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夏桜 〜この世界に俺は存在している〜

作者:新雪
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第一部 少し違う"日常"
  1話

 
前書き
さて、いよいよ夏桜の始まりです。
最初の方は、ゆったりとした毎日を過ごさせてあげようと思ってます。 

 
ジリリリリ、ジリリリリ、ジリリリリ、ジリリリリ、ジリリ......カチ...

目覚まし時計を止め、目をゆっくりと開ける。

すぐさま感じるのは、真夏に相応しい熱気。

そして、微かに香る潮の匂い。

間違いない、常の朝だ。

「ふぁ、あぁぁぁぁ......」

大きな欠伸をし、目を擦り、俺は布団を軽くたたみ、体を起こした。

時刻は7:05。少し微妙な時間なのには訳があるが......まぁ、それは後で話そう。

「さて、さっさと飯を作るか」

そして俺は部屋を出て、下のキッチンへと向かった。




フライパンを取り出し、火にかけ、油を引く。

そこに、大きめに切ったベーコンを入れ、きつね色になるまで焼く。

そこに卵を入れ、目玉焼きに。

そしてオーブントースターが、ちん!、と音をあげた。

中の2枚の食パンを取り出し、皿に置き、上からさっきの目玉焼きをのせ、テーブルに運ぶ。

更に、国民的飲料のヤク◯トを冷蔵庫から2本出し、横に添え、6個入りのカマンベルチーズを机の中央に置くと、常の朝ご飯は準備OK。

「おーーい。美優、朝飯出来たぞ。起きてこい」

......返事はない。まだ寝ているのだろうか?

俺は軽くため息を吐きながら、階段を上る。

俺の部屋の反対側、そこのドアをコンコン、と軽くノックする。

「美優、起きてるか?朝飯出来たぞ」

......返事はない。

俺は、そのまま少しドアの前で仁王立ちに待っていたが、何も反応が無いので仕方なく、ドアノブに手をかけた。

そしてドアを開けようと、ドアノブに手を近づけたところで......

カチャ、と、音がした。

そして、ドアがゆっくりと開き......

「......」

桜色の髪に、桜色の髪飾りをつけた少女が、俺を不思議そうな顔で見つめていた。

「......」

「......」

見つめ合う、俺と桜色の少女。

そのまま、少しの時間が流れ......

「おはよう、蓮利君」

少女が、微笑みながら俺に朝の挨拶をする。

「ああ、おはよう」

俺も挨拶を返し、笑みを浮かべた。

本当に、常の朝。

これが、俺たち家族の"常"だ。







「いただきます」

「いただきます」

2人揃ってリビングの椅子に座り、先程俺が作った朝食を食べる。

静かな、でも心地よい時間が、そこにはあった。

「ねぇ、蓮利君」

「何だ?美優」

ちなみに彼女の名前は浅上美優。

この家の長女だ。

俺と同い年で、浅上家の次期"調整者"で、彼女が通う学校の生徒会長。

あ、忘れてた。

俺の名前は島宮蓮利。

年は16歳で、とある事情により、ここ浅上家に居候させてもらっている。

親はおらず、学校にも通っていない。

まぁ、簡単に言えば浅上家のお手伝いさんみたいな立場だ。

「ええっと、......お、お弁当、今日も作ってくれたの?」

「いや、いつも作ってるけど」

俺がそう言うと、微笑む美優。

うむ、笑顔が可愛い。

「それより、そろそろバスが着く時間だぞ?のんびりしてて良いのか、生徒会長様」

「あ、本当だ。それじゃ、行ってきます。鍵、閉めておいてね」

「はいはい」

俺がそう返すと、美優は小さく手を振り、玄関へと向かった。

「じゃ、行ってきます」

「ああ、行ってらっしゃい」

俺は玄関で彼女を見送ると、リビングに戻り、朝ご飯を片付ける。

そしてコーヒーを入れ、少し休憩。

......これが、俺と彼女の常の、穏やかな朝だった。

 
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