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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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15.10年一昔。初恋のあの娘はもう…

<オラクルベリー~サンタローズ街道>
ヘンリーSIDE

俺とリュカは野宿の為、食事の用意をしている途中だった。
もう何度目の戦闘だろう…俺は鎖鎌を駆使し、時には『メラ』と『イオ』の魔法を使いモンスターを駆逐していく。
相変わらずリュカは積極的に戦闘へ参加してこない。
しかし今回は特に何もしない。
焚き火の側に座り、食事の準備を(準備と言っても、携行食品を軽く火で炙るだけ)進めている。
時折、自分の所へ向かってきた敵を払いのけるだけ。

「少しはお前も戦え!」
全てを駆逐しリュカの元に戻り文句を言う。
「ピキー!」
スライム!
俺は身構える…が、
「ね!ヘンリーは強いんだよ。だから一人で大丈夫。その間に僕が食事の準備をする。無駄がないでしょ!?」
え!?
「ピッキー!」
いつの間にかスライムと仲良くなっていたリュカは、俺に携行食を渡すとスライムの事を紹介してきた。
「この子スラリン。行く宛が無いから一緒に行く事になったから」
「…あぁ…そ…」
怒る気も、つっこむ気も無くなった。

ヘンリーSIDE END



<サンタローズ近郊の山道>

俺とスラリンは歌を歌い、サンタローズを目指す。
ヘンリーは疲れ切った表情で付いてくる。
戦闘任せすぎたかな?
丘の上の教会が見えた。
「ヘンリー。もう少しだよ、頑張って!」
俺は自然と歩みが早まった。
フレアさ~ん!!


<サンタローズ>

そこは、俺の思い描いていたサンタローズとは違った。
家は壊され至る所に火を放った跡がゴゲ跡として残る。
そこら中に毒を撒き植物が育たない様にされてる。
俺は村を一望出来る丘の上の教会へ向かう。

教会だけは元のまま残っていると思ったが、近くで見ると教会も一度破壊された形跡がある。
きっと『教会だけは』と、瓦礫の中から廃材を集めて立て直したのだろう…
「酷い…こんなことが…」
声も出せないでいる俺を気遣いながらヘンリーが呻く。
「ようこそ、旅の人。ここはサンタローズ。昔は風光明媚な美しい村でした」
振り返ると、そこには一人の若くて美しいシスターが寂しげな微笑みを浮かべ立っていた。
「10年前、ここにはパパスと言う一人の戦士が住んでおりました。ある日パパスはラインハットからの呼び出しに応じ、幼い息子を連れてラインハットへ赴きました。しかし、その直後に第一王子のヘンリー殿下が行方不明になり、時の王グレック陛下もショックにより御崩御され、第二王子のデール殿下が即位されました」
ヘンリーを見ると俯き唇を噛んでいる。

「ラインハットが変わったのは、その時からです」
シスターの口調が強く怒りがこもる。
「ヘンリー殿下を攫ったのはパパスだと言い、この村に大勢の兵士が攻め込んできました。いえ!あんなの兵士等ではありません!山賊と同じ!村へやって来ると、壊し、奪い、人々を殺し、女子供を襲う犯す!欲望の限りを行うと、満足したかの様に帰っていきました」
シスターは泣き出し、そして訴えた。
「パパスさんは、そんな事しない!パパスさんは子供を攫ったりしない!それなのに!うっうっ…それなのに…」

「その通りだよフレアさん」
「え!?」
俺は優しく、俺のもてる限りの優しい口調でフレアさんに語りかける。
「父さんは、パパスはそんな事してない。攫われたヘンリーを助けに行ったんだ」
フレアさんは涙で溢れた目で俺を見つめる。
「…リュー君?…本当に、リュー君!?」
「ただいま、フレアさん。長い間ごめんね」
「ふぇ~ん…リュー君だ!リュー君が生きていた!ふぇ~ん!」
フレアさんが俺の胸に抱き付き泣きじゃくる。
10年前は俺が彼女の胸に抱き付いていたのに…

「ぐすっ…それでパパスさんは?」
俺は重い口調でフレアさんに告げる…



フレアさんの表情が沈痛な物になる。
しかし次の瞬間、明るい笑顔に戻すと、
「パパスさんの事は、リュー君のせいじゃないからね!元気を出してね」
「…うん…」
「じゃぁ、パパスさんのご意志を継ぐのなら、あの洞窟を探した方がいいわね」
そう言うと丘の麓にある洞窟に目を向けた。
あの洞窟は父さんが時折赴いていた所だ。
エロ本でもあるのだろうと当時は考えていたが…

「取りあえず今日はもう暗くなるから教会に泊まっていって」
そう言いフレアさんは今更ながらヘンリーの事に気が付いた。
「ところで、お連れの方の紹介はしてくれないの?」
あどけなく言うフレアさんとは対照的に、ヘンリーは顔面蒼白で今にも吐きそうだ。
「お、俺は…その…」
「彼は、僕の大親友のヘンリー。彼も奴隷だった。彼がいなかったら僕は10年間絶えられなかっただろう!大切な、本当に大切な僕の友だ!」
もうこれ以上話をややこしくしたくない…めんどいし。
「ヘンリー…さん…ですか…」
フレアさんも分かったのだろう、それ以上追求はしてこなかった。
でもヘンリーに対しては、かなりぎこちなかった。



<サンタローズの教会>
ヘンリーSIDE

夜更けの教会。
静寂が包む中、リュカが起きあがり出かけようとしている。
「リュカ。水くさいぞ!俺も一緒に洞窟探索を手伝うぜ!」
リュカは俺に気を使い、一人で洞窟に向かうつもりの様だ。
リュカは俺の事を親友と大切な友と呼んでくれた。
俺はこいつの為なら何でも出来る!こいつの為なら何も惜しくない!
「え!?」
リュカは俺が起きていた事に驚いている。
「いや…でも…悪いから…」
「ふざけるな!お前の旅の目的は、俺の旅の目的だ!」
まったく水臭いヤツだ!
「あ~…っと、そうだね…」
「ほら!シスターを起こさない様に静かに出るぞ!」
俺とリュカは洞窟に向けて歩み出す。
親友と共に…

ヘンリーSIDE END



<サンタローズの洞窟>

はぁ~…何でこんな夜中に洞窟探検してるんだろ?
明日の朝でも良かったのに。
ヘンリー寝てると思ったのになぁ…
フレアさんに夜這いかけようと思ったのに…
何か勝手に勘違いして『俺も行く』って、空気読めっての!
本当に親友かよ!

洞窟内での戦闘は、ほぼヘンリーが一人で頑張ってくれた。(秘技、丸投げバトル)と、言ってもスラリンの活躍も大した物だった。
(俺的に)楽に洞窟の最深部に辿り着いた俺達は父さんが残してくれた品を発見した。
パパスの手紙と鈍い光を放つ剣が一降り。
手紙には、母マーサの事、母を攫った魔族の事、母を救う為には伝説の勇者の武具を探さねばならない事、勇者のみが装備出来る武具の事、その一つの剣がここにある事、等が書かれていた。
つまり、ここにあるのが伝説の『天空の剣』だ。

俺は天空の剣を地面から抜き構える!
が、剣はあまりにも重く装備が出来ない。
「えー!?僕、伝説の勇者じゃないの~?僕、主人公じゃないの~!?」
「何言ってんだお前!?でも、お前なら装備出来ると俺も思ったんだが…っと、これ本当に重いな!俺にも装備出来ない」
ホッとした!マジ、ホッとした!めっさ、ホッとした!ものっそい、ホッとした!
「お前…俺に装備出来ないの見てホッとしてないか?」
あら、顔に出ちゃった?
「だぁってぇ…ヘンリーが伝説の勇者なんて…ムカつく!」
「いや、分かるよ!分かるけどさぁ…当人を前に言うなよ!」
「…ムカつく?」
「…もう、慣れた…」
そう言って剣を布で包み出口へ向かう。
はぁ~…俺、勇者じゃないのかぁ…



<サンタローズの洞窟>
ヘンリーSIDE

さすがのリュカも落ち込んでいるな。
あの手紙を読めば落ち込みもする。
パパスさんは自分の死を予測していた…いや、それ程危険な旅をしていたと言う事だろう!
俺はそんなあいつの力になれるのだろうか?
落ち込んだあいつを励ます事が出来るのか?

「…そ、そう言えば。この近くなんだろ?」
「何がぁ?」
「アルカパだよ。お前が以前言っていただろ。幼馴染みの女の子が住んでいるって」
「あぁ、そうだ!ビアンカがいる!」
「なら、行って無事を伝えないと」
リュカの瞳に光が戻った。
「そうだ!今行こう!すぐ行こう!サッサと行こう!」
どうやら元気になってくれた様だ。

走り出すリュカを追いかけ思った…こいつ足早ぇーよ!

ヘンリーSIDE END


<サンタローズの洞窟>

そうだ!ビアンカがいる!
俺にはビアンカがいる!
きっと美人になってるに違いない!
あ~、彼氏とかいたら、どうしよう…
いや!そんなんかんけーねぇー!
もう、押し倒す!
ぜって~押し倒す!
怒られたら、身の上の不幸を語り同情を誘う!
よっしゃー!
元気出てきた!
やる気出てきた!



 
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