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Blue Rose

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第五話 姉の苦悩その十一

「秘密です」
「そうなりますか」
「はい、個人情報は漏らしてはなりませんが」
 このことは言うまでもなく絶対のことである、世の中には他者の個人情報を如何なる目的でか執拗に求める輩もいる。
「この件は特にです」
「漏らしてはいけないからですね」
「信頼が大事です」
「お互いに」
「そうです、私は人に信じろとは言いませんが」
 それでもと言う院長だった。
「絶対にです」
「弟のことをですか」
「言うことはありません、誰にも」
「そうしてくれますか」
「はい、私の倫理観にも誓います」
「では」
「先生もお願いします」
 他ならぬ優子自身もというのだ。
「弟さんをお守り下さい」
「わかりました」
 優子は院長に誓って答えた、その優子にだった。
 院長は今度は優しい微笑みになってだ、こう言った。
「それでなのですが」
「それでとは」
「やはりお心が落ち着かないですね」
「それは」
「それならお酒よりもです」
 それに浸るよりもと言うのだ。
「スポーツはもうされていますね」
「毎日病院のジムで」
「それもいいですがお寺や神社も参られてはどうでしょうか」
「神仏ですか」
「はい、神仏に触れられることもです」
「今の私にはですか」
「いいことです、どうでしょうか」
 こう優子に提案するのだった。
「それは」
「神社やお寺ですか」
「教会もいいです」
 こちらもというのだ。
「キリスト教や天理教の」
「教会ですか」
「礼拝堂の前に行かれて祈られることもいいです」
 キリスト教のだ、ステンドガラスと十字架のある礼拝堂の中でというのだ。
「それもまた」
「そういえば」
「これまでそうされたことはなかったですか」
「はい、檀家とはお付き合いがありますが」
「お寺ですね」
「新年は神社に参拝しますが」
 それでもというのだ。
「そうしたことはです」
「ですがこうした時はです」
「お寺や神社に行くこともですね」
「いいものです」
「宗教ですか」
「そうです、何故この世に宗教があるのか」
 院長は今度はこうした話をした。
「それは神仏がこの世に確かに存在していてです」
「人を救うからですか」
「だからこそこの世にあります」
 宗教という存在がというのだ。
「神道、仏教も同じでして」
「キリスト教や天理教もですね」
「そうです」
 まさにというのだった、優子に。
「ですからこうした時こそは」
「その宗教にですか」
「信心しろとは言いません」
 院長はこのことは断った。
「信仰は無理強いするものではないですから」
「だからですか」
「はい、しかしです」
 それでもと言うのだった、優子に。 
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