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懐かしい校舎

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4部分:第四章


第四章

「しかし、そんな話をしていたら」
「そうだよな。見たくなったよな」
「だよな」
 男組が言い出してきたのだ。最初は彼等がであった。
「今から柔道場行くか」
「ああ、いいな」
「ここにばかりいても面白くないしな」
「だしな」
「そうだな。それはな」
 先生も彼等の言葉に対して頷いた。
「じゃあ今からその柔道場に行くか」
「あっ、いいですかそれで」
「今からそこに言っていいんですか」
「だから教室にいてばかりでも面白くないだろう」
 先生は彼等の問いに微笑みと共に返した。やはり教師らしい仕草であった。落ち着いていてそれでいて諭す、そうしたものだった。
「そうだな。では今からな」
「はい、じゃあ今から」
「行きましょう」
「どうしようかしら」
 女組の一人がここで言った。
「私達は。柔道なんてしたことないし」
「別にいいんじゃない?一緒に行っても」
「そうよね」
 彼女達の意見もそれに傾くのだった。
「柔道場なんて行ったことないし」
「今行くのもそれはそれでいいし」
「じゃあ」
「そうだな。皆で行こう」
 先生はここで考えを固めた。
「今からな」
「わかりました。今から」
「行きましょうか」
 皆席を立ってだ。そのうえで教室を出てその柔道場に向かう。その黒い木の廊下を進み教室が壁の中にある形で並んでいる廊下を進む。四角い校舎で右に曲がり左に曲がりだ。そうして校舎の外に出て和風の静かな佇まいの庭と建物の横を通った。そこは。
「ああ、茶室もそのままですね」
「これも」
「ああ、そのままだよ」
 校舎の外の廊下を進みながら左手に見えるその茶室を見ながらだ。右手には白く小さい花が咲く花壇と小さな校舎がある。向こうにはグラウンドが見える。そこは砂色の見事なグラウンドだ。しかもそれは二つもある。
「この茶室もな」
「茶室がある学校っていうのもな」
「そうそうないし」
「普通はそうよね」
「うちはこういうのは凝る学校だからな」
 先生は笑みを浮かべながら話した。
「だから茶室だってあるし」
「バンドだってできますし」
「本当に何でもある学校ですよね」
「大学には馬だっているしな」
 この学校は上に大学がある。なお中等部や初等部もある。幼稚園までだ。
「とにかく何でもあるからな」
「馬に乗ってっていったら」
「ギンガマンか暴れん坊将軍か」
「ってギンガマンかよ」
「また古いわね」
 皆何故かギンガマンで言い合う。
「せめて仮面ライダー響鬼の映画って言わないとな」
「そうそう」
「おい、皆随分と詳しいな」
 先生もそんな彼等の話を聞いて笑いながら顔を向けてきた。先生が先頭でかつての生徒達が後ろだ。完全に昔の姿になっていた。外見以外は。
「先生も最近孫の為に観ているんだけれどな」
「こっちは子供に合わせてですよ」
「俺もですよ」
「私も」
 彼等は笑ってこう話す。
「そっちの勉強も大変なんですよ」
「ウルトラマンは今はやってないですけれど」
「しかし何だかんで皆観るからな」
 特撮ものはどうしてもそうなってしまう。年齢に関係なく楽しめる人間は楽しめる、それが特撮というものであるからだ。そうした魔力があるのだ。
 
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