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遊戯王GX~鉄砲水の四方山話~

作者:久本誠一
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ターン35 光の結社とアカデミア-4F-

 
前書き
下級グレイドル3種とティンクル・モスを軸にした【信号機】を作れとの電波をこの間受け取りました。地味にどこ探してもティンクル・モス召喚セット、特にNEXが見つからないので速攻で諦めました。誰か組んだらレシピ教えてください(他力本願)。
前回のあらすじ:翔と剣山の凸凹コンビVSノース校四天王最強の男、鎧田。2対1でありながらも苦戦を強いられるほどの鎧田のタクティクスだったが、それでも辛うじて凸凹コンビが勝利をもぎ取った。 

 
「……よし、清明。確かこの部屋だよな」
「ちょっと待ってね。えっと……うん、この部屋に隠し通路が仕掛けてあるんだって」

 ポケットにねじ込んでおいた、三沢からもらったホワイト寮地図を再確認する。間違いない、4階のこの部屋だ。

「なら、一気に行くぜ。せーのっ!」
「待って待って!鍵あいてたらどーすんの!?」

 頑丈そうなドアをタックルでこじ開けようとした十代を慌てて止めて一応ドアノブに手を伸ばしてみると、案の定滑らかな動きで普通に開くことができた。まあ、あちらさんとしても僕らが入ってくるのは想定内みたいだし、ここで鍵締めて閉じこもるような見苦しい真似はさすがにしないだろう。
 それに、鍵が閉まってないと思う理由はもう1つある。仮に閉じこもっていたとしても僕の場合は、精霊召喚の一発でドアどころか壁ごとぶち抜かせることもできるから特に意味はない。そのことを、霧の王に頼んでノース校との対抗戦のときスプリンクラーを誤作動させたことから斎王だって百も承知のはずだからだ。

「うし、それじゃあ……」
「思ったより遅い到着だな、清明に十代」

 勢いよく開けた部屋はさっぱりとしていて、意外にもシンプルな造りだった。あくまでも隠し通路のためのつなぎの部屋、ということだろうか。だけどそんな部屋の中でも僕らの目を引いたのが部屋の中心に置かれた一組の机と椅子、そしてそこに腰掛ける1人の男。

「三沢」
「よう。俺の思った通り、やっぱりここまで来たのはお前たち2人か」

 最後に会った修学旅行あたりで見たのと同じ銀髪に白服姿をした、僕の親友の1人。まあ、どこかで会うことになるのはわかってた。鎧田と同じだ。

「十代………行って。僕がここは止めるから」
「いいのか?」
「三沢が無茶してこんなことになったのも、もとはといえば僕のせいだからね。だったら、僕が責任取ってどうにかするさ」

 僕の思いが伝わったのかそれ以上何も言わず、十代が僕の横を抜けて開きっぱなしの隠し扉の方へ駈け出した。のだが、その行く手をすっと三沢が塞ぐ。

「なんだよ、三沢」
「斎王様のご命令でな。この場所まで遊城十代が来たら、他の奴はいいから俺が止めろとのことだ」
「俺を……?」
「ああ。正直理由は俺にもわからんが、俺がそんなことを知る必要はない。俺はただ斎王様の命令を遂行するだけだ」

 ここでいったん言葉を区切り、それにな、と呟く。

「個人的な理由だがな、十代。お前にはまだデュエルで勝ったことがなかったはずだ。それは俺のプライドが許さない」

 その言葉をどう受け取ったのか、いつになく難しい顔の十代からは読み取れなかった。だけどやがて、その手が右手のデュエルディスクに伸びる。

「清明。……斎王は、頼んだぜ」
「任せといてよ」

 そのたった一言だけで、僕らにとっては十分だった。もうそれ以上は振り返ることもせず、隠し扉の中に入る。どこまで続いているのかもよくわからないような薄暗い階段を、一段飛ばしで一気に駆けおりていった。





「さてと。ちなみに三沢、なんのデッキを使う気なんだ?」
「そうだな。やはりお前と戦うならば、この地のデッキ……もうわかっているだろうな、ジェムナイトだ」
「ジェムナイト……」

 それを聞いた十代の脳裏に、かれこれ一年近く前の記憶がよみがえる。ノース校対抗戦の代表を決めるデュエルにおいて、三沢のジェムナイトと彼のHEROが真っ向からぶつかり合った日のことを。結局その時のデュエルはお互いにライフが0になる引き分けだったが、果たしてこの1年でより成長を遂げたのは一体どちらなのか。
 その答えは、お互いのデッキだけが知っている。それをわかっているがゆえに、それ以上無駄話で時間を潰すようなことはない。デュエルをすれば、わかる。

「「デュエル!」」

 先攻を取ったのは十代。ともに融合を使う2人の戦いは、手札消費が多いがゆえに後攻の方が動きやすい面があることは否定できない。だが、だからといって一歩も引くわけにはいかない。

「俺のターン、融合徴兵を発動!エクストラデッキの融合モンスターを相手に見せることでその素材の1体をサーチかサルベージできる代わりに、同名モンスターを俺は使用できない。俺はアクア・ネオスを見せて、その素材であるネオスを手札に加えるぜ」

 十代の新たなヒーロー、ネオス。それを見た三沢がほう、と呟いた。

「なるほど、それがお前の新しいカードか。確かにこの目で見せてもらった」
「このターンはネオスの出番はないけどな。まずはお前だ、ワイルドマンを召喚!そして装備魔法、最強の盾を装備。このカードの効果で攻撃表示のワイルドマンの攻撃力は、その守備力の数値だけアップするぜ」

 大剣を背負った筋骨隆々の野生児的ヒーローが、真新しい盾を左手に装備する。

 E・HERO(エレメンタルヒーロー) ワイルドマン 攻1500→3100

「なるほど、ワイルドマンの高い守備力を利用してきたか」
「へへっ、どうだ!俺はさらにカードをセットして、ターンエンドするぜ」
「確かに、1ターン目から手札消費2枚でトラップの効果を受けない攻撃力3100は大したものだ。だが、まだ甘い!魔法カード、ジェムナイト・フュージョンを発動!手札のジェムナイト・アンバー、サニクス、ルマリンの3体を素材として、融合召喚!出でよ、ジェムナイトマスター・ダイヤ!」

 3つの宝石の輝きが空中で混じり合い、中心に静かに燃える青い炎のような輝きを宿す1つの輝石となる。大剣を手にしたその宝石剣士が剣を掲げると、白い照明に反射して七色の輝きが辺りを照らす。

「マスター・ダイヤの攻撃力は、墓地のジェム1体につき100ポイントアップする。残念ながらモンスターのみしか加算されないが、それでも融合素材にした3体。ワイルドマンを倒すには十分だ」

 ジェムナイトマスター・ダイヤ 攻2900→3200

「おいおい、いきなりエースモンスターなんて、なかなか気合入ってるな」
「お前は手を抜いて勝てる相手じゃないからな。バトルだ、マスター・ダイヤでワイルドマンに攻撃!」

 ダイヤの剣に埋め込まれた8つの宝石がそれぞれ違う色の光を放ち、それが一筋の閃光となってワイルドマンを焼き尽くす。

 ジェムナイトマスター・ダイヤ 攻3200→E・HERO ワイルドマン 攻3100(破壊)
 十代 LP4000→3900

「さあ、次はどうする?俺は、これでターンエンドだ」
「おっと、ならそのエンドフェイズにトラップ発動、トゥルース・リインフォース!バトルフェイズを封じる代わりにデッキからレベル2以下の戦士族モンスター、ヒーロー・キッズを特殊召喚するぜ。そして特殊召喚に成功したヒーロー・キッズは自身の効果により、デッキから同名モンスターをさらに2体特殊召喚できる」

 ヒーロー・キッズ 守600
 ヒーロー・キッズ 守600
 ヒーロー・キッズ 守600

 アメコミチックな戦闘服に身を包んだ少年3人が揃う。結果的に十代のフィールドにモンスターを残したままターンを渡したことになるが、それでも三沢の顔に焦りの色はみられない。まだデュエルは始まったばかりなのだ。

 十代 LP3900 手札:2
モンスター:ヒーロー・キッズ(守)
      ヒーロー・キッズ(守)
      ヒーロー・キッズ(守)
魔法・罠:なし
 三沢 LP4000 手札:2
モンスター:ジェムナイトマスター・ダイヤ(攻)
魔法・罠:なし

「俺のターン、ドローだ!ヒーロー・キッズのうち2体をリリースして、アドバンス召喚!来い、ネオス!」

 瞬間、光が爆発した。正義の闇の波動を受けた正しきヒーローが、光の結社の本拠地に満を持して立ち上がる。

 E・HERO ネオス 攻2500

「来たか……だが、そのモンスターでは俺のダイヤは倒せん!」
「そんなことわかってるぜ!永続魔法、魂の共有-コモンソウルを発動!フィールド上のモンスター1体を選択することで発動できるこのカードは、手札からそのモンスターのコントローラーの場に(ネオスペーシアン)を1体特殊召喚。そして、その攻撃力を最初に選択したモンスターに加算するぜ。場のネオスを選択し、手札から風のN、エア・ハミングバードを特殊召喚!」
『ともに戦おう、十代!』

 ハチドリをそのまま人型にしたような鳥人モンスターが、背中に生えた翼を器用に動かして地面に降り立つ。十代の方を振り向いて、一度ウインクして見せた。

 N・エア・ハミングバード 攻800
 E・HERO ネオス 攻2500→3300

「ほう……」
「まずはエア・ハミングバードの効果を発動するぜ。1ターンに1度、相手の手札1枚につき500ポイントのライフを回復する!ハニー・サック!」

 三沢の手に残った2枚の手札から大きな花が生え、颯爽と飛び立ったエア・ハミングバードがこれまた器用にその花ひとつひとつから丁寧に蜜を吸い取ってゆく。

 十代 LP3900→4900

「これでよし、と。バトルだ!ネオスでジェムナイトマスター・ダイヤに攻撃、ラス・オブ・ネオス!」

 飛び上がったネオスが上空から加速度をつけてチョップを叩き込む。それを迎撃せんとマスター・ダイヤが大剣を構えるが、一瞬の激突の後大剣がチョップを受けた中心部分からぽっきりと折れてしまった。たまらず一歩下がったマスター・ダイヤの鎧に、もう一撃のチョップが炸裂する。

 E・HERO ネオス 攻3300→ジェムナイトマスター・ダイヤ 攻3200(破壊)
 三沢 LP4000→3900

「驚いた、まさかお得意のスカイスクレイパーも融合も使わずに攻撃力だけでマスター・ダイヤを越えてくるとはな」
「これで終わりじゃないぜ!エア・ハミングバードでダイレクトアタック、ホバリング・ペック!」

 N・エア・ハミングバード 攻800→三沢(直接攻撃)
 三沢 LP3900→3100

「さあ来い三沢、俺はこれでターンエンドだ!」
「1つ言っておこう、十代。マスター・ダイヤが倒されるのは俺の想定内……ここからが本番だ、とな」

 自身のエースが倒されたというのにまるで堪えた風のない三沢の態度にどこかゾッとするものを感じながらも、それを振り払うように首を振って十代は次に三沢が何をしてくるのかの観察にかかる。

「俺のターン、ドロー!永続魔法、ブリリアント・フュージョンを発動!この効果で呼び出す融合モンスターは攻守が0になるが、代わりにデッキのモンスターを素材として融合召喚ができる!」
「何!?デッキだけで融合召喚だと!?」

 長いこと融合テーマのパイオニア、ヒーローデッキを使い続けてきた十代でさえ聞いたことのない融合条件。融合の一番の弱みである手札消費の荒さも、その素材をデッキだけで賄うのであれば関係ない。

「デッキに眠るジェムナイト・ラズリー、クリスタ、ガネットの3体を素材とし、融合召喚!これぞ斎王様のもとで俺が手に入れたジェムナイトの新たなエース、ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ!」

 砕け散ったダイヤモンドのかけらが再び結集し、へし折れた大剣もより細身のレイピアとして生まれ変わる。胸の巨大な核石(コア)も新たなカット法により生まれ変わり、前とは一味もふた味も違う輝きを手に入れたブリリアント・ダイヤがネオスと対峙する。

 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻3400→0 守2000→0

「だけど、攻守0ならネオスの攻撃で……」
「無論、そうはさせない。まずはラズリーが墓地に送られたことで墓地の通常モンスター、ルマリンを回収する。そして墓地からジェムナイト・フュージョンの効果発動、墓地からジェムナイトのモンスター1体、サニクスを除外することでこのカードを手札に戻す。そのまま手札の魔法カードであるこのカードを捨てて、ブリリアント・フュージョンのさらなる効果を発動!このカードで融合召喚したモンスターの攻守を、相手ターンの終わりまで元の攻守の数値だけアップさせる」

 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻0→3400 守0→2000

「………バトルだ、ブリリアント・ダイヤでネオスに攻撃!切り裂け、ブリリアント・ダイヤ!」

 妙な間が空いたのち、ブリリアント・レディが走る。レイピアの鋭い連撃が、ヒーローの反応速度を徐々に上回る。辛うじて両腕でガードを続けるが、それも最終的にはむなしい抵抗に終わった。

 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻3400→E・HERO ネオス 攻3300(破壊)
 十代 LP4900→4800

「ネオス!」
「これで俺の攻撃は終わりだ、だがこのままエンドフェイズではないぞ。魔法カード、黙する死者を発動。墓地の通常モンスター、ジェムナイト・アンバーを蘇生させる。そしてデュアルモンスターであるアンバーを再度召喚しよう」

 ジェムナイト・アンバー 守1400

「デュアルモンスターは召喚権を消費して再度召喚されることによって通常モンスターから効果モンスターとなり、その効果を使用できる。そしてアンバーの能力は手札のジェムナイトモンスターを墓地に送ることで、除外されたモンスターを1体俺の手札に加えること。さっき加えたルマリンを墓地に送り、除外したサニクスを手札に。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
「まさかネオスまでやられるなんて、さすが三沢だな。俺のターン、ドロー!」

 フィールドに残ったのは下級モンスター2体、手札も0とあまり好ましい状況ではない。それでも十代は、自分でも知らず知らずのうちに笑っていた。この圧倒的なピンチを乗り越えることができるか、それを決定づける1枚のドローを心から楽しんでいるのだ。

「……いいカードを引いたぜ、カードガンナーを召喚!まずはエア・ハミングバードの効果をもう1度発動し、またライフを回復するぜ」

 三沢の2枚の手札が大輪の花を咲かせ、その蜜を再びエア・ハミングバードが吸い尽くす。

 十代 LP4800→5800

「また回復か。……ってちょっと待て、カードガンナーを攻撃表示だと!?」
「ああ、俺は逃げずに戦うぜ!カードガンナーの効果発動、1ターンに1度自分のデッキを上から3枚まで墓地に送り、エンドフェイズまでその数1枚につき500ポイント攻撃力をアップさせる。俺はもちろん、3枚のカードを墓地へ!」

 カードガンナー 攻400→1900

「おっ、ラッキー。クロス・ポーターは墓地に送られた時、デッキからNのカードを1枚サーチできる。俺はこれでグラン・モール……いや、アクア・ドルフィンを手札に加えるぜ」

 運良く墓地で効果を発動できるクロス・ポーターの効果が使えた十代。最初はブリリアント・ダイヤをバウンスできるグラン・モールをサーチしようかとも思ったが、それでは駄目なことに気づいて慌てて取りやめる。三沢の洗脳の憑代となっているのは、本人の発言からいってもブリリアント・ダイヤで間違いないはずだ。だとすれば、それをあくまでもフィールド上で破壊しなければ洗脳を断ち切ることにならない。

「バトルだ、カードガンナーでジェムナイト・アンバーに攻撃!」

 全体的におもちゃのような原色の小型ロボが、目からビームを放つ。

 カードガンナー 攻1900→ジェムナイト・アンバー 守1400(破壊)

「そのままエア・ハミングバードを守備表示に変更してエンドフェイズ、カードガンナーの効果も切れてターンエンドだ」
「いいだろう。それと同時に、ブリリアント・フュージョンの効果も切れる」

 N・エア・ハミングバード 攻800→守600
 カードガンナー 攻1900→400
 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻3400→0 守2000→0

 十代 LP5800 手札:1
モンスター:カードガンナー(攻)
      N・エア・ハミングバード(守)
      ヒーロー・キッズ(守)
魔法・罠:魂の共有-コモンソウル(ハミングバード)
 三沢 LP3100 手札:2
モンスター:ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ(ブリリアント・フュージョン)
      ジェムナイト・アンバー(守)
魔法・罠:ブリリアント・フュージョン(ダイヤ)
     1(伏せ)

「俺のターン、ドロー!言っておくがな十代、ブリリアント・ダイヤは打点だけではなく、まだ使っていない効果が残っている!ジェムナイト・サニクスを召喚し、ブリリアント・ダイヤの効果発動。自分フィールドのジェムナイト1体を墓地に送り、ジェムの名を持つ融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる!グラインド・フュージョン、ジェムナイト・パーズ!」

 黄金色の体を持つジェムナイトの突撃戦士が、黄色がかった緑のマントをはためかせて現れる。

 ジェムナイト・パーズ 攻1800

「エクストラデッキから融合モンスターを直接特殊召喚だと!?それに、パーズは確か……」

 前にも一度パーズと戦ったことのある十代が、そのデュエルを思い出す。パーズの固有能力、それは確か。

「その通り、パーズは2回攻撃能力と戦闘破壊したモンスターの攻撃力と同じダメージを相手に与える能力を持つ。さらに墓地のアンバーを除外してジェムナイト・フュージョンを手札に戻し、このターンのためのブリリアント・フュージョンのコストに使う」

 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻0→3400 守0→2000

「さあ、バトルだ!ブリリアント・ダイヤでカードガンナーに攻撃!」
「させるか!墓地のネクロ・ガードナーを除外して、その攻撃を無効にする!」

 半透明の戦士が、レイピアの嵐からカードガンナーを守り抜く。その様子に、さすがの三沢も苦笑いを漏らした。

「さすがに凄まじい落ちの良さだな、十代。たった3枚の墓地肥やしで、2枚も墓地で力を発揮できるカードを落とすだなんて。だが、まだパーズの2回攻撃が残っている。ヒーロー・キッズ、そしてエア・ハミングバードに連続攻撃!」

 ジェムナイト・パーズ 攻1800→ヒーロー・キッズ 守600(破壊)
 十代 LP5800→5500
 ジェムナイト・パーズ 攻1800→N・エア・ハミングバード 守600(破壊)
 十代 LP5500→4700

「まだ終わっていないぞ、十代!リバースカードオープン、融合解除!ブリリアント・ダイヤをエクストラデッキに戻すことで、その融合素材である3体を墓地からフィールドに特殊召喚する!甦れラズリー、クリスタ、ガネット!」

 ダイヤの光が辺りにはじけ、今度はそれが3体のジェムナイトに分裂した。水晶を司るクリスタ、燃え盛る柘榴石の拳を振るうガネット、そして瑠璃の神秘を秘めたラズリーである。

 ジェムナイト・クリスタ 攻2450
 ジェムナイト・ガネット 攻1900
 ジェムナイト・ラズリー 攻600

「融合解除!?それを伏せてたのか、三沢!」
「ああ、これは予想外だったようだな、十代!ラズリーでカードガンナーを破壊して、ガネットとクリスタでダイレクトアタック!」

 ジェムナイト・ラズリー 攻600→カードガンナー 攻400(破壊)
 十代 LP4700→4500
 ジェムナイト・ガネット 攻1900→十代(直接攻撃)
 十代 LP4500→2600
 ジェムナイト・クリスタ 攻2450→十代(直接攻撃)
 十代 LP2600→150

「今のはなかなか効いたぜ、三沢。カードガンナーが戦闘破壊されたことで、カードを1枚ドローする」
「これが俺の全力だ……カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
「なら、今度は俺の全力を見せてやらなくちゃな!俺のターン、ドロー!よし来たぜ、コンバート・コンタクトを発動!手札とデッキからNを1体ずつ墓地へ送り、カードを2枚ドロー。俺は手札のアクア・ドルフィンと、デッキのフレア・スカラベを墓地に送るぜ」
「この局面で、さらなるドローソースだと……!」

 うなる三沢とは対照的に、本当に楽しそうな様子を隠そうともせずにカードを引く十代。その思いが、またも十代に奇跡の引きをもたらした。

「魔法カード、シャッフル・リボーンを発動!俺のフィールドにモンスターが存在しないことで、俺の墓地のモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚するぜ。戻って来い、エア・ハミングバード!」

 N・エア・ハミングバード 攻800

「ここで俺は墓地から、シャッフル・リボーン第2の効果を発動。このカードを墓地から除外して自分フィールドのカードをデッキに戻すことで、カードを1枚ドローできる。俺は永続魔法、魂の共有-コモンソウルをデッキに戻すことで、1枚ドローだ」
「だが、シャッフル・リボーンにはデメリットもある。2つの効果を使ったならばお前はこのエンドフェイズに両方のデメリットが適用され、そのモンスターと手札1枚が除外されることになるぞ」

 冷静な三沢の指摘。だが、十代はそれを恐れない。

「まあ見てなって。俺はこのターン、まだ通常召喚をしていない。来い、闇のN!ブラック・パンサー!さらに死者蘇生を発動し、墓地のフレア・スカラベを蘇生!」
『任せてくれ、十代!』
『さあ、戦いだ!』

 地面に黒い水たまりが湧きあがったかと思うと、その水がぐっと盛り上がってマントをつけた黒豹の姿となる。それと同時に隣で火柱が立ち、その中から甲虫のような角と羽を生やした人間が現れる。

 N・ブラック・パンサー 攻1000
 N・フレア・スカラベ 攻500→1700

「魔法カード、スペーシア・ギフトを発動!自分フィールドのNと名のつくモンスター1種類につき1枚、カードをドローする。エア・ハミングバードとブラック・パンサー、フレア・スカラベで合わせて3枚ドローだ。よし!今引いた魔法カード、(オー)-オーバーソウルを発動!墓地の通常モンスターのE・HERO、ネオスを特殊召喚!甦れ、ネオス!」

 E・HERO ネオス 攻2500

「見せてやるぜ三沢、これが俺の手に入れたヒーローの力!フィールドのネオスとエア・ハミングバードをデッキに戻し、コンタクト融合!これが融合の新たな可能性の1体、エアー・ネオスだ!」

 エア・ハミングバードとネオスの体が1つに溶け合い、ネオスの体をベースに風の戦士の意匠と鳥の要素を混ぜ合わせたような烈風のヒーローが降り立つ。

「コンタクト融合だと!?」
「そうさ、宇宙のヒーローの力はすごいんだぜ!エアー・ネオスは俺とお前のライフ差をそのまま攻撃力に加算する、そして俺のライフは150なのに対しお前のライフは3100だ!」

 E・HERO エアー・ネオス 攻2500→5450

「驚いたな、まさか自分のギリギリのライフまで攻撃力に変えてくるとは……!」
「すごいって言っただろ?バトルだ、フレア・ネオスでジェムナイト・ラズリーに攻撃!……ってあーっ!しまった、やっちまった!」

 ついデュエルに熱くなってしまい、肝心要のブリリアント・ダイヤの破壊をすっかり忘れていたことに今更気づく十代。慌てて攻撃を取り消そうとするが、三沢の方が反応は早かった。

「攻撃宣言時にトラップ発動、輝石融合(アッセンブル・フュージョン)!このカードはジェムナイト専用の融合カードで、トラップカードでありながら融合を行うことができる!フィールドのジェムナイト3体、ラズリー、パーズ、ガネットを素材にして、融合召喚!再び現れよ、輝きの淑女!ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ!」

 3体の宝石戦士が再び混ざり合い、レイピアを掲げる女剣士がフィールドに再び舞い降りた。その攻守はブリリアント・フュージョンによって弱体化されたものではなく、正規の手段で融合されたことで本来の数値のままとなっている。

 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻3400

「ブリリアント・ダイヤ……だったら、こうするぜ!エアー・ネオスでクリスタに攻撃だ、スカイリップ・ウィング!」

 エアー・ネオスがその翼で天空に舞い上がり、空気の衝撃波を飛ばす。それに対し水晶の戦士も、自らの核石を輝かせて真っ向から立ち向かう。激しい鉱石の拳と風の刃の応酬はやがて、風の刃がクリスタの核石をズタズタに切り裂いて決着がついた。

 E・HERO エアー・ネオス 攻5450
→ジェムナイトレディ・クリスタ 攻2450(破壊)
 三沢 LP3100→100
 E・HERO エアー・ネオス 攻5450→2500

「この瞬間、リバースカードオープン!トラップ発動、極星宝レーヴァテイン!戦闘でモンスターを破壊した相手モンスター1体を、あらゆるカードのチェーンを許さずに破壊する!十代、これでお前のフィールドに残っているのはNの3体だけだ!」

 クリスタとの戦闘に打ち勝ったエアー・ネオスが地上に帰還した瞬間、その心臓をダイヤモンドのレイピアが寸分違わずに音もなく刺し貫く。苦悶にもがく暇もなくその場に崩れ落ちたエアー・ネオスの体から、ブリリアント・ダイヤがそのレイピアを引き抜いてスッと優雅な動きで振った。
 コンタクト融合ですら光の力を受けた三沢には及ばない……今度こそ勝利を確信した三沢の笑みが、そこで凍りついた。なんと、十代もまたそれを見て笑っていたのだ。

「なあ三沢、やっぱりデュエルは最高だぜ!最後の最後まで何が起きるかわからなくて、だから何よりも面白い!」

 そう少年のように純粋な瞳で語る十代に一瞬虚を突かれるも、ややあって三沢もゆっくりと何かを察したかのように微笑んだ。

「……ああ、そうだな」
「さあ、ここからが本当の本番だぜ!速攻魔法、リバース・オブ・ネオスを発動!フィールドのネオスと名のつく融合モンスターが破壊された時、デッキからネオスを攻撃力を1000ポイントアップさせて攻撃表示で特殊召喚する!」

 エアー・ネオスが散らした羽の中から、三度フィールドに現れたネオス。その全身は、静かに燃える純白のオーラに覆われていた。

 E・HERO ネオス 攻2500→3500

「行っけえ!ネオスでブリリアント・ダイヤに攻撃、ラス・オブ・ネオス!」

 ネオスの右腕にオーラが集中し、目も眩むばかりの光を放つ必殺の一撃を放つ。迎え撃たんと放たれたダイヤモンドのレイピアを叩き折り、そのままいささかも勢いを落とさずにブリリアント・ダイヤ本人をも切り裂いた。

 E・HERO ネオス 攻3500→ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ 攻3400(破壊)
 三沢 LP100→0





「う……」
「三沢!」

 吹っ飛ばされた三沢が、ややあって倒れた時に打ったらしい頭をさすりながら上半身を起こす。駆け寄ってくる十代を見て、何があったのか思い出したらしい。

「ははは、結局お前の勝ち、か……うっ!?」
「おい、無理して起き上がるなって」

 立ち上がろうとしてバランスを崩し、また床に座り込む三沢。その不安定な様子に十代も一瞬どうするか悩んだものの、より危険な場にいるであろう友人のもとへ駆けつけるのを優先する。

「じゃあ三沢、俺は清明の様子を見てくるからな。きっと他の奴らももうじきここまで来るはずだから、お前も動けるようになったら来いよ!」
「十代、俺は……」

 三沢の言葉は、十代には聞こえなかったようだ。最後にそれだけ言い残し、十代も隠し扉の階段を一気に駆けおりていく。その足音が完全に聞こえなくなるまで見送ってから、近くの机に寄りかかるようにしてどうにか三沢も起き上がる。軽く辺りを見回すと、斎王がなにか手書きで書類でも作っていたのか、紙とペンが転がっていた。
 それをしばらくの間見つめたのち、おもむろに三沢は手を伸ばした。





 一方その頃、1Fでは。

「魔法カード、クロス・アタックを発動!自分フィールドに同じ攻撃力のモンスターが存在する場合、1体の攻撃を封じることでもう1体はこのターン直接攻撃が可能となる。俺のフィールドには攻撃力2800のダーク・アームド・ドラゴンとメタファイズ・アームド・ドラゴンが存在することで、メタファイズ・アームドのダイレクトアタック!はあ、はあ……どうした、今年のノース校はその程度か?だとしたら、俺がいなかったこの1年の間にずいぶん学校のレベルが落ちたようだな!」

 連戦に次ぐ連戦に息を切らしながらも、まだ闘志の消えていない目で万丈目が白服相手に啖呵を切る。すでにその近くにはライフ0になってデュエルからはじき出された白服が山となっており、どれだけ激しい戦いが起きていたのかが垣間見える。
 そんな万丈目の様子におそらく1年だろうか、まだ幼い顔立ちの連中が怖気づいたように一歩下がる……だが、そんな中でもなお重々しい雰囲気を崩さない者がいた。

「……怯むな、お前たち。すべては斎王様のため、例え捨て石としての役目であろうとも、その一瞬一瞬が斎王様を助けることとなる」
「「「ハ、ハイ!全ては斎王様のために!」」」
「天田……ええい、本当に性質(タチ)の悪い宗教だな。そして何より、こんなくだらん中に俺がついこの間までいたということが最高に気に食わん!」
『そうよアニキ、やっちゃって!もしアニキがここで負けちゃったら、またアタイ達もぼろ雑巾みたいな扱いを……扱いを………あれ?確かに白い時の方がひどかったけど、やってることはあんまり変わってないような』
「お前は少し黙ってろ!」

 まだおジャマ・イエローと軽口をたたき合うだけの元気は残っているが、それも空元気に過ぎない。少しずつだが確実に、状況は悪化していた。

「「「天田さん、助太刀参ります!」」」
「おいおい、ここにきて援軍だと!?」
『ひ~っ!いっぱい来ちゃったわよアニキー!』

 睨む万丈目の顔に、嫌な汗が一筋流れる。それを見て、普段寡黙なノース王四天王も会心の笑みを漏らすのだった。
 そして、その頃の2階では。

「ドラゴネクロの攻撃、ソウル・クランチでそのモンスターの魂を奪い取り、攻撃力0になった抜け殻にワイトキングで追撃の螺旋怪談、なんだって。貴方のライフはこれで0、私はこれでターンエンド。あら、この程度かしら?ってさ。貴方達の顔には見覚えがあるけど、前よりだいぶ弱くなったんじゃないの、だって」

 1対多という圧倒的不利な状況ながら余裕を崩さない、この夢想の言葉には訳がある。おそらくは本人たちの希望なのだろうが、ここで片っ端からやられているのは全員かつて夢想に告白しては『デュエルで私よりも強かったらいいよ、ってさ』というニコニコ笑顔での言葉の前に散っていった負け犬軍団なのだ。
 雪辱を晴らすためにここに集まっているのであろう彼らだが、当然無双の女王とまで呼ばれる彼女のデュエルタクティクスの前にはちょっとやそっとのことでその実力差を埋められるはずもなく、まともな時間稼ぎにもならずばったばったと倒されていく。
 だがこの階を担当するノース校四天王、酒田にはそれも完全に予想の範囲内だったようだ。

「ククク……なあ、ひとつ聞いてやろう。そろそろ種明かしもしたいしな!やいやいお前、お前の相手は全部で何人だと思う?」
「え?えっと、ひい、ふう、みい……貴方も入れて19人かな、ってさ。今はもう貴方しか残ってないけど」

 そう答える彼女に、これ以上ないぐらい喜色満面の笑みを浮かべる酒田。

「残念だったなぁ!俺たちのチームは全部で20人いるんだよぉ!」
「え?でも……」

 何か言おうとする夢想を遮り、今までずっと言いたくてしょうがなかったという風にペラペラと早口で喋りだす。

「いいか、よく聞けよ。お前はこれまで俺たちを1人ずつ順番に相手してきたと思っているようだが、それは大間違いだ。お前はずっと3人でのバトルロイヤルを続けてきたんだよぉ!」

 酒田が何を言っているのかわからず、面食らう夢想。その様子に舌打ちをしつつ、つまりだ、ともう少し詳細な説明に入る。

「お前がまず最初の1ターン目をやった。そうだろ?だからお前のことを仮にプレイヤーAとする。そして次、そこでぶっ倒れてる奴の誰かがやった。これがプレイヤーBのターンだ。お前はその直後、もう1度プレイヤーAのターンが来たと思っていたようだが、それこそが間違いだ。その間にお前の知らない第3のプレイヤー、プレイヤー壱のターンがあったんだよ!」
「え……?」
「そしてお前がワンショットキルしてプレイヤーBのライフは1瞬で0になり、それと入れ替わりでプレイヤーCがBの枠にそのまま収まった。そして何食わぬ顔してターンを終え、またプレイヤー壱のターンが回ってきた。と、まあこういうわけだ」

 衝撃の告白。つまり、自分を含む19人を丸々そのプレイヤー壱とやらのための囮にしたというのだ。そして勘の鋭い彼女には、もうこの先の展開が分かっていた。さっと彼女の顔が青ざめたのを満足そうに見て、駄目押しのさらなるネタバラシにかかる。

「もうこうなると、俺が何が言いたいのかはわかってるみたいじゃねーか?苦労したんだぜ、なにせプレイヤー壱があまり時間をかけすぎると、バトルロイヤルデュエルをデュエルディスクが認識している以上不都合が出てくるからな。運悪くキーカードがなかなか引けなかったせいで、こいつらの方が先に頭数がなくなっちまうんじゃないかと思ってハラハラしたぜ」

 デュエルモンスターズでは、前のプレイヤーがターンを終えていないのに次のプレイヤーがカードをドローすることはできない。また、もしそんなことをしようとしてもデュエルディスクがその操作を受け付けない。なのでプレイヤー壱はそのキーカードが手札に来るまでサーチカードを使うだけのひまもなく、ひたすら目当てのカードが来るまでドローフェイズにカードをドローしていただけということになる。
 そして、そんなデュエリストとしてのプライドを完全にかなぐり捨てるような真似をしてまでこの20人が狙っていた、たった1つのコンボとは一体。その答えは、いつの間にか夢想の周りを取り囲んでいた17個の人魂にあった。

「それじゃあ、これは……ってさ」
「ご名算!俺たちが狙っていたコンボは、このひとつ!お前の今のエンド宣言により、終焉のカウントダウンは17ターン目のカウントを終えた!」

 終焉のカウントダウン……2000ポイントものライフを支払うことで発動し、お互いのエンドフェイズごとに1つずつカウントが増えてゆく通常魔法。そして20ターンが経過した時、発動プレイヤーはデュエルに勝利する。
 いわゆる特殊勝利カードの1枚だが、このカードには他の特殊勝利カードにはないある特徴がある。1度発動さえしてしまえば、その前に勝負をつけない限り絶対にカウントを止める手段がないという点だ。そして今無双の周りに浮かぶ人魂は、もうかれこれ17ターンも前にカウントダウンが始まっていたことを表す。

「さて、そして俺のターンだ。魔法カード、成金ゴブリンを発動!プレイヤー壱のライフを1000回復させることで、デッキからカードを引くぜ」
「ちょっと酒田さん、ちゃんと名前で呼んでくださいよー」

 気弱そうな声が、すぐ横から聞こえる。誰かの部屋の扉が開き、特徴のない顔をした少年が顔を出した。

 プレイヤー壱 LP2000→3000

「はは、悪い悪い。だけどあとちょっとだ、俺たちよりも実力が上のこの化け物女を、俺たちのチームプレイで仕留めてやろうぜ!」
「は、はい!」
「チーム、プレイ………?」

 だいぶ何か言いたそうな夢想をきっぱりと無視して、酒田は今引いたものと合わせて4枚のカードをセットした。一応本人たちの名誉のために断わっておくと、決して普段の彼らはこのような真似をしない。その程度のデュエリストとしてのプライドは持ち合わせている。だが高い斎王の強い洗脳術とそれによって生み出された信仰心が、自らのプライドを踏みにじってまで斎王のために戦う道を選ばせたのだ。

「ターンエンドだぜ。ひとつ教えといてやるがな、今俺が伏せたカードは大革命返し、和睦の使者2枚、奈落の落とし穴2枚だ。もうお前がどうあがいたとしても、絶対にこのデュエルは終わらせられねえって寸法よ!」

 その言葉を裏付けるかのように、18個目の人魂がぼっと灯った。そしてそのまま、もはや存在を隠さなくなったプレイヤー壱のターンが特に何もしないまま終わり、19個目の人魂が灯る。
 夢想に残されたターンは、わずか1ターン。彼女がここから逆転をするには、この1ターンを駆使して酒田とプレイヤー壱のライフを0にしなければならない。だが、坂田の言葉を信じるならば彼の場の妨害札のせいでそれができる可能性は限りなく0に近い。
 夢想の表情が、スッと強張った。せめてもの抵抗として、自分の場に伏せてあったカードを表にする。

「エンドフェイズにサイクロン……私から見て真ん中のカードを破壊するんだってさ」
「ちっ、和睦が1枚おじゃんになっちまったか。だがな、それ1枚で今更何ができる!」

 自分のデッキの中にある何のカードを引けば、この状況を打破できるだろうか。彼女は静かに目を閉じて、いくつものパターンをシュミレートし始める。
 では、3階では何が起きているのか。翔と剣山が互いに互いの背中を守りながら、輪になって包囲する白服軍団相手に一歩も引かずに大立ち回りを繰り広げていた。

「速攻魔法、融合解除を発動!僕の場のスチームジャイロイドをエクストラデッキに戻すことで、融合素材となったスチームロイド、ジャイロイドの2体を特殊召喚する!そのまま2体で直接攻撃!」
「相手フィールドに守備表示モンスター以外のカードが存在しない時、暗黒恐獣(ブラック・ティラノ)は相手プレイヤーに直接攻撃ができるドン!さらにこのダメージステップにリバースカード、生存競争を発ドン!暗黒恐獣の攻撃力は、さらに1000ポイントアップしてとどめザウルス!」

 下2階と比べ、ここの2人はそこまで苦労していない。その理由はそもそもここにいるのが警戒されていた万丈目に夢想とは違い一般構成員からすればほぼノーマークに等しい2人だったおかげで出てきた光の結社メンバーも少ないうえ、もっとも危険である鎧田を一番先に片付けたからだ。
 そして最後の1人が倒れ、改めてほっと息をつく。

「ふう……大丈夫、剣山君?」
「デュエルしてるうちに、だいぶ痛みも消えてきたドン。でも休んでる暇はないドン、早く先に進むザウルス」

 その言葉に翔も頷き、十代たちの向かった方へ歩き出す。だが、数歩も歩かぬうちにその足が不意に止まった。

「どうしたドン?」
「下の2人がまだ来ないってことは、やっぱり様子を見に行った方がいいんじゃないかなって思って……でもアニキも心配だし、どうしよう?」

 本気で困ったような翔の様子に、剣山も一瞬考え込む。そして一度自分自身に言い聞かせるように頷くと、翔の背中をバシッと叩いた。

「うわっ!?何するのさ!?」
「丸藤先輩、悪いけどここから先は1人で行ってもらうドン。俺が代わりに下の様子を見てくるザウルス」
「え、でも……」

 十代のところに行きたい気持ちは同じであることは、翔もよくわかっている。それなのにその役を翔に譲り、自分は下を助けに行くという。それがどれだけ重い決意だろうか、それを考えると素直にその提案を受け入れることをためらってしまう。その様子を見て、もう1度剣山が翔の背中を押した。

「ここで話し込んでる暇はないドン、十代のアニキのことは一時任せたザウルス!」

 それだけ言い、身をひるがえして今来た道を引き返す剣山。その後ろ姿を見て、もう一度ためらって、最後に一度深々と頭を下げてから、翔もまた剣山とは真逆の方向へと走り出した。 
 

 
後書き
今回、デュエル以外の描写が長い気がする。 
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