っているエステル達がいた。



「フッ、お見せしよう、美の真髄を!ハッ!!」

そして爆発が収まった瞬間オリビエは弾丸に口付けをした後銃に込めて撃ち、撃たれた弾丸は巨大なエネルギーの球体になってバダックを襲ったが

「くだらんっ!!」

オリビエが放ったエネルギーの球体―――ハウリングバレットをバダックは大鎌を一振りして真っ二つにした。しかしその時、地面に跪いていたヨシュアが立ち上がると共に片方の剣で斬り上げを放った!

「虎牙!」

「何っ!?グッ!?」

ヨシュアは跳躍すると共に斬り上げ、斬撃はバダックの片腕を肉薄し、片腕から血を噴出させ

「破斬!!」

跳躍したヨシュアはもう片方の剣で斬り下ろしを放った!



「………!」

ヨシュアの斬撃に反応したバダックは大鎌で斬り下ろしをガードした。しかしその時ヨシュアと共に地面に跪いていたはずのエステルとジンが同時に立ち上がってエステルは棒に闘気を込めて地面を走らせながら振り上げた!

「ルーク兄直伝!烈震天衝!!」

「グゥゥゥゥゥゥッ!?」

エステルが闘気を込めた棒を地面を走らせると大地が呼応するかのように岩石と共に衝撃波を舞い上がらせ、至近距離で受けたバダックは呻き

「月華掌!!」

「ガッ!?」

ジンは闘気を込めた拳を繰り出した!

「―――まだよっ!散沙雨!!」

そしてエステルは続けて棒で連続突きを放ち

「鳴時雨!!」

ヨシュアは双剣で高速の斬撃を同時に放ち

「オォォォォォォォッ!千手悔拳!!」

ジンは連続で拳を繰り出した!攻撃を受け続けているバダックは大鎌に炎を纏わせ

「魔王炎撃波!!」

炎を纏わせた大鎌を振るったがエステルは空へと跳躍し、ヨシュアとジンは後ろに跳躍して回避し

「それっ!スパイラルフレア!!」

「ぬうっ!?」

3人が回避すると同時にオリビエが発動したアーツによって炎の槍を数本バダックに降り注いだ。



「絶影!!」

「グッ!?」

そしてヨシュアは放たれた弾丸のような速さで突撃してバダックの胴を斬り

「鷹爪!」

空中へと跳躍したエステルは闘気を纏わせた足から衝撃波を2回連続で放ち

「落瀑蹴!!」

「ガッ!?」

最後に闘気を全身に纏って落下しながら蹴りをバダックの腹に命中させ、蹴りを腹に命中させた瞬間空中でバク転してバダックから距離を取った場所で着地した。

「こおぉぉぉぉ………」

その時ジンは両手に膨大な闘気を溜め込み

「――――奥義!破ッ!雷神掌!!」

溜め込んだ闘気を巨大な球体にして解き放った!解き放たれた球体はバダックに直撃し、大爆発を起こした!

「ぬああああああああああああっ!?」

大爆発はバダックの叫び声と共にアリーナ中を轟かせ、その瞬間エステル、ヨシュア、ジンは一気に爆発の中心地に詰め寄った!

「グッ……!?――――!!」

爆発の煙が晴れた瞬間、エステル達はバダックの首筋に武器を突きつけ、その事に気付いたバダックは目を見開き

「―――見事。此度の戦いはお前達の勝ちだ。」

やがて静かな笑みを浮かべて大鎌を地面に落とすと共に降参を示す意味を込めて両手を上げた。



「―――勝負あり!蒼の組、ジンチームの勝ち!!」

その瞬間、エステル達の勝利を告げる号令が審判の口から発され、アリーナの観客達はアリーナ中を轟かせる程の歓声を上げた。



「やったあああああっ!」

自分達の勝利が審判の口から告げられるとエステルは棒を突き付けた棒を空へと掲げて嬉しそうな表情で声を上げ

「勝った………勝てたのか……あの『獅子王』を相手に………」

ヨシュアは呆然とした様子で双剣を地面に落とし

「はあはあ……さ、さすがに疲れたねえ………」

安堵によって疲労が一気に襲ってきたオリビエは疲れた表情で息を切らせ

「はは………”最強の遊撃士”と称される遊撃士の一人であるあのバダックの旦那に勝てたなんて、正直実感が湧かないぜ……………」

自分達にとって”最強”の存在である男に勝てた事に嬉しさを感じるジンは口元に笑みを浮かべていた。



「―――見事な連携だった。しかし一つだけ疑問があるのだが……聞いてもいいか?」

自分を破って喜んでいるエステル達を称えたバダックは戦闘不能にしたはずなのに復活したエステル達の事を思い出し、その理由を知る為に尋ねた。

「ん?何かしら?」

「あの時、俺の奥義を受けたお前達は全員無力化されたはずなのに、何故治癒アーツも受けずに復活したのだ?」

「ああ、あの時ね~。あれはこれのお蔭よ。」

バダックの質問を聞いたエステルは懐からボロボロになっている何かの人形を懐から取り出して見せた。

「なるほど。”身代わりマペット”か。」

ボロボロになっている人形を見たバダックは納得した様子で頷き

「はい。あの『獅子王』を相手にするのですから、できるだけ復活の時間も短縮させたかったですから。」

「ただまあ、これが勝負の”切り札”になるとは予想していませんでしたぜ。」

ヨシュアは自分達が使う事にした理由を説明し、ジンは苦笑いをしていた。

「謙遜する事は無い。どんな理由であれ、お前達の勝ちである事は間違いない。――――”泰斗流”の武術を扱うジンもそうだが……ヴァンから小僧へと受け継ぎ、そしてお前達へと受け継がれた”アルバート流”の武術、見事だったぞ。無論、そこの銃使いのサポートも中々のものだった。」

そしてバダックは静かな笑みを浮かべてエステル達に背を向けてアリーナから去って行った。



「??ヴァンや小僧って誰の事かしら??」

バダックが去るとエステルは首を傾げ

「もしかしたら”小僧”は兄さんの事かもしれないね。僕達が兄さんの技を参考にして習得した技って”アルバート流”って言う名前の武術だしね。」

「フム。という事は”ヴァン”とやらはエステル君とヨシュア君の兄君の師匠と言った所かな?」

ヨシュアの推測を聞いたオリビエは考え込み

「恐らくそうだろうな。(しかし……”アルバート流”という名前の武術、今まで聞いた事はないぞ?)」

オリビエの言葉に頷いたジンは不思議そうな表情で考え込んでいた。そして閉会式が開かれた。



それではこれより、優勝チームに公爵閣下の祝福の言葉が送られます。代表者、ジン・ヴァセック選手!どうぞ、お前にお進みください!



「は。」

司会の言葉に頷いたジンはアリシア女王の甥であり、国王代理を務めているデュナン公爵の正面に来た。

「おお、近くで見ると本当に大きいのだなあ……。先程そなた達が戦った東方人もそうだが、東方人というのは皆、そなた達のように大きいのか?」

デュナン公爵はジンの体の大きさを見て驚いて尋ねた。

「いや、自分やバダックの旦那は規格外ですな。自分の場合は幼き頃より、良く食べ、良く眠り、鍛えていたら自然とこうなり申した。生来、物事を深く考えない質ゆえ図体ばかり大きくなったのでしょう。」

「ハッハッハッ、なるほどな。うむ!気に入ったぞ、ジンとやら!賞金10万ミラと晩餐会への招待状を贈るものとする!」

「ありがたき幸せ。」

そしてデュナン公爵はジンに賞金10万ミラと晩餐会への招待状を渡した。

「そなたと、そなたの仲間に女神達の祝福と栄光を!さあ、親愛なる市民諸君!勝者に惜しみない拍手と喝采を!」

デュナン公爵の宣言に応えるかのように観客達は惜しみない拍手をし、大きな喝采の声を上げた。



~控室~



「フフ、面白い者たちが優勝することになったものだな。」

一方選手控室から表彰式を見守っていたリシャールは大佐は微笑ましそうに見つめていた。

「まったく……。恥を知りなさい、ロランス少尉。決勝に行くどころか2回戦で、しかも4人で向かったにも関わらずたった一人に遅れを取って閣下の顔に泥を塗るなんて……。日頃のふてぶてしい態度はどうやらコケ(おど)しだったようね?」

「……恐縮です。しかし遊撃士達は精鋭揃いである事は既にカノーネ大尉もご存知かと思われますが。何せ私と同じようにその身を持って遊撃士達の強さを感じたのですから。」

カノーネ大尉に敗北を責められたロランス少尉は口元に笑みを浮かべて尋ねた。

「何ですって……!?」

遠回しな言い方でレナの確保の失敗の件を持ち出されたカノーネ大尉は怒りの表情でロランス少尉を睨み

「はは、カノーネ君。そう責めないでやってくれ。実は私の方から、ロランス君に全力を出さないように頼んだのだ。」

その様子に気付いたリシャール大佐は苦笑いをしながら諌めた。



「えっ……!」

「…………………」

「情報部はその性質上、黒子の役に徹せねばならない。今回のように、華のあるチームが優勝する方が望ましいだろう。」

「なるほど……。公爵閣下も、あの東方人を予想以上に気に入られた様子……。目くらましにはもってこいですわね。」

リシャール大佐の説明を聞いて納得したカノーネ大尉は不敵な笑みを浮かべた。

「しかし……今年の大会は残念だったな。親衛隊のシュバルツ中尉やモルガン将軍が参加していればもっと華やかだっただろうに。」

「うふふ、お(たわむ)れを……。そういう事なら、閣下ご自身が出場なさればよろしかったのに。あの小癪(こしゃく)なユリアなど足元にも及ばぬ腕前なのですから。それに閣下なら単独であの目触りな”獅子王”に勝てるのではないですか?」

「はは、私はそれほど自信家ではないつもりだよ。本気を出したロランス君にもあまり勝てる気がしないからね。」

「……お戯れを。閣下は少々、私のことを買いかぶりすぎているようだ。軍人とは名ばかりの猟兵あがりの無骨者(ぶこつしゃ)にすぎません。」

リシャール大佐の賛辞を聞いたロランス少尉は謙遜したが

「これでも人を見る目は確かなつもりだ。君に対抗できるとすれば、それこそあの男や先日君が戦った『獅子王』もしくはあの男の養子である『焔の剣聖』ぐらいだろうな。」

「………………………………」

リシャール大佐の推測を聞いて黙り込んだ。



「その彼のことですが……。このままでは、彼の子供たちがグランセル城に入ってしまいますわ。加えて”アレ”の事を最も知られてはいけない”星杯騎士団”もリベール入りしていますわ。何らかの処置を講じましょうか?」

「放っておきたまえ。公爵閣下が約束してしまったことだ。今更、遊撃士協会が介入しても計画が止まることはありえない。それに”星杯騎士団”とて明確な証拠を手に入れていないのだから、今の所は本格的な介入はできまい。」

「で、ですが……」

自分の心配を一蹴したリシャール大佐に反論しようとしたカノーネ大尉だったが、リシャール大佐は気にせずロランス少尉に尋ねた。

「……ロランス君。計画の進行度はどのくらいだ?」

「現在90%を越えました。一両日中には、最終地点へ閣下をご案内できるかと思います。」

「よし、いいぞ。……王国の夜明けは近い。たとえ逆賊の汚名を受けても……必ずやこの手で明日を切り拓くのみ。」

リシャール大佐は祖国リベールの繁栄の未来を夢見るかのように眩しそうな目で祖国を夕焼けに包み込む夕陽を見つめていた。 
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