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2部分:第二章


第二章

「どうしてかしらね」
「おかしいことこの上ないけれど」
 須美はまた言う。その不可思議で仕方ないといった顔で。
「けれど私達も行くのよね」
「ええ、それはね」
 もうこれも決まっていることだった。
「今度の日曜ね」
「日曜ね」
「村の中二の女の子達は皆集まるんだって」
「本当に皆なのね」
「ええ、皆」
 このことがまた確認される。
「集まるのよ、神社にね」
「本当に何をするのかしら」
「少なくとも死ぬようなことじゃないのは確かよ」
 先輩達は皆無事に帰って来ている。だからこれは間違いがなかった。
「痛いものでもないんじゃないの?」
「だったらいいけれど」
「それでも。やっぱりね」
「ええ、そうね」
 また須美が答える。
「何があるのかしら」
「それが全然わからないから」
 どうしてもそれがわからなくて不安なのだった。しかし日曜日になり皆神社に集まることになった。神社は村の後ろにある山の中にあった。そこに入るともう神社の境内に村の中学校二年の女の子達が皆集まっていた。そして神主である村の助役もそこにいた。
「皆集まったようじゃな」
「ええ、神主さん」
「皆いますよ」
 女の子達は彼を助役とは言わない。神主と呼んでいる。この呼び名で彼を呼ぶのだった。
「けれどそれでも」
「一体何をするんですか?」
「別に悪いことではないぞ」
 神主は静かに女の子達に述べた。
「別にな」
「そうなんですか」
「左様、まずはじゃ」
 こう断ったうえでまた女の子達に話をしてきた。
「わしの家に入ってくれ」
「神主さんのお家にですか?」
「左様」
 女の子達に答えるのだった。
「皆な。入るのじゃよ」
「何だろう」
「さあ」
 女の子達は神主の今の話を聞いて顔を見合わせて怪訝な顔で話をする。しかしそれでも何が行われるのか全くわからず首を捻るだけであった。
「けれど変なことじゃないみたいよ」
「変なことって?」
「だから。皆いるわよね」
「ええ」
 一人の言葉に皆が頷いていた。
「これが一人だったら襲われるとかありそうだけれど」
「神主さんに限ってそれはないわよ」
「っていうか失礼よ、神主さんに」
「そうよ」
 口々にこう言って咎めるのだった。
「あんないい人に」
「そうそう」
 神主は村では人格者で通っている。温厚で人格円満と評判になっている。面倒見がよくて親切な村長と並んで村の皆から頼りにされているのである。その彼が女の子達に対して何かするとは殆どの女の子が考えなかったのである。だからこそ咎めたのである。
「それはないわよ」
「絶対にね」
「じゃあ何なのかしら」
 それでも疑念は消えないのは確かであった。これは誰も否定できない。
「そもそも神社ってねえ」
「神社っていえば」 
 女の子達は自分の中にあるこの神社へのイメージを思い浮かべるのだった。
「盆踊りと」
「あとはお祭りとかね」
 大体こんなところしかなかった。村の神社に対するイメージとしては非常にありきたりなもので何処もおかしなところはないと言えた。
「そんなところ?」
「新年にお参りしてね」
「それ位しかないわよね」
 結論としては悪いイメージはないのだった。これは確かだ。
「じゃあ一体何かしら」
「何があるのかしら」
 また口々に言い合う。だが答えは出ない。
「誰か神主さんのお家に行ったことある?」
「私だけれど」
 一人の女の子が名乗り出てきた。
「一応は」
「ああ、そういえばあんた」
「うん、お婆ちゃんがね」
 彼女は自分の身内についての話をはじめた。
「神主さんの妹だから」
「そうだったわよね」
「そういえばね」
 つまりは彼女にとって神主は大叔父にあたるというわけだ。これはこの場においては非常に大きな意味を持ち得ることでもあった。
「じゃあ聞いてるわよね」
「ここで何があるか」
「全然」
 しかし彼女も首を横に振るだけであった。
「十四歳の娘が集められるって聞いてるけれど」
「じゃあ全然知らないのね」
「ええ」
 また他の女の子達に答えるのであった。女の子達にとっては残念な答えであった。
「何が何だか」
「全く」
「そういえばね」
 別の女の子が口を開いた。
「うちのお婆ちゃんもお母さんもここに来てるのよね」
「あっ、そういえば」
「そうなるわね」
 このことにあらためて気付く女の子達だった。何故なら村の女の子は十四歳、今の学年で言うと中学二年になるとここに集められるのだ。それで知らない筈がなかった。
 
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