| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS〜もしもの世界

作者:にゃーす
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

45話



あの後、一夏を保健室に放って箒らに看病を任せた。ちょうど通りかかった楯無さんにもまとめ役でついていて欲しいと頼みその場を後にする。楯無さんは何が言いたげだったが俺はあえて気づかぬふりをして別れた。
そしていつも通りの鍛錬を始める。俺のISが治るまで実践は積めないがそうそうISを使うことは無く。殆どが肉弾戦だった。生身でもISに負ける気は無かったが。

そして帰ろうと荷物をまとめていると、ドアの先に1人壁にもたれている気配を感じたので少し警戒しつつドアを開ける。するとそこには楯無さんが何が思い詰めるように下を向いていた。

「楯無さん?どうしたんですか?」

「っ⁈や、泰人くん?こ、こんばんは?」

何故か動揺しながら疑問形で挨拶を返してくる。

「ええ、・・・いつからそこにいたんですか?」

「えっ・・・10分くらい?」

嘘だ。きっと一時間は超えているだろう。そのまま別れるほど無関係でもないので部屋で話しましょうと言うと承諾してくれたので移動する。ついでに自販機で二人分も確保。


「珍しいですね。楯無さんが俺の部屋でごろごろしてないなんて」

「ええ。そうね」

「楯無さんも怪我治ったんですか?」

「ええ。大丈夫よ」

「・・・」

「ど、どうしたの?」

さっきからこの調子である。とくに失礼なことはしてないはずだが質問しても、ぶっきらぼうな返事しかこない。

「逆にこっちが言いたいですね。何か困ったことあるんじゃないんですか?」

そう言われてドキッとする楯無。そりゃあそうだろう。目の前の人のことで困ってるなんて言えるはずもない。

「べ、別に何もないわよ。そ、それよりそっちこそ怪我は治ったの?」

「もう平気ですよ」

「本当?」

「本当」

「完璧に?」

「完璧に」

「でもでもーー」

「あんまりしつこいと女性でも嫌われますよ?」

うぐ。と口を閉じる。それでまたふりだしに戻ったので適当にお菓子を備え付けの棚から取り出し、飲み物を並べる。

「すいません。少し言い過ぎました」

「・・・別に気にしてないわよ」

「ははは。でも本当は何を聞きたかったんです?体なんて傍目でもわかるくらい治ってるのに」

相手に謝りつつ、本音を言いやすい雰囲気をつくる。決して強く言い過ぎないように。これも泰人の才能の一つだった。


「・・・今朝、織斑先生が呟いてたの」

「・・・ええ」

「貴方が行く道は何もないって」

「・・・!そう、ですか」

まさかそんな事を言っていたなんて知らなかった。でもそれくらいわかっていた。改めて問題の深刻さがわかる。この言葉を一番聞かせたくなかった人に聞かれてしまったと。

「きっと、無理しすぎると障害がでるってことでしょう」

「ならーー」

「でも止める気はありませんよ」

「なんでっ⁈」

「それはーー」

と言いかけて詰まる。言えるわけがない。止めるわけがない。止めれるはずもない。ましてや、みんなを守りたいからなどと言ったらきっと誰でも怒るだろう。ここに来る人はほとんど軍やIS関係者になるもの。不必要な関係は、きっと未来に支障をきたす。ここを卒業したら離れ離れになるのだから。もしかしたら戦わなければならなくなる者たちに友情は迷いをもたせてしまうのだから。

「ここをやめたら自分が困りますからね」

「あ・・・ごめんなさい」

あまり使いたくはなかったが自分が天涯孤独だと気付かせて騙す。まあ、いなくても気にはしなかったので腹は立てていない。

「別にいいですよ。でもこの学園にいる間はISを使うしかない。それだけはわかってください。それに、この力のおかげで自分も守れますしね」

最後は嘘をついた。攻撃特化の機体に身を守る術は限りなく少ない。守ると言っても命を落とさないという、最低基準でしかなかった。


「ー心配しなくても大丈夫ですよ」

と頭をポンポンと撫でる。人を落ち着かせるにはこれが効果的だ。ただしある程度の仲の良さは必要だが。

「・・・むぅ」

「どうしたんです?」

「本当は私がする方だなと思ったのよ」

「そうですかね?別に気にする必要はないと思いますが。誰でもいいと思いますよ」

「・・・そんなことないわよ」

「え?」

「な、なんでもないわよ。それより、せっかく出してくれたんだし食べましょ」

自分の独り言を誤魔化すように急かす楯無。泰人は泰人で安心させることが出来たので別段気にせず、このまま雑談をして過ごした。









ー数日後ー

場所はグラウンド。今は実習の時間だった。
一年生全員が集合していていつも通り専用機持ちの俺たちが代表で、ある物を見せられていた。

「これは国連が開発中の外骨格攻性機動装甲『EOS』(イオス)だ。使用用途は災害の駆除活動や平和維持活動などが想定されている」

簡単に織斑先生が説明したが。生徒はぽかんと見ていた。だいたい想像はつく。

「つまり、ISが使えないからこれのモニターをしろ。ということでいいですか」

「そうだ」

と言うと少しざわめき立つが専用機持ちだけなのでそれ以外はいつも通り訓練機を乗りに山田先生に支持される。
そして俺たちは機体に乗り込むが俺以外は眉を吊り上げる。

「お、重い・・・」

「少し重いな」

とすぐに歩き始める俺に視線を向けてくるがすぐに動き始める。

「それでは模擬戦を始める。なお生身の攻撃は原則禁止で配ったペイント弾が装填された銃で叩くように。でも当たると痛いぞ」

では、始め!と声がかかるとラウラと俺が慣れてない他のところに攻撃を開始する。ラウラはセリシアの方に、俺は一夏に攻撃を仕掛ける。

「げっ!」

「なんだ。普段から鍛えてるのに。ほっ」

一夏が繰り出すのろのろパンチを避け、伸びきった腕を掴んで足を払い、そのまま背負い投げの容量で投げる。

「ぐえっ!」

「まずは1人」

そのままペイント弾を一夏に叩きつけ次の標的に向かう。

「さーて、次はシャルロットと箒か」

「「うっ」」

「さて、ここで質問。俺は1人こちらにくるやつを助ける。お前らはどうする?」

と投げかけると二人は顔を見合わせ何か決意した顔で同時にこちらに迫ってきた。
俺はニッと笑い、

「正解だ」

と円運動で箒の横につく。

「くっ!」

苦しげにペイント弾を放つが実弾銃なんて教科書と実習で小銃を少しやる位なのでほとんど当たらない。それでも当たりそうなのは物理シールドで払う。

「しっ!」

力技で箒の銃を奪い、それで箒を打つ。

「うう・・・」

残りはシャルロットだけなので二丁の銃を使い撃破。ついでにシャルロットの銃をもらう。

「さてと、あとラウラとセリシアだが」

とどうやらラウラが勝ったらしくこっちに来る。背後にいるセリシアを見るとペイントまみれだった。

「うっわあ・・・」

「流石泰人だ。素人とはいえさんにも下すとは」

ドン引きな俺に対し意気揚々とくるラウラ。とりあえず手持ちの弾を使いラウラの視界を潰す。だが気配を読んだのか背後に回る俺に後ろ蹴りを放つラウラ。なんとか左手でいなすが衝撃で左手が少し痺れる。

「っとと。生身は禁止じゃなかったっけ?」

「織斑先生が何も言わないからセーフだ!」

くっ。残念だがストップがないからこのまま肉弾戦になる。普通とは行かなくても互いの金属の打ち合う音が響く。


「少し人間離れしてない?」

そういう鈴の声と同意の声は聞こえいふりをする。

でも普段鍛えたおかげかラウラはスタミナがなくなり動きが鈍い。そして攻撃の少しの間を見逃すはずもなく俺は猛攻をかける。

「ぐっ!」

「っと。ほっ」

繰り出した手を掴みそのまま投げる。ラウラも手が折れるのを悟ったのか飛んだが、空中では動けないのを利用して押し倒す。そして試合が決まり、先生の止めの声がかかった。

「よくやった。枢木、ボーデヴィッヒ」

「「ありがとうございます」」

そして先生に片付けの支持を仰ぎ片付ける。








ー翌日ー

俺はいつも通り空いた教室で鍛錬をしていた。暇らしく楯無さんも来たが。ちなみに一夏はISを取りに倉持技研なるところへ行っていた。

「そういや、暇ならどこか出かけないんですか?」

そろそろ終わるので質問をすると隅にある椅子に座っていた楯無さんは手に持った本から顔を上げ、

「そうねえ、普段は生徒会の仕事とか色々あるからここのところ学園から出てないのよねぇ」

「ふむふむ」

と返事をしながら重りをつけて腕立て伏せをする。重りはコンパクトながらも鍛えるように最新の技術を詰め込んだ着衣型重り「ウェイトキング」。
なんと五千円で叩き売りされていた。

「でも今度休みあるし少し遠出しようかしら」

「それは、よかったですね。・・のほほんさん、とか誘って、見ては?」

「そこが迷うのよね。そうだ。あなーー」

楯無さんが何かいいかける前に電気が消える。そして外側からシャッターが下り完全に閉じ込められた。

「・・・二秒たったわ。これは何かしらの襲撃ね」

「ほかの人は・・・そうか専用機持ちだけしかいなかったな」

まるでこの瞬間を狙っているように。いや狙ってたか。楯無さんも同じ考えらしく。とりあえず施錠されたドアを無理矢理開け、職員室に向かおうとしたら織斑先生に地下の部屋に来いとのことですぐにISに情報が送られる。

「地下にオペレーションルーム。ねえ、とりあえず行きますか」

無言で頷いたので最短ルートで向かった。










「ー説明は以上ですが何か質問はありますか?」

山田先生による説明は、学園が現在システムダウンしていてハッキングを受けている。他の人はいないため被害はないが早めの対処のため指示を受け、早急の対応が必要とのこと。

「システム復旧は見込めないんですか?」

「そのために楯無さんと枢木さん以外はあとでついてきて下さい」

「では楯無と枢木以外は山田先生に指示を仰げ。解散!」

と手を叩くと流石候補生達は即座に反応しついていった。そして残った俺たちは織斑先生から学園に侵入する者をから守れと受けた。
俺は刀しかISから出せなかったが能力を持っているのは知られているので呼ばれたようだ。

「枢木は私と共に校舎内にいる敵を撃退、楯無は枢木が来るまで学園内の敵を校舎内に入れないよう守れ」

「「了解」」

正直ISを使ってくるかも知れない敵を負傷している楯無さんに任すのは不安だが校舎内の安全を確保できたらすぐ行けばいいので気にしないことにする。













「ではーー行きますか」

俺は腰に刀を二刀、そして学生服のままだが先生は黒いボディスーツを着て腰に何本もの刀を携えていた。

そして非常灯で照らされた廊下を歩きつつ先生がつぶやく。

「枢木。お前はなるべく戦闘は避けろ」

「つまり、戦うなと?」

「そうだ」

「冗談きついですね。俺からしたら先生が避けてほしいですよ」

「・・・なに?」

「先生が世界最強だろうがなんだろうが、っとどうやら来たみたいですよ」

かすかな金属音を鳴らし目の前を歩いてくるIS。ステルス仕様なのだろう武装もレーザーなどではなく肉弾戦仕様が分かった。

「・・・!」

相手も気づいたらしく空気が変わる。だが初手はこちらが早かった。

「「参る」」

俺は万華鏡写輪眼を解放と同時に痛覚も外す。そして時止めで敵の目の前まで詰める。

「・・・⁉︎」

「しっ!」

腰の刀を抜刀そのまま、敵を反撃もままならぬ斬撃を放つ。

「っ!」

俺の刀はIS仕様のためダメージが通る事に気づく敵は後ろに下がる。だが後ろに回った先生は忍び寄る獲物に蜘蛛のように首にワイヤーをかけ、敵の防御を削る。


「っがあ!!」

だが怒りを露わにした敵は先生を掴み壁に叩きつけようと振り被る。そんな無駄を見逃すはずも無く俺はスサノオで敵を拘束。そのまま幻術にかける。

「うっ⁉︎あ、ああ・・・・」

一瞬抵抗したがあえなく人形のようにISを解除し、その場に崩れ落ちる。

「部隊といえど反応が鈍かったな」

敵がこちらを侮ってくれたおかげで倒しやすかった。
先生の無事も確認出来たので楯無に通信をかけてみるが反応がない。嫌な予感がしたので現在位置を確認すると少しずつだが学園外に移動していた。

「ちっ!先生。そいつは任せます!俺は楯無の所へ!」

すぐさま能力で転移した。















ー学園のとある所ー

「では移動する」

部隊の男が傷ついた楯無にモルヒネを打ち、眠らせた後担ぐ。
だが少し抵抗をするので、楯無の肩を撃ち抜き殺意の意を楯無に向ける。

「この尻軽が」

と吐き捨てるように言い放つ。そして肩に担ごうと顔を下に向けた瞬間まるで自分の存在を喰らいつくさんと言うような殺気を当てられ銃を目の前で発砲するがゴキンという音とともに車にぶつかるような衝撃を受けて吹っ飛ぶ。その時見た青年の顔はどこかで聞いた本の悪魔のような形相をしていた。



「楯無さ・・ん」

少し遠くで声をかけようとした時に見た光景が我を忘れさせるには十分だった。
誰かが楯無さんに向け発砲をしていた。その瞬間抑えようのない怒りが自分を包む。
目の前まで瞬間移動したら意外にも察知したのかこちらを見ずに乱射しようとするのでその手を折り、体ごとスサノオで吹き飛ばす。

「ちっ!!」と別の男たちが発砲するがスサノオの前ではそんな弾が通るはずもなかった。

「ぶっ殺す!!!」

だが敵がステルス迷彩のようなもので消えようとするので、怒気と殺気を織り交ぜた気を相手にぶつける。

するとほんの少し空間が歪んだのでそいつらをスタンガン程度の電撃を浴びせる。だが少し強かったのか痙攣するような感じで全員倒れたので痙攣している敵を無理矢理起こし幻術にかける?

「あ、ああ・・・」

「うるせえ」

と片方の腕を躊躇なく折る。幻術にかかっていても痛みなどは入るらしく体を強張らせたがこれ以上俺を刺激するようなものなら殺されるのを感じたのか大人しくなった。

「さて、他に部隊はいないのか」

と思わず日本語で言ってしまったがどうやら通じたらしく、か細い声で「い、ない」と言ったので気絶させる。

そしてそいつらを能力でひとまとめに掴み、両腕で楯無さんを抱える。

「先生。楯無さんを保護しました。ですが二箇所打たれているので早急に対応を」

「あ、ああ。引き続き問題が起きた。楯無を連れて地下に来てくれ」

「・・・了解」

内心こいつらを握り潰したい衝動に駆られたが楯無さんのほうを優先し、地下に向かう。

「山田先生。あと敵の部隊もいたんで、処理お願いします」

「・・・!は、はい」

と織斑先生と同じく声を震わせISで男たちを運んでいた。

「で、織斑先生。俺は楯無さんが心配なんで付いていたいんですがいいですか?」

「いや、お前には織斑と箒たちを助けに行って欲しい。どうやら精神に干渉するISらしく、囚われている」

「・・・はい」

内心焦っていたが大人しく従う。

「たしか簪がモニターしてたんでしたっけ」

「そうだ」

「よし、一夏行くぞ」

「あ、ああ」

一夏は少し戸惑いつつも俺と別の部屋へ入る。










「ー織斑先生。枢木くんは前もこんな事が?」

山田先生は織斑先生に問う。

「いや、あんな表情は初めてだ」

「彼、あのままだとーー」

「分かっている!・・・すまない」

どん!と壁を叩くが、直ぐに我を取り戻す。
あの怒りと焦りの表情は自分の弟がかの事件で囚われたときとそっくりだった。
だからこそ、彼が大事に守ってきた物を失うわけにはいかない。直ぐに楯無を医療室に呼び治療を始めさせる。

「楯無を早く連れて行け。あとで私もいく!」

何としても助けなければーー















「簪、手短に頼む」

「じゃあ、後ろに。」

と言われた通りに俺たちは向くといきなり首筋に痺れが来たので振り向くと簪の驚いた顔が目の前のあった。

「あれ?」

「いきなり何するんだ。ってスタンガンかよ」

「な、なんで?一夏は気絶してるのに」

「俺は体内抵抗が高いんだよ。ま、とにかく気絶すれば良いんだな」

これのおかげで少し頭が冷えたので状況を確認する。

「う、うん」

「じゃあ頼む」

と自分で意識を体から切り離した。


「ん・・・」

目が覚めたのであたりを確認すると目の前に森が。

「とりあえず一夏は先に行ったからその森に入って先にドアのある所へ行って!」

「了解!」

そのまま風のように抜ける。
と言われた通りドアが並んでたのでどこから入ろうかと少し迷っていると端のドアから一夏と鈴が出てきた。出てきたはいいがなぜか鈴は半裸だった。

「お、おかえり。とりあえず鈴は向こうの茂みで服着てこい」

言われて気づいたのか顔を真っ赤にして向こうへ行く鈴。それを見届けると

「さてあとは5枚・・・のドアだな」

「だな。とりあえず泰人とは別々で行くか」

「なら、一夏は変装していって。同じ空間に一夏が二人もいるとシステムが認識するとダメ、見たい」

「なら俺は良いんだな」

躊躇なくドアを開ける。一夏では開けれなかったが、開けれたので入っていく。ドアを閉める前に一夏に一言。

「何か起こったらお前だけでも逃げてろ」

「え?ちょっーー」

何かいいかけたみたいだが無視。ドアを閉めそのままずかずかと入ると何故か目の前にドアがある。そして向こう側から一夏とセシリアの声。しかもセシリアの声は艶のある声を放っていた。少し頭を抑えつつドアを蹴破る。

「こんばんわ。そして偽物は去ね」

的確に偽物の一夏の首を刎ねる。何かブツブツ呟いていたが、途端にセシリアが頭を抱え出したので写輪眼でセシリアを幻術にかけ、逆に相手の幻術を跳ね除ける。
すると周りの景色が崩れ始めたのでセシリアにきている服を着させてそのまま元来た道を駆け抜けなんとか脱出させる。

「ふぃ〜。ほれ一夏。あとよろ」

「え?マジで?」

「マジで。あと4つ頑張るか」


そのまま残りのメンバーを助けに行く。
















「まったく・・・お前らはさぁ・・・」

残りのメンバーを無事、助け出したがそんなことはどうでもよかった。だが助ける前の姿とかシチュエーションとかいろいろ危なすぎて下手に言い表そう物ならR18になりそうな瞬間がほとんどだった。最後の箒だけ真面目に強い一夏だったので少々手間取ったが。

「とりあえず一夏、後は頼む。ラスト一枚だしついでに敵も探りに行きたいしな」

とドアに手をかけようとしたら簪から声がかかる。

「まって。このまま帰りましょう」

「ダメだ。まだ残ってるなら行かなきゃ。みすみす敵を逃すことになる」

「それより。泰人が危ない」

「まだシステムが治ってないみたいだし、行く価値はあるさ」

そしてドアノブを回し、入る。こんなことを起こしたやつを必ず突き止めるために。

「さて・・・っといきなりか」

何やら敵の声が聞こえる。そして微かに精神が乗っ取られるような感じがしたので能力を解放し警戒を続けていると、目の前が急に変わり、見慣れた景色が広がる。

「・・・!ここは」

俺が生前いた世界の家族の家の中だった。

「あら。ここにいたの。ほら、ご飯よ」

と声をかけられる。だが俺は冷ややかな目で見つめ万華鏡写輪眼を解放。

「待ってくれ」

そう呼ぶと母親らしきものは振り返る。と同時に幻術をかける。能力者を探知できるように意識を全てそちらに集中する。

「ワ、ワールド・・・・パージ・・・」

母だったものが何か呟くと途端に崩れ、周りの景色はガラリと変わり闇の中で光の線が所々走っていた。

「っと。今度は当たりのようだな」

そうして少し進んでいくとラウラに似た少女が氷に包まれた像を見ている。

「こんばんは」

「・・・・・」

彼女は振り返りこちらを見てくる。
だが、両目は閉じていた。

「お初にお目にかかります。私の名はクロエ。クロエ・クロニクル。まさかここでお会いするとは思いませんでしたがこれもあのお方の予想通りですね」

「あのお方・・・それにその名前。・・なるほど、このハッキングはあの人しか出来ないわな」

「・・・?」

「すまんすまん。まさか束さんがこんなところにちょっかい出すとは思わなくてさ。でも今回の目的が織斑先生ならまた別だもんな」

「・・・・・」

「だんまりか。別にそんなことはどーでもいいんだ」

その言葉を放った瞬間クロエが身を震わせた。なぜなら、また部隊を壊滅させた時の泰人の殺気にあてられたからである。

「だけどな、あんまり俺の大切な仲間を危険に晒すようなことしてっと」

すっと息を吸い、押し殺すような低い声で言った。






「潰すぞ」



「っ!・・・ご無礼を承知で申し上げますが」



クロエはこの後の自分の発言次第で目の前の男に消されるのを確信した。それでも自分にも曲げれないものがある。例え、自分が殺されようとも。


「今回の事は束様の深い思慮の上での行動。例え、犠牲が出ようとも私は目的を遂行する。私の存在が亡くなろうとその意思を曲げることは出来ません!」


「・・・・・」



泰人に対する決意の一言を言って、クロエは目を瞑りぐっと唇を噛んで耐えていたが、泰人は少し無言で見つめていた後深いため息をついた。


「・・・は〜。わかった。なら別に良いよ」

「・・・え?あ、えと、その」


まさか何もされないとは思わなかったので少し混乱したが直ぐに立て直す。

「すまなかったな。別にどうこうするつもりは無かったんだけどよ、大事な人が怪我しちまって頭に来てたんだ」

そう言ってあたふたしているクロエの頭をなでる。

「・・・あったかい」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、では私は退場させてもらいます」

「ん、すまなかったな。あと、束さんに言っておいてくれ」

「はい、なんでしょうか」

頭を掻きながら、ぶっきらぼうに答える。

「こんなまどろっこしい事しないで普通に学園に遊びに来いよってさ」

でも、世界で指名手配されている身ではままならないか。と頭を抱えている姿に、クロエは微笑んだ。

「そう、ですね。しっかりとお伝えしておきます。では」

そう言い、お辞儀をして消えていった。
彼女の姿がはっきりと見えなくなるまでそこを見続け、跡形もなくなるとポツリと呟く。

「・・・ダメだなぁ」

そして自らも仲間のところへ戻っていった。

 
 

 
後書き
くっそ長くなってしまいました。読み飽きる人いるんだろうなぁ(・ω・`;)
まあ二話分詰まったと思えばいいか(良くない 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧