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スイーツの工夫

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2部分:第二章


第二章

「虹のチョコレートだよ」
「できる訳ないじゃない」
「御前絶対に否定するな」
「できることじゃないからよ」
 ひかるの言葉は素っ気無くすらあった。
「そんなことは」
「やってみなくちゃわからないだろ」
 連はあくまでこう主張する。
「そんなことはな」
「まあ見守ってはあげるわ」
「それだけか」
「それだけ。お店のことはしっかりやってよね」
「それはわかってるさ」
「カリスマお菓子職人なんだからね」
 実は連は菓子職人である。その技術はかなり有名で雑誌でもネットでも度々取り上げられている。顔もいいのでそれでも人気を集めているのだ。
「頑張らないとね」
「それは当然だろ。とにかくな」
「チョコレートへの妄想は捨てないのね」
「妄想じゃない、夢だ」
「妄想よ」
 こう言い合ってだった。彼はこの様々な色のチョコレートの研究にかかる。しかしそれはだ。容易な道ではなかった。
 着色料を入れる。しかしだ。
「あれ、何だよこれ」
「黒いじゃない」
「ああ、黒いな」
 横にいるひかるに答える。見せのキッチンで難しい顔になる。
「黒いままだよな」
「味も同じよね」
 ひかるはそのチョコを食べてみた。すると味はチョコのままだ。
「あのさ、このまま色が変わってもね」
「味か」
「味がチョコレートのままだったら意味ないんじゃないの?」
 こう兄に言うのだった。
「色が違うだけだったら」
「何っ!?」
「お兄ちゃんこれまでとは違うチョコを作りたいのよね」
「ああ」
「だったら色が違うだけだったらさ」
 そしてだ。ひかるはある菓子を出してきた。それは。
「マーブルと同じじゃない」
「マーブルとか」
「マーブルは美味しいわよ」
 それは認めた。ひかるも無下に否定してはいない。
「確かにね。ただね」
「ただ?」
「マーブルはチョコレートよね」
「ああ」
「色はコーティングして。味はチョコレートよね」
「そうだけれどな」
 連もマーブルは知っている。チョコ菓子の代表の一つだ。子供もよく食べるものだ。確かに色彩は奇麗でしかも味はチョコのままだ。
「あれはな」
「お兄ちゃんそれ作りたいの?」
「マーブルをか」
「それはそれで悪くないわよ」
 ひかるはまた認めてみせた。
「ただね。お兄ちゃん違うでしょ」
「違うか」
「別のお菓子作りたいのよね」
 あらためて兄の顔を見てだ。また話した。
「マーブルとは別の。そうしたお菓子よね」
「ああ、そうだ」
 自分の考えを確かめられた。まさにその通りだった。
「そうだよ」
「だったら色だけ変えても仕方ないじゃない」
「色だけか」
「味よ」
 肝心なのはそれだというのだ。
 
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