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血と肉と

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2部分:第二章


第二章

「ガイ者は森本佳代二十四歳」
「旅行代理店勤務です」
「彼氏なし、結婚暦なし」
「借金やその他の対人関係でのトラブルもなし」
「人からあそこまでされる問題はありません」
「今回もだな」
 そこまで聞いてだ。和久田は忌々しげに言った。
「殺される理由がないのに殺される」
「しかも殺されるガイ者の経歴はそれぞればらばらですし」
「ガイ者同士の接点も何もない」
「一見すると通り魔ですが」
「それにしてはおかしな殺し方ですし」
「妙な事件ですね」
「しかもこれで五人目だ」
 和久田は殺された人間の数も言った。
「若い美人ばかりな。五人だ」
「五人もですからねえ」
「マスコミも色々書いてますし」
「ネットでも何かと書かれてますよ」
 そうした事件だ。話にならない方が不思議だ。それは警察も感じ取っていた。 
 しかしであった。ここでだ。和久田が言うのであった。
「とりあえずはだ」
「犯人をですね」
「捕まえることですね」
「そうだ。こんなおかしな殺し方をする奴なんて限られてる」
 和久田は深刻な顔で言う。
「本当にな」
「ううん、何か生贄ですかね」
 警官の一人がこう言うのだった。
「ほら、よくある映画の儀式で」
「儀式か」
「そんな感じじゃないですか?」
 その警官は和久田の言葉に応えてさらに述べる。
「ほら、胸をナイフで一刺しですよね」
「そうだな、確かにな」
「しかも若い美人を全裸にしてですよ」
 警官はこのことも話した。
「しかも暴行の後はない。これって」
「そうだな。言われてみればな」
 その警官の言葉にだ。和久田も頷いた。
「そんな感じだな」
「そうですよね、本当に」
「考えてみるか」
 和久田はここで言っていく。
「そうだな。若い美人を狙うのならな」
「そうなら?」
「罠を仕掛けるのも手だな」
 彼は考える顔で話していく。
「囮だな」
「囮ですか」
「それですか」
「そうだ。危険だがやってみるか」
 こうしてだ。彼はその考えを実行に移したのだった。
 婦警から志願者を募ってだ。真夜中に一人で歩かせた。無論周囲を警戒しながらだ。
 物陰に隠れながらだ。警官達は共にいる和久田に問うた。
「警部、これでですね」
「犯人をですか」
「おびき出してですね」
「そこを捕まえる」 
 そうするというのだ。和久田は本気である。
「それでいいな」
「ううん、上手くいけばいいですね」
「そうですね。それは」
「確かに」
 こうしてだった。彼等はその囮にかかるかどうかを見ていた。それを数日続けているとだ。
 
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