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真田十勇士

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巻ノ十九 尾張その六

「この町は今以上に栄えるやもな」
「これ以上にですか」
「栄えますか」
「そうなりますか」
「うむ、そう思う」
 その町の中を歩きながらだ、幸村は述べた。
「よりな」
「今もかなり賑わっていますが」
「これ以上にですか」
「栄える町だと」
「殿はそう見ておられますか」
「うむ、あの城にしてもな」
 清洲城も観て言う、信長のかつての居城であり尾張第一の城だ。
「より大きな城を築ける」
「確かに」
 ここでだ、幸村に応えたのは筧だった。
「清洲城もよい城ですが」
「この地を見ているとな」
「はい、より大きく見事な城を築くことが出来ます」
「そしてその城の下にじゃ」
「より見事な城下町もですな」
「そうなる」
 幸村はあらためて述べた。
「そして尾張自体もな」
「今以上にですな」
「栄えるのですか」
「元々尾張は土地は肥え天下の道の要でもある」
 東海のそれであることもだ、幸村は話した。
「それだけにな」
「今以上に栄え」
「そして豊かになる」
「この国はそうした国ですか」
「この町も」
「そう思う、尾張は天下の要の一つじゃ」
 幸村は尾張自体にここまで言った。
「よい国じゃ、政次第でどれだけでもよくなる」
「そこまで恵まれた国だからこそ」
 望月は幸村んお話を聞いて唸る様に述べた。
「前右府殿は天下人になれたのですな」
「そうじゃ、尾張と美濃を手中に収められてな」
「その二国の豊かさが地盤となり」
「あの方は天下人になれたのじゃ」
 まさにそうだというのだ。
「まずはそこからじゃった」
「美濃も豊かでしたが」
 その美濃の中心である岐阜にいた根津も言う。
「この尾張もですな」
「この通りな。しかも前右府殿は善政を行われ国を豊かにされたからな」
 只でさえ豊かな尾張を、というのだ。
「そこが大きな力となったの確かじゃ」
「どの国を持っているか」
 ここでだ、穴山は唸る様にして述べた。
「それが天下人になる為には重要だったのですな」
「豊かで都に近い国ならな」
「その分有利ですな」
「そういうことになる」
「では上田は」
 清海はあえてだ、真田家の領地のことを幸村に問うた。
「そこはやはり」
「うむ、とてもな」
「天下人になれる場所ではないですか」
「そうじゃ、真田は最初から天下を考えてはおらんがな」
「そうなのですな、やはり」
「前右府殿はこの尾張に出られた、そして尾張を手中に収められた」
 幸村は淡々とした調子で述べていった。
「このことがやはり大きかったのじゃ」
「ですか、そしてこの尾張は」
 海野も言う、店の一つ一つを見つつ。
「よく治めればさらに豊かになる」
「そうした国と思う」
「ですか、ではこの尾張からですな」
「そうじゃ、三河に向かおうぞ」
「さすれば」
 海野は幸村の言葉に頷いた、そうしてだった。
 そうした話をしつつ一行はこの日は清洲の宿に泊まることにした、それで宿を探しつつそれぞれの芸も見せて旅銭も稼いだ。 
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