| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

18.大物と小物の違いは、他人を利用出来るか出来ないか。

<ラインハット城地下通路>

地下通路を進むと、そこは牢獄だった。
そこの特別監房に彼女は囚われていた。
「ん!?誰じゃ?そこにいるのは何やつじゃ?まぁ、よい…妾を、妾を助けよ!妾はこの国の太后じゃぞ!」
「「「あ゛?」」」
何言ってんだ、この女?
俺達は互いの顔を見て、首を傾げる。

「太后は城の最上階で、ふんぞり返ってる。こんな所にいる訳ねぇーだろ!」
そんなウソ吐いてっから投獄させられたんじゃね?
「ええい!察しの悪い奴じゃ!上にいるのは妾の偽者!妾になり代わり、この国を牛耳っておるのだ!あの偽者がこの国を悪しき国へ変えたのじゃ!」

「………たしかに…この女、本物の太后の様だ…」
じっくりとババアの顔を眺め、ヘンリーが本物であると断定する。
コイツが言うのなら間違いないのだろう。
と、なると…
「10年前ヘンリー王子を攫わせたのも、あんたの偽者か?」
「…あれは…妾じゃ…我が子、デールを…どうしても王にしたかった…我が子可愛さに行ってしまったのじゃ!恐ろしい事をしてしまった…今では、反省しておる…」
反省…か…
「じゃが、それ以外は偽者がやったのじゃ!妾は権力を欲した事は無い!デールの人生を良き物にしたかった、ただそれだけなんじゃ!」
「ただそれだけだと!そのせいでどれほど「よせ!今はそれどころじゃないよ!」
俺は怒り出すヘンリーを宥め今後の事を小声で告げる。
「ヘンリー。偽者が元凶ならば楽にこの国を変える事が出来る」
「どういうことだ?」
「つまり…偽者が元凶で、その偽者を退治した事が国中に知れ渡れば国民の意識改革も行いやすいんだ!」
政治の世界には生贄が必要なんだ…
誰かを生贄にして、大衆の不満を忘れさせる!
政治家共の常套手段だゼ!
「なるほど!」
納得したヘンリーを誘い先へ進む。
後ろでは、あの馬鹿女が「助けろ!」と騒いでいるが、そんなん無視だ!



<ラインハット城>

目の前にデール王が鎮座している。
城内へ侵入した俺達は兵士の鎧をちょっぱねて(倉庫に可哀想な裸の兵士が二人倒れています)玉座の間へやって来た。
デール君、大きくなったなぁ…今、14歳かな?全然王様らしくねぇ~!

「…余は今気分が優れぬ…下がれ!」
不機嫌なデール君を無視しヘンリーは耳元で話し掛ける!
「しかし王様!子分は親分の言う事を聞くのでは?」
………コイツまだ親分とか、子分とか言ってんの?
今、俺に言ってきたら、絶対ぶっ飛ばしてるね!

「!?ま、まさか…おい!大臣!」
「は!?」
「余はこの者達に話がある!お前は退室せよ!」
「は?…はぁ…」

大臣が渋々出て行くと、
「義兄さん!ヘンリー義兄さん!生きていたんですね!」
「長い間留守にしてすまなかった。時間がない!早速本題へ入ろう」



「義兄さん達も苦労をされた様で…しかし母が偽者とは…」
「信じられないのも無理はないが…」
「いえ、そう言われれば思い当たる節が幾つかあります。あんなに優しかった母が人が変わった様に僕を邪険にしましたから」
「まさに人が変わってたのさ!」
冗談だったら笑えないが、事実だからなぁ…なお笑えないよ!

「義兄さん。この城の書物庫に『ラーの鏡』の文献がありました。真実を映すラーの鏡があれば、この事態を解決出来るかもしれません」
「さすがは我が子分!良い情報を持っている」
「義兄さん、お気を付けて!」

俺達はピエール達と合流し書物庫を漁る。
ラーの鏡に関する書はすぐに見つかった様だ。
ちなみに俺は全く関係ない書を読みふけり、ピエールに蹴飛ばされた。(あの娘Sなの?)
書によると、オラクルベリーの遙か南にある『神の塔』に鏡は奉られているそうだ。



<神の塔>
ピエールSIDE

我々は神の塔に入り幾度めかの戦闘をしている。
あの後、城内に設置されていた『旅の扉』を使い、神の塔の近くまで来た我々だが夜も遅い為『攻略は明日朝から』と言うリュカの意見(我が儘)により、近くの海辺の修道院で一晩厄介になった。
ここにはヘンリー殿とリュカの縁者がいる様で、神の塔の事を告げたら協力を申し出てきた。
何でも神の塔に入るには『心清き巫女』が必要らしくマリア殿が、そしてその兄のヨシュア殿が随行してきた。
ヨシュア殿はかなりの猛者と見える…足の運びで強さが分かるくらいだ!

神の塔内は神々しい雰囲気とは別にモンスターも多く戦闘が絶えない!
さらに、リュカの馬鹿が大声で歌うのでモンスターが寄ってくるのだ!
しかも当のリュカは殆ど戦わない!
後方でマリア殿を守りつつ援護魔法を唱えるだけだ!
「イオ!」
私のイオが炸裂する!
ガメゴン、ホイミスライム、インスペクターを吹き飛ばす。
しかし致命傷ではない!
すかさずヘンリー殿とヨシュア殿がとどめを刺す!
残りはホイミスライムのみ。
向き直り剣を構える。

ホイミスライムは先程のイオで傷つきながらも、事切れたガメゴンにホイミを唱える。
しかしホイミで死者は蘇らない。
仲間の死が理解出来ないのか、ホイミスライムは長い手蝕で亡骸を揺すり「ホイミ!ホイミぃ…」そう悲しげに繰り返す。
これでは、どちらが悪なのか…

するとリュカが悲しそうな表情でホイミスライムに近づく。
「ごめんね…君の友達を…ごめんね…」
そう言いホイミスライムを優しく抱きしめる。
「リュカ、離れろ!そいつは敵だ!」
私は思わず叫んでしまった。
リュカの気持ちが痛い程分かるのに…

「そうだね、この子は敵だった。でも君もそうだったろ?」
私は何も言えなくなる。
リュカの瞳は優しく、そして悲しく光る。
私はこの男を過小評価しているのかもしれない…
「ホイミ」
リュカがホイミでホイミスライムの傷を治す。
「さぁ…君は逃げなさい」
「ふわわん」
「え!?でも、僕たちは君の友達を…」
「ふわわわん!」
「そう。じゃぁ、これからよろしく。ホイミン!」
そう言うとリュカは何事もなかった様に先を歩き出した。ホイミンとじゃれながら…
私はリュカの優しさが、懐の深さが心地よかった。

ピエールSIDE END



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧