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キラ

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第三章

「我が国が」
「幸せの国とか言ってね」
「両陛下が美男美女ってことも評判みたいよ」
「仏教のこととかね」
「それと服のこともね」
「キラのことも」
 キラの話も出てだ、ジツェンはここで目を瞬かせた。
 そしてだ、こう皆に言った。
「この服ブータン以外の国で有名になってるの」
「そうみたいよ」
「ブータンのことが色々とね」
「話題になってるみたいよ」
「キラのことも含めて」
「そうなのね、けれどね」
 そうしたことはわかった、だがだった。
 ジツェンはここまで聞いてだ、こう言った。
「日本って遠いわよね」
「ええ、ブータンからだとね」
「どうしてもね」
「遠いわよね」
「周りを海に囲まれてるのよね」
「凄い豊かな国らしいわね」
 少女達はこう話した、その日本のことを。だが誰も日本のことは多く知らなくてだ。
 それで全て『らしい』だった、それはジツェンも同じでだ。
 友人達にだ、こう言ったのだった。
「お金持ちの国でもこっちまで来ないわよね」
「ブータンまでね」
「旅行しに来る人なんてね」
「この国山の中にあるから」
 中国とインドの国境だ、チベットやヒマラヤのその中だ。相当に高い山々のその中にある国なのだ。それでなのだ。
 ジツェンもだ、こう言った。
「飛行機があってもね」
「ここまではね」
「日本人来ないわよね」
「中国人やインド人もね」
「あまり来ないから」
「国王ご夫婦と我が国のことが話題になってることはいいけれど」
 その日本でだ。
「私達にはね」
「特によね」
「関係ないわよね」
「別に」
「日本人が来る訳でもないし」
 皆こう思っていた、それはジツェンも同じでだ。学校のこの話はその日のうちに忘れた。それで後はのどかにだった。
 学校に通って店の番をして過ごした、だが。 
 その忘れていた話から三ヶ月程してだ、店にだ。
 洋服を着たアジア系の中年の女の人がだ、緑のゴを着た男の人を連れて来て店に来た。その緑のゴを着た人が言うことは。
「日本からか」
「はい、旅行で来たんです」
 緑のゴの人は名前をクリシュナといった、クリシュナはこうカルマに話した。
「何でも国王ご夫婦の来日から我が国に興味を持ったらしくて」
「そうかし、それでもな」
「それでも?」
「いや、日本からブータンに来るなんてな」
 それが、というのだ。
「また酔狂な人だね」
「何でも旅行が趣味らしくて」
 その落ち着いてだ、微笑んで立っている日本の女性を指し示しての話だ。
「それでブータンにもってなって」
「それで来たのかい」
「はい、ここまで」
「わざわざ」
「そうらしいです」
「それでこの店にも着たんだな」
「こっちの服欲しいらしくて」
「女の人だからキラだな」
「はい、何でも旦那さんが会社やっててお金あるらしくて」
「それでか」
「はい、いいキラを欲しいそうです」
「いいキラな」
 そう言われてだ、カルマは。
 少し考えてからだ、こう言ったのだった。 
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