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ファーストキスは突然に

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2部分:第二章


第二章

「あんな連中はな」
「まあないよな」
「ねえよ、それにあいつ等ノストラダムスが外れたら何も言わなくなったよな」
「確かにな」
「今度の予言も絶対に外れるさ」
 その二〇一二年の話である。
「絶対にな」
「とにかくそれには焦ってないんだな」
「全然な」
 信じていないからこそ焦っていない、そういうことであった。
「何があっても予言なんかにゃ焦らないさ」
「じゃあ何に焦ってるんだよ」
「恵美ちゃんだよ」
 この名前をここで出してきたのである。
「恵美ちゃんな。どうなんだろうな」
「ああ、その彼女のことだな」
「これが滅茶苦茶可愛いんだよ」
 自分の彼女を呆れるまでに褒めるのだった。
「もうな。この世の終わりじゃないかって位にな」
「随分変わった褒め言葉だな」
「そうか?」
「普通今の表現はこうした場合には使わないぞ」
「それでもとにかく奇麗なんだよ」
 崇はそれでもだというのである。
「可愛いんだよ。もう見てるだけで幸せになる位しな」
「確かこの学校の看護コースの娘だよな」
「そうだよ。とにかく凄い可愛さなんだよ」
 完全にのろけている。
「白衣の天使なんだよ。女神なんだよ」
「いい加減にのろけるの止めろ」
 友人も流石にここで止めに入った。
「何なんだ?さっきからのろけてばかりじゃないか」
「だってよ。本当によ」
 それでも言う彼であった。もう止まらない。
「可愛いからよ。性格だって太陽みたいに明るくて仏様みたいに優しくてよ」
「わかったからいい加減に止めろよ」
 友人も少し怒ってきた。
「のろけるのも大概にしろ。とにかく御前は幸せなんだな」
「世界一な」
 こう来た。
「もう俺みたいな幸せな奴っていないよな」
「それで何でそんなに焦ってるんだ?」
 ここでやっと話が本題に戻った。
「世界の終わりが近付いてるか今にもうんこしそうな位かにな」
「ああ、実はな」
 崇も冷静になった。それで言うのであった。
「俺今度彼女とキスしようって思うんだ」
「いいことじゃないか」
 友人はそれを聞いて思ったまま返した。
「ファーストキスか?」
「そうなんだよ。いや、苦節十七年高校生活でやっと手に入れた花だよ」
「俺なんかそれ叔母さんに奪われたよ」
 友人は憮然として自分のファーストキスの話をした。
「赤ん坊の頃にな。当時十歳だった叔母さんが無邪気にな」
「近親相姦みてえな話だな」
「ああ、今三十七歳の人にだよ。二児の母になってる人にな」
「今度は不倫めいてきたな」
「そんな関係じゃねえけれどな。まあ今でも奇麗な人なのが救いだけれどな」
 何気に物凄いファーストキスではある。
「それでもな。御前もやっとか」
「ああ、やっとだよ」
 崇は今にも天に舞い上がらんばかりになっていた。
「本当にな。やっとな」
「とにかくよかったな」
 それは素直に祝う友人だった。
「ばっちり決めろよ」
「ああ。けれどな」
 しかしであった。ここでまた焦りを見せる崇であった。
 
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