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真田十勇士

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巻の十七 古都その二

「これだけ険しい山も」
「平気じゃ」
「そうですな」
「信濃はまことに険しい山が多いですな」
 由利も言う、穴山と同じく信濃で幸村と会った彼も。
「その信濃のことを思うと」
「この山も大丈夫じゃな」
「まことに」
「ただ。険しい山はそれだけで要害となります」
 やはり信濃にいた海野も言う。
「このことは上田にとってよいことですな」
「左様、上田は城も堅固じゃがな」
「山々もですな」
「要害となっておる」
 実際にとだ、幸村はその上田のことを話した。
「御主達も行けばわかるがな」
「上田はですな」
「そうそう攻められる国ではない、攻めて来てもな」
「上田城と山で」
「守る」
「ではこれよりどの様な敵が来ても」
 根津はその目を鋭くさせて言った。
「上田はですな」
「陥ちぬ、陥ちさせぬ」
 幸村は確かな自信を以て答えた。
「どの様な相手でもな」
「左様ですな」
「しかし、まことにまた天下は戦の匂いが強くなっております故」
 望月は秀吉が天下を取るにしても、と言った。
「上田も気をつけねば」
「その通りじゃ」
「左様ですな」
「やはり徳川殿とはな」
「戦になりますか」
「そうなることは充分有り得る」
「ですか、やはり」
 望月も頷いて応えた。
「徳川家ですか、我等の相手は」
「ではやはりです」
 伊佐は幸村に確かな目で告げた。
「徳川殿のご領地はです」
「見るべきじゃな」
「あの方が我等の確かな敵となる前に」
「ご領地に入っても何もされぬうちにな」
「見ていきましょうぞ」
「それがよいな、やはり」
「はい」
「その時は我等も隠れずに名乗って入るのがよいかと」
 霧隠は忍者らしくない行動を提案した。
「堂々と」
「堂々とじゃな」
「かえってその方が安全です」
「確かにな、我等も大所帯になった」
 幸村はここで家臣達を見た、合わせて十一人だ。
 その十一人という数からもだ、彼は言った。
「多いしのう」
「多いとやはり」
「隠れるのには向いておらぬな」
「例え忍でも」
「そうじゃな、ではな」
「はい、徳川殿のご領地においては」 
 三河やそうした国に入った時はとだ、霧隠は話した。
「名乗りましょうぞ」
「そうしてじゃな」
「堂々と見て回りましょう」
「そうするとするか」
「少なくとも徳川殿は無体な方ではありませぬ」
「敵でない家の者に無闇に危害を与えられる方ではないな」
「そう聞いております、ですから」
 それでと言うのだった。
「そのまま参りましょう」
「三河等の国にもな」
「そうしましょうぞ」 
 こうしたことを話してだった、そして。 
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