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人生至るところに青山あり

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5部分:第五章


第五章

「売れるのは事務所にとっていいことよ」
「それでもですか」
「仕事があまりにも多いのは」
「身体を壊したら意味がないわ」
 こう言うのだった。
「英梨ちゃん最近オーバーワークじゃないかしら」
「そうですね。今期は特にですね」
「多過ぎますね」
 二人にしてもだ。そのことはだった。
 複雑な顔になりだ。こう言ったのである。
「若手で売れてきているからこっちも仕事を入れ過ぎました」
「気付いたらここまでになっていまして」
「私達の失態です」
「只でさえアニメの仕事が多いのにゲームまでですから」
「お願いね。来期はね」
 社長は自分の席に座ったまま腕を組みだ。難しい顔で二人に話す。
「英梨ちゃんの仕事をセーブしてね」
「休める為に」
「そうします」
「そうしてね。それにしてもね」
 社長は心配している顔からだ。微笑みになってだ。そのうえでこうも言った。
「けれど。ここまで売れるとはね」
「予想外でしたか」
「そのことは」
「ましてや貴方達元々は違う世界の人達だったから」
 伊藤と鰐淵のこともだ。言ったのである。
「その人達にマネージャーお願いしたからね」
「確かに私達も最初はびっくりしました」
「いきなり首と告げられてですから」
 その時のことはだ。二人は苦笑いと共に話した。
「それでいきなり声優の事務所に入って欲しいっていうのは」
「青天の霹靂でした」
「実はうちの事務所人手が足りてなくてね」
 社長もだ。ここでは苦笑いになって話す。
「今もだけれどグループで人が足りてる場所から人を送ってもらっているのよ」
「そうだったのですか」
「それでなんですか」
「そう。新社員も募集してるけれどね」
 そうしたこともしているがというのだ。
「それでもなのよ」
「何か色々事情があるんですね」
「声優業界も」
「あるわよ。前にも言ったけれど成人ゲームの仕事もあるし」
 社長はこのことも話した。
「中々大変なのよね。ああ、英梨ちゃんにはそっちの仕事はね」
「なしですね」
「そういうことで」
「やってる子も多いけれどそれでもあの娘はにはね」
 させないと話す社長だった。
「そういうことでね」
「はい、じゃあそれはそういうことで」
「仕事全体を抑えながら」
「で、あの娘をセーブさせた分はね」
 それはそのまま事務所の仕事が減ることになる。それへの対処もだ。社長は考えていた。これは経営者として当然のことだった。
「他の若手の娘や新人の娘に回していくから」
「それは私達とは関係ない話ですね」
「英梨ちゃん以外の娘のことですから」
「そうよ。貴方達はあの娘専属のマネージャーだから」
 社長はそのことは確かだと言い切る。
「そうして。今のところはね」
「今のところ?」
「といいますと」
「ああ、声優業界ってマネージャー一人に複数の声優がつくから」
 声優業界独特のことだった。
「だから貴方達が慣れたらね」
「他の娘もですか」
「やがては」
「男の子の方もお願いするから」
 女の子だけでなくだ。男の子もだというのだ。その話をしてだった。
 今は二人は英梨だけに専念していた。しかしだった。
 すぐにだ。二人に実際にだ。新しい声優がついたのだった。
 今度の娘はだ。やけに背の低いだ。小学生の様な外見の娘だった。その娘を見てだ。二人は思わず言ってしまった。
「ええと、学生さん?」
「何年生かな」
「高校出てますけれど」
 憮然としてだ。その娘は二人に返してきた。
 
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