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時間停止で異世界ファンタジー

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第五話

 
前書き


キャラが安定しない
 

 


私は、アリサ・アンジェルジェは本当に愚かな人間だった。
自分の慢心で部下達をいたずらに死なせ、隊長である私は今、こうしてオークに犯されている。
心は折れ絶望していた。

胸を掴まれる。悪寒が走った。
頬を舐められる。吐き気がした。
助からないと分かっていても助けを求めずにはいられなかった。

「ごめんなさい……やめてください……許してください……」

涙が止まらない。
意識がだんだんと薄れてきた。
私の心はもう殆ど機能していないと言っていいだろう。視界も狭まってくる。そんな中、暗転する世界にいた彼は眠そうな顔をしていた。

「でかい豚が二足歩行で緑色」

暗転する。
真っ黒な世界。
そこで漂っている私。
すると目の前の黒の景色に色がついてきた。
暫くしてそれは見たことのある風景となった。

『アリサ』

『なんでしょうか?母上』

幼い頃、家族で遊びにととある花畑に出かけたときの記憶だ。咲き乱れた白く美しい花々が風に揺れているのを見て大いに感動したのを覚えている。

『アリサは、好きな男の子とかいる?』

風に揺れる金色の髪を抑えながら母上が問うた。自分の母ながらとても綺麗な人だと思う。誇らしい。

『私にはそんなものはおりません。騎士学校の男達は軟弱者ばかりで好きになどなれないのです』

『ふふ、そう』

『む、なんですか。笑って』

小さい子がこんなことを言っていたら、普通笑ってしまうだろう。母上の気持ちが今なら分かる。母上は暫く笑って、微笑みをたえながら言った。

『いい?アリサ。もし貴方にこのさき好きな男の子が出来るとしたら、心の底から格好良いと思える人でなくてはダメよ』

『格好良い?』

『そう、そんな人ともし結婚出来たなら貴方は世界で一番幸せになれるわ。……それはきっと騎士として生きることよりも、もっと幸せな事よ』

『……よく、分かりません』

『ふふ、良いのよ、まだ分からなくて。いつかわかるようになるわ』

そうでした、母上。
もしそんな人と出逢えて、愛を育んで、生きていけたならどんなに幸せだった事か。

母上と結婚した人は、父上は、お世辞にも格好の良い人とは言えない。
母上は自分が叶えられなかったものを、私には叶えて幸せになって欲しかったのだろうか。でも申し訳ありません、母上。その願いは叶えられそうにないのです。
目の前の風景がボロボロと崩れ始めた。
真っ黒になり、少し経つと黒が消え始めた。
意識が戻り始める。

ああ、私はどうなっているのだろう。
犯されている最中なのか、犯され終わって殺される寸前なのか。
そういえば、意識が消える時に突然現れた彼はどうなったのか。
騎士として生きてきた人生だったが、最後の最後で女としての幸せに気付けたのかもしれない。来世では愛しい人が出来て、交際し、結婚して。そんな人生がいい。
そんなことを思いながら、この人生に未練をのこしながら、私は意識を取り戻した。

「……ブ、ブヒッ」

「……え?」

意識を取り戻した時に、見たのは予想外の光景だった。

「このナイフ、切れ味すごい」

「き……ざ……ま、あの一瞬で……ど……」

デーブの喉元から絶えず噴き出る血液。オーク独特の緑色をしたそれはまるで噴水の如く溢れ出し、地面に水たまりを作っていた。

「ああ、やっぱり止まってたか。確信が持ててよかったよかった」

「なにが……どうなっ……ブヒ」

その場に膝をつくオーク。
私は動揺のあまり壁に身を預けたまま動けない。……え?

「……か、壁?どうして」

さっきまでいた場所と違う。

「あ、金髪おっぱいさん正気に戻りましたか。良かった。あともう少し待っていて下さいね」

そう言って彼は手元の、銀製器、だろうか。一本のナイフを手に持ってオークを見据えた。

「はぁ……はぁ……カヒュッ……きさま……許さないぞ。殺す。八つ裂きにする」

「怖いよ。でも殺されるのは勘弁。眠れなくなるのはいやだし、来なよデブ」

場に似合わない眠たげな表情でそう言った彼にオークは棍棒を握りしめた。
ま、まずいっ。彼が、危ない!

「死ねえッ!」

あまりにも速すぎる。
彼の目の前にはすでにその巨体と棍棒が迫っていた。私は動こう力を入れるが、満身創痍のこの身体は言うことを聞かなかった。

「ブヒヒヒヒヒヒッ!遅い!」

「に、逃げて!」

そんな私に、彼は一度だけ目を合わせて

「止まれ」

え……?

「……ぐぁ……ブヒ」

「金髪おっぱいさん、僕の名前は三鳩三戸。あなたの名前を教えてくれますか」

「……アリサ……アリサ・アンジェルジェ」

「あ、じゃあミトミハトです」

ドンッと、オークが倒れた振動を聞きながら、目の前の彼、いや、ミトミハトに私は自分の名前を絞り出した。
 
 

 
後書き



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