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雨音

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第四章

「夜に雨が降っている時に女の子が一人で歩いていると襲われるっていうのは」
「このことからか」
「ストーカ―のことだったんだな」
「そうだったんだな」
「拉致じゃなくてストーカーか」
「ストーカーが噂の真相だったんだな」
「そっちももう少しで大変なことになりそうだったな」
 だがそれがというのだ。
「捕まってよかったな」
「本当にな」
「よかったな、それでな」
「この噂も消えるか」
「真相がわかったしな」
 市民達は安堵した、そして。
 女の子達も安心した、それでだった。
 優樹菜と美奈子もだ、ほっとした顔でクラスで話した。
「よかったわね」
「ええ、あの話ってストーカーだったのね」
「実際に攫われた人はいなかったけれど」
「それでもね」
「悪い奴は本当にいたのね」
「ストーカーが」
 まずは噂の元凶について話すのだった。
「実際に雨が降る夜の時に女の人を襲ってて」
「それを誰かが見て噂になったみたいね」
「どうしてそれが広まったかわからないけれど」
「ネットでの書き込みかしら」
「そこで通報した人がいたみたいだしね」
 この辺りは二人はよくは知らなかった、もっともその女子大生の人が逃げたのを目撃して通報した人がいたのは本当のことだ。
「それが噂になって」
「そんな話になってたの」
「世の中って怖いわね」
「そうよね」
 二人で顔を強張らせて話す、そして。
 ここでだ、美奈子は困った顔でこんなことを言った。
「ただね」
「ただって?」
「事件の真相はわかって解決したけれど」
 それでもというのだ。
「お母さん塾の迎えは続けるって言ってるわ」
「あっ、それうちもよ」
 優樹菜もこう美奈子に答えた。
「事件は解決したけれど」
「それでもって言ってね」
「そうした事件があったことは確かでね」
「危ないからって言って」
「そうなのよ」
 こう美奈子に話した。
「それにひょっとしたらね」
「別の犯人かも知れない」
「お母さんそうも言ってるのよ」
「うちもよ、確かにストーカーは見付かったし捕まったけれど」
「別の事件があるとかね」
「そういうこともあるからって」
 そう考えてというのだ、二人の母親達は。
「まだ送り迎えはね」
「続けるって言ってるわね」
「どっちにしても女の子が夜に一人で歩いたら駄目って」
「そう言ってね」
「何かその辺りはね」
「用心しないとってなって」
 そう決まったというのだ。
 実際に殆どの親が事件が解決しても自分の娘達の迎えを続けた。以後こうした噂は出なかったがそれでもだ、皆用心していた。
 それでだ、母親達は何かあるとこう話していた。
「変な人が増えたから」
「娘を夜に一人にしていられないわよ」
「女の子だから何かあったら」
「それこそ取り返しがつかないから」
 こう言ってだった、この噂話が出て噂の元となったと思われるストーカー事件が解決してもであった。女の子を迎えに行くことは続いた。それは仙台市で長い間行われていて今も続いている。


雨音   完


                           2015・6・17 
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