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ハイスクールD×D復讐と剥奪の王

作者:夜鞠修弥
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4話『復讐者と堕天使《決着》』

~修弥Said~

いつもと変わらない朝。

昨日の悪魔との戦闘で力の使い方を理解した俺は、堕天使への夜襲を目的に、朝は学園へと来ていた。

いつものように屋上へ向かおうとする俺に、話し掛けてくる奴がいた。

「夜鞠君、少しだけいいかな?」

俺を呼び止めたのは木場だった。

「……前に言った事を忘れたのか?」

「忘れてはいないよ。でも、これだけは伝えておきたくて」

そう言ってくる木場の目は、真剣そのものだった。

「………わかった。ついてこい」

俺はそう言うと、木場を連れて屋上へと向かう。












「……それで、俺に何のようだ?」

屋上に到着するなり、俺は木場に向けてそう言う。

「昨日の夜、兵藤君がはぐれエクソシストと堕天使に遭遇して、負傷したんだ」

「っ!?……それで?」

俺は兵藤が怪我をしたと聞き、少し動揺した。

「いや、念のために君には伝えておきたくて」

「…………そうか」

「それじゃあ、僕はもう行くね。時間をかけてごめん」

そう言って、木場は屋上から出ていった。

兵藤がまた堕天使に………どちらにしろ、今日で堕天使とは決着をつけるからな。

「あの時の仇ぐらいは討ってやるよ」

俺は一人、そう呟くと体力を養うために眠りについた。
































~一誠Said~

パン!

部室に乾いた音がこだました。

「何度言ったらわかるの?ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ」

午前中、気分転換をかねて町へと出た俺は、昨日別れてしまったアーシアと再会した。

でも、夕暮れ時の公園に行ったときだった。

アーシアを追って夕麻ちゃんーーー堕天使がやって来て、俺は何もできずにアーシアがさらわれてしまった。

だから、アーシアを助けるために学校へと赴き、事の詳細を部長へと報告した。

報告した上で俺は、アーシアを助けるためにあの教会へ行くと提案した。

だが、部長はその件に関して一切関わらないと言った。

納得がいかない俺は部長に詰め寄った。

そして、冒頭の通り俺はビンタされた。

「それでも俺は、アーシアを助けに行きます!」

「あなたは本当にバカなの?行けば確実に殺されるわ。それをわかっているの?」

そんなことはわかってる!

でも……………でも、俺は!

「俺は絶対にアーシアを助けに行きます!これだけは、いくら部長の命令でも譲れません!」

「あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ!あなたはグレモリー眷属の悪魔なの!それを自覚しなさい!」

「じゃあ、俺を眷属から外してください。俺個人であの教会へ乗り込みます」

「そんなことができるはずないでしょう!あなたはどうしてわかってくれないの!?」

こんなに部長が激昂したのは修が部室に来たとき以来だ。

「敵を消し飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか?」

「……………」

俺と部長は睨み合う。

そこへそそくさと朱乃さんが部長に近づき、耳打ちする。

部長は俺をちらりと一目見たあと、今度は部室にいる部員全員を見渡すように言った。

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」

「ぶ、部長、まだ話は終わってーーーー」

言葉を遮るように、部長は人差し指を俺の口元へ。

「イッセー、あなたに二つだけ言っておくことがあるわ。あなたは『兵士』を弱い駒だと思っているわね?」

俺は部長の問いを静かに肯定し、頷いた。

「それは大きな間違いよ。『兵士』には他の駒にはない特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ」

プロモーション?

なんだ、それは?


「実際のチェス同様、『兵士』は相手の最深部へ赴いたとき、昇格することができるの。『王』以外の駒全てにね。相手の最深部を現実でいうと、教会とかね」

「それと、もう一つ。神器について。イッセー、神器を使う際、これだけは覚えておいて」

少し間を開けて、部長が言う。

「ーーー想いなさい。神器は想いの力で動き出すの。そして、その力も決定するわ。あなたが悪魔でも、想いの力は消えない。その力が強ければ強いほど、神器は応えるわ」

それだけ言い残すと部長は朱乃さんと共に魔方陣からどこかへ転移してしまった。

部室に残されたのは俺と木場と小猫ちゃんのみ。

俺は息を大きく吐いたあと、意を決してその場から去ろうとする。

「兵藤君」

木場が呼び止める。

「行くのかい?」

「ああ、アーシアが俺の友達が助けを待ってるんだ。絶対に行かないといけない」

「………殺されるよ?いくら神器を持っていても、プロモーションを使っても、エクソシストの集団と堕天使を一人で相手にはできない」

木場の意見は正論だ。

でも!

「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」

「いい覚悟、と言いたいところだけど、やっぱり無謀だ」

「だったら、どうすりゃいいってんだ!」

怒鳴る俺に木場はハッキリと言ってくる。

「僕も行く」

「………私も行きます」

「なっ!?木場、小猫ちゃん?」

「…………二人だけでは不安です」

「感動した!俺は猛烈に感動しているよ、小猫ちゃん!」

「あ、あれ?ぼ、僕も一緒に行くんだけど………?」

放置された木場がなんとも寂しげに笑みを引きつらせている。

わかっているよ、木場。

感謝してるぞ。

「んじゃ、三人でいっちょ救出作戦といきますか!待ってろ、アーシア!」

こうして俺たち三人は教会へ向かって動き出した。






































~修弥Said~

「………ケリをつけさせてもらうとするか」

学園の授業が終わり、一度家に帰宅した俺は、軽く準備をして教会へと向かっていた。

すでに空は暗く、街灯の光が道を照らす時間となっている。

まだ少し教会と距離があるが、俺は不意に歩くのを止めた。

「……出てこい、堕天使。いるのはわかっている」

堕天使の気配を感じ、俺は近くの林に向けてそう言った。

「まさか、レイナーレ様が言った通りになるなんて意外っすね。神器持ちの人間が来るかもしれないからって、言われてこんなところに配置されたっすけど、少しは楽しませてくれるっすか?」

木の上にゴスロリを来た金髪の女がそう言ってきた。

「楽しむ余裕なんてお前には無い。一瞬で消して、あいつから情報を聞き出す!」

「へぇ~。嘗めた口きいてくれるっすね!」

そう言った堕天使は俺に向けて、光の槍を飛ばしてくる。

俺はそれを右に避け、黒い籠手を右手に纏わせる。

『 Authorize 』

その機械音が聞こえると同時に、俺の周囲に五発の魔力弾が現れる。

「喰らいやがれ!」

俺は堕天使に向けて、魔力弾を全て放った。

堕天使はそれを木から飛び降りて避ける。

『 Authorize 』

そこに、俺は光の槍で突きを放った。

だが、堕天使はその突きを突きで受け止めた。

「ちっ………今のを受け止めるか」

「人間にしては中々やるっすね」

俺は堕天使から一旦、距離をとる。

「それにしても魔力弾といい、光の槍といい、アンタの神器はただの龍の手じゃないんすか」

「………さぁな。なにせ、この力はお前らを殺すために身に付けたもんだからな!」

俺は堕天使に光の槍を向け、静かに構え直す。

「そうすっか。じゃあ、おとなしくここで死んでくださいっす!」

「死ぬのはお前だ!」

堕天使の突きを避け、俺は左手で光の槍を横に振る。

「そんなんじゃあ、ウチは殺せないっすよ」

そう言って槍を俺に向けて投げてくる堕天使。

「………お前の槍も、俺にはとどかない」

『 Devest 』

槍が右手の籠手に当たると、機械音と共に消える。

「なっ!?槍が消えた!?」

「…………死ね!」

堕天使が驚いた隙をついて、俺は槍を薙ぎはらう様に振り抜いた。

ギィンッ!

「調子にのらないことっすね」

だが、その槍は堕天使が新たに作り出した槍で受け止められた。

「なんとなくだけどその神器の能力がわかってきたっす」

さすがに目の前で使えば気づかれるか。

俺はそんなことを考えながら、槍を構える。

「コピーと吸収ってところっすか?」

「……誰が教えるかよ」

短く呟きながら、俺は堕天使に突っ込んでいく。

「そういう反応は、図星だって言ってるようなもんっすよ」

そう言いなから俺の連続の突きを避けていく堕天使。

「ちっ!さっさと死にやがれ!」

『 Authorize 』

俺の左手にもう一本槍が追加される。

突き、薙ぎはらい、それを槍二本で行う俺に対して、堕天使は少し焦りながら避けている。

「そっちが、アンタの本気っすか」

「……出し惜しみしてる暇がなかっただけだ」

そう言いつつ、攻撃の手は止めない俺。

「っ!?ちょっ、ちょっと待つっす!」

堕天使が急に慌ててそう言った。

「この状況で俺が手を止めると思うか?」

「アンタにも関係のあることっす!レイナーレ様の気配が小さくなってきてるんっす!」

「………レイナーレ?兵藤を殺した奴か?」

「そうっす!」

「ちっ!そいつの気配がなぜ小さくなったんだ!」

俺は攻撃するのを止め、堕天使にそう言う。

「悪魔のせいっす。ここは、グレモリーの領地っすから、ウチ等の隠れ家に乗り込んでくるのはグレモリーぐらいっす」

彼奴等か。

俺の邪魔をするのは。

「堕天使、俺がこんなことを言うなんて癪だが、一時休戦だ」

「何を言ってるんっすか?」

「お前はレイナーレとか言う堕天使を助けたい。俺はそいつに、聞きたいことがある。ただ、利害が一致しただけだ」

俺は目の前の敵より、仇を選んだ。

「どうするつもりっすか?所詮、ウチ等が行ったところで殺されるのはわかりきったことっす」

「俺が、殺される?間違ってるな、堕天使。俺がグレモリー達を殺すんだよ」

俺は平然とそう言い、教会に向けて歩き出す。

「一人で行くつもりっすか」

「お前がいても邪魔なだけだ。今から渡す紙のところに行け」

そう言って、渡すのは俺の住所が書かれている紙。

「扉の鍵は開いてる。一階の一番奥の部屋で待ってろ。それ以外の部屋に入ったり、その部屋以外の何かに触れれば、俺はお前を殺す!」

くそ!

グレモリーのせいで、堕天使を家に匿うことになるなんてっ!

少しぐらいは、痛い目をみてもらうぞ。

俺は心の中でそう思いながら、教会へと向かった。











































~レイナーレSaid~

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

私は今、ありえない状況に陥っている。

アーシアから聖母の微笑を奪い、至高の堕天使となった私が悪魔、それも先日転生したばかりの下級悪魔に負けるなんて。

それに、現状は最悪だった。

私の周りには悪魔しかいない。

そして目の前に立ち、私に声をかけてきたのはーーーーー。

「…………グレモリー一族の娘か……」

「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お見知りおきを」

完全に私を包囲したつもりでしょうけど、残念。

私は少し笑みをうかべて言う。

「………してやったりと思っているんでしょうけど、残念。今回の計画は上に内緒ではあるけれど、私に同調し、協力してくれている堕天使もいるわ。私が危うくなった時、彼らは私をー「彼らは助けに来ないわ」っ!」

私の言葉を遮り、グレモリーが言う。

「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、彼らは私が消し飛ばしたから」

「嘘よ!」

私は上半身だけを起こし、グレモリーの言葉を強く否定した。

すると、グレモリーは懐から二枚の黒い羽を取り出した。

「これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけでわかるわね?」

紛れもない。

目の前にある羽は、ドーナシークとカラワーナのもの。

でも、まだミッテルトがいる。

恐らく今、あの人間を殺してこちらに向かっている筈。

フフッ、グレモリー達が油断しているこの状況では、勝機はこちらにあるわ。

私がそう考えていると、グレモリーが何かに気づき、私に言う。

「堕天使レイナーレ。この子、兵藤一誠の神器はただの神器じゃないわ。それがあなたの敗因よ」

ただの神器じゃない?

何をふざけたことを言っている。

「ーーーーー『赤龍帝の籠手』、神器のなかでもレア中のレア。籠手に浮かんでいる赤い龍の紋章がその証拠。あなたでも名前ぐらいは知っているでしょ?」

「なっ!?ブ、ブーステッド・ギア……。『神滅具』のひとつ……。あの忌まわしき神器がこんな子供の手に宿っていたというの!?」

私はあまりの事態に驚きを隠せないでいた。

「じゃあ、最後のお勤めしようかしらね」

途端にグレモリーの目が鋭くなり、冷酷さを帯びる。

「消えてもらうわ、堕天使さん」

冷たい口調。

でも、まだ私には勝機がある。

そのために、今は時間を稼ぐ。

「イッセーくん!私を助けて!」

「この悪魔が私を殺そうとしているの!私、あなたのことが大好きよ!愛している!だから、一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

私は夕麻の姿に戻り、イッセー君に向かってそう言った。

「グッバイ。俺の恋。部長、もう限界っス………。頼みます………」

なっ!?

これで、少しは時間を稼げると思ったのに!?

「………私のかわいい下僕に言い寄るな。消し飛べ」

そう言ったグレモリーから、魔力弾が私に向かって放たれる。

その瞬間、私は死を覚悟した。

でも、いくらたっても私の体には痛みが生じなかった。

「な、なにが起こったの!?」

グレモリーが無傷の私を見て驚いている。

そこに、グレモリーの背後から光の槍が飛んできて、私とグレモリーの間に突き刺さった。

ミッテルト!

こ、これでこの悪魔達を殺せば。

「光の槍!?まだ、堕天使が残っていたの!?」

「フフフッ、ハハハハハハハハハッ!残念だったわね!まだ、勝機は私にあるのよ!」

そう言って、私が立ち上がろうとした時だった。

「…何がおもしろいんだ?堕天使」

教会の入口から入ってきたのは、ミッテルトではなく、以前に会ったことのある人間だった。





































~修弥Said~

堕天使を“嫌々”家に行かせた俺は教会へと到着した。

「…………わいい下僕に言い寄るな。消し飛べ」

扉の壊れた入口からは、グレモリーの声が聞こえてきた。

ちっ、本当に死にかけてたってわけか。

俺は先程の堕天使との戦闘から持っていた槍の二本のうち、一本をグレモリーが放とうとしている魔力弾に向けて投擲する。

「な、なにが起こったの!?」

中からは、グレモリーの驚いた声が聞こえてくる。

その隙にもう一本の槍を、堕天使とグレモリーの間に投擲する。

「光の槍!?まだ、堕天使が残っていたの!?」

「フフフッ、ハハハハハハハハハッ!残念だったわね!まだ、勝機は私にあるのよ!」

堕天使とグレモリーのバカな発想に呆れながら、俺は入口へと近づいていく。

「…何がおもしろいんだ?堕天使」

教会の中へと入った俺は、堕天使に向けてそう言った。

「お、お前は!?」

「修!?」

俺の登場に驚く堕天使と兵藤。

「なぜ貴方がここにいるのかしら?夜鞠修弥君」

「……俺はそいつに用がある」

堕天使を指差して、そう言う俺。

「貴方は堕天使側の者なの?」

グレモリーがそう言った時、俺は無言で床に突き刺さった光の槍を抜いた。

「……ふざけんなよ、グレモリー!俺はそこにいる生ゴミ以下の烏とは違う!」

そう言って俺はグレモリーに向けて槍を投げる。

「くっ!みんな、彼を捕まえて!」

そう言いながら、グレモリーは俺の投げた槍を魔力弾で消し飛ばした。

「……覚悟してください」

そう言って俺に接近してきたのは、一年の塔城小猫だった。

塔城は打撃で確実に急所を狙ってくる。

俺はそれを受け止めずに避けている。

そして、避けた際にできた僅かな隙をついて塔城を蹴り飛ばす。

その間に俺は黒い籠手を再度、右腕に纏った。

「力をよこせ!」

俺がそう言うも、籠手からは何の反応もない。

どういうことだ!

今まではしっかりと機能していた筈だ。

それがなぜ、この状況で使用不能になっている。

「悪いけど止めさせてもらうよ」

そう言って突撃してきたのは、木場だった。

片手には剣を構えている。

くそ!

俺が今までに使ったのは、悪魔の時に槍を三本。

さっきの堕天使に魔力弾五発と槍二本。

「ちっ!そういうことか!」

「修!止めろ!部長達も待ってください!」

俺が籠手がなぜ機能していないのかを理解したとき、兵藤が俺達全員を止めた。

「どういうつもりだ、兵藤」

「修はレイナーレの仲間じゃないだろ?なら、何でレイナーレを助けるんだ?」

「お前らには関係の無いことだ。それに俺は以前に言った筈だ。俺の邪魔をしたら殺すと」

「イッセー、離れなさい!」

「部長も少しは冷静になってください!」

何時も以上に強く発言する兵藤に、その場にいる全員が動こうとしない。

「修、俺はレイナーレを許せない。そいつはアーシアから神器を奪って、アーシアを殺したんだ」

ーーーーそうか、こいつも俺と同じ…………。

「………なら、取り引きだ」

「取り引き?」

「俺があの堕天使から神器ってのを取り返す。お前らは俺とそこの堕天使を見逃せ。もちろん、身の安全を保証した上でだ」

「そんな取り引き認められるわけが「わかった」っ!イッセー!?」

兵藤が独断で俺との取り引きを受けたことに、グレモリーが驚く。

「部長、責任は俺が後で取ります。だから、今は修を信じてやってください」

兵藤はグレモリーにそう言うと、俺と向き合う。

「修、頼む」

俺は兵藤の言葉を聞き、堕天使へと近づく。

「な、何をするつもり」

「黙れ、そこでおとなしくしてろ」

俺は簡潔にそう言うと、堕天使の方に右手で触れた。

「こいつが奪った力を俺によこせ!」

『 Devest 』

その機械音と共に、俺の元に二つの指輪がゆっくりと近づいてくる。

「兵藤、これの持ち主はどこだ」

「あ、あぁ、そこの椅子に倒れている娘がそうだ」

俺は兵藤が指差した椅子の元に行き、倒れている女の前に立つ。

「俺が持つ力を本当の持ち主に返せ」

『 Authorize 』

俺の言葉に合わせ、先程の指輪は倒れている女の元へと戻っていった。

「これでお前の要望は果たした。俺はそこの堕天使を貰うぞ」

「ああ、ありがとう!修」

俺は兵藤の声を背中越しに聞きながら、堕天使の元へと歩いていく。

「………くっ、殺せ」

「……黙れ、お前に意見する権利はない」

俺はそう言って、堕天使を立たせる。

「……俺はお前に聞きたいことがある。だから、お前には俺についてきて貰う」

俺はそう言って歩き出すが、堕天使は中々その場から動こうとしない。

「………堕天使にこんなことをするなんて屈辱的だ」

「………え」

俺は堕天使を無理矢理抱き抱えて、教会から出ていく。

処遇お姫様抱っこだが、堕天使相手にやることになるなんて、気分は最悪だった。
























堕天使を連れ、家の前まで帰ってきた俺は扉を開けた。

「一番奥の部屋に行け」

俺はそう言って堕天使を下ろした。

父さん、母さん、堕天使を家にあがらせることになったことは悪いと思ってる。

でも、これは二人の仇をとるために必要なことなんだ。

だから、後少しだけ待っててくれ。

俺は心のなかで父さんと母さんにそう言うと、堕天使が入っていった奥の部屋へと向かう。

「……他の部屋には入っていないだろうな」

俺は部屋に入るなり、ゴスロリの堕天使にそう言った。

「もちろん、入ってないっすよ」

「……ミッテルト、これはどういうこと?」

「レイナーレ様………」

「そんなことはどうでもいい。それよりも、俺はお前に聞きたいことがあると言った筈だ」

俺は堕天使達が何かを話す前に割って入ってそう言った。

「……お前が知っているなかで十枚の羽を持つ男の堕天使について教えろ」

「…………アザゼル様とシェムハザ様、バラキエル様、コカビエル様」

堕天使が言った四人の名前。

「その中でお前に接触してきたのは誰だ?」

「っ!?なぜ、そのことを!?」

「いいから、早く教えろ!」

「………コカビエル様よ」

コカビエル。

そいつが、父さんの仇。

そして、俺が殺すべき敵の一人。

「お前らには、もう用がない」

俺がそう言うと堕天使がビクッと僅かに肩を震わせた。

「……普段ならお前らを殺すが、今回は良い情報が聞けた。お前らの居場所に帰るなりすきにしろ」

なぜ、俺は堕天使にこんなことを言っている?

殺そうと思っていた筈だ。

その俺がなぜ、殺さない。

「………私達に居場所なんてあるわけがないでしょ」

俺がそんなことを考えていると、黒髪の堕天使がそう言った。

「………コカビエル様に捨て駒にされた私達が、今さら戻ったところで殺されるだけ!」

「……捨て駒」

「そうよ!コカビエル様に言われて、アーシアから神器を奪ったのに、ここがグレモリーの領地であることを知らされていなかったのよ!?最初から利用されていたのよ!」

そう言った黒髪の堕天使は泣いていた。

………堕天使でも、泣くのか。

そんな堕天使を見ていると、昔父さんとの約束を思い出してしまった。

(修弥。もし、誰かが泣いていたり、困っていたりしたら、助けてやるんだ。例え、それがどんなものであってもだ。約束できるか?)

俺はその時、確かに言った。

約束するって。

……今からやることは、父さんとの約束だ。

今回限り、堕天使を………

「……お前らの居場所がないのなら、ここにいろ」

「……え?」

泣いていた堕天使が、俺の言葉を聞いて止まった。

当然だ。

俺だってこんなことを言うとは、思っていなかった。

「お前らが居場所を見つけるまで、ここがお前らの居場所だ」

「……いいんっすか?」

「……私達が憎いんじゃないの?」

「あぁ、お前らが憎い。殺したいぐらいにな!………でも、困ってる奴を助けるって、約束しちまったんだよ」

「………クスッ、なによ、それ」

「お前らがここにいたくないと言うなら、べつにいい。俺は追いかけはしない」

……本当に俺は甘いことを言っているな。

「……ウチ等がここを出ていったとしても、グレモリー達に殺されるのがわかっているっすよ」

「でも、それはここにいても同じこと………」

「別に、グレモリーがここに来ても何も変わらない。俺がグレモリーを殺すってことはな」

俺がそう言うと、二人の堕天使は目を丸くさせている。

「……そうすっね。ウチはここに残るっす」

「ミッテルト………。私も、ここに残るわ」

「………そうか」

これで、いいのか?

父さん。

でも、父さんの仇である堕天使を救うなんて、俺はどうしちまったんだ。

「お前らがここにいるのは自由だが、少しは俺に協力してもらうぞ」

「「かまわないわ(っすよ)」」

ありえない結果だが、堕天使との決着は着いた。

仇の名は堕天使がコカビエル。

悪魔の方はまだ不明だが、いずれは俺がこの手で殺す。

今回は堕天使を救うイレギュラーがあったが、最大限利用するだけだ。

俺の復讐は始まったばかりなんだからな。



 
 

 
後書き
次回、5話『復讐者と不死鳥』 
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