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ゴブリンになった・・・・・死ねってこと?

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十四日目~十六日目

十四日目

朝起きたら、体が大きくなっていた。小学校低学年の身長から一気に170ちょいまで大きくなっていたのだ。何が原因かは直ぐに判明した。どうやら昨日の脳内アナウンスが、俺が『存在進化』した事を通達したのだと理解する。ゴブリンの上位種に位置づけされるホブゴブリンに進化したようだ。ゴブリンの時とは比べ物にならない程に身体能力が向上している感覚もあるし、俺の生産スキルもパワーアップしており、ゴブリンの時よりも高品質の武器や防具が作成できるようになった。それと他に、ゴブリンの時には持ち合わせていなかった魔術が使えるようになった。

脳内でぼんやりと浮かんだが、どうやら俺は炎熱系統の魔術が使えるようになった。それでも、魔術といってもせいぜいライター代わりに火を起こせる程度の物でしかないので、実戦では然程通用するレベルではなかった。でも、火が扱えるという事は、それだけでも俺にとっては嬉しい事だ。ゴブリンになって生の肉でも十分に美味いと感じた肉であったが、前世では肉を普通に焼いて食ってたので、焼いた肉が食えると思うと嬉しさマックスで「よっしゃー!焼き肉が食える!」と、思わずいつも異常にはしゃいでしまい、ゴブ達から奇怪な表情を向けられて馬鹿をやったと恥ずかしい思いをするのだった。

なお、俺の顔つきはホブゴブリンになってかなり変わった。ゴブリンの時は個体認識が難しく、他のゴブリン達と似たり寄ったりの顔つきだったのに対して、俺の今の顔つきは前世の時の学生時代と同じであった。俺は自分の変化に驚きが隠せない事が沢山あったが、俺以外に変化した奴らもいた。俺がホブゴブリンに『存在進化』したように、ゴブ郎とゴブ吉も同じようにホブゴブリンに進化していた。ただ、ゴブ吉は俺と同じゴブリンの時と同じように肌の色が緑なのに対して、ゴブ郎は肌が黒く変色していたのだ。

『存在進化』の変化に二コブとも俺と同じように戸惑っている様子であり、ここでホブゴブリンについてご意見番のゴブ爺に聞くことになった。ゴブ爺が言うには、ホブゴブリンはゴブリンの時と違って人間に近い容姿となるそうだ。ほお~通りで俺も含めてゴブ郎もゴブ吉も何処か人間の少年を思わせる容姿だなと思った。そしてゴブ郎の肌が黒い理由は、通常種と亜種の違いであると説明された。亜種は、通常種と比べて能力が高く設定されているらしいが、特殊条件があるため滅多に出る事がないそうだ。俺の魔術に関しても、亜種ほどではないが珍しい素質だそうだ。

ゴブリンは基本的に知恵は種族の中で低い部類に入るので、メイジ適正を備えることはまずないらしい。話はゴブ郎に戻り、ゴブ郎の黒色の肌は、世界最古の大神を象徴される色で、魔術の中でも強力な系統である『終焉』の魔術が使えるとの事。俺は、それを聞いてなんてチートだよと思った。

説明を終えたゴブ爺は『存在進化』した俺達が異常だと言った。何でも生まれてひと月で『存在進化』する事は異常としか言えないらしい。出稼ぎにいっている俺達の親世代のゴブリン達も四十コブの中でたった三コブしかいないのだから、それを考えれば異常と言えるかもしれない。ゴブ郎をチート扱いしていた俺だが、俺も十分にチートの部類に属しているのだとゴブ爺の説明で理解した。

ホブゴブリンに『存在進化』した俺達は、洞窟の中での階級が上がり、洞窟にいる女や宝倉庫を自由に扱う権利を得るのだった。今日は狩りに出かけるような事はせずに、俺達は新しい体に慣れるために組み手を始めた。結果は、何処か近代格闘技を思わせる動きをするゴブ郎の勝利に終わった。俺は、ゴブ郎とゴブ吉に負けてしまった。ゴブ郎には多彩な格闘技術で翻弄されて簡単に関節を決められて、ゴブ吉には腕力で普通に負けて、知力は低いが前衛で戦った経験もあって普通に強かった。まあ、俺はRPGの立ち位置でいえば、前衛や後衛の補助がメインだし、組み手に負けてもあんまり悔しい感情はなかったけどな。

午前で組み手が終了して、午後は装備の新調をおこなうことになった。ホブゴブリンに『存在進化』した結果、ゴブリンの時に使っていた武具が小さくなってしまったからだ。『石の片手剣』も今じゃあナイフに近いサイズになってしまったからな。武器も新調しようと思ったが、今は防具の新調を優先しようとゴブ郎に言われて、俺はゴブ郎に言われた通りに防具の新調を開始した。


ヨロイタヌキやナイトバイパーの素材が沢山あるので、三人分の防具を作るのに問題はなかった。ゴブ郎はレザーアーマー系の防具を望んだので、俺もそれと同じように作る事になった。あと、ヨロイタヌキの甲殻で兜を作成した。

『レザーアーマーレベル1』

制作評価 通常

ヨロイタヌキとナイトバイパーの素材で作られたレザーアーマー。軽い剣やナイフ程度なら防ぐことは出来るが、あまり防御力に期待は出来ない。

『甲殻の兜』

制作評価 通常

ヨロイタヌキの甲殻で作られた兜。鉄製の剣や弓矢を防げる強度を保有している。


こうして装備の新調は終了した。ゴブ吉が使用していた依存の防具もホブゴブリンに『存在進化』したゴブ吉に合わせて改修してどうにか使えるようになった。『存在進化』した体に慣れる事と武具の新調で今日の一日が終了した。今日の飯は、ゴブ郎の下僕となっているゴブリン達の調達品で済ませる事になった。ホーンラビットの肉を魔術の炎熱で、火を起こして焼肉にして食う事になった。転生して初めての焼肉に俺は、満足したのだった。

なお、ゴブ郎達も焼肉に感動して、もっと食いたいという表情が印象的だったと言っておこう。

十五日目

『存在進化』して初めての狩りを行う事になった。俺達は、これまでゴブリンなら絶対に勝てないと踏んでいた個体と戦う事にしていた。犬の頭部と錆びた胴鎧に錆びたロングソードを装備が特徴のコボルトである。それが二体もいるので、以前ならゴブ郎の判断で撤退が優先であったが、俺達はこのコボルトと戦った。俺とゴブ美の『初心者の短弓』と『小型クロスボウレベル』の援護射撃を受けたゴブ郎は、直ぐにコボルトの一体を『石の片手剣』で首元を指して瞬殺した。

他にもゴブ吉も多少の苦戦は強いられたが、それでもコボルトを『甲殻棍棒』で撲殺した。『存在進化』とは、ここまで違うのかと思う。格上のコボルトを、ここまで簡単に殺せるものなのかと思うと『存在進化』様々だよな。

なお、コボルトが所持していたロングソードと革製の胴鎧は回収した。ロングソードの二本はゴブ郎が扱う事になった。俺は、ゴブ郎やゴブ吉のように直ぐに切り込むようなタイプでもないので、現状の装備で満足していた。なお、俺の生産スキルで鑑定したコボルトの装備は現状の通りだ。

『錆びたロングソード』

制作評価 粗悪

錆びてしまったロングソード。切れ味も従来のロングソードより下がっているが、武器としては普通に使える。

『錆びた革の胴鎧』

制作評価 粗悪

錆びた革の胴鎧であり、革が少し劣化してしまっているので、防御力が低下している。


このようにダメ出しの説明がされているが、武器として考えるなら俺が装備している『石の片手剣』よりも装備としての格は上である。制作評価というのも、状態を表す表現であるため、劣化していたり古びたりしていれば粗悪の評価が出てしまう事があるのだ。ゴブ爺が言うには、大抵の武器や防具の制作評価は通常か粗悪のどっちかであり、それより上のランクは中々つかない事が普通だとの事だ。


こんな感じでコボルトの武具鑑定を終えた俺達は、コボルトの肉にありつくのだ。昨日と同様に焼肉にして食ってみたが、コボルトの肉の感触は不思議な感じがした。あと、俺が驚いたのはゴブ郎が飯とは全く関係ない『火精石』をぼりぼりと食っていた事だ。石なんか食って大丈夫なのかと聞いてみたら、俺は普通にいけると言葉を返して、俺は非常識にもほどがあるだろうと思ったが、ゴブ郎だからいいかと考えるのをやめにした。

その直後に手から火を発生させて、ゴブ郎が炎熱系の魔術にでも目覚めたのかと思ったが、ゴブ郎曰く全くの別ものらしい。本当にこいつは何でもありだなと呆れてしまう。その後は、ホーンラビットも狩って洞窟に戻った。下僕ゴブリンが、ホーンラビット以外にヨロイタヌキを狩ってきたのには驚いた。どうやら、彼らも成長しているだなと実感する。ゴブ郎も成長祝いで、俺達と一緒に焼肉パーティーを実行に移すのだった。

十六日目

朝起きてみたら、ゴブ郎に土下座する全員の同期ゴブリン達がいた。俺は思わずそんな趣味であるのかと言ったら思いっきり「違うわ!!」と、怒られて殴られました。普通に膝がかくかくもんだよ。冗談で言ったのに、本気にするなよと抗議したが、聞き入れてくれませんでした。

話は土下座した同期ゴブリン達の話に戻る。何でもホーンラビットはゴブ郎のアドバイスで倒せるようになったのはいいのだが、ナイトバイパーとか相手となると手も足もでないらしいのだ。そんなこんなで、彼らでも手も足もでない固体を普通に倒せる俺達に、殺しの術を教えて欲しいらしいのだ。それでゴブ郎は、自分のメリットは何だと返したら、同期ゴブリン達は自分の獲物の一部を献上する事を提案する。

どうやら下僕ゴブリン達のやり取りを見て、自分達も同じことをゴブ郎にしようと思ったのだろう。献上の話を聞いてゴブ郎は殺しの術を教える事を了承した。そこでゴブ郎は合同訓練を提案して、土下座したゴブリン以外に俺、ゴブ吉、ゴブ美も参加するように言うのだった。そして始まった合同訓練は、地獄が始まった思った。とにかく容赦がないのだ。もう無理だといっても「まだ足が立っているだろ!!」と言って殴られた。理不尽すぎる!!

そして結果は、俺も含めて全員が足腰が立たなくりました。教官の立場であるゴブ郎は涼しい顔であった。こっちは汗が滝のようにながれて、喉も痛くて喋るのもしんどくて、何もする気が起きなかった。そんな中で、ゴブ美がフルフルと震える体で同じ雌ゴブリンに自分の首飾りを自慢していたのを見て、ある意味根性あるなと思った。

今日は全員が動けないので、ゴブ郎が全員の飯を用意してくれるのだった。正直いって助かる。

皆が就寝につく夜。俺は少し寝付けなかったので、洞窟の近くにある水場に行こうとしたら偶然にもゴブ郎に遭遇した。ゴブ郎はなんか気まずそうな表情をしており、俺は小瓶の存在に気がつき、それは何だと聞いたら、自分が生成した毒を瓶に詰めているだけだと答えた。ゴブ郎の表情からして、何かを実行に移そうとしているを察した俺は「そうか」と、答えて少し水場で水を飲んだ後に、ゴブ郎を無視して寝た。

その結果が、どのようなものだろうと俺は知らない。

 
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